親の死後に家を処分したいものの「思うように売れない」「ベストな処分方法がわからない」と悩んでいる人は多いでしょう。

そこで本記事では、親の死後に家の処分をしたいが売れない理由とあわせて、家を放置するリスク、売れない場合の対処法などを解説します。

うまく処分するために押さえておくべきポイントも紹介するので、家の処分に悩んでいる人は参考にしてください。

親の死後に家の処分をしたいが売れない理由

親の死後に実家を処分する際、売却したいにも関わらず売れない事態に陥るのは珍しい話ではありません。

家が売れない理由を把握することは、適切に処分するための計画を立てるうえで重要な意味をもつため、まずは処分したい家が売れない理由について解説します。

立地が悪い

立地は住宅の購入希望者にとって外せない重要なポイントであり、以下のような特徴をもつ家は売るのが難しくなりがちです。

  • 日当たりが悪い

  • 隣地の草木が生い茂っている、異臭がするなど、周辺環境に問題がある

  • 通勤、通学のアクセスが悪い

  • スーパーや病院など生活に必要な施設が周辺に少ない

  • 最寄駅から遠い

こうした物件は買い手が付きにくくなる傾向にありますが、物件の他の魅力をうまくアピールする、もしくは相場より価格を下げることで状況を改善させられる可能性があります。

家が古くてリフォームやリノベーションに手間がかかる

築年数の古さは家を売りにくくする要因のひとつです。

引用元:公益財団法人 東日本不動産流通機構 | 中古戸建住宅の築年帯別平均価格

上記は首都圏における中古戸建住宅の築年帯別平均価格を表したグラフですが、築年数の経過と反比例して価格が下落しているのがわかります。

とくに築26年を超えたあたりからの下がり幅は大きく、価格を思い切って下げなければ売却するのは難しいのがわかるでしょう。

また、築年数が古い家では住宅のあらゆる設備が傷んでおり、間取りや設備も現代のライフスタイルとは異なる箇所が多いことから、リフォームやリノベーションを実施したうえで住むケースが多くなっています。

その際、家が古くなるほど手を付けるべき箇所が増えて手間とコストがかさんでしまうため、やはり建物が古いと購入希望者から避けられる確率は高くなるといえるでしょう。

売り出し価格が高過ぎる

家が売れない原因を考える際には、「売り出し価格が相場より高過ぎないか」という点をチェックする必要があります。

購入希望者はさまざまな物件をチェックし、同条件で価格を比較しているため、相場より高い価格で売り出していると、当然ながら買い手はなかなか付きません。

もちろん「この価格で売りたい!」という気持ちを抱くのは自然ですが、売れなければ元も子もないため、相場を調べて似通った物件と比較しながら適正価格で売り出すことが大切です。

再建不可物件のため建て替えられない

再建不可物件は家が売れない代表的な原因のひとつです。

再建築不可物件とは、建築基準法の接道義務を満たしていない物件のことで、建物の建て替えができません。

つまり、新しい建物を建てられないことを意味しますから、マイホームや土地活用のニーズをもつ購入希望者にとっては大問題です。

再建不可物件を売る際には、制限の詳細を明確にしたうえで土地や既存の建物自体の価値をアピールするなど、通常の販売戦略とは異なる工夫を考える必要があるでしょう。

家の魅力をうまくアピールできていない

家が売れない原因として見落としがちなのが、「販売時に家の魅力をうまくアピールできていない」という点です。

同じ物件であっても、広告の出し方、設定するアピールポイントによって買い手への印象は大きく変わります。場合によっては売り手自身が家の魅力を理解できておらず、買い手にもうまく伝えられていないことから、売却活動がスムーズに進まないケースも珍しくありません。

  • スーパーやコンビニが近くにある

  • 近隣のコミュニティが良好な関係にある

  • 畑が付いている

  • 景観がよい

  • 犯罪率が低いエリアに建っている

上記はあくまで一例ですが、物件自体の性能や基礎的な情報はもちろん、付加価値をうまくアピールすることで買い手の興味を引ける可能性は十分にあります。

親の死後、売れない家の処分に困って放置するリスク

家が売れない場合、処分に困って放置してしまうケースは珍しくありません。

しかし家を放置するとさまざまなリスクを高めてしまうため、事前に把握しておきましょう。

倒壊のリスク

定期的に手入れされていない空き家は急速に老朽化が進み、倒壊リスクが高くなります。

万が一倒壊し、隣家や通行人に被害が出てしまうと、場合によっては所有者の管理責任を問われて損害賠償請求にまで発展する恐れがあります。

損害賠償請求が認められれば、所有者は金銭的に多大なリスクを負うだけでなく、社会的にダメージを受けてしまうため、空き家を放置し続けるのは危険です。

景観や周辺環境へ悪影響を与えるリスク

空き家状態となった家を放置した場合、以下のような景観・周辺環境へ悪影響をおよぼすリスクが高くなります。

  • 生い茂った草木が景観を損ねる

  • 損壊した建物が周辺の景観を損ねる

  • 入り込んだ動物の糞尿による土壌汚染、悪臭の発生

  • 害虫の大量発生

こうした事態が発生すると持ち主ばかりか近隣住民の生活・財産・安全を脅かす状況に発展する可能性もあるため、定期的なメンテナンスが求められます。

犯罪に巻き込まれるリスク

周囲から見て人の出入りがほとんどないとわかるような空き家は、しばしば犯罪行為の温床となります。

  • 不法投棄

  • 不法侵入

  • 盗難

  • 何者かが住み着く

  • 違法薬物の栽培

仮に犯罪に巻き込まれてしまうと、当該物件は「不審者が出入りしている」と悪評が立ち、いわくつき物件としてさらに売却するのが困難になってしまう可能性も考えられます。

特定空家等に指定されると固定資産税が最大6倍に

特定空家等とは、「空家等対策の推進に関する特別措置法」のなかで以下のように定義されている空き家のことです。

この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。

引用元:e-Gov 法令検索 | 空家等対策の推進に関する特別措置法

特定空家等に指定されると行政による助言、指導、勧告、命令の対象となり、従わない場合には罰金や行政代執行といった厳しい措置の対象となります。

さらに大きなデメリットとして、特定空家等に指定された不動産は住宅用地特例が解除されることにより、固定資産税が最大で6倍、都市計画税が最大で3倍にまで跳ね上がってしまう可能性がある点も重要です。

家が売れないからといって放置していると、こうしたさまざまなリスクを高めることになってしまうため、定期的な手入れを心がけましょう。

親の死後、家の処分をしたいが売れない場合の対処法5選

家が売れないと困っている場合でも、工夫次第でうまく処分することは可能です。

処分に困った際の対処法を5つ紹介するので、参考にしてください。

不動産買取を利用する

不動産買取とは、物件を直接不動産会社に買い取ってもらう方法のことです。

仲介で物件を売却する場合、買い手が見つかってはじめて取引が成立するため、売却活動に時間がかかるばかりか、価格設定が難しいケースも珍しくありません。

一方、不動産買取の場合、相場より価格は割安となるものの「買い手=不動産会社」となることから売却活動が削減され、スピーディな売却が可能です。

とくに仲介ではなかなか買い手が見つからない、少しでも早く現金化したい場合には不動産買取を検討してみるとよいでしょう。

更地にして売却する

建物付きの状態でなかなか売れない場合には、更地にして土地を売るのも手です。

マイホームや土地活用のニーズをもつ購入希望者にとって、建物付きの物件は解体費用がかかるためそれほど魅力的ではありません。

とくに立地条件がよい場合は更地にした方が高く評価される可能性は十分に考えられます。

ただし、更地にするには解体費用が必要となるため、解体を決める前に土地としての価値を見極めるておく必要があります。事前に不動産会社と相談しておきましょう。

売り出し価格を下げて売却する

前述のとおり、売り出し価格が相場より高過ぎる場合はなかなか買い手が付きません。

価格に問題があると感じた場合には、市場価格を調査し、適正価格に値下げすることで売却の可能性を高めましょう。

ただし、価格の見直しには専門的な知識が求められるため、こちらも更地にする際と同様に不動産会社と相談しながら調整するとよいでしょう。

空き家バンクに登録する

空き家バンクとは、「空き家を譲りたい人」と「空き家を譲ってほしい人」をマッチングするサービスです。

主に自治体が非営利で運営しているケースが多く、物件情報を登録することで当該地域に興味のある物件購入者に存在を知ってもらうことができます。

ただし、空き家バンクはすべての自治体に設置されているわけではないため、まずは住居があるエリアに空き家バンクの有無をチェックしましょう。

空き家バンクは市場で価値が付きにくい物件も掲載可能ですから、処分に困っている場合は検討の価値があります。

自治体に寄付する

家が売れなくて困っている場合は、土地を自治体に寄付するという方法もあります。

ただし、無条件で寄付できるわけではなく、地域において有効活用に役立ちそうな土地が対象となり、活用が難しいと判断された場合は寄付できません。

寄付が認められた場合は寄付後に税制優遇措置を受けることができるものの、受け入れ条件は自治体によって異なるため、寄付の意思がある場合はまず自治体に直接相談しましょう。

相続放棄

親が住んでいた実家は相続で所有するケースが多いため、処分が難しいと感じるなら相続放棄も選択肢のひとつです。

相続放棄については以下のような注意点がいくつかあるため、事前に把握しておきましょう。

  • 相続を知った日から3カ月以内の手続きが必要

  • すべての資産を相続できなくなる

  • 後順位の相続人に迷惑をかけてしまう可能性がある

  • 原則、撤回できない

相続放棄をおこなうと家だけでなくすべての資産を相続できなくなるため、専門家とも相談しながら慎重に判断することをおすすめします。

親の死後に売れない家をうまく処分するポイント

売れない家をうまく処分する方法はいくつか存在しますが、ここからお伝えする2つのポイントを心がけることで、確実に処分する可能性を高められるでしょう。

複数の不動産会社に査定依頼を出す

「家を売る」という方法にこだわる場合には、不動産会社選びがとくに重要なカギを握ります。

同じ物件でも不動産会社によって価格設定が変わりますし、販売戦略も千差万別だからです。

大切なのは最初のステップである売却査定を複数の不動産会社に出し、比較検討しながら相性のよい会社を見極めることです。

  • 査定が相場と大きくかけ離れていない

  • 査定の根拠が明確である

  • 当該エリアでの販売実績が豊富

  • 仲介以外も相談に乗ってくれる

  • 自社の強みを明確に打ち出している

上記のポイントを参考にして複数の不動産会社を比較検討することで、ベストな処分方法にたどり着く可能性を高められるでしょう。

そのまま売却する以外の選択肢も検討する

家の処分方法は「そのまま売却する」以外にも多数存在しています。

前述の「更地にして売る」「自治体に寄付する」「相続放棄」といった方法だけでなく、空き家を賃貸に出すのも選択肢のひとつです。

大切なのは選択肢をなるべく多く用意したうえで、ベストな方法を見極めることですが、ここでもやはり専門的な知識や経験がものを言うため、信頼できる不動産会社の存在は欠かせません。

不動産会社と相談しつつ、自分でも情報収集をおこないながら、ニーズと現実的な可能性を踏まえて対応方法を検討しましょう。

まとめ

処分したい家が売れない理由はいくつか存在するものの、工夫次第で売却できる可能性はありますし、売却以外の可能性も複数用意されています。

しかし、専門知識なしで最善策を導き出すのは困難であるため、まずは信頼できる不動産会社を見つけるところからはじめましょう。

一括査定サイトなら、少ない手間で複数の不動産会社にまとめて査定依頼を出せるため、うまく活用しながら相性のよい不動産会社を探してみてください。