土地の売却を検討している人のなかには「どんな税金がかかるの?」「税金を少しでも減らす方法はある?」といった疑問を抱えている人も多いでしょう。

そこで本記事では、土地を売ったときの税金についてわかりやすく解説するとともに、税金のかからない土地の売り方6選を紹介します。

土地を賢く売るためには、事前知識をどれだけ備えているかが重要なカギを握るため、ぜひ参考にしてください。

土地を売ったときにかかる税金

税金のかからない土地の売り方を理解するためにはまず、土地売却時に課される可能性のある税金について把握しておく必要があります。

税金の種類別にわかりやすく解説するので、順番にチェックしてみましょう。

消費税

消費税は数ある税金のなかでも、とくに身近な税金のひとつですが、土地には消費税が課税されません。

(非課税)

第六条 国内においておこなわれる資産の譲渡等のうち、別表第二に掲げるものには、消費税を課さない。

別表第二(第六条、第十二条の二、第十二条の三、第三十条、第三十五条の二関係)

一 土地(土地の上に存する権利を含む。)の譲渡及び貸付け(一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)

引用元:e-Gov 法令検索 | 消費税法

上記の消費税法にも記載されているとおり、土地の譲渡および貸し付けは非課税範囲内であると定められているのです。

土地は使用するほど消費・減少していくものではないため消費税の対象とはならない、と考えればわかりやすいでしょう。

ただし、不動産売却時には消費税が一切かからないわけではなく、一部の不動産や売却時に発生する料金などには課税されます。

以下の表に不動産売買で消費税がかかるもの、かからないものをまとめるので、参考にしてください。

【不動産売買時の消費税課税・非課税一覧表】

課税されるもの

非課税のもの

・事業用のマンションやアパート

・住宅以外の事業用建物の購入

・返却されない敷金や礼金

・不動産会社の仲介手数料

・土地の売買

・その土地が宅地である場合には、庭木、石垣、庭園(庭園に附属する亭、庭内神し(祠)その他これらに類する附属設備を含む。)

・登記免許税、印紙税

・個人が居住用に所持している住宅

印紙税

印紙税とは、契約書や領収書をはじめとした経済的な取引のために作成された書類に課される税金のことです。

課税文書に該当するかどうかの判断は印紙税法で以下のように定義されています。

印紙税が課税されるのは、印紙税法で定められた課税文書に限られています。この課税文書とは、次の3つのすべてに当てはまる文書をいいます。

(1) 印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること。

(2) 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。

(3) 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。

引用元:国税庁 | 課税文書に該当するかどうかの判断

土地をはじめとした不動産取引の場合、不動産売買契約書が課税文書に該当します。

なお、印紙税の金額は契約書に記載されている取引金額によって変わりますが、令和9年3月31日までに作成される不動産売買契約書に関しては印紙税の軽減措置が講じられるため、税率が引き下げられます。

詳細は以下をご覧ください。

契約金額

軽減税率適用時の印紙税額

1万円未満

非課税

10万円以下

200円

10万円を超え50万円以下

200円

50万円を超え100万円以下

500円

100万円を超え500万円以下

1,000円

500万円を超え1千万円以下

5,000円

1千万円を超え5千万円以下

1万円

5千万円を超え1億円以下

3万円

1億円を超え5億円以下

6万円

5億円を超え10億円以下

16万円

10億円を超え50億円以下

32万円

50億円を超えるもの

48万円

参照:引用元:国税庁 | 不動産売買契約書の印紙税の軽減措置

登録免除税

登録免許税とは、登記や登録をおこなう際に課される税金のことです。

土地をはじめとした不動産売却時に抵当権を外す必要があり、この際の抵当権抹消登記手続きにおいて抵当権抹消登記手続きが課されます。

抵当権とは、住宅ローンを借り入れる際に金融機関が当該不動産に対して設定する権利を指し、不動産売買時にはこの抵当権を外さなければなりません。

抵当権抹消登記時時の税額に関する詳細は以下にまとめるので、チェックしておきましょう。

  • 登録免許税の税額は、不動産1個につき1,000円

  • 土地1個と建物1個を1件で申請する場合は2,000円

  • 司法書士に手続きを依頼する場合は、別途報酬が発生(15,000円前後が相場※1)

※1 参照:日本司法書士連合会|報酬アンケート

譲渡所得税

譲渡所得税とは、不動産売却時に発生した利益に対して課される税金のことです。

  • 譲渡所得:不動産売却時に生じる所得のことで、「売却金額-取得費-譲渡にかかった費用」で算出される

  • 譲渡所得税:譲渡所得税に対して課される税金のことで、取得税、住民税、復興特別税を合算したもの

譲渡所得税はあくまで不動産売却時に利益が発生した場合にのみ課される税金であるため、土地を売っても利益が出なかった場合には税金がかかりません。

また、課税の基準となる譲渡所得は「短期譲渡所得」「長期譲渡所得」という2つの区分に分かれる仕組みとなっており、以下のように課される税率が変わる点に注意しましょう。

区分

不動産の所有期間

譲渡所得税の税率

短期譲渡所得

5年以下

39.63%(所得税+住民税+復興特別税)

長期譲渡所得

5年超

20.315%(所得税+住民税+復興特別税)

税金のかからない土地の売り方は?おすすめの方法6選

土地を売った際にはさまざまな税金が課される可能性はあるものの、税金をなるべく抑えられる売り方がいくつか存在するのも事実です。

税金のかからないおすすめの土地の売り方を紹介するので、ひととおりチェックしてみましょう。

①【最大3,000万円控除】居住用に利用していた土地を売る

居住用に利用していた土地や建物を売却した際には、所有期間に関わらず譲渡所得から最高3,000万円までが控除される特例を受けられます。

制度概要と特例を受けるための条件については、以下をご覧ください。

制度概要

マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる。

適用条件

①自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること

②売った年の前年および前々年にこの特例(「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」によりこの特例の適用を受けている場合を除きます。)またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと

③売った年、その前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと

④売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと

⑤災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること

⑥売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと(特別な関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれる。)

適用が除外される要件

①この特例の適用を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋

②居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋

③別荘などのように主として趣味、娯楽または保養のために所有する家屋

参照:国税庁 | マイホームを売ったときの特例

②【最大3,000万円控除】相続した居住用土地を売る

相続または遺贈により取得した家屋や土地を売却した際には、譲渡所得から最高3,000万円までが控除される特例を受けられます。

制度概要と特例を受けるための条件については、以下をご覧ください。

制度概要

相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円(注)まで控除することができる。

 

(注) 令和6年1月1日以後におこなう譲渡で被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は2,000万円まで

適用条件

①売った人が、相続または遺贈により被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと

②次のイ、ロ、ハの売却をしたこと

イ 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること

ロ 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売ること

ハ 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売る場合で、次のAおよびBまたはAおよびCの要件に当てはまること

A 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。

B 譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、一定の耐震基準を満たすこととなったこと

C 譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をおこなったこと

③相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること

④売却代金が1億円以下であること

⑤売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと

⑥同一の被相続人から相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと

⑦親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと

参照:被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

③【最大1,000万円控除】平成21、22年に取得した土地を売る

平成21年及び平成22年に取得した土地を売却した際には、譲渡所得から1,000万円を控除することができます。

この特例は、マイホーム以外の土地も対象となるのが大きな特徴です。

制度概要と特例を受けるための条件については、以下をご覧ください。

制度概要

個人が、平成21年に取得した国内にある土地または土地の上に存する権利(以下「土地等」)を平成27年以降に譲渡した場合または平成22年中に取得した土地等を平成28年以降に譲渡した場合には、その土地等に係る譲渡所得の金額から1,000万円を控除することができる。譲渡所得の金額が1,000万円に満たない場合にはその譲渡所得の金額が控除額となる。

適用条件

①平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に土地等を取得していること

②平成21年に取得した土地等は平成27年以降に譲渡すること、また、平成22年に取得した土地等は平成28年以降に譲渡すること

③親子や夫婦など特別な間柄にある者から取得した土地等ではないこと(特別な間柄には、生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含む)

④相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済および所有権移転外リース取引により取得した土地等ではないこと

⑤譲渡した土地等について、収用等の場合の特別控除や事業用資産を買い換えた場合の課税の繰延べなど他の譲渡所得の特例の適用を受けないこと

参照:平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除

④【軽減税率特例】所有期間10年超の不動産を売る

10年以上所有していたマイホームの家屋および土地を売却し、一定の要件に当てはまる場合には、通常の長期譲渡所得よりも低い税率が適用される特例を受けられます。

 

税率

長期譲渡所得

20.315%

10年超所有軽減税率の特例適用時

6,000万円以下の部分:14.21%

6,000万円超の部分:20.315%

参照:国税庁 | マイホームを売ったときの軽減税率の特例

ご覧のとおり、10年超所有軽減税率の特例では譲渡所得6,000万円以下の税率が大きく軽減されることとなるため、売却時にかかる税金を大幅にカットできます。

制度概要と特例を受けるための条件については、以下をご覧ください。

制度概要

マイホーム(居住用財産)を売って、一定の要件に当てはまるときは、長期譲渡所得の税額を通常の場合よりも低い税率で計算する軽減税率の特例の適用を受けることができる。

適用条件

①日本国内にある自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地を売ること

以前に住んでいた家屋や敷地の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること

また、これらの家屋が災害により滅失した場合には、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること

②売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること

③売った年の前年および前々年にこの特例の適用を受けていないこと

④売った家屋や敷地についてマイホームの買換えや交換の特例など他の特例の適用を受けていないこと

⑤親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと

参照:国税庁 | マイホームを売ったときの軽減税率の特例

⑤【最大5,000万円控除】公共事業のために売却した土地を売る

公共事業のために土地建物を売却した際には、譲渡所得から最大5,000万円までが控除される特例を受けられます。

制度概要と特例を受けるための条件については、以下をご覧ください。

制度概要

土地収用法やその他の法律で収用権が認められている公共事業のために土地建物を売った場合には、収用などの課税の特例が受けられる。

適用条件

①売った土地建物は固定資産であること

②その年に公共事業のために売った資産の全部について収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例の適用を受けていないこと

③最初に買取り等の申出があった日から6か月を経過した日までに土地建物を売っていること

④公共事業の施行者から最初に買取り等の申し出を受けた者(その者の死亡に伴い相続または遺贈により当該資産を取得した者を含む。)が譲渡していること

参照:国税庁 | マイホームを売ったときの軽減税率の特例

⑥土地の取得費より安く売る

土地を売った際に課される税金のなかでもとくに金額が大きい譲渡所得税は、「売却金額-取得費-譲渡にかかった費用」で算出される譲渡所得に課されるため、取得費と譲渡にかかった費用が売却代金を上回った場合には、譲渡所得税が発生しません。

売却代金は売主が設定できるため、譲渡所得税をゼロにしたいのであれば、取得費よりも安く売却するという手もあります。

ただし、売却代金を安くすると税金は抑えられるものの手元に残るお金も少なくなるため、前述の控除特例などをうまく活用できないかまずは検討してみましょう。

まとめ

土地を売った際にはさまざまな税金が課される可能性がありますが、同時に多くの節税・減税制度も用意されています。

制度のなかには他の制度と併用できるものもあるため、土地を売る際には専門家と相談しながら、もっともお得に売れる方法を模索しましょう。

まずは信頼できる不動産会社を見つけることが大切ですから、一括査定サイトを活用して相性のよい不動産会社を探してみてください。