土地の所有者の中には「土地の図面が欲しいけどどこで取得すれば良いのかわからない」「土地を売るために図面は必要なのか」という疑問を持っている人が多くいるでしょう。
自ら土地の測量を依頼した場合は、手元に図面が残っているかもしれませんが、相続した土地や測量されていない土地を購入した場合は図面が手元にないケースがあります。正確な図面がなければ、土地の取引や登記でトラブルが起きるおそれがあるでしょう。
この記事では、土地の図面を取得する方法や図面の種類、図面が必要になる場面を解説します。図面を取得する必要がある人は、本記事を活用してみてください。
この記事の目次
土地の図面が欲しい場合の取得方法4選
土地の図面が必要な場合は、次の4つの方法で取得できます。
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法務局へ出向き取得する
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インターネット上で申請し法務局で受け取る
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インターネット上で申請し郵送してもらう
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登記情報提供サービスを利用しダウンロードする
それぞれの方法を詳しく解説します。
なお、一般に「土地の図面」と呼ばれるものは5種類ほどありますが、「どの図面を取得すれば良いのか」がわからない場合、法務局へ直接出向いて相談するか、次の章で図面の種類を確認してください。
法務局へ出向き取得する
土地の図面を取得する代表的な方法として、法務局に出向き窓口で取得することが挙げられます。初めて土地の図面を取得する場合は、窓口の担当者に聞きながら手続きを行えるため、この方法がおすすめです。
法務局の窓口で図面を取得する手順は以下のとおりです。
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交付申請書に必要事項を記載する
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収入印紙を購入し貼付する
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図面を受け取る
1つの図面に必要な費用は、土地1筆あたり450円です。支払い方法は、窓口の指示に従い所定の収入印紙を購入すれば問題ありません。「どの種類の図面を取得すれば良いのかわからない」などの不安を持っている人は、まず法務局に出向き窓口で相談してみると良いでしょう。
インターネット上で申請し法務局で受け取る
土地の図面を取得する2つ目の方法は、インターネット上で申請して法務局の窓口で受け取る方法です。この方法は平日の21時まで手続きができるため、仕事や家事が忙しく法務局に出向く時間を極力抑えたい人におすすめです。
図面を取得する手順は次のとおりです。
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「登記・供託オンライン申請システム」から証明書の請求手続きを行う
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手数料を支払う
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窓口で図面を受け取る
【登記・供託オンライン申請システム トップページ】
画像引用:登記・供託オンライン申請システム
手数料の支払いは、インターネットバンキングやモバイルバンキング、ATMを利用して行います。また、窓口で申請した場合は1つの図面につき450円かかるのに対し、この方法であれば430円で取得できます。
インターネット上で申請し郵送してもらう
インターネット上で申請して、図面を自宅へ郵送してもらう方法もあります。法務局へ出向く時間が取れない人におすすめの方法です。
図面を取得する手順は以下のとおりです。
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「登記・供託オンライン申請システム」から証明書の請求手続きを行う
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手数料を支払う
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郵送で図面を受け取る
この方法を利用する場合は1つの図面につき450円の手数料がかかります。図面は郵送で届くため受け取りまでに数日かかることがありますが、日数がかかっても法務局へ出向く手間を省きたい人は利用してみると良いでしょう。
登記情報提供サービスを利用しダウンロードする
土地の図面を取得する4つ目の方法は、登記情報提供サービスを利用して図面をダウンロードする方法です。登記情報提供サービスとは、一般財団法人民事法務協会が運営する登記情報をPDFで閲覧できるサービスです。
【登記情報提供サービス トップページ】
画像引用:「登記情報提供サービス」
このサービスは平日8時半〜23時、土日祝日8時半〜18時まで利用でき、法務局に出向く必要がないため、平日に時間が取れない人でも図面を取得できます。また、図面1つにつき361円で取得できるため、費用を抑えたい人にも向いています。
この方法を利用して図面をダウンロードする手順は、登記情報提供サービスにアクセスして図面を請求するだけです。手数料はクレジットカードで支払えます。ただし、この方法で取得した図面には証明文や公印が付加されていません。公的な手続きで受理されないおそれがあるため、図面が必要なケースに応じて利用する必要があります。
土地の図面の種類とは
土地の図面には、次の5つの種類があります。
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法14条地図
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公図
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地積測量図
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現況測量図
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確定測量図
それぞれがどのような図面なのかを解説します。
法14条地図
土地の図面1つ目は、法14条地図です。法14条地図とは、不動産登記法第14条で定められた地図で、地籍調査により確定された境界線が記載されています。地籍調査とは、主に市町村が主体となり、境界の位置や面積を測量する調査です。
法14条地図は境界線の精度が最も高く、境界を示す「境界杭」が抜かれてしまっても、この地図により復元できることが特徴です。インターネットなどで簡単に検索できる地図とは違い、法14条地図は土地面積や距離、形状が正確なため、対象土地の位置関係などを知りたい場合に活用しましょう。
公図
法14条地図と似たような図面として、公図が挙げられます。公図とは明治時代に租税徴収の目的で作成された図面のことで、法14条地図と比較して境界線の精度や面積の正確性は低いものとなっています。
国土交通省によると、全国の地籍調査の実施状況は令和5年度末時点で53%にとどまっており、特に都市部では27%しか進んでいません。そのため、地籍調査が完了していない地域は、公図が使われています。
公図は地番を調査するケースや、土地の形状をおおよそで判断する際に使われます。よって、正確な土地面積や形状を知りたい場合に公図は不向きのため、他の図面を利用しましょう。
地積測量図
地積測量図とは、土地の面積や形状、位置関係や求積方法などが記載されている図面です。法務局で取得できる図面ですが、すべての土地に登記されているわけではありません。地積測量図を作成する主なタイミングは以下のとおりです。
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地積更正登記(登記簿上の土地面積を正確な面積に修正する登記)を行うタイミング
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分筆登記(土地を分ける登記)を行うタイミング
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土地表題登記(新たな土地を登記簿に登記する)を行うタイミング
地積測量図を法務局に提出するためには、世界基準の座標による境界線を記載することが義務付けられているので、近年作成された地積測量図は精度が高い図面と言えます。
現況測量図
現況測量図とは、土地の所有者が主張する境界線の位置をもとに作成された図面です。土地の形状や面積のおおよその面積を知りたいときに作成されます。ただし、現況測量図は隣地の所有者との立ち会いのもとで境界線を確認しているわけではないため、完全に信頼できる図面とは言えません。
現況測量図は、ハウスメーカーや工務店で家を建てる際に作成されることが多い図面です。境界がしっかりと決まっているケースでは有効な図面ですが、そうでない場合はあくまで目安として活用しましょう。
確定測量図
最後に紹介する図面は確定測量図です。確定測量図とは、隣地の所有者との立ち会いのもとに境界線を確定し、両者の押印がされた境界確認書にもとづいて作成された図面です。正確な境界線が記載されているため、図面の中で最も信頼性のある図面です。
確定測量図は信頼性のある図面のため、土地の売買の際に作成を求められるケースが多いです。売買や相続により、正確な土地の情報が求められる場合は、確定測量図の作成を検討してみましょう。
土地の図面が欲しい4つのケースとは
土地の図面が必要となるケースとして、主に次の4点が考えられます。
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不動産売買が行われる
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土地の評価額を算出する
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土地の分筆を行う
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寄付や払い下げを行う
上記のケースを詳しく解説します。
不動産売買が行われる
土地の図面が必要となる1つ目の場面は、土地を売却・購入するなどの不動産売買が行われるケースです。土地の図面があることで、売却する土地の面積や形状、位置関係が確定するためです。
土地の図面がなければ、どのような土地を取引するのかが明確でない場合があります。特に法14条地図がない場合、位置関係や面積が不正確な公図を利用して取引をする必要があるため、図面を用意しなければトラブルに発展するおそれがあります。
図面が作成されていない不動産を売買する場合、スムーズに取引ができるよう確定測量図を作成しておくのがおすすめです。その際は隣地の所有者との立ち会いが必要になるので、隣人に協力をしてもらい図面を作成しましょう。
土地の評価額を算出する
土地の評価額を算出する際にも図面が必要です。評価額の算出には、土地の正確な形状や面積が必要なためです。
評価額を算出する場面として、相続税額を算出する場合や、融資を受けるための担保評価額を算出するケースなどが挙げられます。土地の評価額を正確に算出し、正当に評価してもらえるよう適切な図面を用意しましょう。
土地の分筆を行う
図面が必要になる3つ目のケースは、土地の分筆を行う場合です。土地の分筆とは、大きな土地を細かく分けて登記し直すことです。
平成17年3月に施行された不動産登記法及び関連法では、分筆する際はすべての土地について隣地の所有者との境界線確認書の作成が義務付けられています。そのため、土地の図面が作成されていない場合、隣地や道路との境界がはっきりしていないため分筆が行えません。
このように、土地を分筆する際は確定測量図の作成が必要となるため、境界が明確でない場合は専門家に作成を依頼しましょう。
寄付や払い下げを行う
土地の寄付や払下げを行うケースでも図面が必要です。土地の払下げとは、使用されていない公的な水路や里道などを民間に売却する手続きです。このケースでは、図面により土地の評価額を正確に算出する必要があることや、所有権を移転するために境界を明確にしなければならないという理由があります。
土地の寄付や払下げは、手続きだけで2ヶ月以上かかることもあります。土地の測量と合わせるとさらに時間がかかるため、期間に余裕を持って計画を立てましょう。
まとめ
この記事では、土地の図面が必要になる場面や図面の取得方法について解説しました。図面を取得するためには、法務局へ出向く方法や、インターネットで申請・取得する方法があります。また、図面の種類には大きく5種類があるため、用途に沿って種類を選ぶ必要があります。
土地の売却や家の建築など、土地を所有していると図面が必要になる場面があるでしょう。特に、図面を作成するためには専門家の協力が不可欠です。この記事を参考に、図面の取得方法や各図面の用途を把握し、しっかり準備を進められるようにしましょう。