「マンションを売却する際に値下げは必要なの?」「買主からの値段交渉は受けなければいけないの?」と、値下げについて知りたい人も多いことでしょう。

マンション売却に値下げはつきものであるため、どのタイミングでどの程度下げるのか理解しておく必要があります。

本記事では、マンション売却時に値下げが必要なのか、下げるタイミングについて解説します。記事の後半では、値下げせずにマンション売却するコツや買主から値段交渉を受けたときの対処法も紹介していますので、値下げについて不安がある人はぜひ参考にしてください。

マンション売却するとき値下げは必要?

マンションを売却するときには、値下げが必要と考えておきましょう。

東日本不動産流通の「首都圏不動産流通市場の動向(2023年)」によると、新規登録されたマンション㎡単価と成約したマンション単価には次のような関連があるとされています。

2023年:新規登録単価72.86万円/㎡・成約単価71.90万円/㎡(値下げ率1.3%)

2022年:新規登録単価71.90万円/㎡・成約単価67.24万円/㎡(値下げ率6.4%)

2021年:新規登録単価64.48万円/㎡・成約単価59.81万円/㎡(値下げ率7.2%)

2020年:新規登録単価57.76万円/㎡・成約単価55.17万円/㎡(値下げ率4.4%)

2019年:新規登録単価57.43万円/㎡・成約単価53.45万円/㎡(値下げ率6.9%)

上記のように新規で売り出した価格よりも、成約した価格のほうが低くなっています。つまり、マンションを売却する人の多くは、何らかの理由で値下げしているわけです。

直近5年間すべてで値下げしていることからも、マンション売却中の値下げは必要であるといえるでしょう。

マンション売却で値下げするタイミング

マンション売却中に値下げするのは、次のタイミングです。

  • 買主から値段交渉されたとき

  • 販売活動を開始して3ヶ月経過したとき

  • すぐに売りたいとき

  • 繁忙期から閑散期へ移るとき

  • 築年数が経過したとき

  • 管理費・修繕積立金が値上がりするとき

ここからは、どのようなケースでマンションを値下げするのか解説します。

買主から値段交渉されたとき

買主から値段交渉されたときは、マンションを値下げするタイミングです。

不動産は高価なものであり、買い手は少しでも安く購入するため、基本的に値段交渉してきます。売主にとってはようやくみつけた買い手を逃したくないという思いから、多くのケースで値段交渉を受け入れます。

受け入れる価格は売主によって異なるものの、買主から値段交渉をされたときが値下げのタイミングといえるでしょう。

販売活動を開始して3ヶ月経過したとき

販売活動を開始して3ヶ月経過した場合、売れる可能性が低いため価格を下げます。

現代の不動産売却方法はインターネットでの情報拡散が主流となっており、販売活動を開始して3ヶ月もあれば買い手に周知されます。そのため、3ヶ月経過しても売却できない場合、価格を値下げしないと売れる確率は低いでしょう。

このような場合、再び不動産会社の査定を受け、適切な販売価格に設定し直します。

すぐに売りたいとき

すぐに売りたい場合、販売価格を下げて再販売します。

不動産は需要と供給とのバランスで値段が決まり、相場より安ければ売れるスピードも早まります。買取価格ほど値段は下げたくないものの、早く売りたい場合に有効な方法です。

不動産業者に買取を依頼する際の価格は相場の2割〜3割引きくらいであるため、仲介で売るならば値引き幅をそれより小さく、相場の1割引き程度に設定するといいでしょう。ただし、正確な相場を把握していないと、相場よりもかなり安く値付けする危険性があります。すぐに売りたい場合は、不動産会社のアドバイスをもとにして下げるのがコツです。

繁忙期から閑散期へ移るとき

繁忙期に売り出しても売れず、閑散期に入ってしまったときは価格を下げるタイミングです。

不動産は新年度になる前に入居を希望する人が多く、2月〜3月までに引渡しができる物件は高く売りやすくなります。不動産を引渡すには時間がかかるため、新年度までに入居するには前年の10月〜12月くらいまでには売り出しておかなければなりません。

1月以降に売り出すと新年度の入居に間に合わなくなり、価格を落として販売しないと売れなくなるおそれがあります。そのため、12月を過ぎても売れない場合、マンションの価格を下げるタイミングになったといえます。

築年数が経過したとき

マンションの価格は、築年数に大きな影響を受け古くなるほど値段が下がります。

東日本不動産流通機構の「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)」によると、築年数に応じて成約㎡単価は次のように下がるとされています。

築0〜5年:134.86万円/㎡

築6〜10年:112.79万円/㎡(値下がり率16.3%)

築11〜15年:100.20万円/㎡(値下がり率25.7%)

築16〜20年:87.66万円/㎡(値下がり率34.9%)

築21〜25年:77.42万円/㎡(値下がり率42.5%)

築26〜30年:58.97万円/㎡(値下がり率56.2%)

※値下がり率は築0〜5年を100としたときの割合

上記のように築年数が経過すればするほど、価格を値下げする必要があります。ただし、築31年を超えると値下がりが一段落し、あまり価格が落ちなくなります。

管理費・修繕積立金が値上がりするとき

管理費や修繕積立金が値上がりするときは、マンション価格を下げたほうがいいでしょう。

大規模修繕のための費用が計画どおりに貯まっていない場合、管理費・修繕積立金を値上げして対応します。つまり、値上げする時点で、計画どおりにお金が貯まっていないと公表しているのと同じです。修繕できないとマンションの寿命が短くなるため、買い手は購入を敬遠してしまいます。

また、値上げはダイレクトに生活費に影響するのもマイナスです。

1万円の値上げを住宅ローンに換算すると、380万円の借入額に相当します(金利0.5%・35年返済・ボーナス返済なしで計算)。管理費・修繕積立金が1万円高いマンションを購入するなら、380万円高い条件のいい物件を購入したほうがいいと判断されてしまいます。

値下げせずにマンション売却するコツ

値下げせず、マンションを売却するコツは次のとおりです。

  • マンションの相場を把握する

  • 適切なターゲット層に向けて販売する

  • ハウスクリーニングしておく

マンションを高く売るためにも、値下げせずに売却するコツ理解しておきましょう。

マンションの相場を把握する

不必要な値下げを防止するためにも、マンションの相場を把握しましょう。

販売金額が相場に近ければ、買い手から値段交渉される可能性が低くなります。しかし、正確な相場を自分で調べるのは難しいこともあり、不動産会社の査定金額と査定根拠を参考にするといいでしょう。

1社の査定では正確な相場か判断できないため、複数社の査定を受けるのがコツです。それぞれの不動産会社の査定を比較すれば、販売金額をいくらに設定すればいいのかわかります。

適切なターゲット層に向けて販売する

適切なターゲット層に向けて販売すれば、購入意欲の高い買主が見つかり、値段交渉される可能性が低くなります。

仲介では一般の売主が販売活動するわけではないため、しっかりとターゲット層を理解してくれる不動産会社に依頼することが大切です。たとえば、投資家向けのマンションを売却するなら投資物件が得意な会社、郊外のマンションなら地元密着の会社などです。

売却するマンションにあった不動産会社を選択すれば、自ずと適切なターゲット層に向けて販売活動がおこなわれます。

ハウスクリーニングしておく

ハウスクリーニングすれば室内がキレイになり、買い手の購入意欲が高まって値段交渉されにくくなります。

買い手は室内が汚いとリフォームが必要になると判断し、補修費用分の値段交渉を入れてきます。しかし、ハウスクリーニングが終わっていれば、リフォームが必要と思われにくくなって値段交渉される可能性が低くなるはずです。

ただし、設備に不具合があったり、交換時期を迎えているものが多かったりする場合、ハウスクリーニングしてもリフォーム費用分の値段交渉をされるおそれがあります。このような場合は、あえてハウスクリーニングせずに、費用を抑えたほうが手元に残るお金が増える可能性もあります。

買主から値段交渉を受けたときの対処法

買主から値段交渉を受けたときの対処法は、次のとおりです。

  • 相場以下になる交渉は受けない

  • 金額以外の項目を交渉材料にする

  • ローン残高を調べておく

買主からの大幅な値下げを受けないよう、しっかりと対策しましょう。

相場以下になる交渉は受けない

買主から相場以下になる値段交渉された場合、受け付けないようにしましょう。

買主によっては交渉がとおればラッキーを思っている人や、相場を知らずに交渉してくる人もいます。

相場以下の交渉を受け付けるくらいなら、相場に下げて販売し続けたほうが高く売れるでしょう。相場で販売すれば問い合わせが集中し、買い手どうしで競争意識が働き値段交渉されにくくなるからです。

金額以外の項目を交渉材料にする

マンションを早く売りたいものの値段交渉に応じたくない場合、金額以外の項目を交渉材料に使いましょう。

金額以外で、交渉材料に使える主な項目は次のとおりです。

  • 不要な家具や家電を残しておく

  • 買い手の希望日程で引渡す

  • 手付金の額を少し減らす など

交渉材料はいくつかありますが、売主に不利になる内容も含まれます。たとえば、手付金の額を減らすと契約しやすくなるものの、手付解約されやすくなるといったデメリットです。

金額以外の項目を交渉材料にする場合、不動産会社のアドバイスと受けつつ進めていきましょう。

ローン残高を調べておく

値段交渉に回答する前にローン残高を調べておかないと、売却できなくなるおそれがあります。

不動産を担保にして融資を受けている場合、全額返済しないと金融機関は抵当権の抹消に応じてくれません。販売価格で売ればローン残高をすべて返済できたとしても、値段交渉を受けた結果、全額返済できなくなるケースがあります。

販売価格と残高が近い場合、金融機関にローンの残りの金額を聞いてから値段交渉に回答しましょう。

マンション売却の値下げに関する注意点

マンション売却の値下げに関する注意点は、次のとおりです。

  • 焦って値下げしない

  • 値下げのタイミングをスケジュール管理する

  • 依頼する不動産会社の質を見極める

どのような注意点があるのか理解し、大幅に値下げしないよう気を付けましょう。

焦って値下げしない

早くマンションを売却したいと思っても、焦って値下げしてはいけません。

マンションを早く売りたいなら、販売価格を下げて販売活動すると効果的です。しかし、焦ってしまうと相場よりも低い販売価格に設定するおそれがあります。

不動産は需要と供給のバランスで成り立っており、相場で販売して売れ残ることはなかなかありません。焦る気持ちを抑え、相場まで下げれば売れると考え直して売却できるまで待つといいでしょう。

値下げのタイミングをスケジュール管理する

値下げするなら、タイミングを管理して実行するようにしましょう。

不動産には繁忙期があり、10月〜12月に売り出して2月〜3月に引渡しするスケジュールで売り出せば高く売れる可能性があります。そのため、なかなか売れないからといって、10月に値下げするのは繁忙期の高価を利用できずもったいない行動といえます。

このケースの場合、しっかりと値下げのタイミングを管理して1月に値下げするといいでしょう。

値下げするタイミングを図るには専門的な知識が必要のため、不動産会社に相談しつつスケジュール管理することをおすすめします。

依頼する不動産会社の質を見極める

不動産会社の販売力が高ければ値段交渉される可能性が低くなるため、依頼する会社の質の見極めが重要です。

マンションの販売活動をおこなうのは不動産会社であり、綿密な販売計画を立て、ターゲットを絞った活動する会社なら高く売れる可能性が高いといえます。

査定を受ける際には、担当者に対してどのような販売計画で活動するのか聞いてみましょう。

まとめ

買い手からの値段交渉や時期による値下げなど、マンションを売却する際には販売価格を下げるタイミングが訪れます。

値下げが必須とはいえないものの、多くの売主は一回以上の値引きをおこなって売却しています。しかし、人によっては値下げしたくない人もいることでしょう。販売価格を変更するこなく売却したいなら、値下げせずに売るコツを実践することが大切です。

値段を下げずに売却するのはなかなか難しいため、さまざまな対策を講じたうえで、信頼できる不動産会社に売却を依頼するのがコツです。