家を売却するとき「住みながら売る」ケースと「空き家にしてから売る」ケースがあります。売却して新しく家を購入する住み替えの場合には、どちらの方法で進めるかで新居の資金計画にも影響します。
また。空き家と異なり、住みながら家を売る場合、自身で内覧に対応しなければなりません。購入者は内覧を通じて購入判断するため、できるだけ高く、確実に売却するには、ポイントをおさえしっかり準備することが必要です。
この記事では、住みながら家を売るメリットとデメリット、高く売却するための注意点について解説します。空き家で売却する場合の違いも踏まえて紹介しますのでぜひ参考にしてください。
この記事の目次
住みながら家を売ることもできる
家を売却するとき、空き家にしなければならないと思われる方もいるかもしれませんが、住みながら家を売ることも可能です。
ただし住みながら家を売る際には、空き家の場合とは異なり以下のようなメリットや注意点があります。
住みながら家を売る4つメリット
まずは住みながら家を売る4つのメリットについて解説します。
住み替えの資金計画が立てやすい
住み替えに伴って売却する場合、もとの家に住みながら売却を進めれば、売却収入が明確になったうえで新居の購入にのぞめるため、資金計画が立てやすいといえるでしょう。
実際に売却活動を始めても、売り出し価格と成約価格は異なりますし、いつ売却できるかも状況によって変わります。
そのため、新居の購入資金として売却収入を見込んでいる場合、購入を先行させると、どれくらいの売却収入が見込めるか分からないまま購入を進める必要があります。
また、住宅ローン返済中に売却する場合、新居のローンと返済中のローンの二重ローンを考えなければならないとなると資金計画や住宅ローン選びにも影響します。
この点、住みながら家を売る場合、売却収入でローンを完済してから新居の購入を進められるため、購入後の資金計画を立てやすいといえるでしょう。
売り急ぐ必要がない
住みながら売る場合、売り急ぐ必要がない点もメリットです。
引っ越しを先行したもののなかなか売れない状況に陥ると、固定資産税や家賃などの負担が継続的にかかります。また、住宅ローン返済中の物件であれば、利用するローンによっては一定の期限までに売却しなければならない可能性があるでしょう。
売却を限られた期限内に進めようとすれば、価格を下げたり、買主からの価格交渉に応じざるを得なかったりすることで売却価格が下がることも考えられます。
その点、住みながら売る場合、いつまでに売らなければならないという期限がないため売り急ぐ必要はありません。
空き家による家の劣化を防げる
住みながらの売却は、家の劣化を防げる点もメリットといえるでしょう。
住んでいる間は、日常的に換気や掃除などをしながら売却できるため家の劣化を防ぎやすいといえます。一方、空き室の場合、家の設備を使用しないまま人の出入りが少なくなると、カビや排水溝からの臭いなどが発生しやすくなります。
状況によっては、売却期間が半年、1年と長くなることもあり、家の劣化はますます進みやすくなります。
部屋の使い方や周辺環境を伝えられる
住みながらの売却では、直接部屋の使い方や周辺環境を購入者に伝えることができます。
買主は、間取りや設備などを内覧時にチェックしますが、実際に住んでいる人から建物の住みごこちや周辺の生活環境について話を聞きたいという人も少なくありません。子どもがいる場合は、幼稚園や学校の状況、通学経路、治安や騒音なども気になります。
また、マンションであれば、駐車場や駐輪場、宅配ボックスなど共用部分の使用状況や管理組合の活動状況を聞かれることもあります。
住みながら売却する場合、生活している人しか分からない情報を伝えることができるため、興味を持った買主の購入判断につなげられる点はメリットといえるでしょう。
住みながら家を売る4つデメリット
一方、住みながら家を売却する場合の4つのデメリットについて解説します。
内覧に対応する手間や時間がかかる
内覧に対応する手間や時間がかかる点はデメリットといえます。
内覧については、売主と買主、不動産会社の時間を調整することが必要です。
内覧対応がどれくらい必要かは物件によって変わりますが、週末の土日を中心に時間を確保する必要があります。状況によっては、急な内覧希望が入ることもあるでしょう。
空き家で売却する場合、内覧対応もスケジュール調整も必要ありませんが、住みながら売却する場合は、内覧時間をしっかり確保しなければ販売機会を失う可能性があります。
空き家と比べ売れにくい場合がある
住みながらの売却は、空き家にして売却するより売れにくい場合もあります。
住んでいる状態だと、売主の家具や荷物があるため、居室部分やキッチンやバスルームなど水回りの状態を内覧時にしっかりと確認しにくい場合があります。
キッチンや洗面所の収納やウオークインクローゼットの広さなど確認したい場合でも、売主に遠慮して開けにくいという人もいるでしょう。
その点、空き家の場合、残置物をなくし、しっかり清掃しておけば、買主は納得できるまで確認しやすいといえます。
また、住みながらの場合は、どうしても生活感が出てしまうため、買主の購入意欲に影響する可能性があります。
特に、新築住宅と中古住宅の両方で物件探しをしている買主は、住みながらの中古住宅について、売主の生活感を感じやすい傾向にあり、購入判断にマイナスになることもあるでしょう。
内覧のたびに掃除や片付けが必要
内覧のたびに掃除や片付けが必要なこともデメリットといえます。
内覧準備として掃除や片付けは、物件の印象を左右し、成約率にも影響するため大切です。
住みながら内覧対応をする場合、毎回内覧時間にあわせ、居室部分だけでなく水回りや収納を含めて掃除や片付けをしたり、ベランダの洗濯物を取り込んだりといった作業が必要となります。
仮住まいが必要になる場合がある
住みながら売却する場合、売却から新居へ引越すまでの間に仮住まいが必要となる場合があります。
買主が見つかり売買契約から引き渡しまでの間に、建物内の荷物をすべて撤去し空き家の状態にする必要があります。
売買契約から引渡しまでの期間を調整したり、特約で一定期間引渡しまでの猶予期間を設けたりするケースもありますが、新居探しが間に合わない場合、仮住まいが必要となります。
その場合、引越し費用や部屋を借りるための費用などがかかるため、必要資金を準備しておくことが必要です。
「住みながら家を売る」・「空き家にして売る」どっちがいい?
では、家を売却する方法として、「住みながら売る」あるいは「空き家にして売る」どちらがよいのでしょうか。ここではそれぞれを比較したうえで、空き家にしたほうがよいケースについて解説します。
「住みながら売却」VS「空き家にして売却」6つのポイントで比較
住みながら売却する場合と空き家にする場合を6つのポイントで比較しました。
住みながら売却 |
空き家にして売却 |
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売却しやすさ |
家具や荷物があるため生活感がでやすく、購入判断に影響する可能性がある。 |
売主の生活感を感じにくく、時間をかけて内覧しやすいため売却しやすい |
資金計画の立てやすさ |
売却収入をもとに新居の資金計画を立てられる。 |
売却収入が明確でないまま新居の購入を進める必要がある。新居の住宅ローン選びに影響する可能性がある。 |
内覧のしやすさ |
家具や荷物があるため、隅々まで内覧しにくい。 |
売主に気兼ねなく隅々まで内覧しやすい。時間をかけて内覧しやすい。 |
内覧対応の負担 |
スケジュール調整や内覧時の掃除、片付けの手間が生じる。 |
不動産会社からの連絡以外の対応は基本的に必要ない。 |
買主とのコミュニケーションのとりやすさ |
買主と直接会話したり質問を受けられるため、購入判断に影響する疑問や不安を解消しやすい。 |
必要な情報は不動産会社の担当者を通じて伝えてもらうため、情報によっては、その場で伝えられない場合もある。 |
家の状態の維持しやすさ |
売却期間が長くなっても住みながらのため劣化しにくい。 |
売却期間が長くなる場合、換気や家の状態の確認が必要となる可能性もある。 |
住みながら売却するか空き家にするかで、売却活動の手間や負担だけでなく、売却しやすさや売却価格にも影響する可能性があります。物件の需要(売れやすさ)や資金面など、状況に合わせて適切に判断することが大切です。
空き家にして売却したほうが良い場合
住みながら売却するよりも、空き家にしてから売却したほうがよいケースもあります。具体的には次のような場合です。
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資金的に余裕がある
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できるだけ早く売却したい
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内覧対応にさける時間があまりない
空き家にして先に新居を購入する場合、資金的に余裕があれば進めやすいといえます。住宅ローンを完済し終わっており、新居の購入にあてられる自己資金が比較的多く準備できる場合などです。
資金的に余裕があれば売り急ぐ必要も少なくなるため、空き家での売却が進めやすいでしょう。
また、できるだけ早く売りたい場合も空き家が向いているといえます。
空き家のほうが家具や荷物がなく、買主は時間をかけて隅々まで内覧しやすいため、早く売れやすい傾向にあります。家具や荷物がなければ、新居での生活をイメージしやすい点も売れやすさにつながる点です。
空き家の場合、内覧時間について売主と調整する必要がありません。土日が仕事など内覧が重なりやすい日に時間を確保しにくい人も空き家での売却が向いているでしょう。
住みながら家を高く売るためのポイント
では、住みながら売却するときに、できるだけ高く売るためにどういった点に気をつければよいのでしょうか。4つのポイントについて解説します。
住宅ローン残高と売却相場をしっかり確認する
住宅ローンが残っている場合、住宅ローン残高と売却相場をしっかり確認することが大切です。
家を売却するには、住宅ローンを完済して金融機関が設定している抵当権を抹消しなければなりません。
ローン残高を売却収入で完済できる見通しであればよいですが、完済が難しい場合、売却のために自己資金を準備するなど資金計画を考える必要があります。
また、売却相場を把握しておくことで、売り出し価格が高すぎたり、安すぎたりする可能性が減ります。
売却相場は、国土交通省が運営する「不動産情報ライブラリ」で過去の成約情報を調べることが可能です。
売却物件の住所や土地・建物の面積、築年数などの条件で過去の取引事例が検索できるため、条件が近い成約事例から売却相場を確認してみましょう。
内覧時の準備をしっかりと行う
内覧前の掃除や片付けなどの準備をしっかり行うことが大切です。
築年数が経過している物件でも、掃除や片付けが行き届いていると印象は良くなりますし、購入検討者が購入後の生活をイメージしやすくなります。居室部分だけでなく、バスルームやキッチンなどの水回りを含めて内覧しやすいように準備しましょう。
また、収納についてもしっかりと確認してもらえるように片付けておくことが必要です。特に、マンションでは収納量が購入判断に影響するケースもあり、奥行や高さなどを気にする人は少なくありません。
その他、生活臭やタバコ、ペットなどの臭いに注意するとともに、内覧する時間帯によって、もしくは北側の日当たりがよくない部屋で室内が暗くなる場合は、照明をつけるなどで明るいイメージと内覧しやすい環境を作ることが必要です。
内覧者の質問に答える
内覧対応の際、購入検討者の質問にしっかりと対応することも大切です。
購入検討者は、広さや間取り、建物の状態だけで購入判断するわけではありません。周辺環境や隣接住戸、生活・交通の利便性なども含めて判断します。
隣接住戸やマンション内の人について、プライバシーに配慮しながらしっかりと伝えてあげることで購入者の安心にもつながります。
マイホーム購入は土地や建物を購入するだけでなく、周辺環境も含めて買うことです。その中で、購入検討者も100%満足できる物件を探しているわけではなく、妥協しなければならない点があると考えているものです。
そのため、購入判断に影響する質問にはしっかりと対応することが必要です。メリットだけでなくネガティブな面についても、誠実に回答することで好印象を持ってもらえる場合もあります。
複数の不動産会社に査定を依頼して決める
複数の不動産会社に査定を依頼することが大切です。
不動産をより高く、確実に売却するには、適正な査定価格に基づき売り出し価格を設定することが必要です。
ただし、査定価格は、不動産会社によって異なる結果が出ることも少なくありません。そのため、一社の査定価格から売り出し価格を決めると、相場より高すぎる、あるいは安すぎる可能性があります。
適正な査定価格のもと売り出し価格を決めるためには、複数の不動産会社の査定価格と算出の根拠を比較して決めることが大切です。
また、不動産売却がうまくいくかは依頼する不動産会社に左右されます。信頼して任せられる不動産会社を探すためにも、複数の不動産会社の取扱い実績や担当者の経験、相性などを比較したうえで決める必要があります。
売却しても家に住めるリースバックとは?
最後に、資金的な事情で自宅の売却を検討している場合の選択肢として、売却後も今の家に住み続けられる「リースバック」について解説します。
リースバックは、不動産を売却すると同時に賃借することで、売却後も住み続けられるサービスです。
住み慣れた思い入れのある自宅に住み続けたいが老後資金が足りない場合などに活用できます。
リースバックの一般的な流れは次のとおりです。
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不動産をリースバック会社に売却
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売買契約と同時にリースバック会社と賃貸借契約締結
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リースバック会社から売買代金の一括支払い
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リースバック会社に毎月の家賃を支払い
売却することで老後資金や事業資金などまとまったお金が手に入り、そのまま家賃を払いながら賃借人として住み続けることができます。
不動産の所有権(名義)はリースバック会社に移転するため固定資産税の負担もなくなり、また、住宅ローンが残っている場合でも完済して住み続けることも可能です。
ただし、通常の売却金額よりリースバック会社の買取金額は安くなる傾向があります。また、売却後に締結する賃貸借契約の期間に制限があるケースも少なくないため、将来のライフプランや住居の確保についてしっかり検討したうえで判断することが大切です。
まとめ
住みながら家を売却する場合、空き家で売却する場合と比べると、住み替え後の資金計画を立てやすかったり、売り急ぐ必要がないなどのメリットがある一方、内覧のための時間の確保や手間がかかります。
また、購入検討者は内覧を通じて購入するか否かを判断しますが、空き家と比べると、家具や荷物がある分、建物の状態すべてを確認することは困難です。物件の状態によっては、売主の生活感を感じやすく、購入判断に影響を与えることもあります。
そのため、より早く、確実に売却したい場合、可能であれば空き家にしたほうがよいでしょう。もし、状況的に空き家にできない場合は、内覧前の掃除や片付けなどしっかり準備し、購入検討者からの質問にも丁寧に対応するようにしましょう。
そして、不動産を高く売却するためには、複数の不動産会社の査定価格や実績、担当者の信頼性などを比較して不動産会社を決めることが大切です。