不動産売却する際に「消費税は課税されるの?」と、税金について悩んでいる人も多いでしょう。不動産売却において、消費税が課税されるものやサービスは限られます。

消費税は税率が高いため、どのようなものやサービスに課税されるのか理解しておくことが大切です。

本記事は、消費税が課税される条件や課税対象になるものについて解説します。記事の後半では消費税の計算方法も紹介しますので、自分で課税額を計算したい人もぜひ参考にしてください。

消費税が課税される条件

消費税が課税されるのは、次の条件をすべて満たした場合です。

  1. 日本国内で取引する

  2. 事業者が事業としておこなう

  3. 対価を得る

  4. 資産の譲渡や貸付け、役務を提供する

すべての条件を満たしたら、取引するものやサービスの価格に対し10%の消費税が課税されます。たとえば、100万円のものを売買する場合、10%である10万円が消費税額です。

不動産売却で課税対象になるもの

不動産売却で、消費税の課税対象になるのは次の項目です。

  • 事業用の建物

  • 仲介手数料

  • 司法書士の報酬

  • ローンの手数料

どの項目に消費税が課税されるのか理解し、きちんと予算に税金を組み込んでおきましょう。

事業用の建物

国内の事業用建物を売買した場合、売買価格に消費税が課税されます。

事業用の建物とは、家賃収入を目的に購入した投資用建物や、事業として再販売するために購入した建物などです。

ただし、法人でも個人事業主でも免税事業者に該当する場合、事業用の建物を売却しても消費税は課税されません。

なお、免税事業者とは、次の条件に該当する事業者です。

  • 前々年の課税売上高が1,000万円以下

  • 前年の1月1日〜6月30日までの期間の課税売上高が1,000万円以下

仲介手数料

仲介手数料は事業者がおこなうサービスであり、消費税が課税されます。

仲介手数料は、売買する不動産の価格によって次の表のように変動します。

計算式

計算式の利用条件

仲介手数料 = 売買金額 × 3% + 6万円

売買金額が400万円を超える場合

仲介手数料 = 売買金額 × 4% + 2万円

売買金額が200万円を超え400万円以下の場合

仲介手数料 = 売買金額 × 5%

売買金額が200万円以下の場合

たとえば、1,000万円の不動産を売買する場合、仲介手数料の金額と消費税額は次のとおりです。

1,000万円 × 3% + 6万円 = 36万円(仲介手数料)

36万円 × 10% = 3.6万円(消費税)

司法書士の報酬

司法書士は個人事業主が多いものの課税事業者になっているケースがほとんどで、司法書士の報酬に消費税が課税されます。

不動産売却において、司法書士の報酬がかかるシーンは次のとおりです。

  • 抵当権抹消登記

  • 相続登記

  • 所有権移転登記

  • 住所・氏名変更登記

司法書士の報酬は、登記の種類や実行数、登記に関係する不動産の価値によって増減します。担当する司法書士が報酬額を決めるため、一律の金額はありません。

ローンの手数料

ローンの手数料は法人である金融機関がおこなうサービスであり、消費税の課税対象になります。

不動産売却において、繰上返済や一括返済の手数料が対象です。ただし、次の例のように、手続き方法によっては手数料自体がかからないケースもあります。

手続方法

全額繰上返済

一部繰上返済

SMBCダイレクト

(インターネットバンキング)

5,500円

無料

窓口

専用パソコン

11,000円

5,500円

書面

22,000円

16,500円

※一部例外あり

引用:三井住友銀行「住宅ローン 繰上返済」

消費税はものやサービスの価格に対して課税されるため、無料の手続きの課税額はゼロです。

不動産売却で課税対象にならないもの

不動産売却で、消費税の課税対象にならないのは次の項目です。

  • 非事業用の建物

  • 土地

  • 免税事業者

消費税の課税対象にならない項目を理解し、課税額を間違えないよう注意しましょう。

非事業用の建物

事業用に該当しない建物の売買には、消費税は課税されません。

具体的には、次の建物の場合、仮に課税事業者だとしても消費税は課税されません。

  • 自宅

  • 別荘といった自己利用を前提とした住居用建物

非事業に該当するかどうか判断に迷う場合は、税理士に課税されるのか確認しましょう。

土地

土地は消費されるものではなく、消費税の課税対象にはなりません。

法人、課税事業者だとしても、土地を売却しても課税されません。事業用の建物がある土地を売却する場合、建物の売却価格に対して消費税が課税されるだけです。

免税事業者

免税事業者の場合、事業用の建物を売却しても消費税は課税されません。

課税事業者になるか、免税事業者になるかは、前々年もしくは前年の課税売上高に影響を受けます。そのため、免税事業者が不動産を売却する場合、課税事業者になる前に売却しておきましょう。

なお、免税事業者が事業用不動産を売却すると、課税売上高が一気に上昇し、翌年もしくは翌々年から課税事業者になる可能性があることには注意が必要です。

不動産売却で課税される消費税の計算方法

不動産売却で課税される消費税の計算方法は、次のとおりです。

  • 売却価格をもとに計算する

  • 固定資産税評価額をもとに計算する

それぞれの計算方法を理解し、正確な納税金額を把握しましょう。

売却価格をもとに計算する

建物の売却価格が明確になっている場合、消費税は次のように計算します。

建物の売却価格 × 10% = 消費税

たとえば、2,000万円の建物を売却する場合の消費税は、次のように計算します。

2,000万円 × 10% = 200万円(消費税)

つまり、税込みの売買価格は、2,200万円ということになります。

固定資産税評価額をもとに計算する

土地建物を一緒に売却して建物価格がわからない場合、固定資産税評価額をもとに次のように計算します。

土地建物の売買価格 ÷(土地の固定資産税 + 建物の固定資産税評価額)× 建物の固定資産税評価額  = 建物の価格

建物の価格 × 10% = 消費税

それでは、シミュレーション条件を例にして、建物に課税される消費税を計算しましょう。

【シミュレーション条件】

  • 土地建物の売買価格:8,000万円

  • 土地の固定資産税評価額:3,000万円

  • 建物の固定資産税評価額:1,000万円


 

8,000万円 ÷(3,000万円 + 1,000万円)× 1,000万円 = 2,000万円(建物の価格)

2,000万円 × 10% = 200万円(消費税)

このケースだと、8,000万円に200万円を足した、8,200万円が税込み価格になります。

消費税の納付方法

消費税の課税対象となる場合、不動産を売却した年の翌年3月31日までに消費税の確定申告が必要であり、納税時期も確定申告の時期と同じです。

なお、納付する消費税額が48万円を超える場合、次の表のように中間申告しなければなりません。

直前の課税期間の確定消費税額

48万円以下

48万円超から

400万円以下

400万円超から

4,800万円以下

4,800万円超

中間申告の回数

原則、中間申告不要

ただし、任意の中間申告制度あり

年1回

年3回

年11回

中間申告提出・納付期限

各中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2か月以内

個人事業者

法人

1月から3月分 → 5月末日

その課税期間開始後の1か月分 → その課税期間開始日から2か月を経過した日から2か月以内

中間納付税額

直前の課税期間

の確定消費税額の6/12

直前の課税期間

の確定消費税額の3/12

4月から11月分 → 中間申告対象期間の末日の翌日から2か月以内

上記1か月分以後の10か月分 → 中間申告対象期間の末日の翌日から2か月以内

1年の合計申告回数

確定申告1回

確定申告1回

中間申告1回

確定申告1回

中間申告3回

確定申告1回

中間申告11回

引用:国税庁「中間申告の方法」

中間申告とともに納税も必要になるため、税理士と相談しながら計画的に納税しましょう。

まとめ

不動産売却においては、消費税が課税されるものやサービスが多くあります。

消費税の対象となるものの中には、事業用の建物や課税事業者など課税されるのかわかりにくいものもあります。不動産売却における消費税が高額になるケースが多く、どのようなものやサービスに課税されるのか理解しておくことが大切です。

また、消費税の計算方法を理解していれば、どの程度の課税額になるか算出できます。消費税の基礎知識を得て、正確な税額を納税しましょう。