不動産の売却を考えている人にとって一括査定サイトは便利なツールです。一括査定サイトを使えば複数の不動産会社から同時に査定を受けられるため、自分が売ろうとしている不動産の適正価格を把握可能です。

しかし、一方で一括査定サイトの利用にあたっては「しつこい営業電話がかかってくる」「個人情報が漏洩しそうで怖い」といったネガティブな評判も聞かれます。また「自分に合っているのはどのサイトなのかわからない」と思う人も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、不動産一括査定サイトの評判と対策を紹介するとともに、主要な一括査定サイトの特徴などについて詳しく解説していきます。

不動産一括査定サイトのネガティブな評判と対策

不動産一括査定サイトは便利なサービスですが、利用者からはネガティブな評判も多く聞かれます。よく挙げられる3つのネガティブな評判と、ユーザーが取れる対策を紹介します。

しつこい営業電話がかかってくる

不動産一括査定サイトを利用した後によく起こるのは頻繁にかかってくる営業電話です。これは、査定依頼を受けた複数の不動産会社が一斉に連絡してくるため起こります。

中には1日に10件以上の電話がかかってきたという声もあるほどです。このような状況を避けるための効果的な対策としては、以下のような方法が考えられます。

  • 机上査定を選択する:多くの一括査定サイトでは、査定の種類を訪問査定と机上査定のどちらにするか選べます。訪問査定は不動産会社が実際に物件を見て査定するため、訪問日程の調整が必要です。しかし、机上査定は過去の取引事例などデータを参考に査定する方法なので、訪問日程の調整は不要です。このため、机上査定はメールなどでのやり取りが中心になります。

  • 連絡方法の指定:査定の申し込み時に備考欄などで「メールのみの連絡希望」と記入することで、電話による連絡を減らせます。

  • 査定依頼社数を絞る:一括査定サイトでは同時に10社など大量の不動産会社に査定を依頼することも可能です。しかし、1度に依頼する不動産会社の数を3社程度に抑えることで、大量の連絡が集中するのを防げます。

  • 不要な電話にはきっぱり断る:しつこい営業電話には「お願いする時はこちらから連絡するので、それまで連絡は不要です」とはっきり伝えるのが良いでしょう。

地方・田舎の物件は相手にされない

不動産一括査定サイトを利用する際、地方や田舎の物件所有者が直面しがちな問題は「不動産会社から相手にされない」というものです。都市部の物件と比べ、査定依頼に対する反応が鈍かったり、まったく反応がないこともあります。

これは、地方や田舎の物件が不動産会社にとって収益性が低いと判断されるため起こることです。このような場合は主として以下の対策が有効です。

  • 地方に強い一括査定サイトを選ぶ:例えば、一括査定サイトのイエウールは地方の不動産会社とも多く提携しているため、地方の物件でも査定に対応してもらいやすい傾向があります。

  • 複数の一括査定サイトを利用する:1つのサイトで反応がなくても、別のサイトでは反応を得られる可能性があります。SUUMOやHOME4Uなど、複数のサイトを併用するのが効果的です。

  • 地元の不動産会社に直接問い合わせる:一括査定サイトで反応がない場合は、地元の不動産会社に電話やメールなどで問い合わせてみるのも良いでしょう。

  • 買取専門の不動産会社を探す:地方の物件を積極的に買い取っている専門業者もいるので、そういった業者を探すのも一案です。ただし、買取は仲介による売買と違った特徴を持っているため、両者の違いを把握しておく必要があります。

最終的に査定と同じ価格では売れない

不動産一括査定サイトを利用して高額な査定結果をもらったにもかかわらず、実際に売り出してみると、なかなか問い合わせが入らないというケースがあります。

対策としては、1社だけでなく複数の不動産会社から査定を受けた上で、平均値や中央値を参考に価格設定することなどが考えられます。そのほか、自分でも近隣で売り出されている似た物件の販売価格を調べてみるのも有効です。

なお、不動産会社から査定結果を受け取った際に、査定の根拠を不動産会社に詳しく説明してもらうのも有効です。根拠が曖昧な場合は査定価格の信頼性を疑う必要があります。

不動産一括査定サイトを利用するメリット

不動産一括査定サイトには良くない評判もあるものの、不動産の売却を検討する際には非常に有益なツールであることは確かです。一括査定サイトを利用する際の主要なメリットについて詳しく解説します。

複数の不動産会社を同時に比較できる

不動産一括査定サイトを利用する最大のメリットは、短時間で複数の不動産会社を比較できることです。売主は幅広い選択肢の中から最適な不動産会社を選べます。

具体的には、個別に不動産会社を探して連絡を取る手間が大幅に省けることや、大手から地域密着型の中小企業まで様々な不動産会社の査定を1度に受けられること、査定額だけでなく対応の速さ・説明の丁寧さ・提案内容の具体性を比較できることなどが挙げられます。

売主にとって最適な不動産会社を選ぶためには、複数の不動産会社を同じ条件で水平比較することが重要です。1度情報を入力するだけで簡単に水平比較できることが、一括査定サイトが持つ最大のメリットであると言えます。

自分で適正な査定価格を判断する根拠を得られる

一括査定サイトの利用によって、別々の不動産会社から得られた複数の査定結果を比較することで、所有する物件の価格をより正確に把握できます。極端に高い、または低い査定額があれば、その理由を詳しく確認することで、より現実的な価格設定の参考にできるでしょう。

受け取った査定額そのままの価格で売り出すというよりも、複数の査定額を参考にしつつ、間を取って適切な売出額を決めるという考え方をするのがおすすめです。

また、各不動産会社から査定額の根拠を集めることで、物件価値に影響を与える要因(立地、築年数、設備の状態など)を把握できます。そのほか、複数の査定根拠を比較することで、自分の物件の強みと弱みを客観的に認識できるでしょう。

不動産一括査定サイト利用の流れ

不動産一括査定サイトの利用方法はそれほど難しくありません。一般的な一括査定サイト利用の流れを解説します。

  1. 一括査定サイトを選択する:利用する一括査定サイトを選びます。より多くの不動産会社から意見を聞きたい場合は、複数の査定サイトを併用するのも有効です。

  2. 基本情報の入力:物件の種類(マンション、戸建て、土地など)、所在地、広さなどの基本情報を入力します。

  3. 詳細情報の入力:物件の築年数や最寄り駅からの所要時間、リフォーム履歴など、詳細な情報を入力します。入力する正確な情報が多ければ多いほど、高精度の査定結果を得られます。

  4. 個人情報の入力:名前、連絡先(電話番号、メールアドレス)などの個人情報を入力します。この際、連絡方法の希望(メール優先など)も指定できるケースが大半です。

  5. 査定方法の選択:机上査定か訪問査定かを選択します。初めは机上査定を選び、後で詳しい査定が必要と判断したら訪問査定を依頼するのが一般的です。

  6. 査定依頼する不動産会社の選択:サイトによっては、査定を依頼する不動産会社を選択できる場合があります。

  7. 査定依頼の送信:入力した情報を確認し、問題がなければ送信ボタンをクリックして査定依頼を完了します。

  8. 査定結果の受け取り:通常、数日以内に各不動産会社から査定結果が届きます。査定結果についてはメールや電話で連絡が来ることが多くなっています。なお、査定に当たって補足情報が必要と判断された場合などは、結果の前に確認の連額が来ることもあるでしょう。

  9. 結果の比較と検討:届いた査定結果を比較し各社の提案内容を検討します。必要に応じて追加の質問をすると良いでしょう。

  10. 不動産会社の選定:実際に不動産の売却に入る場合は、最も条件が良いまたは信頼できると判断した不動産会社を選び、訪問査定を依頼します。

なお、一括査定サイトの利用によって個人情報が流出することは基本的にありません。不動産会社には入手した個人情報を厳重に保管することが義務付けられており、万一流出した場合にはその後査定サイトに参加できなくなるなどの厳しい措置が取られます。

サイトによっては個人情報保護の規格を取得しているところもあるので、心配な場合はそういったサイトを利用すると良いでしょう。また、情報の入力を途中でやめたとしても、送信しない限り不動産会社やサイトに情報が送られることはありません。

おすすめの不動産一括査定サイト

不動産一括査定サイトは数多く存在しますが、それぞれに特徴があり、ユーザーのニーズによって最適なサイトは異なります。それぞれのサイトについて簡単に比較できる表を作成しました。

サイト名

運営会社

提携不動産会社数

対応エリア

主な特徴

すまいValue

大手不動産6社

運営会社の6社のみ

全国

(都心部中心)

大手6社のみの査定が可能

SUUMO売却査定

リクルート

2,000社以上

全国

豊富な情報量と高い知名度

HOME4U

NTTデータ

1,800社以上

全国

大手のNTTグループが運営

イエウール

Speee

1,900社以上

全国

地方にも強い

HOME’S

LIFULL

1,500社以上

全国

不動産情報量が豊富

リビンマッチ

Speee

1,700社以上

全国

特殊物件にも対応

実際の利用に当たっては、自分の物件の特性や売却の時期、依頼したい不動産会社の規模などを考慮して選択すると良いでしょう。また、より幅広い視点から自分の物件を分析したい場合は、複数のサイトを併用するのもおすすめです。

各不動産一括査定サイトの特徴

不動産一括査定サイトを利用する上では、各サイトの強みや弱み、対応エリア、提携している不動産会社の特性などを把握することが重要です。

すまいValue

すまいValueは、日本を代表する大手不動産会社6社(三井不動産リアルティ、三菱地所ハウスネット、東急リバブル、野村不動産ソリューションズ、住友不動産販売、小田急不動産)が共同で運営する不動産一括査定サイトです。

大手ならではの豊富な経験・実績や情報の高い信頼性が最大の魅力となっています。具体的な売却の相談まで進んだ後も、大手不動産会社ならではの充実したサービスを期待できるでしょう。また、都市部の査定に強いのが特徴的で、大手企業のシステムを活用しており査定結果が比較的早く返ってきます。

ただし、査定の依頼先も運営の6社に限られるため、他のサイトと比較すると多様な視点からの査定は期待できません。また、地方の物件は対応力が弱いこともデメリットです。

そのほか、大手企業が査定するためか、比較的高めの査定額が提示される傾向を持っています。他の査定サイトも併用して、中小の不動産会社が出してくる査定と比較するのが良いでしょう。

SUUMO売却査定

SUUMO売却査定は、不動産・住宅情報サイト「SUUMO」を運営するリクルートが提供する不動産一括査定サービスです。SUUMOブランドの知名度と豊富な不動産情報を活かしたサービスとして、多くのユーザーに利用されています。

特徴の1つは豊富な提携会社数です。2,000社以上の不動産会社と提携しており、大手から地域密着型の中小企業まで幅広い選択肢があります。また、全国各地の物件に対応しているため、地方の物件でも査定を受けやすくなっています。

1度に最大10社まで同時に査定依頼が可能であり、ユーザーが希望する数の不動産会社を選択可能です。また、実際にサイトを利用したユーザーの体験談が掲載されており、利用に当たって参考になります。

一方で、提携会社数が多いため査定後の営業連絡が多くなる可能性もあります。あらかじめメールでの連絡を希望する旨伝えておく、申込時に営業連絡はお断りと明記しておくなど対策が必要です。また、一部の大手不動産会社(三井不動産リアルティなど)は参加していないため、それらの会社の査定を希望する場合は別途依頼が必要になります。

HOME4U

HOME4Uは、NTTデータグループが運営する不動産一括査定サイトです。2001年にサービスを開始した老舗サイトとなっています。NTTデータグループの技術を活用した高度なセキュリティシステムを導入しており、個人情報の保護に優れているのが特徴的です。

マンション・戸建て・土地だけでなく、店舗・事務所・倉庫など多様な種類の不動産に対応しており、投資目的の売買にも利用しやすいサイトとなっています。そのほか、電話によるサポートが充実している、査定結果が図やグラフを用いて分かりやすく表示されるなどのポイントも独自の強みと言えるでしょう。

その一方で、1度に査定依頼できる不動産会社の数が6社までになっており、他のサイトと比べて少なめです。また、サイトに表示される情報量が多いため、ユーザーには使いにくく感じられることもあります。

イエウール

イエウールは、株式会社Speeeが運営する不動産一括査定サイトです。使いやすさが特徴で、特に地方物件の査定に強みを持っています。

1,900社以上の不動産会社と提携しており、大手から地域密着型の中小企業まで幅広い選択肢があります。また、地方の不動産会社とも多く提携しているため、地方や郊外の物件でも査定を受けやすいのが特徴的です。

そのほか、LINEのようなチャット形式の入力画面で誰でも簡単に情報を入力できる上に、マンション・戸建て・土地だけでなく、収益物件や農地などの査定にも対応しています。

その一方で、一部の大手不動産会社は参加していません。とくに査定を受けたい会社が決まっておりイエウールと提携していない場合は、別のサイトで依頼が必要です。また、個人情報の入力が必須のため匿名での査定依頼ができない点に要注意です。

まとめ

不動産一括査定サイトは、複数の不動産会社から同時に査定を受けられる便利なツールです。しかし、査定依頼後の営業電話や、サイトによっては地方の物件は査定の対象外であるなど、いくつかの弱点を持っています。利用する上では、机上査定の選択や複数サイトの並行利用といった対策が必要です。

一括査定サイトを利用する最大のメリットは、複数の不動産会社を比較できることと、自分で適正価格を判断する根拠を得られることです。ただし、各サイトにはそれぞれ特徴があるため、自分のニーズに合ったサイトを選ぶことが重要になります。