駐車場経営をしたいけれども「失敗しないか心配」と思っている人も多いのではないでしょうか。

駐車場経営の失敗事例には傾向があり、失敗しやすい事項を覚えておけば、成功する可能性が高まります。

本記事では駐車場経営でよくある失敗事例10選や、失敗しないための5つの対策について解説します。記事の後半では初期費用についても紹介していますので、これから経営を始めていこうと考えている人はぜひ参考にしてください。

駐車場経営でよくある失敗事例10選

駐車場経営でよくある失敗事例は、次の通りです。

  1. 需要が少ない土地で経営を始めた

  2. 近くに料金の安い競合ができた

  3. 賃料を滞納された

  4. 税金の納税額を甘くみていた

  5. 事故による損害賠償責任が発生した

  6. 自然災害の影響で経営できなくなった

  7. 狭小すぎて利用者が見つからなかった

  8. 管理会社の管理が悪かった

  9. 不正駐車されて収入が減った

  10. 料金が周辺と比べて高かった

失敗事例の内容を把握し、適切な対策を実施しましょう。

1.需要が少ない土地で経営を始めた

まず単純に、入庫希望者が少ないほど利益が減るため、需要が少ない土地で駐車場経営すると失敗します。過剰な数の駐車場がある地域、車の利用者が少ない地域などは需要が少ない場所といえるでしょう。

すでに駐車場の多い地域で経営を始めてしまうと、入庫者の取り合いに勝つために賃料を下げる必要があります。また、あまりにも需要が低いと、空車のままなかなか埋まらないケースもあります。空車のままでも固定資産税や都市計画税などのランニングコストがかかり、損失が膨らむかもしれません。

2.近くに料金の安い競合ができた

近くに料金の安い競合駐車場ができてしまうと、利用者がそちらに流れてしまいます。

駐車場の需要が高く、周辺に空き家や空地がある場合、料金の安い駐車場ができるかもしれません。そういった周辺の状況を調査しておかないと、競合が多くできてしまい空車になるおそれもあります。

自分の駐車場と競合の賃料に差があるほど入庫者は減るため、賃料を下げて差を埋める必要があります。賃料を下げると利益が減ってしまい、ランニングコストのほうが高くなってしまうケースも珍しくありません。

3.賃料を滞納された

入庫者が多くいると、賃料を滞納する人に遭遇する可能性が高まります。

賃料を滞納されると収入が減るうえに、滞納者から賃料を回収しなければなりません。滞納者の中にはどうしてもお金が払えない人や、話が通じない人もおり、賃料の回収が負担になるケースもあります。

駐車されたまま賃料を滞納されると簡単に車両を移動させられないため、新たな入庫者に利用してもらうこともできません。滞納されると賃料がなかなか入らなくなり、利益が大幅に悪化してしまいます。

4.税金の納税額を甘くみていた

駐車場を経営していると、次の税金が課税されます。

  • 固定資産税

  • 都市計画税

  • 所得税

  • 消費税

  • 事業税

経営の状況によっては、課税されない税金もあります。たとえば、自分でアスファルト舗装して月極駐車場にしている場合は賃料に消費税が課税されますが、一括借り上げ業者に土地を貸し、業者がアスファルト舗装をした場合には課税されません。

一括借り上げ業者を利用している知人から「駐車場経営に消費税はかからない」と聞いたのをうのみにしていた場合など、税金の知識がないと計画よりも多く税金を支払うことになります。

5.事故による損害賠償責任が発生した

駐車場内で事故が発生した場合、駐車場経営者が損害賠償を払わなければならないケースもあります。

よく駐車場では「駐車場で起きた盗難・事故等に関して一切の責任は負いません」と記載されている看板をみかけます。しかし、発生した盗難や事故が駐車場の整備不良、必要な対策を講じていないなどの場合は経営者への損害賠償が認められるケースもあるため注意しましょう。

たとえば、アスファルト舗装の整備不良で穴が空いており、穴にはまった車両にキズがついたなどです。人に物を貸す場合、貸す側に最低限の管理義務が発生すると考えておかなければなりません。

6.自然災害の影響で経営できなくなった

自然災害が発生し、駐車場としての機能が失われると経営できなくなります。

たとえば、大地震が発生し、アスファルト舗装がひび割れて車両の通行が困難になると駐車場としての機能が失われます。駐車場自体に問題が発生しなくても、道路に被害が出て車両の出入りが困難になれば、利用者がいなくなってしまうでしょう。

使えない状態で放置すると賃料は得られず、機能を復活させようとすると多額の工事費用がかかります。

7.狭小すぎて利用者が見つからなかった

駐車場が狭すぎると、利用者が見つからず駐車場経営はうまくいきません。

利用者によっては運転技術が低く、狭小地にうまく駐車場できない人もいます。そのような人は止めやすい駐車場を借りる傾向にあり、停めにくい駐車場を敬遠します。

狭小地の駐車場は停めやすいところよりも需要が少なくなり、賃料を低くしなければなりません。収益が減れば駐車場経営が難しくなるため、車両を停めやすい土地かどうか考慮しましょう。

8.管理会社の管理が悪かった

管理会社の管理が悪いと、利用者の不満が溜まってクレームや退去につながります。

駐車場経営する場合、家賃の回収や駐車場の清掃などを管理会社に任せる人が多くいます。しかし、管理会社の質が低いときちんと清掃してくれないことや、クレームに対応してくれないこともあるでしょう。そのような対応をとられてしまうと、利用者に不満が溜まってしまいます。

管理会社の選定は、駐車場経営に影響を与えると考えておきましょう。

9.不正駐車されて収入が減った

不正駐車された区画は賃料が得られないうえ、新しい利用者に貸せないため収入が大幅に低下します。

また、不正駐車を土地所有者が勝手に移動させると、損害賠償を請求されるケースもあり注意しなければなりません。不正駐車の所有者がわからない場合、裁判所の許可を取得して移動させる必要があります。

不正駐車されてしまうと長期間にわたり収入が減る可能性や、弁護士費用がかかったりするため駐車場経営に失敗する可能性が高くなります。

10.料金が周辺と比べて高かった

駐車場の料金が周辺と比べて高いと、入庫希望者の需要が低下して空車が多くなります。

駐車場を探している人は、場所や停めやすさとともに、賃料の高さも借りるかどうかを判断材料にします。あまりに賃料が高いと、ほかの駐車場を借りられてしまうでしょう。

賃料相場を把握しないまま賃料を設定すると、空車がなかなか埋まらず、駐車場経営がうまくいきません。

駐車場経営に失敗しないための5つの対策

駐車場経営に失敗しないための対策は、次の5つです。

  1. 市場をきちんと調査する

  2. 収益予想は稼働率を低くして計算する

  3. 駐車場経営に必要な税金の知識を得る

  4. 不正駐車や事故トラブルを防止する

  5. 駐車しやすい区画割を検討する

対策の内容を覚えておけば、駐車場経営に成功する確率が高まります。

1.市場をきちんと調査する

駐車場経営する際には、賃料の市場や競合の値付けなどきちんと調査しましょう。

賃料を調査するときには、周辺の駐車場について次の項目を調査しましょう。

  • 駐車しやすさ

  • 前面道路の広さ

  • 台数

  • 車種

  • 賃料 など

調査する際には、競合の現地までしっかりと調査することが大切です。駐車しやすさや車種などは、競合する駐車場を直接見なければ調査できません。

詳細まで調査すれば、的確な経営計画が立てられて駐車場経営に成功しやすくなります。

2.収益予想は稼働率を低くして計算する

収益予想するときに稼働率を低くして計算すれば、安定した経営計画が立てられます。

駐車場経営する際、常に満車であるとは考えにくく、満車を前提とした経営計画を立てるとまず失敗してしまいます。

収益予想で失敗しないためにも、稼働率は50%程度で考えましょう。半分しか稼働していない状態でも収益が上がる駐車場であれば、運用に成功する確率は高いといえます。

3.駐車場経営に必要な税金の知識を得る

駐車場経営する際には多くの税金が課税されるため、各税金の知識を得ておきましょう。

固定資産税は税額が高く大きな負担となるため、固定資産税の知識は駐車場経営に不可欠です。とくに住宅系の家屋を壊し、駐車場経営をする人は要注意です。

固定資産税は住宅系の家屋が建っている場合、土地の固定資産税が最大で1/6になる制度があります。家屋を壊すと、翌年度から土地の固定資産税が最大で6倍になってしまうケースもあります。

土地の固定資産税が6倍になると経営計画が大きく狂ってしまうため、あらかじめ土地の状態で課税される固定資産税がいくらか計算しましょう。

4.不正駐車や事故トラブルを防止する

不正駐車や、事故トラブルの防止に必要な措置を講じれば駐車場経営がうまくいきます。

不正駐車に対しては、わざとわかりやすい位置に防犯カメラを設置したり、利用者がないときに侵入防止のチェーンをかけたりしましょう。心理的にも物理的にも、不正駐車しにくい環境を整えておくことが大切です。

また、事故トラブルを防ぐには、余裕ある区画や通路の設定が効果的です。収入を多くするため区画割りを多くしすぎると、事故の確率が高くなります。

5.駐車しやすい区画割りを検討する

駐車しやすい区画割りを検討すれば、利用者の使い勝手がよくなります。

使い勝手がよくなれば退去される確率が下がったり、運転が苦手も借りてくれたりします。空車が少なくなれば稼働率が上昇し、駐車場経営が安定するはずです。

また、余裕ある区画割りにすれば事故の発生確率を減らせるため、損失を防止する効果もあります。収益の多さと、利用者の使い勝手のバランスをとりながらうまく区画割りするのがコツです。

駐車場経営に必要な初期費用

駐車場経営に必要な初期費用は、次の表のように経営方法によって異なります。

 

初期費用

月極駐車場

・アスファルト舗装:4,000~5,000円/㎡

・ライン引き:6万円~8万円(50m程度)

・車止め:1万円~2万円/1台

コインパーキング

・月極駐車場の初期費用に加えて以下の費用が必要

1.料金精算機:40万~50万円/1台

2.ロック板:10万円/1台

3.監視カメラ:30万円~40万円(工事費込)

上記に加え電気配線や設備の整備も必要

コインパーキング

(一括借り上げ方式)

・月極駐車場の初期費用と同じ
※借り上げたコインパーキング会社が用意・設置してくれるため

どのような方法で駐車場経営するのか明確にし、経営方法にあった初期費用を計画に盛り込んでいきましょう。

なお、初期費用はあくまで目安であり、土地の広さや形状、工事業者によっても変動します。正確な金額を知りたい場合は、工事業者から見積もりを取得しましょう。

土地購入から駐車場経営を始めても儲かる

土地を所有していなくても、購入すれば駐車場経営は可能です。駐車場に適している土地の場合、購入したときの実質利回りは3%程度といわれています。

実質利回りとは不動産購入代金や費用、ランニングコストを年間収入から差し引き、物件価格で割った数字です。

駐車場経営する際の実質利回りは、次のように計算します。

(満車時の年間収入 × 稼働率 - 年間のランニングコスト)÷(土地購入代金 + 購入諸費用 + 初期費用)× 100 = 実質利回り

なお、駐車場が常に満車ということはないため、稼働率は50%として計算するといいでしょう。

それでは、実質利回りを次の条件でシミュレーション計算してみましょう。

  • 満車時の年間収入:300万円

  • 稼働率:50%

  • 年間のランニングコスト:50万円

  • 土地購入代金:3,000万円

  • 購入諸費用:150万円

  • 初期費用:50万円

(300 × 50% -50万円)÷(3,000万円 + 150万円 + 50万円)× 100 = 3.1%(実質利回り)

実質利回りが3.1%なら、おおよそ32年で3,000万円のもとが取れる計算になります。時間はかかるものの土地という高額な不動産を手に入れられるわけですから、駐車場経営は儲かるといってもいいでしょう。

まとめ

駐車場経営は比較的リスクが低いといわれるものの、失敗する人もいます。

失敗してしまう原因は、次のようにいくつかの原因が考えられます。

  • 市場や競合などの調査を怠った

  • 税金の知識が足りなかった

  • 質の低い会社に管理を依頼した

  • 入庫者とのトラブルを考慮していなかった

原因は多くあるものの、ほとんどの項目はしっかりと駐車場経営の準備をおこなえば回避できます。ただ、専門的な知識が必要であるため、個人ですべて準備するのは難しいかもしれません。

準備に不安があるなら、信頼できる不動産会社にアドバイスを求めつつ進めるといいでしょう。専門家のアドバイスを受ければ、駐車場経営に成功する確率がグッと高まります。