不動産を売却する方法として「仲介」や「買取」はよく知られていますが、「不動産買取保証」というものがあることをご存じでしょうか。不動産買取保証は仲介と買取を組み合わせたようなシステムであり、売却スケジュールが明確になりつつも、高く売れるチャンスもある方法です。
本記事では不動産買取保証とは何か、利用するメリット・デメリットについて解説します。記事の後半では、おすすめの人特徴を紹介していますので、不動産買取保証が自分にあっているか確認してみてください。
この記事の目次
不動産買取保証とは
不動産買取保証とは、一定期間は仲介で販売を進め、期間満了したら不動産業者が仲介物件を買取するシステムです。
どのようなシステムなのか詳しく理解するには、次の項目を知っておく必要があります。
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通常の仲介との違い
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即時買取との違い
ここからは、不動産買取保証と仲介との違い、即時買取との違いについて解説します。
通常の仲介との違い
不動産買取保証の仲介には期限がありますが、通常の仲介は売れるまで続きます。
不動産買取保証では3ヶ月や半年といった期間を設け、その期間内は仲介で販売活動をおこない、期間内に売れなければ仲介を担当した会社が不動産を買取します。
一方、通常の仲介は、買い手と売買契約を締結するまで続きます。
通常の仲介で「専属専任媒介契約」か「専属専任媒介契約」を締結した場合、最長3ヶ月の期限が示されますが、これはあくまでも専任の契約が切れるまでの期間であり、買取がおこなわれたり仲介が一方的に打ち切られたりするわけではありません。
即時買取との違い
不動産買取保証と即時買取との違いは、買取の契約を締結するまでに期間があるかどうかです。
不動産買取保証では、売主と仲介会社が取り決めた期間を経過したら買取します。一方、即時買取は、売主と買取業者の売買条件が合致したら、すぐに売買契約を締結します。
不動産買取保証を利用する5つのメリット
不動産買取保証を利用すると、次の5つのメリットを得られます。
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売却できる時期が確定する
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高く売れる可能性もある
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無理な内覧に対応する必要がない
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契約不適合責任が免責になる
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仲介手数料を払わなくていい
どのようなメリットがあるのか把握し、自分にあった売却方法か判断していきましょう。
1.売却できる時期が確定する
不動産買取保証には期限があるため、売却のスケジュールを管理しやすくなります。
仲介の場合、いつ買い手が見つかるのかわかりません。そのため、住み替えする際など、新居の購入時期にあわせるのが難しくなります。
しかし、不動産買取保証を利用すれば、新居の購入時期と仲介の期限をあわせておけばタイミングよく住み替えできます。
2.高く売れる可能性もある
不動産買取保証には仲介で販売する期間があるため、即時買取と違って高く売れる可能性があります。
即時買取の場合、売却価格は相場の7割〜8割くらいになります。不動産買取保証も買取になってしまうと相場より低くなるものの、仲介で売却できた場合は相場での売却が可能です。
3.無理な内覧に対応する必要がない
不動産買取保証は設定した期間がくれば買取してもらえるため、売却に熱心になりすぎる必要がなく、無理な内覧にも対応する必要がありません。
内覧は買い手の都合の日程で希望が入るため、平日昼間などは対応しにくいでしょう。しかし、内覧の機会を逃すと売却できるスピードが落ちてしまうため、通常は仕事を休んだり、知り合いに内覧の立ち会いをしてもらったりしなければなりません。
しかし、不動産買取保証では買取してもらえる日程が決まっているため、無理して内覧に対応しなくても不動産を売却できます。
4.契約不適合責任が免責になる
不動産買取保証で買取になった場合、契約不適合責任が免責になります。
契約不適合責任とは、引渡しした商品が契約書に記載した商品よりも性能が低かった場合、売主が買主に対して補償しなければならないという責任です。
たとえば、雨漏りしていない家を引渡すとして契約したのにもかかわらず、引渡し後すぐに雨漏りが発覚した場合は契約不適合責任を負わなければなりません。
契約不適合責任を果たすためには損害賠償したり、性能が低下している部分を補修したりする必要があります。
仲介の場合は契約不適合責任を負う必要があるものの、買取では基本的に契約不適合責任を負いません。家の性能を正確に把握するのは困難であるため、契約不適合責任を負わなくていいのは売主にとって大きなメリットです。
5.仲介手数料を払わなくていい
不動産買取保証の買取になった場合、仲介手数料がかかりません。
仲介手数料はその名称のとおり、仲介のときに売買が成立したときに払う費用です。
なお、仲介手数料の金額は売買金額によって、次の表のように変動します。
計算式 |
計算式の利用条件 |
仲介手数料 = 売買金額 × 3% + 6万円 |
売買金額が400万円を超える場合 |
仲介手数料 = 売買金額 × 4% + 2万円 |
売買金額が200万円を超え400万円以下の場合 |
仲介手数料 = 売買金額 × 5% |
売買金額が200万円以下の場合 |
たとえば、3,000万円の不動産を仲介で売却した場合、96万円(税抜)の仲介手数料がかかります。仲介手数料は高額になりがちであるため、買取時に払わなくてもいいのはメリットといえるでしょう。
不動産買取保証を利用する3つのデメリット
不動産買取保証には、次のように3つのデメリットがあります。
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買取になると仲介より売却金額が低くなる
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積極的に販売活動してくれないケースもある
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利用するのに条件がある
デメリットの内容を理解し、不動産買取保証を利用するかどうか決めていきましょう。
1.買取になると仲介より売却金額が低くなる
不動産買取保証の買取を利用すると、仲介よりも売却金額が低くなります。
買取の金額は一般的に、仲介の7割〜8割程度になってしまいます。仲介において5,000万円で売れる不動産の場合、買取では3,500万円〜4,000万円になる可能性があるということです。
仲介と買取の売却金額の差は大きく、すぐに不動産を売る必要がない人にとってはデメリットになります。
2.積極的に販売活動してくれないケースもある
不動産買取保証をおこなっている会社によっては、積極的に販売活動してくれないケースがあります。
不動産会社からすると不動産買取保証をつけていれば、一定期間経過後に不動産を買取できるため利益を確保できます。そのため、仲介での販売活動に必要な広告費用や、人件費が無駄だと判断する会社もいるわけです。
不動産買取保証を利用する際には、仲介でもしっかりと販売活動をおこなってくれる信頼できる不動産会社を選ぶことが大切です。
3.利用するのに条件がある
不動産買取保証を利用するには、不動産会社の決める条件をクリアしなければなりません。
たとえば、東急リバブルの不動産買取保証を利用するには、次の条件を満たす必要があります。
項目 |
マンション |
土地・戸建 |
築年数 |
昭和57年(1982年)1月以降の築年 |
築30年以内(申請ベース) |
保証額 |
東急リバブルの査定価格90%以下かつ1億円以下 ※首都圏エリアのみ「1億5,000万円以下」 |
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販売期間 |
3ヶ月以上〜6ヶ月未満 |
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面積 |
専有面積30㎡以上 |
敷地面積40㎡以上 |
権利 |
所有権 |
引用:東急リバブル「リバブル売却保証」
上記のように売却する物件の種類や内容、金額など細かく条件が指定されています。どこの会社の条件にあわない物件を売却する場合は、仲介か即時買取を利用するといいでしょう。
不動産買取保証がおすすめの人の特徴
不動産買取保証がおすすめの人の特徴は、次のとおりです。
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一定の期間内で不動産を売却したい人
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いつ売れるのか心配したくない人
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高く売るチャンスもほしい人
おすすめの人の特徴が自分の考えとあっているか確認し、不動産買取保証を利用するか判断しましょう。
一定の期間内で不動産を売却したい人
住み替えを検討しているといった一定期間内で不動産を売却したい人は、不動産買取保証がおすすめです。
住み替えする際に、自宅の売却資金を新居の購入費用に充てたいと考える人は多くいます。しかし、仲介で売却するといつ売れるのかわからず、なかなか購入とのタイミングがあいません。
不動産買取保証なら売却の期限を設定できるため、購入とのタイミングをあわせられます。
いつ売れるのか心配したくない人
仲介での売却はいつ売れるのかわからず、心配・不安になってしまう人がいます。
すぐに不動産を売る必要がないとしても、売却時期の目途が立たないと資金計画も立てられず、売主は心配になってしまうものです。しかも、内覧の希望が入るたびに一喜一憂することにもなり、穏やかな気持ちを保つのが難しくなります。
不動産買取保証を利用すれば一定期間経過後には必ず売却できるため、心の余裕をもちつつ販売活動をおこなえます。
高く売るチャンスもほしい人
一定期間内に売却したいものの、高く売るチャンスも逃したくないという人も多いはずです。
たとえば、ローンを返済するのが困難になり一定期間に売却しなければならないものの、生活費を多く残すために高く売りたいといった人です。
仲介だと返済日に間に合うかわからず、即時買取だと手元に残るお金が減ってしまいます。しかし、不動産買取保証を利用すれば、仲介の期間で高く売るチャンスがありつつも、返済期限内に売却を終わらすこともできます。
不動産買取保証を利用するときの注意点
不動産買取保証を利用するときの注意点は、次のとおりです。
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不動産買取保証がある不動産会社は多くない
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不動産買取保証の金額は業者によって違う
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物件によっては買取保証を断られてしまう
注意点を理解し進めれば、不動産買取保証で満足いく不動産売却ができるようになります。
不動産買取保証がある不動産会社は多くない
不動産買取保証を実施している不動産会社は多くなく、売却依頼できる会社は限定されてしまいます。
不動産買取保証の制度を維持するには、買取できる資金が必要です。個人経営や中小企業の不動産会社では資金の面で、不動産買取保証ができません。そのため、不動産買取保証を実施している企業の多くは規模の大きいところに限定されます。
しかし、仲介においては不動産が高く売れるかどうかと会社の規模にはあまり関係性がなく、街の不動産屋のほうが高く売ってくれるケースもあります。不動産買取保証の利用を前提にしてしまうと、自ら高く売れる選択肢を逃すとになりかねません。
不動産を売却する際には、まずどの会社が一番高く売ってくれそうか確認することが大切です。
不動産買取保証の金額は業者によって違う
不動産買取保証の買取額は不動産会社によって異なるため、必ずしも高値で買取してもらえるわけではありません。
買取金額は、それぞれの不動産会社が独自の計算方法を用いて算出します。算出方法の違いから、買取金額に違いが生まれてしまいます。不動産会社の中には故意に安い買取金額を設定するところもあり、適切な金額なのか判断しなければなりません。
買取金額が正しいかどうか判断するときには、複数の買取業者から買取金額の見積もりを出してもらいましょう。複数の会社の金額と算出の根拠を比較すれば、買取金額の相場がわかります。
物件によっては不動産買取保証を断られてしまう
不動産買取保証を利用するにはいくつかの条件を満たす必要があり、物件によっては利用を断られてしまいます。
不動産会社は、不動産買取保証で物件を買取したら再販売します。そのため、できる限り再販売しやすい条件の物件を買取しようと考え、売りにくい不動産は買取してくれません。
ただし、売りにくい物件の基準は不動産会社によって異なるため、不動産買取保証を断られてもほかの会社に依頼すれば引き受けてくれるケースもあります。
まとめ
不動産買取保証とは、仲介で販売する期間を決め、期間終了後に物件を買取する制度です。
仲介と即時買取のメリットを組み合わせた性質をもっており、高く売る機会があるうえに、一定期間経過後には必ず不動産売却できます。
ただ、不動産買取保証を実施している会社は少なく、かならず制度を利用できるわけではありません。不動産買取保証はメリット・デメリット、注意点を理解してから利用を検討しましょう。
自分に適した制度なのか理解してから手続きすれば、不動産買取保証のメリットを最大限に活かせ、満足いく不動産売却につながるはずです。