「市街化調整区域の農地を手放したい」「うまくいかない人も多いようだが、本当に売却できるのだろうか」と悩んでいないでしょうか。

市街化調整区域の農地は手放しにくく、長期戦になるケースも少なくありません。

しかし、自治体や不動産会社と連携しながら手続きを進めれば、農地を手放せる可能性もあります。

そこで本記事では、市街化調整区域の農地を手放す方法と、農地の活用方法をまとめました。

農地を手放せずに諦めかけている方は、記事に記載している内容を実践してみてください。

市街化調整区域とは?3つの都市計画区域を解説

市街化調整区域の農地を手放すためには、他の区域との違いや、かけられている制限を知る必要があります。

以下で紹介する都市計画区域の違いや制限を参考に、市街化調整区域の農地を手放せるような対策を立てましょう。

市街化区域

市街化区域とは、市街化している区域や、10年以内に市街化を図っていく地域のことです。

家やビルが建っている地域のほとんどは市街化区域で、事業を営んだり生活したりするための区域として活用されています。

道路や公園、下水道などの公共施設を優先的に建設するため、生活するうえでのインフラが整っている点が特徴です。

参照元:姫路市|市街化区域・市街化調整区域とはなんですか?

市街化調整区域

市街化調整区域とは、農地や緑地の保全が優先され、例外を除いて建築行為が制限されている地域のことです。

一面に農地や森が広がっている地域は、市街化調整区域に設定されているケースが多くあります。

市街化調整区域で農地転用する場合は、農業委員会や都道府県への審査が必要です。

家を建てたり別の事業を営んだりするには向いていないことを理解しておきましょう。

参照元:福岡市|市街化調整区域とは何か。(都市計画法第7条第3項)

非線引き区域

非線引き区域とは、市街化区域・市街化調整区域のどちらにも区分されていない地域のことです。

正式には「区域区分が定められていない都市計画地域」と呼ばれています。

非線引き区域は市街化区域や市街化調整区域よりも規制が緩い傾向にあり、土地の売買を行いやすい点が魅力です。

市街化調整区域の農地を手放す方法

市街化調整区域の農地を手放したい方は、具体的な方法も確認しましょう。

一般的に市街化調整区域の農地は手放しにくいといわれているため、必ず複数の選択肢を用意しておきましょう。

農業委員会にあっせんを依頼する

市街化調整区域の農地を手放したい方は、農業委員会にあっせんを依頼しましょう。

農業委員会とは各市町村に設置されている、農地にまつわる事務を執り行う団体のことです。

農地のまま手放す場合は買い手が限られるため、農業委員会のような専門的な団体の力を借りる必要があります。

売却の申し出からあっせんまでの流れは、以下を確認してみてください。

  1. 各地の農業委員会事務局で相談

  2. あっせん委員会の設置

  3. 買い手が申込書を提出

  4. 現地調査・調整会議

  5. あっせん委員会が売買価格を決定

  6. あっせん調書や農用地集積計画を作成

  7. あっせん内容について審議・決定

市街化調整区域の農地を手放したい方は、まずは自治体に設置されている農業委員会にあっせんの相談をしてみてください。

参照元:北海道鹿追町|農地の【あっせん事業】による売買、貸借等について

不動産会社に仲介を依頼する

市街化調整区域の農地を農地転用して売却しようと考えている方は、不動産会社に仲介を依頼してください。

農地転用とは農地だった土地を変更して、住宅・工場・商業施設などにすることを指します。

しかし、市街化調整区域の農地を農地変更するには、農業委員会や都道府県への申請が必要です。

許可がおりないと農地変更できないため、売却実績がある不動産会社を選ぶ必要があります。

不動産会社に仲介を依頼する際は、不動産一括査定サイトを活用して複数社に査定を依頼しましょう。

売却実績がある不動産会社を選び、手放せるように手続きをはじめてみてください。

隣人や友人などに個人的に販売する

市街化調整区域に農地を所有している方は、隣人や友人など個人的に販売できる方はいないか確認してみましょう。

先程述べたとおり農地転用は複雑な申請が必要かつ許可がおりる可能性が低いため、農地として取引する方法がベターだと考えられます。

ただし、農地は全員に販売できるわけではありません。

譲受人と譲渡人いずれも農業委員会から許可を受けて、さらに下記の条件を満たす必要があるので、必ず確認しておきましょう。

  • 農地のすべてを効率的に利用すること

  • 必要な農作業に常時従事すること

  • 周辺の農地利用に支障がないこと

つまり、農業に従事しているまたはする予定の方でないと取引は認可されません。

隣人や友人に農業を営んでいる方がいる場合は、購入しないか相談してみてください。

参照元:農林水産省|個人が農業に参入する場合の要件

空き家バンクに登録する

市街化調整区域の農地を手放す際は、空き家バンクへの登録も検討しましょう。

条件付きで登録できる物件もあり、ポータルサイトで農地をアピールできる可能性があります。

空き家バンクへ登録するには、都市計画法などの調査が必要です。

また自治体によっては登録自体を断られる可能性もあるので、まずは最寄りの空き家バンクに掲載できるか相談してみてください。

参照元:真岡市|真岡市空き家バンク事業Q&A

関連記事:田舎の土地を売却する5つのコツ|売れない理由も併せて解説

市街化調整区域の農地を活用する方法

市街化調整区域の農地を手放せない場合、農地転用して別の用途で利用する方法もあります。

しかし、自治体へ許可を取る必要があり、街全体に意義のある建物でないと許可はおりません。

そこで以下では、許可がおりる可能性がある活用方法を3つ紹介します。

下記を参考に、市街化調整区域の農地を活用できないか参考にしてみてください。

農地用の物置スペース

市街化調整区域の農地を活用する際は、農地用の物置スペースにできないか検討してみましょう。

土地があるところが市街化調整区域の場合でも、農業に必要な建築物なら建てられる可能性があるからです。

たとえば三重県桑名市の場合は、農林漁業用の建築物であれば原則許可不要で建てられます。

このように農地用のものであれば有効活用できる可能性があるので、活用方法のひとつとして検討してみてください。

参照元:桑名市|市街化調整区域における立地規制と空家の利活用について

社会福祉施設や図書館など公益上必要な建築物

老人ホームや図書館など、公益上必要な建築物を建てるために活用するのもひとつの手です。

地域においてニーズがある建物の場合は、許可がおりる可能性があります。

不動産会社と連携しながら、事業用の土地を探している事業者を探さなければなりません。

不動産一括査定サイトなどを活用しながら、市街化調整区域内の農地を売却した実績のある会社を探してみてください。

薬局や飲食店など日常生活に必要な店舗

市街化調整区域の農地を活用する際は、薬局や飲食店など日常生活に必要な店舗を建てられるか検討してみましょう。

農家の生活に必要と判断されれば、自治体から許可がおりる可能性があります。

ほかにも理容室や学習塾、自動車整備工場など、日常生活に必要な店舗であれば自治体次第では建設が許可されるでしょう。

「生活費に必要だけれども隣町に行かないとない」という店舗がある場合は、自治体に建設の許可を得られないか相談してみてください。

市街化調整区域の農地を手放しにくい理由

ここまでお伝えしたとおり、市街化調整区域の農地はかんたんに手放せない場合も多いです。

なぜ手放しにくくなっているのか、主な理由を3つ解説します。

生活インフラが整っていないケースがある

市街化調整区域の農地を手放しにくい主な理由は、生活インフラが整っておらず、買い手が現れないためです。

市街化調整区域は都市化を抑制しているため、電気やガス、水道などが通りにくくなっています。

農地転用を考えている場合も、そもそも転用できるインフラが整っているかを確かめなければなりません。

土地の活用方法が限られるので、まずは農地として手放せないか検討してみましょう。

近くに商業施設がなく買い物に時間がかかる

市街化調整区域の農地を手放しにくい理由としては他にも、周辺に商業施設がなく買い物に時間がかかる点も挙げられるでしょう。

スーパーやコンビニエンスストアなどがなく、生活するには不便な土地で購入希望者が現れにくくなっています。

売却を考えている方は、生活の不便さを上回るメリットを伝えられるように準備してください。

開発許可が必要で建物の建設に制限がある

市街化調整区域は開発許可が必要で、建物の建設に制限があることも手放しにくい理由の1つです。

農地以外の用途で利用するには農業委員会や都道府県に許可がいるため、農家以外の方からの需要が少なくなっています。

農地転用してからの売却を考えている方は、不動産会社と連携しながら許可がおりるか自治体に相談してみてください。

関連記事:市街化調整区域が売れない理由と売るための方法

市街化調整区域の農地を手放す際の注意点

市街化調整区域の農地を手放したいと考えている方は、注意点を押さえたうえで売却活動にあたりましょう。

以下で紹介する3つの注意点を確認し、滞りなく売却活動を行ってください。

自治体の区域指定制度を確認する

市街化調整区域の農地を手放したい方は、自治体の区域指定制度を確認しましょう。

区域指定制度とは、市街化調整区域であっても指定されている土地の範囲内であれば、住宅などの建築が可能になる制度のことです。

売却を検討している農地が区域指定制度の範囲内であれば、比較的手放しやすくなるでしょう。

なお、区域指定の条件は各自治体によって異なるため、一概にどのような条件が定められているとは言い切れません。

たとえば40戸以上の宅地がある、市街化区域から1kmの範囲内にあるなどの条件が設定されています。

自分の農地が区域指定に入っているか調べる際は、農地がある市区町村のホームページを参照し、条例を確認してみてください。

参照元:つくば市|区域指定制度

納税通知書に記載されている土地の地目を確認する

市街化調整区域の農地を売却する際は、納税通知書に記載されている土地の地目を確認しましょう。

土地の地目とは、田・畑・宅地・塩田など、全23種類に分類されます。

地目が農地の場合は農業委員会や都道府県への申請が必要になるケースがあるため、土地の正式な用途を確認してください。

参照元:一般社団法人 東京都測量設計業協会|測量用語

線引き前・線引き後どちらの建物なのか確認する

農地に建物が併設されている場合、線引き前・線引き後どちらの建物なのか確認しましょう。

どちらのタイミングで建てられた建物なのかによって、売却のしやすさに大きく関わります。

たとえば線引き前に建てられている場合は、同一の用途・敷地などの条件を満たしていれば建替えや増築が可能です。

つまり使い勝手のいい農地・建物として、アピールできる材料になります。

一方線引き後に建てられていると、都市計画法の許可を受けないと建築物の増改築は認められません。

買い手からは「勝手の悪い農地・物件」だと思われてしまうでしょう。

建物が線引き前・線引き後どちらに建てられているか確認する際は、各自治体のホームページで線引きがおこなわれた時期を確認してみてください。

「市区町村名  線引き」などと検索すると、該当する地域で線引きを行った履歴を確認できるため、建物の建造年と照らし合わせましょう。

参照元:福島市|市街化調整区域内の既存建築物を取得して建替えをしたいのですが、規制がありますか。

市街化調整区域の農地を手放したいときによくある質問

市街化調整区域の農地を手放したい方は、これまで悩んできた方が抱いていた疑問点を確認しておきましょう。

以下で紹介する質問と回答を参考に、事前知識を身につけてください。

市街化調整区域から外す方法はありますか?

基本的に、自分の土地を市街化調整区域から外す方法はありません。

一定の期間で線引きの見直しは行われますが、個人のアクションが変更の大きな一手となることはほとんどないでしょう。

市街化調整区域の土地は売れないのか?

市街化調整区域の土地を売却しにくいことは事実です。

農業委員会にあっせんを依頼するなど、対策を立てながら売却活動を行ってください。

市街化調整区域で禁止されていることは何ですか?

基本的に市街化調整区域内では、許可なしの建設が禁止されています。

農業委員会や都道府県への許可が必要になるので、無許可で建物を建てないようにしましょう。

まとめ

本記事では、市街化調整区域の農地を手放す方法について解説しました。

一般的に市街化調整区域の農地は手放しにくいといわれているため、農業委員会や不動産会社の協力を得ながら売却活動を進める必要があります。

農地転用して売却しようと考えている方は、農業委員会や都道府県からの許可が必要だと理解しておきましょう。

市街化調整区域の農地は買い手の対象が限られるので、売却までに時間を要する可能性があります。

1年以上の長期戦になることも見越して、スケジュールに余裕を持って売却活動をはじめてください。