「親子ローンを組むと結婚できない」

このような言葉を聞いたことはありませんか?

もちろん、親子ローンを組んだだけで結婚ができなくなることはありませんが、親子ローンの仕組みや特徴を理解した上で組まなければ、後々後悔するかもしれません。

この記事では、親子ローンを組むと結婚ができないと言われる理由やメリット・デメリット、組む前に知っておくべき注意点を紹介します。ここで紹介する内容をもとに親子ローンに対する知識を深め、慎重に計画を立てるようにしましょう。

※この記事では、親子ローンを組む親を「本人」、親子ローンを引き継ぐ後継者を「2世代目」と表現しています。

親子ローンを組むと結婚できないと言われる4つの理由

親子ローンを組むと結婚できないと言われる理由は、大きく4つ挙げられます。

  • 経済的なリスクがある

  • 家族間の関係が悪化するおそれがある

  • ライフプランに影響を及ぼすかもしれない

  • 住みたい家に住めないおそれがある

それぞれの理由を詳しく解説します。

経済的なリスクがある

親子ローンを組むと結婚できないと言われるのは、結婚後に経済的なリスクが増大するという理由からです。

たとえば、2世代目の収入が安定しない場合、結婚生活に毎月の返済責任がのしかかり、大きなストレスを感じてしまうかもしれません。さらに、結婚後に急な出費が発生した場合、親子ローンの返済が原因で家計が苦しくなることも考えられるでしょう。

このように、親子ローン引き継いだ状態で結婚をすると、経済的なストレスが夫婦関係に悪い影響を及ぼす可能性があります。

家族間の関係が悪化するおそれがある

親子ローンを引き継ぐことで家族間の関係が悪くなるおそれがある点も、結婚ができないと言われる理由の1つです。本人と2世代目で返済に関するトラブルが生じた場合、家族間のコミュニケーションがうまく取れず関係が悪化する可能性があります。

仮に、2世代目の結婚後に車を購入するなどの大きな出費が発生した際、ローンが支払えずに親子関係が不安定になることも考えられます。その結果、親子ローンを組んでいることが原因で、良好な家族関係を続けられないかもしれません。

ライフプランに影響を及ぼすかもしれない

親子ローンを組むと結婚できないと言われる3つ目の理由は、ローンを引き継いだ2世代目の将来のライフプランに影響を及ぼすおそれがある点です。親子ローンが原因で、2世代目の子どもの教育費や趣味に費やす資金が不足するかもしれません。

たとえば、2世代目夫婦のライフプランとして子どもが3人欲しいという計画を立てている場合、親子ローンの返済で生活が苦しくなり、子どもが3人欲しくても2人が限界になることが考えられます。このように、親子ローンを引き継いだ相手と結婚することで、描いていたプランが実現できないかもしれないという不安が、結婚できないと言われる理由です。

住みたい家に住めないおそれがある

親子ローンが原因で、住みたい家に住めなくなるおそれがある点も理由の1つです。結婚をすると、本人と2世代目が融資を受けている家に住むことが一般的なため、2世代目の結婚相手が希望するエリアに住めないおそれがあります。

たとえば、親子ローンを組んでいる家と2世代目の結婚相手の勤務先が電車で2時間以上かかってしまう場合、結婚相手は勤務先の近くに住みたい反面、親子ローンが原因で住むことができません。もし勤務先で家を賃貸もしくは購入すると、2世代目は親子ローンの返済+住居費となり、生活が苦しくなってしまうでしょう。

そのため、2世代目夫婦が希望するエリアに住みたくても住めなくなることが、親子ローンを組むと結婚できないと言われる理由の1つだと考えられます。

親子ローンとは?

親子ローンとは、一般的に「親子リレーローン」のことです。親子リレーローンとは、返済開始当初は親が住宅ローンを返済し、一定期間が経過したあとに2世代目が返済を行うタイプの住宅ローンを指します。

親子ローンは、住宅金融支援機構のフラット35や民間の金融機関で組むこと出来ます。フラット35の場合、返済が引き継がれる2世代目の要件として以下が挙げられます。

【親子リレー返済の後継者の要件(次の1~3までのすべての要件に当てはまる方)】

  • 申込みご本人の子・孫等(申込みご本人の直系卑属)またはその配偶者で定期的収入のある方

  • 申込時の年齢が満70歳未満の方

  • 連帯債務者になる方(1名のみとなります。)

引用:フラット35「親子リレー返済」

親子ローンの例としては、本人が3,000万円、2世代目が2,000万円のローンを組むというケースが考えられます。この場合、先に本人が3,000万円のローンを返済したあとに、2世代目による2,000万円の返済が始まるという形です。

このような特徴がある親子ローンですが、メリットとデメリットが存在するため、必要に応じて利用しなければいけません。次の章から親子ローンのメリット・デメリットを紹介します。

親子ローンのメリット

親子ローンのメリットには次の2つが挙げられます。

  • 家族全体の収入でローンが組める

  • 相続計画が円滑になる

それぞれのメリットを解説します。

家族全体の収入でローンが組める

親子ローンは、2世代目を含めた収入で融資を受けられる点が1つ目のメリットです。そのため、本人だけの収入や年齢が原因で、ローンが組めないという事態を回避することができます。

親子ローンは、本人ではなく2世代目の年齢を基準にして組むことになります。たとえば、フラット35の場合は住宅ローンを組めるのは70歳未満の人に限りますが、親子ローンを利用すれば70歳以上でも申し込めます。本人だけの収入では希望の借入金額に届かない場合でも、親子ローンを利用することで希望額を借り入れられるかもしれません。

さらに、親子ともに住宅ローン控除の恩恵を受けられる点もメリットです。住宅ローン控除とは、住宅ローンの残債に応じた税金を、10〜13年間国から還付してもらえる制度です。親子ローンは、2世代目の返済が始まっていなくても住宅ローンの残債がある状態のため、本人が返済中でも2世代目が残債に応じた税金の還付が受けられます。

このように、家族が協力して住宅を購入・建築し、税金の優遇を最大限に受けられることが親子ローンの大きなメリットと言えます。

相続計画が円滑になる

親子ローンの2つ目のメリットは、相続計画が円滑になり財産の紛争を防げることです。親子ローンは家族全体で融資を受ける形になるため、将来の相続に備えることができます。

親子ローンを組むと、2世代目も家の所有権を持つことになります。その結果、相続人が誰なのかが明確になり、相続手続きが円滑に進みます。親子ローンは、本人の相続の意思を示すことができる手段としても利用できるでしょう。

親子ローンのデメリット

親子ローンには、注意するべきデメリットも存在します。

  • 経済的リスクを共有することになる

  • 家族間の対立が発生するおそれがある

この章で、親子ローンのデメリットを十分に理解しておきましょう。

経済的リスクを共有することになる

親子ローンを組むと、親子間で経済的リスクを共有することになる点が1つ目のデメリットです。

たとえば、本人が返済中にリストラや病気などで仕事を続けられなくなった場合、返済できない分を2世代目が引き継がなければいけません。その場合、2世代目がより多くの金額を返済する必要があるため、将来のライフプランに影響を及ぼすおそれがあるでしょう。2世代目に万が一の事態があった場合も同様で、その場合は本人が経済的リスクを背負うことになります。

親子ローンを組む際は、団体信用生命保険やその他の保険などで、十分なリスクヘッジを行うことが重要です。

家族間の対立が発生するおそれがある

親子ローンを組み経済的リスクを共有することで、家族間の対立が発生するケースがあります。もし親子どちらかの返済が滞った場合、もう一方に負担が生じて関係悪化を引き起こす原因になります。

お金が原因でトラブルが起きると、家族関係が修復できない可能性もあるでしょう。そのため、無理な返済計画は立てず、余裕を持った金額で親子ローンを組むことが重要です。

親子ローンを利用する際に知っておくべき注意点3点

親子ローンを組むにあたり、知っておくべきポイントが3点あります。

  • 親が亡くなっても返済は続く

  • 親子ローンを組むと他の借入が起こしにくくなる

  • 相続人が複数の場合にトラブルが起きやすい

ここで紹介する注意点に気をつけた上で、親子ローンを検討しましょう。

親が亡くなっても返済は続く

親子ローンの注意点1つ目は、本人が亡くなっても2世代目の返済義務は免除されず、返済が続くことです。本人が亡くなった場合、2世代目は自らの返済分だけでなく、本人の残債が加わり金銭的負担が増大してしまいます。

フラット35では、親子リレーの場合、団体信用生命保険に加入できるのはどちらか一方のみです。また、満70歳未満の人は団体信用生命保険に加入できず、保障は満80歳の誕生日の属する月の末日までと規定されているため、2世代目が団体信用生命保険に加入することが多いのです。

このように、親子ローンを組む場合は、万が一の事態が起きると2世代目の負担が大きくなることを想定して、十分な対策を取った上で利用するようにしましょう。

親子ローンを組むと他の借入が起こしにくくなる

親子ローンを組んでいる状態では、他の借入を起こしにくくなる点にも注意が必要です。親子ローンによる残債があることで、新たなローンの返済負担率が増加し審査に通りづらいのです。返済負担率とは、年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合のことで、ローン審査の際はすべての借入額が返済負担率に含まれます。

たとえば、2世代目が親子ローン中に転勤を命じられ、遠方への引越しが必要になった場合、転勤先で住宅ローンが組めないおそれがあります。親子ローンと新たなローンを合わせた返済負担率が、審査基準よりオーバーしてしまうためです。

親子ローンは、基本的に自己資金で一括返済するか、物件を売却して残債を完済しなければ返済義務を免れません。将来的に、新居を住宅ローンで購入しようと検討している人は、親子ローンの利用は慎重に考えるようにしましょう。

相続人が複数の場合にトラブルが起きやすい

親子ローンの注意点3つ目は、相続人が複数いる場合にトラブルが起きやすいことです。親子ローンの2世代目が家の持ち分を持つことになりますが、相続人が複数の場合は相続分配の問題が生じて相続トラブルに発展するおそれがあります。

たとえば、本人の相続財産が家しかないにもかかわらず、親子ローンにより相続人3人のうちの1人が家の50%の持ち分を持ってしまうと、相続分配に不公平が生まれます。それにより、相続人同士で相続財産の紛争が起こるかもしれません。

家族間の相続によるトラブルを防ぐためにも、親子ローンを利用する際は事前に相続財産について他の相続人とよく話し合い、事前に認識してもらっておくことが重要です。

まとめ

この記事では、「親子ローンを組むと結婚できない」と言われる理由や、利用する際に知っておくべき注意点を紹介しました。親子ローンを組むと結婚できないと言われるのは、親子ローンの2世代目には結婚後に経済的なリスクが増大する、家族間の関係が悪化するかもしれない、などの理由が挙げられます。また、親子ローンは家族全体の収入で住宅ローンを組めるというメリットがある一方、本人と2世代目が経済的リスクを共有しなければならないというデメリットがあります。

1人だけでは手が届かない物件でも、親子ローンを利用すれば、家族の力を合わせて購入することができます。しかし、親子ローンの特徴を知らずに組んでしまうと、家族間の関係悪化やライフプランの破綻につながるかもしれません。親子ローンを活用する際は、将来のライフプランを見据えて家族全員でしっかりと話し合い、慎重に判断することが重要です。