「自分の土地がいくらで売れるのか概算を知りたい」「評価額は売値とは関係ないのだろうか」このように悩んでいないでしょうか。
土地の評価額と売値は、似て非なるものです。
2つの言葉を同じ意味として捉えていると、いざ売却活動をはじめたときに「思ったより高値で売れない」とギャップに悩まされてしまうかもしれません。
そこで本記事では、土地の評価額と売値の差はどのように生まれるのか解説します。
記事を参考に、自分の土地がいくらで売れるのか概算を立てるための知識を身につけてください。
この記事の目次
土地の評価額と売値は差が生まれやすい
一般的に土地の評価額と売値には、差が生まれやすい傾向にあります。
原因を知るために、土地の評価額と売値の違いを参考にしてみましょう。
土地の評価額 |
公的機関が出している指標となる土地の価格のこと。大きく5種類ある |
土地の売値 |
実際に売り出すときの価格のこと。時期や相場によって変動する |
土地の評価額は基準となる価格で、値決めや税金計算の指標として活用されます。
一方、売値は土地を売りに出すときの価格です。
値決めをする際は土地の評価額や近隣の相場を参考にするため、両者は必ずしも同じ価格になるとは限りません。
たとえば土地の評価額が1,000万円でも、近隣の相場が800万円なら売値は800万円を基準に見積もるべきです。
このように土地の評価額と売値は、差が生まれやすい構造だと理解しておきましょう。
土地の評価額の種類は大きく5つ
土地の評価額は抽象的な言葉であり、大きく5つの要素で構成されています。
一物五価ともいわれていて、それぞれ金額は異なるケースがほとんどです。
土地の価格には定価がなく、何に利用するかによって選ぶ価格が異なるため、複数の評価額が存在します。
以下の説明を参考に、土地の評価額の種類について理解を深めてください。
実勢価格
所管 |
取引当事者 |
概要 |
実際に売買された価格 |
利用目的 |
土地が取引される価格の目安を確認する |
基準日/公表時期 |
取引があったとき |
実勢価格とは、土地や不動産が実際に売買されたときの価格のことです。
売買されたときの価格が反映されているので、周辺の土地がいくらで売れているのか情報収集するときの参考になるでしょう。
ただし、実勢価格の算出基準は明確なものがなく、買い手や売り手の個人的な事情も反映されています。
そのため、これから売買する方が必ずしも同じような金額になるとは限りません。
実勢価格をチェックする際は「過去に同じような土地がこれくらいの金額で取引されたのか」くらいの温度感で参考にしましょう。
公示価格
所管 |
国土交通省 |
概要 |
毎年1月1日時点にわかる土地の価格 |
利用目的 |
土地の取引価格や課税価格の基準として活用 |
基準日/公表時期 |
1月1日/3月 |
参照元:国土交通省|地価公示
公示価格とは、標準地1㎡あたりの価格のことです。
取引による個人的な事情を除いた金額なので、土地取引にまつわる指標として活用されています。
実勢価格よりも算出基準に根拠があるため、実際に取引するときはいくらになるのかを考察する情報になるでしょう。
公示価格は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で検索できます。
「地価の情報をご覧になりたい方へ」の「データの検索」をクリックし、所有している土地の地域を選択してください。
基準地価
所管 |
都道府県 |
概要 |
毎年7月1日時点の土地1㎡あたりの正常な価格 |
利用目的 |
公示価格を補うためのもの |
基準日/公表時期 |
7月1日/9月 |
参照元:練馬区|公示地価 基準地価
基準地価とは、都道府県が毎年7月1日に発表している土地1㎡あたりの価格のことです。
公示価格との違いは、基準日と評価対象になっている土地の広さにあります。
公示価格は基準日が1月1日で、主に都市部を対象としている指標です。
都市部から離れた地域は判定の対象外となり、情報は公開されません。
一方基準地価は7月1日が基準日で、都市部とそれ以外の地域も対象となっています。
そのため公示地価の補完的な役割となっているため、都市部以外に土地を所有している方の参考情報となるでしょう。
基準地価も、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で検索できます。
「地価の情報をご覧になりたい方へ」の「データの検索」をクリックし、所有している土地の地域を選択してください。
固定資産税評価額
所管 |
市区町村 |
概要 |
1月1日現在の固定資産税課税台帳に記載された、土地や建物の評価額のこと |
利用目的 |
固定資産税・不動産取引税・登録免許税などの基礎となる |
基準日/公表時期 |
1月1日(3年に1度)/4月から6月 |
参照元:国税庁|固定資産税評価額
固定資産税評価額とは、固定資産課税台帳に記載された土地や建物の評価額のことです。
固定資産税・不動産取引税・登録免許税などの基準となるため、固定資産税評価額を把握すると、かかる税金の目安がわかります。
基本的に固定資産税評価額は、3年に1回見直されるため、評価にあわせて税額が変わります。
固定資産税評価額の調べ方は、以下を参考にしてみてください。
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この中で最も手軽な方法は、固定資産税納税通知書で確認する方法です。
毎年4月から6月に固定資産税納税通知書が送られるので、所有している土地の固定資産評価額を確認してください。
路線価
所管 |
国税庁 |
概要 |
1月1日時点で定められた路線に面する標準的な宅地1㎡あたりの価格のこと |
利用目的 |
相続税・贈与税の計算の基礎となる |
基準日/公表時期 |
1月1日/7月 |
路線価とは、1月1日時点で定められた路線に面する標準的な宅地1㎡あたりの価格のことです。
毎年1月1日を基準日として7月に公表され、相続税や贈与税を算出するときの基礎となります。
路線価を調べる際は、国税庁が運営している「路線価図・評価倍率表」で自分が土地を所有している地域を選択してみましょう。
土地の評価額から売値を調べる方法
売値を決める際は、土地の評価額を参考にします。
しかし「一物五価」との言葉もあるように、土地の価格は一定ではありません。
そのため、売値を算出する際は複数の計算方法を知る必要があります。
以下で紹介する売値の計算方法を参考に、売り出し価格を決めてください。
実勢価格から計算する方法
実勢価格÷参考にした土地の面積×自分の土地の面積 |
実勢価格から売値を計算する方法は、上記の通りです。
過去にあった取引事例のため参考情報としては有益ですが、土地の大きさや個人的な事情が異なります。
そのため、参考にした土地の面積と自分の土地の面積をかけて、実勢価格で割らなければなりません。
計算事例として、下記の内容で試してみましょう。
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この条件下で計算すると、下記のような結果となります。
2,000万円÷100㎡×50㎡=1,000万円 |
実勢価格をもとに売値を算出すると、1,000万円で売れる可能性があるとわかりました。
実勢価格は値引き交渉など個人的な事情が含まれた価格なので、参考にならないケースも少なくありません。
必ず複数の情報を参考にしながら値決めをしてください。
公示価格から計算する方法
公示価格×土地の面積×1.1 |
公示価格から売値を算出する方法は、上記の通りです。
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で公示価格を確認し、計算式にあてはめてみましょう。
万が一自分の土地の公示価格がわからない場合は、周辺の価格を参考にしてください。
計算事例として、下記の例を参考に公示価格から売値を算出してみます。
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この条件下で計算すると、下記のような結果となりました。
80万円×50㎡×1.1=4,400万円 |
公示価格を参考にすると、上記のように売値の目安を立てられます。
ただし、都市部のように数百メートル距離が変わるだけで地価が1.5倍以上になるケースもあるため、必ずしも正確な価格になるとは限りません。
あくまでも目安として捉えておくと、実際の売値を決めるときの参考となるでしょう。
固定資産税評価額から計算する方法
固定資産税評価額÷0.7×1.1 |
固定資産税評価額から売値を計算するときは、上記の計算式で求めます。
固定資産税納付書や固定資産課税台帳に記載されているので、いくらか確かめてみてください。
計算事例として、下記の条件を設定して売値の目安を算出しました。
固定資産税評価額:3,000万円 |
この条件下で計算すると、下記のような結果となりました。
3,000万円÷0.7×1.1=約4,700万円 |
固定資産税評価額が3,000 万円の土地の場合、売値の目安は4,700万円です。
毎年4月から6月に送付される固定資産税納付確認書を参考に、売値の目安を算出してみてください。
路線価から計算する方法
路線価×土地の面積÷0.8×1.1 |
路線価から売値を算出するときは、路線価と土地の面積をかけて相続税評価額を算出する必要があります。
相続税評価額は公示価格の80%と定められているため、0.8かけたあとに1.1倍して実勢価格に近づけてください。
実際に路線価から売値を算出するときは、下記の計算事例を参考にしてみましょう。
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上記の条件で売値を算出すると、下記のような結果となりました。
30万円×50㎡÷0.8×1.1=約2,100万円 |
路線価30万円、土地の面積が50㎡のときの売値の目安は、2,100万円です。
国税庁が運営している「路線価図・評価倍率表」を参考にしながら、自分の土地の路線価を確かめてみてください。
土地評価額よりも売値を高くするコツ
土地の売却を検討していて「土地評価額よりも売値を高くしたい」と考えている方もいらっしゃるでしょう。
評価額と売値は差が生まれやすいですが、必ずしも売値が安くなるとは限りません。
以下で紹介するコツを参考に、土地評価額よりも売値を高くできないか確かめてみてください。
売却のタイミングを見極める
土地の評価額よりも売値を高くしたい方は、売却のタイミングを見極めましょう。
土地に定価はなく常に変動するため、売却する時期によって手元に残せる金額が変わります。
タイミングを測る際は、下記の要素を考えてみましょう。
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このような事柄が複雑に絡んだ結果、土地の価格は上下します。
はじめて土地を売買する方が売却のタイミングを見極めるのは、かんたんなことではありません。
担当の不動産会社に相談しながら、適切な時期を見極めてみてください。
不動産一括査定サイトを活用する
土地の評価額よりも売値を高くするために、不動産一括査定サイトを活用しましょう。
不動産会社によって得意な領域は異なるため、複数社比較しながら土地売却で実績のある会社を見つける必要があります。
また不動産一括査定サイトを利用すれば、土地の情報を何度も入力する必要はありません。
一度の情報入力で4社から6社の不動産会社をマッチングしてくれるので、忙しいビジネスパーソンでも条件のいい会社を見つけられるでしょう。
関連記事:不動産一括査定26サイトを紹介|あなたに合ったサイトが見つかる!
売却前に土地の境界を確定させる
売値を高くするために、売却前に土地の境界を確定させましょう。
フェンスや塀がなく境界があいまいな土地だと、売値を安くしてしまう可能性があるからです。
法律では土地を明示する義務は設定されておらず、境界が不明な場合でも売却はできます。
しかし、土地売買契約の条項に境界を明確にすることが入っているケースが多く、法的な拘束力はなくても契約上土地の境界を確定させなければなりません。
境界を調査するには、測量士や土地家屋診断士に測量を依頼する必要があります。
引き渡し後に隣人とトラブルが起きないように、隣人の立ち合いのもと行われる確定測量図の作成を依頼してください。
土地の利用履歴を確認する
土地の評価額よりも売値を高くするために、土地の利用履歴を確認しましょう。
地中に埋まっているものや土壌汚染などがあると、価格を下げる要因となるからです。
土地の利用履歴を調べることを「地歴調査」と呼び、下記の情報を用いて調査します。
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このような方法を用いると、その土地が過去にどのような使われ方をしてきたかわかります。
売値を高くするだけでなく、瑕疵の申告漏れを防ぐためにともに重要なステップなので、不動産会社に相談しながら必ず行ってください。
土地の評価額と売値でよくある質問
土地の評価額と売値を考えるときによくある質問をまとめました。
以下を参考に、所有している土地の売値を決めるときの疑問点を減らしてください。
評価額1,000万の売値はいくらですか?
売値はどの評価額を参考にするかによって変わります。
たとえば固定資産評価額を1,000万円と設定した場合、売値の目安は1,430万円です。
土地の評価額の何倍で売れますか?
土地は公示価格の1.1倍から1.2倍で売却できるといわれています。
それぞれ評価額から売値を算出するときに1.1をかけるのは、公示価格から実際に売れる価格に近づけるためです。
まとめ
本記事では、土地の評価額と売値の関係性について解説しました。
土地の評価額と売値は似て非なるもので、土地の売却を考えている方はそれぞれの違いを理解しておく必要があります。
土地の評価額とは「実勢価格」「公示価格」など、大きく5つの要素で構成されるやや抽象的な言葉です。
定価がない土地だからこそ、算出したい事柄にあわせて基準となる評価額が設定されています。
一方、売値とは実際に取引する際に用いられる価格のことです。
土地の評価額と売値は同じ金額にならず、条件によって高くなったり低くなったりします。
土地の売却を考えている方は、記事内で紹介した計算方法をもとにいくらで売れる見込みがあるか確かめてみてください。