「駐車場用地を売却したい」「売却までの流れやかかる費用や税金がわからない」このように悩んでいないでしょうか。
駐車場用地は用途が限られるぶん、不動産会社と連携しながらていねいに売却活動を行う必要があります。
土地の立地によっては土地や住宅よりも売却に時間がかかる可能性もあるので、事前の情報収集は欠かせません。
そこで本記事では、駐車場用地を売却するときの流れを解説します。
駐車場用地売却までにかかる費用や税金、利用できる税制特例についても解説するので、記事を参考に売却活動をはじめてみてください。
この記事の目次
駐車場用地の売却方法は2つ
駐車場用地の売却方法は大きく2つあります。
売却する形式を決めるときに重要な知識なので、以下で紹介する内容を確認してみてください。
駐車場のまま売却
駐車場用地の売却方法の1つめは、駐車場のまま売却する方法です。
更地にするための手間や費用がかからず、駐車場の売却方法としては手軽な手段といえます。
また売却できればすぐに現金化できるため、早く売って現金を手に入れたい方にとって有効な手段となるでしょう。
一方、使い道が限られてしまい、需要が少ない可能性がある点はデメリットです。
駐車場の立地によっては買い手が現れない可能性もあるので、人口や需要の少ない地域なら更地にして売却する方法も検討しましょう。
更地にして宅地として売却
駐車場売却の方法2つめは、更地にして宅地として売却する方法です。
解体業者に駐車場を更地にしてもらうことで、土地の用途を広げた状態で売却できます。
更地にして売却するメリットは、購入者の間口を広げられる点です。
立地のいい土地なら更地にすることで需要増大が見込めるため、駐車場よりも高値で売却できる可能性もあります。
一方、解体するために費用がかかる点や売却までに時間がかかる点はデメリットです。
解体業者に支払う費用は売り出し価格に反映できないので、解体費用で譲渡益が目減りする可能性があると理解しておきましょう。
駐車場用地を売却するまでの流れ
駐車場用地の売却を考えている方は、手続きの全体像を確認しておきましょう。
以下で8つのステップを解説するので、参考にしてみてください。
【STEP1】周辺の土地相場を確認する
駐車場の売却を検討している方は、はじめに周辺の土地相場を確認しましょう。
いくらで売却できる見込みがあるか確認するためにも、この手順は欠かせません。
土地の相場を調べる際は、以下3つの方法を実践してみてください。
|
たとえば不動産情報ライブラリを活用する場合は、「地価の情報をご覧になりたい方へ」を選択します。
その後「データの検索」から所有している土地の地域を入力し、一覧表示から土地の相場を確認してください。
土地の相場を確認すると、自分の土地を安く売りに出さずに済みます。
また不動産会社や購入希望者から買い叩かれずに済むので、査定を依頼する前にいくらで売却できる見込みがあるか確認してみましょう。
【STEP2】複数社に査定を依頼する
土地の相場を確認できたら、複数社に査定を依頼しましょう。
複数社に査定を依頼する理由は、対応がよく査定額が高い不動産会社を見つけるためです。
査定額は不動産会社によって異なるため、相場を確認したとはいえ1社だけの査定では適正価格か判断できません。
A社は2,000万円、B社は2,500万円のような査定になるケースもあるので、必ず複数社から査定を取りましょう。
なお、査定には書類だけで行う「机上査定」と、現地を訪問して正確にチェックする「現地査定」の2種類があります。
正確な売却価格を知るためにも、現地査定を選択してください。
【STEP3】媒介契約を結ぶ
高値で取引できる会社が見つかったら、媒介契約を結びましょう。
媒介契約とは、駐車場を売却するときに不動産会社が間に入ることを約束する契約です。
大きく3種類に分かれているので、以下を参考にそれぞれの違いを確認してみましょう。
一般媒介 |
専任媒介 |
専属専任媒介 |
|
依頼する会社数 |
複数社(1社も可能) |
1社 |
1社 |
契約期間 |
3カ月以内 |
3カ月以内 |
3カ月以内 |
自分も買い手を探せるか |
◯ |
◯ |
× |
業務報告 |
原則必要なし |
2週間に1回以上 |
1週間に1回以上 |
レインズへの登録 |
可能 |
契約締結日から7日以内 |
契約締結日から5日以内 |
参照元:レインズ|媒介契約制度
不動産会社に取引を仲介してもらうと、仲介手数料を支払う代わりに購入希望者探しや契約関連の手続きを代行してもらえます。
基本的には売却活動は個人でおこなわずに不動産会社と契約を結び、手続きを円滑に進められるようにしてください。
【STEP4】不動産会社を中心に売却活動を行う
不動産会社と媒介契約を結んだら、不動産会社を中心に売却活動を行います。
一般的にはこのタイミングで駐車場として売るか、更地にして販売するかを決めます。
駐車場の販売方法を決めるときは、不動産会社と相談しながら適切な方法を見つけてください。
独断で決めてしまうと思わぬ損失を生む可能性があるので、おすすめできません。
また「専任媒介」「専属専任媒介」を選択している方は、定期的に不動産会社から活動報告を受けられます。
正しく売却活動をしているか、不動産会社の動きもチェックしましょう。
【STEP5】購入希望者と条件をすり合わせる
購入希望者が現れたら、提示している条件で購入してもらえるかすり合わせを行います。
基本的に売り手は「高く売りたい」と考え、買い手は「安く買いたい」と考えているので、値下げ交渉が入ることは珍しくありません。
無理な条件交渉に応じないためにも、値下げ交渉があることを見越して、いくらまでなら値下げできるかラインを決めておきましょう。
駐車場の売却経験がない方は、条件設定が適切でなくなる場合が多いです。
不動産会社と相談しながら、値下げ交渉に応じるラインを決めてみてください。
【STEP6】売買契約を締結する
購入希望者と条件がまとまったら、売買契約を締結しましょう。
宅地建物取引士の資格保有者と重要事項説明書や売買契約書の読み合わせを行い、売り手と買い手双方が印鑑を押します。
また、決済・引き渡しを行う前に、手付金を受領します。
土地売買における手付金の相場は、5%から10%程度です。
不動産会社に相談しながら手付金の金額を設定し、購入希望者から受け取ってください。
さらに、このタイミングで売り手から不動産会社に仲介手数料の半額を支払います。
残りは決済時に支払うので、手付金を使い込まず仲介手数料分の費用を残しておきましょう。
【STEP7】決済・引き渡しを行う
契約してから数日後、決済・引き渡しを行います。
買い手から手付金を差し引いた金額を受け取り、決済は完了です。
また売り手は不動産会社に仲介手数料を支払い、司法書士へ依頼料を支払います。
【STEP8】確定申告を行う
駐車場の売却で譲渡益が出た場合や税制特例を活用する場合は、確定申告を行います。
基本的に確定申告は譲渡益が出た翌年の2月16日から3月15日までです。
申告漏れがあると追徴課税が行われる可能性があるので、抜け漏れがないよう手続きをしてください。
「確定申告がはじめてで勝手がわからない」という方は、税理士への相談がおすすめです。
不動産会社によっては税理士とのコネクションを持っている会社もあるので、まずは担当した不動産会社に相談してみてください。
それでも見つからなかった場合は、日本税理士連合会が運営している「税理士情報検索サイト」を活用してみましょう。
駐車場用地を売却するときにかかる費用の種類
駐車場用地を売却するときは、仲介手数料以外にもさまざまな費用がかかります。
かかる費用の種類を知っていると譲渡益を残せるようになるので、以下を参考にしてみてください。
仲介手数料
駐車場用地を売却するときは、一定の仲介手数料がかかります。
仲介手数料は売買価格に応じて変動するので、以下の表を参考にしてみてください。
売買価格 |
仲介手数料の上限額 |
200万円以下 |
売買価格×5%+消費税 |
200万円〜400万円以下 |
(売買価格×4%+2万円)+消費税 |
400万円超 |
(売買価格×3%+6万円)+消費税 |
参照元:全日本不動産協会 埼玉県本部・不動産保証協会 埼玉県本部
たとえば駐車場用地の売買価格が2,000万円だったと仮定しましょう。
この事例でかかる仲介手数料は、72.6万円です。
仲介手数料は駐車場の売買価格によって異なるので、提示された手数料が上限額を超えていないか式に当てはめてみてください。
司法書士・税理士への依頼費用
駐車場売却で司法書士や税理士を雇う場合は、それぞれ依頼費用がかかります。
司法書士は登記手続きの書類作成や手続きの代行として雇い、税理士は駐車場譲渡後の確定申告のために依頼します。
かかる費用は各事務所によって異なるため、最寄りの司法書士・税理士事務所で確認してみてください。
駐車場の解体費用
駐車場を更地にして売却する場合は、解体業者への依頼費用がかかります。
解体費用は土地の広さによって異なるため、解体業者へ見積もりを取らなければなりません。
一般的に駐車場の解体費用は、1㎡あたり3,000円から10,000円だといわれています。
コンクリートやアスファルトなど、駐車場の種類によって費用は変動するので、まずは解体業者へ見積もりを出してみてください。
駐車場用地を売却するときにかかる税金の種類
駐車場用地を売却するときは、売却時や売却後に税金がかかります。
費用だけを見積もっていると税金で思わぬ出費がかかってしまうので、どのような税金がかかるか必ず確認してください。
【売却時】登録免許税
駐車場の売却時には登録免許税がかかります。
登録免許税とは、登記手続きの際にかかる税金のことです。
売買の場合は駐車場価格の2%、相続の場合は0.4%の税金を納める必要があるので、あらかじめ理解しておきましょう。
登録免許税は、その金額分の収入印紙を登記申請書に貼り付ける形で納付します。
不動産会社や司法書士と確認を取りながら、抜け漏れのないように納付してください。
【売却時】印紙税
印紙税とは、契約書などの資料を作成するときにかかる税金のことです。
駐車場売却の場合だと、譲渡する際の契約書を作成するときに一定額納める必要があります。
印紙税は駐車場の契約金額によって異なるので、以下を参考に納める税金を確認してみてください。
契約金額 |
本則税率 |
軽減税率 |
10万円以上50万円以下のもの |
400円 |
200円 |
50万円以上100万円以下のもの |
1,000円 |
500円 |
100万円以上500万円以下のもの |
2,000円 |
1,000円 |
500万円以上1,000万円以下のもの |
1万円 |
5,000円 |
1,000万円以上5,000万円以下のもの |
2万円 |
1万円 |
5,000万円以上1億円以下のもの |
6万円 |
3万円 |
1億円以上5億円以下のもの |
10万円 |
6万円 |
5億円以上10億円以下のもの |
20万円 |
16万円 |
10億円以上50億円以下のもの |
40万円 |
32万円 |
50億円を超えるもの |
60万円 |
48万円 |
たとえば2,000万円の駐車場を売却する場合は、1万円の印紙税がかかります。
不動産会社から駐車場の査定額をもらったら、印紙税はいくらかかるか確認してみましょう。
【売却時】固定資産税
駐車場を売却する際は、固定資産税もかかります。
毎年市区町村から送付される納税通知書の課税明細書を確認すると、いくら払うのかがわかります。
基本的に固定資産税はその年の1月1日に所有している方に対して課税されるため、一度売り手がまとめて支払わなければなりません。
しかしこの状況だと買い手が所有する期間も代わりに支払うことになるので、固定資産税の分担方法を契約書に記載します。
契約書に「固定資産税は引き渡し日を基準として、それ以前は売り手、以降は買い手が日割り計算で支払う」などと記載してください。
【売却後】譲渡所得税
駐車場を売却して譲渡益が出た場合は、譲渡所得税を負担する必要があります。
納める譲渡所得税は駐車場の所有期間によって異なるため、以下の表を確認してみてください。
土地を所有している期間 |
かかる譲渡所得税 |
5年超 |
15% |
5年以下 |
30% |
参照元:国税庁|土地や建物を売ったとき
たとえば所有期間10年を超えている場合は、利益に対して15%の譲渡所得税がかかります。
駐車場を1,000万円で売却して300万円の手数料がかかった場合、利益700万円に対して15%の譲渡所得税がかかるイメージです。
【売却後】住民税
駐車場の譲渡によって利益が出ている方は、住民税がかかります。
住民税も土地を所有している期間によって税率が異なるので、以下を参考にしてみてください。
土地を所有している期間 |
かかる住民税 |
5年超 |
5% |
5年以下 |
9% |
参照元:国税庁|土地や建物を売ったとき
所有期間6年の駐車場に対しては、5%の税率がかかります。
一方所有期間1年の駐車場には9%の税率がかかるため、何年間所有してきたか確認してみてください。
駐車場用地を売却するときに利用できる税制特例
駐車場用地を売却する際、場合によっては税制特例を活用できるかもしれません。
税制特例とは、駐車場売却によって得た所得を合法的に小さくできる制度のことです。
以下で利用できる可能性がある制度や概要をまとめるので、確認してみてください。
平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除
通称「長期譲渡所得の1,000万円特別控除」とも呼ばれている制度です。
以下の条件を満たしている場合は、課税所得から1,000万円の所得控除を受けられます。
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参照元:国税庁|No.3225 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除
条件を満たしている方は、所管の税務署に譲渡所得の内訳書と土地の取得年月がわかる書類を提出してください。
特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合の1,500万円の特別控除の特例
地方公共団体や偏頗行為違法住宅供給公社など、特定住宅地造成事業のために駐車場を売却した場合は、1,500万円の特別控除を受けられます。
条件を以下にまとめるので、当てはまっているか確かめてみてください。
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参照元:国税庁|特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円の特別控除の特例適用チェック表
基本的に公共事業のために地方自治体が購入を希望している場合は、不動産会社の担当者からその旨が伝えられます。
公共事業などのために土地や建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例
所有している駐車場用地を公共事業のために売却した場合、5,000万円の特別控除の特例を利用できます。
具体的な適用条件を以下にまとめました。
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参照元:茨城県|公共事業のために土地を譲渡した場合の譲渡所得の課税の特例について
他の制度と合算して利用する場合、すべての制度の合計が5,000万円に設定されるため、控除額を多く見積もらないように注意してください。
特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例
国や地方公共団体が土地の区画を整えて、宅地の利用を促進する事業を行うために買収された場合は、2,000万円の特別控除を利用できます。
同制度は他の税制特例と合算して適用されるため、2,000万円すべてが適用されるとは限りません。
また制度が適用されるのは譲渡益が発生した年に限られるので、翌年以降譲渡益が発生した場合も制度を繰り越せないことを理解しておきましょう。
駐車場用地を売却する際の注意点
駐車場用地を売却するためには、正しく準備をして売却活動を行う必要があります。
独断で売却活動をはじめると安売りやトラブルの原因となるため、減点となる行為は避けなければなりません。
スムーズに駐車場を売却するために、以下で紹介する注意点をおさえて売却活動をはじめてください。
スケジュールに余裕を持って売却活動を行う
駐車場用地を売却する際は、スケジュールに余裕を持って売却活動を行いましょう。
一般的に土地の売却は3カ月から6カ月での取引といわれていますが、用途の限られる駐車場は長期戦になることもあるでしょう。
最低でも6カ月は猶予を確保し、現金が不足しないような体制を整えてください。
信頼できる不動産会社を見つける
駐車場用地を売却するときは、信頼できる不動産会社を見つけましょう。
高値で売却できるか、滞りなく取引を進めれるかは、担当する不動産会社の知識や対応にかかっています。
いい不動産会社を見つけるには、複数社から査定をもらう方法がおすすめです。
査定額の高さやメール対応のよさを比較できるため、素人でもかんたんにいい会社を見つけられます。
1社での査定だと、提示された査定額が適正なのか判断できません。
不動産一括査定サイトなどを活用しながら、信頼できる不動産会社を見つけてください。
解体や税金などの疑問は専門家に相談する
駐車場用地の売却を考えるうえで、解体や税金など複雑な疑問は専門家に相談しましょう。
たとえば「駐車場用地を解体して販売したほうが売れるかな」と悩んでいる方は、不動産会社にどのように売り出すべきか相談してみましょう。
また「確定申告のやり方がわからない」という方は、税理士に相談しながら手続きを進めてください。
申告漏れがあると追徴課税がくる可能性があるので、知識がない状態での確定申告は大きなリスクとなります。
専門家に依頼すると仲介手数料や依頼料はかかりますが、正確に手続きできるぶんトラブル対応の時間や思わぬ損失を回避できます。
わからないことは専門家に相談し、正確な手続きを心がけてください。
土地の用途は購入希望者に任せる
駐車場用地の売却をスムーズに進めるために、土地の用途は購入希望者に委ねる形にしましょう。
用途を駐車場のみに限定すると、駐車場経営を考えている方にしかアピールできないからです。
契約書に用途自由と記載しておけば、住宅や店舗などの用地としても活用できます。
解体せずに駐車場として売却する場合も、購入後の用途は購入希望者に委ねる形で売却してください。
まとめ
本記事では駐車場用地の売却の流れやかかる費用についてまとめました。
駐車場用地を売却するまでの流れは、大きく8つのステップに分かれています。
すべてを不動産会社に任せるのではなく、相場を確認したり費用を把握したりするなど、事前の情報収集が必要です。
また、確定申告や解体の必要性のように、自分の判断で収益に変化を与える部分には専門家にアドバイスをもらいましょう。
駐車場用地の売却を検討している方は、不動産一括査定サイトを活用しながら複数社の査定からはじめてみてください。