家を買ったばかりなのに、突然の転勤や離婚など家庭の事情で売却の必要に迫られたとき、「損をしてしまうのではないか」と不安を感じる人も多いのではないでしょうか。実際のところ、新築住宅を購入してすぐに売却すると損をする可能性が高くなります。
しかし、中古住宅の場合や立地条件によっては必ずしも損をするとは限りません。この記事では、買ったばかりの家を売る際に損をするケースと損をしにくいケース、そして住宅ローンの扱いや売却のタイミングなどについて解説します。
この記事の目次
買ったばかりの家を売って損をするケース
新築住宅を購入してすぐに売却する場合は、残念ながら損をする可能性が高くなります。その主な理由は不動産会社による価格の上乗せです。新築の住宅は割高であり、これを「新築プレミアム」と言います。
新築住宅には周辺相場よりも2割から3割ほど高い金額が設定されています。家の購入を検討している人の中には新築住宅を好む人も多くニーズが高いためです。
しかし、1度でも誰かが所有者となり入居すると、その住宅は「中古住宅」として扱われます。たとえ住んでいた期間が短期間であっても、売却時には他の中古住宅と同じ扱いになります。
例えば、3,000万円で購入した新築住宅を1年後に売却しようとすると、2,100万円から2,400万円程度の価格にしかならない可能性も高いものです。さらに、家を購入してから短期間で売りだすと、不動産を転売目的で購入したのではないか、何か裏があるのではないかなどの印象を与えかねません。そのため、買主側から値引き交渉を受けて、さらに価格が下がる可能性もあります。
買ったばかりの家を売っても損をしにくいケース
新築住宅を購入してすぐに売ろうとすると損をする確率が高いものです。しかし、そうでない場合は購入価格に近い金額か、場合によってはそれ以上の価格で売却できる可能性があります。
買った家が築浅の中古住宅だった場合
築浅の中古住宅は新築住宅と比べて割安でありながら、品質面では新築に近い状態を保っているため、不動産市場でも高い人気を持っています。また、設備が比較的新しいことや、最近のライフスタイルに合わせた使いやすい間取りになっていることなども、築浅の中古住宅が高い人気を持っている理由の1つです。
周辺相場と合わせた値付けをしやすい一方で、他の物件よりもアドバンテージを持った状態で売れるのが築浅中古住宅の特徴となっています。
購入した後5年以上経っている場合
家を購入してから5年以上経過してから売却する場合、税制面で大きなメリットがあります。これは不動産の譲渡所得税に関する規定によるものです。不動産を売却して利益が出ると譲渡所得税という税金が課税されます。なお、譲渡所得税は家の所有期間によって税率が異なります。
家の所有期間 |
課される税率 |
家を購入した翌年1月1日から5年以内の売却 |
所得税:30% 住民税:9% 合計:39% |
家を購入した翌年1月1日から5年が経過した後に売却 |
所得税:15% 住民税:5% 合計:20% |
例えば、購入額より1,000万円以上高い価格で売れた場合は、5年以内の売却だと390万円の税金が、5年を超える期間が経ってからの売却だと200万円の税金が課税されます。
また、家を購入してから5年以上が経過すると「何か裏があって売り急いでいるのでは」という印象を買主に与えにくいものです。このため、適正な価格で取引できる確率も高まります。
好立地の家を売る場合
好立地の家は、買ったばかりの時点で売ろうとしても高値で売れる可能性が高く損をしにくい傾向があります。立地の良さが不動産の価値を大きく左右するためです。好立地とされるのは具体的に以下のような特徴を持ったエリアのことです。
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駅からの近さ
駅から徒歩10分以内の物件は特に人気が高くなっています。通勤や通学の利便性が高いためです。
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商業施設へのアクセス
スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどが近くにある物件は、日常生活の利便性が高く評価されます。徒歩圏内に複数の商業施設がある場合は特に高く評価されるでしょう。
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教育施設の充実
レベルの高い学校などが近くにあるエリアは子育て世帯に強く支持されます。特に評判の良い公立学校や私立学校があるエリアでは長期的に高い需要を見込めるものです。
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自然環境の良さ
公園や緑地が近くにある物件は住環境の良さが評価されます。大規模な公園が徒歩圏内にある場合は特に、高評価を得やすくなります。
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治安の良さ
治安の良いエリアは安心して暮らせる環境と見られます。犯罪発生率の低いエリアは買手の目に留まりやすいものです。
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将来性のある地域
再開発計画があるエリアや新しい商業施設などの建設が予定されているエリアでは、将来的な価値上昇が期待できます。
このような好立地の物件は、たとえ購入してすぐに売却することになっても、高値で売れる可能性が高いものです。また、好立地の物件は景気変動の影響を受けにくく、長期的に見ても資産価値が維持されやすい特徴があります。そのため、急な売却の必要が生じても、購入時の価格を大きく下回るリスクは比較的低いでしょう。
買ったばかりの家を売っても住宅ローンは問題ない?
住宅ローンを組んで家を買った場合は、購入後すぐに売却すると何か問題があるのではと思う人もいるのではないでしょうか。購入時期と売却時期が近いとしても家を売却すること自体は可能です。売却の時期や理由がローン契約に抵触することはありません。
その一方で、住宅ローンの残債がある状態で家を売却する場合は、売却金額でローンを完済する必要があります。住宅ローンの利用に伴って設定されている抵当権を解除するためです。ローンの完済に伴って金融機関が抵当権を解除しないと新しい所有者に家を引き渡すことができません。
ここで問題となるのが「オーバーローン」の状態です。オーバーローンとは、住宅ローンの残債額が売却予定価格を上回っている状況のことを指します。例えば、ローンの残債が3,000万円あるのに、売却価格が2,500万円しかない場合などです。
オーバーローンの状態では売却金額だけで住宅ローンを完済できません。このような場合は、例えば以下のような対応が必要です。
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不足分を自己資金で補う
家の売却額とローン残債の差額を自己資金で支払う方法です。この方法は自己資金に余裕を持っていることが条件となります。
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住み替えローンを利用する
新しく購入する家のローンに、今ある住宅ローンの残債を上乗せする方法です。ただしこの方法は金融機関の審査が厳しい点に注意を要します。
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今売却することを諦める
住宅ローンの返済を進めて、オーバーローンの状態が解消されるまで売却を待つという選択肢もあります。
買ったばかりの家を売却する際は、まず現在の住宅ローン残債と家の売却価格を正確に把握することが重要です。
売るなら早めに売却活動を始める
家を売却する決断をしたら、譲渡所得税の税率が下がるタイミングも考慮しつつ、できるだけ早く売却活動を始めることが重要です。買ったばかりの家を売る場合は特に「早めの行動」が損失を最小限に抑える鍵となります。早めの行動がもたらすメリットは以下のようなものです。
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築年数の経過による価値の低下を最小限に抑える
築年数が経つにつれて家の価値は徐々に下がっていきます。特に新築から数年間は下落率が最も大きくなるタイミングです。譲渡所得税の税率が下がる時期も見ながら早めに売却することで、築年数の経過による価値の低下を最小限に抑えることが可能です。
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住宅設備の経年劣化を防ぐ
家に住み続けると、水回りや電気設備などは使用による劣化が進みます。早めに売却することで、これらの設備が良好な状態のうちに売ることができ、高値での売却を期待できます。
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売却にかかる期間の余裕
一般的に、家の売却には数か月から半年程度の期間がかかります。落ち着いて売却活動ができるのも早めに動き出すことのメリットです。
なお、早めに動き出すことは複数のメリットをもたらすものの、焦って売り急ごうとしないことが重要です。信頼できる不動産会社を見極めるとともに、計画的に売却活動を進めましょう。
まとめ
買ったばかりの家を売却する際にはいくつかの重要なポイントがあります。新築住宅の場合は購入価格に新築プレミアムがついているため損をしやすい一方で、築浅の中古住宅や好立地の物件は比較的高値で売却できる可能性があります。
また、購入した翌年の1月1日から5年以上経過すると譲渡所得税の税率が下がるため、可能であれば5年経過してから売却するのがおすすめです。なお、住宅ローンについてはオーバーローンの状態に要注意です。家を売却すると決めたら、早めに行動を起こすことで家の価値の低下を最小限に抑え、有利な条件での売却につなげられます。