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相続などで古家付きの土地を手に入れたけれど、空き家のまま放置していたり、なかなか売れずに悩んでいたり、という人も少なくないのではないでしょうか。

古家付きの土地は売却するのが困難なケースもありますが、まったく売れないかといえばそうとも言い切れません

新築戸建ての用の土地を探している人もいますし、古家に価値を見出している人もいるからです。つまり、古家付き土地を必要としている人にうまくアプローチすることができれば、売却も不可能ではありません。

この記事では、古家付き土地を売却するためのコツについて解説します。

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この記事に記載の情報は2023年10月03日時点のものです

古家付き土地を売却するのは難しいケースが多い

古家付きの土地を売却するコツを見る前にまずは、そもそもなぜ売却が困難であるのかと、売却ができない場合のトラブルについて理解しておきましょう。

売却できない理由を理解しておかないと、売却の戦略をうまく立てられません。また、売却ができない場合のトラブルを理解しておかなければ、無駄に売却期間だけが長引いてしまい、トラブルが発生する可能性があります。

古家付き土地の売却が難しい理由

古家付き土地の売却が困難な理由は、建物部分にほとんど価値がなくなってしまうことにあります。日本の戸建て住宅は多くの場合、木造建築ですが、資産価値は次の図の通り22年で10%程度になってしまいます。

築年数別建物価値の減少

引用: 中古住宅流通、リフォーム市場の現状|国土交通省

加えて、日本人には戸建て住宅を補修したりリノベしたりして、長く使うという価値観があまり根付いていません

欧米では気候が日本と異なるため、木造住宅であったとしても寿命は70年近くといわれています。また、新築も含めた住宅流通数のうち中古住宅が占める割合は80%を越えています。家を長持ちさせて、子供に引き継がれていくような慣習と市場が確立されているのです(※)。

一方、日本の中古住宅の流通数は15%程度(※)です。前述の通り22年で資産価値が10%程度になることから、戸建ては長持ちさせるのではなく、どちらかというと「使い捨てる」という感覚を持っている人が多いと考えられます

「戸建ては新築」がメインストリームの日本の市場においては、古家付き土地の「建物部分」をアピールしても、価値を感じにくく、売却が困難になってしまうのです。また、建物は自分で新築したいという「土地だけが欲しい人」にとって、古家付きであることはすなわち、解体の費用や手間がかかることを意味するので、敬遠されてしまいがちです。

(※) 平成27年度国土交通白書

古家付き土地を売却できないときのトラブル

古家付き土地を売却できないときのトラブルとしては、次の2点が挙げられるでしょう。

  • 固定資産税が発生してしまう
  • 損害賠償を請求される可能性がある

固定資産税とは、土地や住宅などの固定資産にかかる税金で、毎年1月1日時点で不動産を所有している人に課税されるものです。固定資産税額は固定資産税課税標準額の1.4%となっているのが通常で、年度初めに送付される納税通知書に従い、年4回に分けて支払います。

なかなか売却できずにいると、固定資産税だけを払い続ける事態に陥ってしまいます

また、古家を空き家にしていた場合には、火災の発生や建物の倒壊が原因で近隣の住民に損害を発生させてしまう可能性もあります。

故意や過失に関わらず、他人に損害を発生させてしまった場合には賠償する責任があり( 民法709条 )、補修などに費やした費用を支払わなければなりません

古家付き土地がなかなか売れない場合には、上記2点のトラブルが発生してしまう可能性があるのです。

古家付き土地を売却するコツ

古家付き土地を売却する場合には、更地にして売却する方法もありますが、それはそれでデメリットがあります。

まず、解体費用が発生したり、固定資産税の金額が上がったりといった、金銭的な面です。解体費用は1坪あたりおおよそ3~7万円もかかってしまいますし、更地にすると小規模宅地の特例が利用できず、固定資産税額が最大6倍になってしまいます。

また、解体する場合には、足場の組み立てや騒音などについて、近隣の住民に周知し、理解を得るといった手間も発生します

こういったデメリットを避けるのであれば、古家付きのまま土地を売却することになります。ここでは、どのようにすれば古家付きのままでも売却できるのか、3つのコツを確認してみます。

解体費用を差し引いて売却する

買い取った土地に新しく戸建て住宅を建てることを検討している個人向けに土地を売却する場合には、解体費用を差し引いて売却しましょう

解体費用を差し引けば、買い手は実質的な費用負担がなく更地にできますし、売り手としても解体費用を用意する必要がなく、手間もかかりません。

古家が建築から20年以上経っており、資産価値がない場合には最も有効な売却方法です。

古家などを専門に扱う不動産会社に依頼する

中古物件を格安で売ってほしい人や、昔ながらの古家に住んでみたい人は、古家に価値を感じていますので、土地代に古家分の料金を上乗せして売却することが可能です。

しかし、そういった顧客層は非常にニッチであるため、一般的な不動産会社への依頼ではなかなか買い手が見つかりにくいものです

そこで、古家の売買を得意としている不動産会社を当たってみましょう。そうした不動産会社は、古家に興味がある買い手の情報を豊富に持っているので、依頼すれば早期の売却が実現しやすくなります。

古家の売買が得意な不動産会社は、 一括査定サイト を使って探してみてください。一括査定サイトでは複数の不動産会社に古家付き土地の査定を依頼できるので、結果を比較することで自分の古家付き土地の売却が得意そうかどうかを見出すことができます。

買取を依頼する

買取 とは、不動産業者に直接不動産を買い取ってもらう売却方法です。転売利益を差し引くため、売却価格は市場価格の7~8割程度になってしまいますが、早期に売却できますし、更地にして売却する必要がないので、古家付き土地の売却には有効だといえるでしょう

買取の場合には、宅内に残っている家具なども現状のままでよいケースもありますし、瑕疵担保責任(詳しくは後述)が発生しない点もメリットです。

買取をする依頼する場合のポイントは、複数の業者に査定してもらい、比較・検討することです

買取にもたくさんの業者があり、古家を解体したあとにマンションを建てて売却するケースや、建てたマンションを賃貸にするケース、建売住宅を建築して販売するケースなどさまざまです。どういった業者が取り扱うかによって、出口の利益が変わってきます。そしてその分、仕入れ値である売却価格も変動するのです。

複数の業者に見積もりを出してもらい、十分に比較・検討しておきましょう。

古家付きの土地を売却するときの注意点

古家付きの土地を売却する際には次の注意点があります。

  • 瑕疵担保責任の免責を契約に盛り込む
  • 市場価格よりも安く売り出す
  • 境界確定をする

それぞれの内容について確認してみましょう。

瑕疵担保責任の免責を契約に盛り込む

古家に価値を見出した人に売却する場合には、 瑕疵担保責任 (かしたんぽせきにん)の免責を契約に盛り込んでおきましょう

瑕疵担保責任とは、瑕疵、つまり売却時には売り手が気づいていない隠れた欠陥が、売却したあとに発見された場合、補修や修繕にかかった費用を売り手が負担する責任のことです。

しかし、瑕疵があれば当然に売り手が責任を負うということはなく、契約に免責の条項を盛り込んでおくことも可能です。

古家には瑕疵がある可能性が十分にありますので、免責は条件に必ず盛り込んでおきましょう。

境界確定をする

土地を売却する場合には、境界確定をしておきましょう。特に、古くからある土地を相続した場合には、境界があいまいなケースもあり、必要不可欠です。

境界確定とは、隣地所有者などの立会いの下、土地の境界を確定することです。

確定測量図があり、すでに購入時に境界確定が済んでいるのであれば実施する必要はありませんが、境界が確定していない場合、売却後に隣地の所有者と境界を巡ってトラブルになる可能性があります。

境界確定をするには、土地家屋診断士か、測量士に依頼します。費用と期間はケースバイケースですが、1~3ヶ月、費用は60~80万円程度を目安にしておいてください。

【関連記事】 確定測量とは?必要な場面・費用は?基礎知識を解説

再建築不可物件でないか確認する

再建築不可物件とは、建築基準法第42条で規定されている「道路」に接していない土地のことです。所有する土地が再建築不可物件だった場合、現在の古家を取り壊しても新しい建物を建てられません。

建築基準法は昭和25年に定められましたが、繰り返し改正され、現在では新しく建物を建てられなくなってしまった土地も少なくありません。

そのため、古くからあった家を相続した場合などには、その土地がすでに再建築不可物件となっており、買い手が購入後に新築戸建てを建てられなかった、という事態になることもあり得ます。

再建築不可物件かどうかは、市区町村役場の建築関連の部署で確認できます。

古家付き土地の売却が難しい場合の対処法

古家付き土地を売りに出してみたけれど、なかなか買い手が現れないという人も少なくないでしょう。そういった場合には、次の3つの対処法があります。

  • 寄付
  • 土地活用する
  • 更地にして売却する

それぞれの内容を確認してみましょう。

寄付する

どうしても売れないのであれば、寄付をするといった方法も考慮に入れましょう。寄付先の候補は、個人や自治体、NPO法人があります

個人として寄付を受け付けてくれる可能性が最も高いのは隣地の人です。「物置小屋がほしい」「子供のための広い庭がほしい」などのニーズがあるかもしれません。また、土地を合筆(土地を1つにまとめること)できるのは接している土地だけです。寄付を受け付けてくれないか、確認してみる価値はあるでしょう。

また、自治体やNPO法人なども寄付を受け付けてくれる可能性がありますので、窓口で相談してみましょう。2020年4月の執筆時点で、寄付を受け付けているNPO法人は「 カタリバ 」と「あしなが育英会 」が確認できています。お近くにあるNPO法人も寄付を受け付けているかもしれませんので、確認してみてください。

土地活用をする

土地活用とは、駐車場や賃貸住宅、太陽光発電などの経営を行い、土地を使って利益を生み出すことを言います

初期費用がかかりますが、金融機関に融資を依頼して始めることもでき、うまくいけば不労所得を得られます。一方、利益が出ない場合には赤字になり、ローンを返せなくなるリスクもありますので、注意が必要です。

土地活用にはさまざまな種類があり、所有している土地の面積や立地によって最適な方法は変わります。検討されている人は、関連記事を参考に、何が最も適しているのか確認してみてください。

【関連記事】 あなたにおすすめの土地活用法はコレ!重視したいポイント別に紹介

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更地にして売却する

更地にして売却する方法は、前述した通り次のようなデメリットがあります。

  • 解体費用や固定資産税が高くなるなど金銭的負担が発生する
  • 隣地所有者への周知や話し合いが必要

しかし、何とか土地の売却を実現したい場合には、更地にして売りに出すことも検討してみましょう。

実は、更地にした場合には、建築基準法の範囲内で自由な建物を建てられますので、買い手の対象者が多くなるというメリットもあります

なお、古家付き土地と土地のみの場合では、依頼すべき不動産会社が変わってくる場合があります。更地の場合は土地のみの売買が得意であればOKなので、古家の売買ノウハウがどうかという点は忘れて、純粋に土地の扱いに長けた不動産会社を探すようにしましょう。

【関連記事】 一戸建ての解体費用はどれくらい?費用を下げるポイントと補助金制度

相続前なら相続放棄も可能

「建物はボロボロで資産価値がなく、立地も悪いので土地も売れないかもしれない…」というケースもあるでしょう。もし、あなたがそういった古家付き土地を相続する前なら、 相続放棄 を検討してみましょう。

相続放棄とは、相続財産を放棄することを言います。ただし注意が必要なのが、特定の財産、つまり古家付き土地だけを放棄することはできない点です。

相続放棄が認められた場合は、すべての財産を放棄しなければなりません。土地のほかに預金もあった場合には、預金も放棄しなければならない、というわけです。

また、完全に古家付き土地を手放そうとするなら、法定相続人が全員相続放棄する必要もあります。法定相続人とは民法によって定められた相続人のことで、仮にあなたが相続放棄をした場合には、順位の低い人に相続権が移ってしまいます

法定相続人の順位 被相続人との関係性
常に法定相続人 被相続人の配偶者
第1順位 被相続人の子供(直系卑属)
第2順位 被相続人の親(直系尊属)
第3順位 被相続人の兄弟

法定相続人の順位は上の表の通りです。仮にあなたが被相続人の子供で相続放棄をした場合、第2順位の親や第3順位の兄弟が古家付き土地を相続することになります。

親や兄弟も含めて古家付き土地の相続を望まないのであれば、全員が相続放棄をする必要があるのです

相続放棄を選択肢に入れる場合には、ほかの財産と総合して考えても相続放棄が合理的か、またほかの相続人の同意も得られそうかどうかを、十分に検討してください。

まとめ

古家付き土地を売却するコツや、注意点、また売却できないときの対処法について解説しました。古家付き土地は商品としてはニッチではありますが、必要としている人は少なからず存在していますので、購入希望者に情報が届けば売れる可能性も十分にあります

売却前には、「境界確定」や「再建築不可物件でないかどうか」について、あとでトラブルとなることがないよう十分に確認しておいてください。

また、古家付き土地を相続する前であり、立地などを考慮して売却が困難であることが予想できる場合には、相続放棄も手段の一つになります。ただしこのときも、ほかの財産と総合して考え、本当に相続放棄すべきか十分に検討する必要があります。

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