「自分が持っている土地を知り合いに買ってもらいたい」「仲介手数料を払いたくないから個人売買したい」このように悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

法律上の観点からも知り合いと土地の個人売買は可能ですが、契約前後にトラブルを起こさないためにも慎重に対応する必要があります。

万が一契約後に重大なミスをしていると、損害賠償や契約解除を求められることも考えられるでしょう。

そこで本記事では、土地を知り合いと個人売買するときのメリットや注意点をまとめました。

具体的な取引手順やトラブルを防止するための対策も紹介しているので、参考にしてみてください。

この記事の目次

土地の個人売買はできる!ただし知り合いに限定したほうがいい

結論からいえば、土地の個人売買は可能です。

個人間の土地売買は法律で禁止されていないため、売り手と買い手で条件がまとまればそのまま売却できます。

ただし、手続きの複雑さや購入後のトラブルを避けるためにも、個人間での土地売買はおすすめできません。

重要事項の説明が漏れていたり、契約後に土地の問題が見つかったりすると、時間も費用もかかる可能性があります。

「仲介手数料を削減したい」と考えている方も、書類作成にかかる時間や契約後のトラブルで失うお金を考えると、手数料がかかってでも不動産会社に仲介してもらうのが堅実です。

それでも土地を売却したい場合は、お互いに理解がある知り合いに限定して取引するといいでしょう。

基本的には不動産会社に依頼しての取引をおすすめします。

土地を知り合いと個人売買するメリット

以下では、土地の個人売買について具体的な3つのメリットを紹介します。

仲介手数料を節約できる

土地の個人売買を行うメリットは、不動産会社に支払う仲介手数料を節約できる点です。

支払う費用が少なくなるため、同じ金額で取引したときに手元に多くのお金を残せます。

「仲介手数料はいくらかかるのだろう」と思っている方は、以下の表を確認しながら手数料が決まる仕組みを知っておきましょう。

不動産売買価格

仲介手数料の上限額

200万円以下

売買価格×5%+消費税

200万円〜400万円以下

(売買価格×4%+2万円)+消費税

400万円超

(売買価格×3%+6万円)+消費税

参照元:全日本不動産協会 埼玉県本部・不動産保証協会 埼玉県本部

たとえば2,000万円で土地を売却した場合、72.6万円の仲介手数料がかかります。

同じ金額で取引すると仮定するなら、この費用も自分の手元に残せるため、大きなメリットとなるでしょう。

信頼できる人に土地を引き渡せる

土地を知り合いと個人売買するメリットは、信頼できる人に引き渡せる点です。

「先代から受け継いできた思い入れのある土地だから」などと考えているなら、信頼できる知り合いに購入してもらったほうが納得できるでしょう。

不動産会社に依頼してポータルサイトに掲載すると、サイトを閲覧した方が誰でも内見や条件交渉できる状態になってしまいます。

クローズドな場で自分が納得して売れる方と取引したい場合は、個人間での売却を検討してください。

売却活動を自由に行える

土地を知り合いに対して個人売買するメリットは、売却活動を自由に行える点にもあります。

不動産会社に依頼すると重要事項説明書や契約書の読み合わせなどを行う必要があり、手続きに時間を取られるケースも少なくありません。

個人間で取引する場合は手続きを自由に行えるため、接触する人が少なくなるぶんストレスを感じにくくなるでしょう。

しかし個人間で土地を売買する場合も、契約書や重要事項の確認は欠かせません。

「このような問題があると聞かされていなかった」などとトラブルに発展させないために、個人間での取引でも契約書の確認や重要事項の説明は徹底してください。

土地を知り合いと個人売買するデメリット

土地を個人売買するデメリットは3つあります。

不動産取引がはじめての場合、不動産会社を介して取引したほうがいいケースも少なくありません。

契約時にかかる手間や契約後のトラブルを避けるためにも、デメリットをみながら本当に個人売買でいいか確認してみてください。

相場よりも価格が下がる可能性がある

土地を知り合いと個人売買するデメリットは、相場よりも成約価格が下がる可能性がある点です。

「知り合いだから安くしてよ」などと交渉を受けて、断りにくく値下げに応じてしまうケースも考えられるでしょう。

相場と同じくらいの金額で売却したいと考えている方は、値下げの最低ラインを決めておく必要があります。

また知り合いからの値下げ交渉を断れない方は、不動産会社に仲介を依頼したほうが手元に残せるお金を増やせるでしょう。

知り合いとの個人売買で相場よりも成約価格が下がる可能性があることを理解したうえで、売却活動をはじめてください。

金融機関のローン審査に通らない

土地を知り合いと個人売買するデメリットは、金融機関のローン審査に通らない点です。

金融機関で住宅ローンを組む際は重要事項説明書の読み合わせが必要で、この作業は宅地建物取引士の資格保有者でないと行えません。

無資格の個人売買では重要事項説明書の読み合わせができないため、金融機関の住宅ローン審査にも断られてしまいます。

つまり基本的に土地を個人売買する際は、現金一括での取引となります。

購入者によっては金銭的に厳しい条件になる可能性もあるので、不動産会社に仲介を依頼するのがおすすめです。

購入後にトラブルが起こりやすい

土地を知り合いと個人売買すると、購入後にトラブルが起きやすくなります。

本来契約前にすり合わせておくべきだった重要事項の共有が抜けていて、売却してから問題が発覚する場合が少なくないからです。

たとえば土地の境界があいまいだったり、契約書の内容に不備があったりすることも考えられるでしょう。

個人売買で購入後のトラブルを避けるためには、購入前に土地の境界や問題点をはっきり伝える必要があります。

また購入後に何かしらトラブルがあることを想定したうえで、売買で得たお金をすぐ使い込まないように注意してください。

土地を知り合いと個人売買するときに必要な書類

書類

概要・取得方法

土地・建物の登記事項証明書

土地の権利がわかる書類。法務局でオンライン申請できる

固定資産税納税通知書

固定資産税を納付したことの履歴がわかる通知書。毎年4月から5月に届く

売買契約書

土地や建物の地番や種類、売買代金などがわかる資料。不動産を購入した際に渡される

測量図

土地の測量結果などがわかる資料。手元にない場合は法務局で請求できる

境界確認書

隣地との境界を確定させた資料のこと。測量会社に依頼して取得するのが一般的

抵当権抹消書類

金融機関が有している権利を抹消できる書類。ローンを完済したときに金融機関から受け取れる

契約書

売買の金額や支払い時期などをまとめた書類のこと。個人売買の場合は自分で作成する必要がある

土地を知り合いと個人売買する際は、上記の書類を用意しましょう。

個人売買の場合は書類の準備に時間がかかるので、購入希望者と交渉がはじまる前にひとつずつ準備しておくとスムーズに取引できます。

契約後のトラブルを避けるためには、契約書や重要事項説明書を作成して条件をすり合わせなければなりません。

口約束での契約はのちのトラブルを招くので、書類や印鑑を用意して個人売買を行ってください。

土地を知り合いと個人売買するときにかかる費用の種類や税金

土地を知り合いと個人売買するときは、不動産会社に支払う仲介手数料はかかりません。

しかしそのほかにも費用がかかるため、事前にかかる費用の種類を知っておきましょう。

費用の種類

概要

印紙税

契約書にかかる税金のこと。土地の価格によって200円から48万円の税金がかかる

土地の測量費用

境界を明確にするときにかかる費用のこと。測量の種類によって異なるが、10万円から50万円程度の費用がかかる

登録免許税

登記手続きにかかる税金のこと。売買の場合は不動産価格の2%納める

司法書士への報酬

登記手続きなどを行う際に司法書士に依頼する。おおむね5万円から15万円程度

所得税・住民税

売却した土地から譲渡益が発生した場合にかかる。土地を所有していた期間によって計算が異なる

土地売買の中で最も大きな費用は仲介手数料ですが、それ以外にもさまざまな費用がかかります。

仲介手数料を削っても成約価格のすべてを総取りできるわけではないため、あらかじめ理解しておきましょう。

土地を知り合いに個人売買するときの流れ

土地の個人売買を検討していて「はじめてだから流れがわからない」という方もいらっしゃるでしょう。

そこで以下では、土地を知り合いに個人売買するときの流れを解説します。

1.相場をもとに売り出し価格を決める

まずは近隣の土地相場を確認しながら、売り出し価格を決めましょう。

「知り合いとの取引とはいえ、手元に残るお金を減らしたくない」と考えている方は、必ずこの一手間が必要になります。

土地の相場を確認する際は、下記の方法を実践してみましょう。

  • 不動産情報ライブラリで地価を確認する

  • 不動産会社に査定を依頼する

  • 不動産会社のポータルサイトを参照する

相場を知る際に手軽な方法は、不動産情報ライブラリの参照と各社のポータルサイトを確認することです。

まずは国土交通省が運営している不動産情報ライブラリを参考にしながら、土地を所有している地域の相場をチェックしてください。

2.知り合いと売買価格を調整する

はじめのステップで売り出し価格を決めたら、知り合いと話しながら売買価格を調整します。

最初に提示した条件で話がまとまらないケースもあるので、購入希望者の知り合いがどのような条件を求めているか確認しましょう。

売買価格が決まったら、引き渡し時期も調整してください。

ステップ3で売買契約書を作成する際に、重要な情報になります。

3.売買契約書を作成する

これまでの情報をもとに、売買契約書を作成します。

契約書には売買代金や引き渡し時期を記載し、そのほか契約解除などの条件もまとめましょう。

「どのように記載すればいいかわからない」という方は、日本民事紛争等和解仲介機構が用意している土地売買契約書のひな形がおすすめです。

あるいは契約書の作成を司法書士に依頼し、個人にあった形にカスタマイズしてもらうのも有効でしょう。

4.売買契約を締結する

売買契約書の読み合わせが完了したら、買い手と売買契約を締結しましょう。

お互いに署名・捺印を行い、契約書の内容に同意してください。

一般的な取引では、このタイミングで手付金として購入代金の10%程度を支払います。

決済と引き渡しが別日に行われるのであれば、手付金を受領しておくとトラブルを軽減できるでしょう。

5.決済し土地を引き渡す

引き渡し当日になったら残りの代金を受領し、土地を引き渡しましょう。

同時に所有権移転登記の申請書を渡して、その後の手続きがスムーズに進むようにしてください。

6.確定申告をする

土地売買の結果譲渡益が出た方や税制特例を活用する方は、確定申告を行う必要があります。

土地を売却した翌年の2月16日から3月15日までが申請の期限なので、忘れずに対応してください。

万が一自分だけで申告できない場合は、税理士に代理で対応してもらいましょう。

土地を知り合いと個人売買する際に起こりやすいトラブルと対策

不動産会社を介さずに土地を売買する場合、契約後にトラブルが起きるケースも少なくありません。

これから知り合いと土地を個人売買する方は、以下で紹介するトラブル事例と対策を参考にしてみてください。

売買契約書の内容に不備がある

土地を知り合いと個人売買するときに起こりやすいトラブルは、売買契約書の内容に不備があることです。

不動産会社が間に入っていないため、契約後に不備が見つかることも考えられるでしょう。

購入金額など購入希望者に大きな損失がある部分に不備があると、契約解除や損害賠償請求に発展することもあります。

売買契約書の不備を減らすための対策は、司法書士に売買契約書の作成を依頼することです。

土地の登記情報や売買価格を確認し、対応できる場合は売買契約書を作成してくれます。

ただし、土地の規制や制限の調査など、不動産会社が行うべき内容は対応してくれません。

土地の状況によっては不動産会社への依頼を勧められる可能性もあるので、あらかじめ理解のうえ相談してください。

売買契約書に印紙を貼り忘れる

売買契約書に印紙を貼り忘れることも、土地を知り合いと個人売買するときによくあるトラブルです。

個人間で契約書を結ぶときも金額に応じた印紙が必要なので、以下の表を参考に売買価格にあわせて印紙を用意してください。

契約金額

本則税額

軽減税額

10万円以上50万円以下のもの

400円

200円

50万円以上100万円以下のもの

1,000円

500円

100万円以上500万円以下のもの

2,000円

1,000円

500万円以上1,000万円以下のもの

1万円

5,000円

1,000万円以上5,000万円以下のもの

2万円

1万円

5,000万円以上1億円以下のもの

6万円

3万円

1億円以上5億円以下のもの

10万円

6万円

5億円以上10億円以下のもの

20万円

16万円

10億円以上50億円以下のもの

40万円

32万円

50億円を超えるもの

60万円

48万円

参照元:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」

たとえば1,500万円の土地なら、1万円の印紙が必要です。

印紙は郵便局や法務局などで購入できるので、最寄りの販売所を探してみてください。

価格交渉がまとまらず対立する

知り合いと土地の個人売買において、価格交渉がまとまらずに対立するケースも考えられます。

売り手は相場と同じ価格での売却を希望していて、買い手は相場以下での購入を考えていると、折り合いがつかずにトラブルになる可能性があります。

買い手は「知り合い価格で割引して」とお願いするケースも少なくありません。

自分が損する形で売却しないように、値下げする最低ラインを決めたうえで個人売買をはじめましょう。

万が一価格交渉がまとまらず売却できないと判断したら、無理に取引せず不動産会社を頼ってみてください。

引き渡し後に土地の問題が発覚し瑕疵担保責任に問われる

知り合いと土地の個人売買をするときによくあるトラブルは、引き渡し後に土地の問題が発覚する事例です。

本来契約前に購入希望者に伝えなければならないことを隠して販売すると、瑕疵担保責任に問われてしまいます。

瑕疵担保責任とは、土地に重大な欠陥が見つかったときに、売り手が責任を負うことを指します。

たとえば下記のような瑕疵は契約前に伝える必要があるので、あらかじめ理解しておきましょう。

瑕疵の種類

内容

物理的瑕疵

土壌汚染・地中障害物など、建物自体に問題がある状態のこと

法律的瑕疵

土地に建築制限が課されている場合や、法令で用途が限定されていること

心理的瑕疵

自殺や殺人事件などで、心理的な問題があること。いわゆる事故物件

環境瑕疵

騒音・振動・異臭・日当たりなどの環境的な要因で引き起こされている問題のこと

参照元:大阪府宅地建物取引士センター|不動産取引における瑕疵担保責任③-物理的瑕疵-

土地に関する問題を考えるうえでは、主に上記4つの瑕疵に該当する事柄はないか確認する必要があります。

万が一隠したまま契約すると、損害賠償請求や契約解除になる可能性があるので、契約前に包み隠さず伝えてください。

関連記事:土地を売りたいときはどこに相談する?ケースごとのおすすめを解説

土地を知り合いと個人売買するときによくある質問

土地を知り合いと個人売買するときによくある質問をまとめました。

トラブルや手続きのミスが起きる可能性があるので、以下を参考に疑問点を減らしてから取引をはじめてください。

土地の売買は誰に頼むのか?

土地の売買を考えている方は、不動産会社に依頼しましょう。

購入希望者を見つけてくれたり、手続きを代理してくれたりするため、取引にかかる時間を節約できます。

土地の売買は自分でできますか?

法律上、土地の売買を個人間で行うことは問題ありません。

しかし、契約書の不備や支払いに関するトラブルなど、何かしらの問題が起きる可能性があります。

基本的には不動産会社を介しての取引を検討してみてください。

土地を売買するときに司法書士費用は誰が払うのでしょうか?

土地を売買するときにかかる司法書士費用は、何を依頼するかによって誰が払うかが変わります。

たとえば契約書の作成は、売り手の負担となるケースがほとんどです。

一方登録免許税は買い手の負担となるため、どちらも支払う可能性があることを理解しておきましょう。

まとめ

本記事では、土地を知り合いと個人売買できるのか解説し、メリットやトラブルを防止するための対策も紹介しました。

法律上の観点からも、土地の個人売買は可能です。

しかし、契約書の不備や契約後のトラブルを未然に防ぐためにも、全員におすすめできる方法ではありません。

一度不動産会社に査定を依頼し、仲介手数料などの費用も含めて手元にいくら残る見込みがあるか確認するのもひとつの手でしょう。

個人間の取引だからこそ、トラブルにならないよう書類作成や代金受領をていねいに行ってください。