「不動産はどのような理由で売却しているのだろう」「購入希望者にどのように伝えればいいかわからない」と悩んでいませんか。
不動産の売却理由はさまざまですが、建物の欠陥や室内で起きた事故が一因としてある場合は、購入希望者に伝えなければなりません。
伝えるべき情報と伝えなくてもいい情報の線引きができていないと、契約後に損害賠償請求をされる可能性も考えられます。
そこで本記事では、不動産売却の理由を独自アンケートで収集しました。
また購入希望者に対する売却理由の伝え方をケース別に紹介するので、記事を参考に売却活動を進めてみてください。
この記事の目次
不動産売却の理由をアンケートをもとに解説
不動産売却でよくある理由について、下記の8項目でアンケートを50名分収集しました。
|
収集したアンケートで売却理由が多かった順番にまとめていくので、参考にしてみてください。
1位:よりよい住まいへの住み替え(11票)
不動産売却をした方の中で最も多かったのは、よりよい住まいへの住み替えでした。
「郊外の住宅から市街地のマンションに変えた」「介護の関係で二世帯の住宅を購入した」などの意見も見受けられています。
今住んでいる物件の立地に満足していない方は、売却して住み替えるのもひとつの手といえるでしょう。
また介護のように家族の関係で住み替えを余儀なくされるときも、不動産売却の理由として大きな原因になります。
よりよい住まいへの住み替えを検討している方は、不動産会社に査定を依頼してみてください。
同率2位:金銭的な負担の解消(10票)
不動産売却の理由として、金銭的な負担の解消もあげられます。
「共働きから働けない状態になった」「転職や会社の業績などで収入が下がった」などの理由から、金銭的な負担を解消するために不動産を売却していると考えられるでしょう。
経済的に住宅ローンの支払いが厳しい場合、不動産の売却でお金を手に入れるのは取るべき手段のひとつになります。
金銭面に負担を感じているなら、不動産会社に相談してどのような対策を取れば解消できるかアドバイスをもらってください。
同率2位:転勤・転職・子どもの進学・子どもの独立など生活の変化(10票)
同率2位で転勤・転職・子どもの進学・子どもの独立などの生活の変化が選ばれました。
「転勤に伴い職場が近いエリアに引っ越した」「子どもの独立で小さな家に住み替えた」など、生活やライフステージの変化にあわせて不動産を売却しています。
生活の変化にあわせて不動産売却を検討している方は、金銭的な負担をどれだけ抑えて引っ越せるか見積もりを出してもらいましょう。
複数の不動産会社に相談しながら、査定額の高い会社に依頼してください。
4位:相続(9票)
不動産売却でよくある理由の4位は、親からの相続です。
親族が亡くなったときに受け取った不動産を売却し、相続人で分配するケースは多くあります。
1位・同率2位の項目と票数に大きな差がなく、珍しいケースではありません。
相続に関しては登記など複雑な手続きが必要になるので、弁護士や司法書士に相談しながら売却してください。
5位:資産の組み替え(4票)
ほかにも、資産の組み替えとして不動産を売却している方も散見されました。
資産の組み替えとは、投資用の不動産を売却したり相続前に不動産を売るなどで、現金を得る行為のことを指します。
また不動産価格が上がっていて売却のタイミングだと考えている方も、この項目に該当しています。
資産の組み替えを目的として売却を考えている方も、今取ろうとしているタイミングが正しいか専門家に相談してみましょう。
不動産売却の理由が販売活動に与える影響
不動産を売却する理由は、内容によって売却活動に影響を与える可能性があります。
購入希望者にとってメリットのある理由であれば問題ありませんが、デメリットになる場合は価格や売却期間に影響を及ぼすでしょう。
不動産売却の理由が与える影響について解説するので、参考にしてみてください。
販売価格を下げる原因になる
不動産売却の理由は、販売価格を下げる原因になる可能性があります。
たとえば「近隣の治安が悪い」「日当たりが悪い」などが理由になっていると、購入希望者が現れず相場よりも値下げすることになるでしょう。
不動産売却の理由がネガティブな場合は、売り出し価格を下げる原因になりかねません。
想定している値段よりも割安な金額で売却するケースも頭に入れたうえで、売却活動をはじめてください。
売却までの期間が延びる原因になる
不動産売却の理由によっては、売却までの期間が伸びる原因になります。
「離婚をきっかけに不動産を売却する」「建物の老朽化に伴い住み替える」などの原因だと、縁起や耐久性の観点で購入希望者がつかないことも少なくありません。
基本的に家を購入する際、好んで問題のある物件を選ぶ方は多くいません。
所有者が問題に感じている部分は購入希望者も同様のことを感じる可能性があり、契約に至らないケースも考えられるでしょう。
ネガティブな理由で不動産売却を考えている方は、売却までの期間が延びる可能性があると理解しておきましょう。
購入希望者に不動産の売却理由を伝えるときのルール
不動産売却を検討していて「ネガティブな理由はできるだけ隠したい」と考えている方もいらっしゃるでしょう。
もちろん伝えなくてもいい内容もありますが、理由によっては告知が義務化されていることもあります。
万が一隠したまま販売すると法的な問題になる可能性があるので、下記の内容を確認してみてください。
4種類の瑕疵いずれかに該当しているなら告知義務がある
売却理由が4種類の瑕疵いずれかに該当している場合は、購入希望者に状況を伝えなければなりません。
瑕疵とは不動産に関わる傷や欠点のことを指し、以下の4つに分類されます。
瑕疵の種類 |
内容 |
物理的瑕疵 |
雨漏り・シロアリ・耐震性能など、建物自体に問題がある状態のこと |
法律的瑕疵 |
建物が立っている土地に建築制限が課されている場合や、法令で用途が限定されていること |
心理的瑕疵 |
自殺や殺人事件などで、心理的な問題があること。いわゆる事故物件 |
環境瑕疵 |
騒音・振動・異臭・日当たりなどの環境的な要因で引き起こされている問題のこと |
参照元:大阪府宅地建物取引士センター|不動産取引における瑕疵担保責任③-物理的瑕疵-
これらの瑕疵について説明をせずに販売し、あとから問題が発覚すると、損害賠償を請求されたり契約解除になったりする可能性があります。
売却理由が上記4つの瑕疵にあてはまる場合は、必ず購入希望者へ伝えてから購入するか意思を確認してください。
自然死や共用部分でのトラブルは対象外のケースが多い
不動産売却の理由に自然死や共用部分でのトラブルがあった場合、原則伝える必要はありません。
国土交通省のガイドラインによると、心理的瑕疵に関する告知義務について下記のような見解が述べられていました。
なお、取引の対象となる不動産において、自然死があった場合には原則として告知は要しないが、人が死亡し、長期間放置されたこと等に伴い特殊清掃等が行われた場合においては、上記1に掲げる事項並びに発見時期 及び臭気・害虫等が発生した旨について、殺人、自殺、事故死等の場合と同様に、後記5で示す調査を通じて判明した範囲で、経過した期間によ らず、買主に対して告知を要するものとする
つまり孤独死のような長時間放置されるような事案でなければ、原則伝えずに売買が可能です。
あくまでも一般的な基準となっているため、購入希望者から回答を求められた場合は柔軟に対応しなければなりません。
【ケース別】不動産売却でネガティブな理由の伝え方
「購入者にとってネガティブな情報をどのように伝えたらいいのだろう」と悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。
ネガティブな売却理由は伝え方を工夫して、過剰に悪く捉えられないように対策しなければなりません。
また理由によっては無理に伝える必要がないこともあるので、下記の事例を参考にあてはまる内容を確認してみてください。
住み替えが理由の場合
不動産の売却理由が子どもの進学や親の介護などの場合は、正直に「理由はライフステージの変化による住み替えです」と伝えましょう。
購入者の感情に変化を与えるような理由ではないため、理由を伝えても購入の意思が変わることはないでしょう。
ただし、住み替えとだけ伝えてしまうと、特別な事情があるのではないかと不信に思う方もいます。
購入希望者が売却理由に関して不信感を抱いていそうな場合は、「子どもの独立による住み替え」「親の介護が必要になったため二世帯住宅に住み替える」など詳細な理由を話しましょう。
金銭的な負担が理由の場合
「転職や業績悪化によりローンが支払えない」「失業により持ち家を売却する」など金銭的な負担が原因の場合は、必ずしも購入希望者に伝える必要はありません。
個人的な事情で、購入希望者にとって重大な瑕疵にはならないからです。
ローンを完済できてスムーズに引き渡せる状況なら「売却理由は住み替えです」と伝えればいいでしょう。
しかし、ローンを返済できず抵当権の抹消に時間がかかる場合は、購入前に必ず伝えなければなりません。
抵当権の抹消に時間がかかることは購入者にとってデメリットなので、トラブルを避けるためにも必ず購入希望者にその旨を伝えましょう。
相続が理由の場合
不動産の売却理由が相続の場合は、そのまま購入希望者に伝えて構いません。
一般的に相続による不動産売却はよくある事例なので、正直に伝えても購入者の意思にマイナスの印象は与えないでしょう。
たとえば「相続で受け取りましたが誰も住まないため売りに出しています」などといえば、マイナスの影響を与えずに売却理由を伝えられます。
不動産は所有しているだけで固定資産税や修繕費がかかるため、相続で受け取った使わない物件は売却して現金化したほうがコストがかかりません。
アンケート結果でも上位と匹敵するくらいよくある売却理由なので、ネガティブに捉えず堂々と伝えてください。
離婚が理由の場合
不動産の売却理由が離婚の場合は、必ずしも伝える必要はありません。
個人的な理由であり、建物に関わる重大な瑕疵ではないためです。
実際に購入希望者から理由を聞かれたときは「売却理由は住み替えです」と伝えればいいでしょう。
しかし購入者の中には、離婚で売却することに対して「縁起が悪い」と感じる方もいらっしゃいます。
あとからのトラブルを避けるためにも、可能であれば離婚が理由で売却することを伝えましょう。
建物の老朽化が理由の場合
建物の老朽化が理由で売却する場合は、不動産会社と相談しながらどのように伝えるか作戦を練りましょう。
老朽化していると直接伝えると、購入希望者の意欲を削いでしまう可能性があるからです。
たとえば過去に工事した履歴があるならば「直近だと◯年前に修繕をしています」と伝えるといいでしょう。
建物の老朽化は物理的瑕疵と呼ばれるもので、重要事項説明書などに記載しながら必ず伝えなければなりません。
建物に関わる瑕疵を隠したまま契約すると、損害賠償責任を問われたり契約解除になったりするため、不動産会社に相談しながら漏れのないように伝えてください。
騒音など近所が原因の場合
隣人の子どもやペットなど近所の騒音が原因の場合は、購入希望者に状況を伝えなければなりません。
許容範囲は個人の受け取り方で変わるため、不動産会社に相談しながら伝え方を考える必要があります。
たとえば「ときどき近所の子どもたちの遊び声が聞こえます」「近くに学校があり学生の声が聞こえます」などと伝えて、購入希望者と共通認識を持つといいでしょう。
また楽器の音や奇声など明らかに大きな音であっても同様に伝える必要があるため、隠すことなく正直に告知しましょう。
事故が原因の場合
自殺など物件の中で起きた事故が原因で売却する場合は、購入希望者に何が起きたか説明しなければなりません。
心理的瑕疵と呼ばれるもので、売り手は購入希望者に説明する義務があります。
たとえば「◯年前に事故があった物件です。そのぶん値段は安くなっていますが、ご理解のうえ検討してください」などと伝えましょう。
万が一物件内で起きた事故を伝えないまま売却すると、あとから損害賠償を請求される可能性があります。
また契約解除になり時間もお金も無駄になってしまうので、不動産会社と相談しながらどのように伝えるか考えてください。
不動産売却の理由でよくある質問
不動産売却を考えている方が抱きがちな疑問点をまとめました。
売却活動をはじめる前にこちらを確認し、ひとつでもわからないことを減らしてください。
買ったばかりの家を売る理由はなんですか?
買ったばかりの家を売る理由は、金銭的な問題や離婚など急激な生活の変化があげられます。
ほかにも近隣とのトラブルも早期売却の原因となるでしょう。
相続した家を売る理由はなんですか?
相続した家を売る理由には、家を使わないことや、現金化して自己資金に充てようと考えていることなどが考えられます。
不動産会社や司法書士などと連携しながら、遺産分割や相続税の申告などに対応してください。
築年数が浅い不動産の売却は反対ですか?
築年数が浅い不動産の売却も問題ありません。
新築に近い物件ほど売却価格が高くなる傾向にあるため、高額での取引が期待できます。
しかし、住宅ローンを完済できない可能性もあるので、売却価格と残債を確認しながら査定に出してみてください。
まとめ
この記事では、不動産売却の理由をいえぽーとが独自で収集したアンケートをもとに解説しました。
アンケートの結果、不動産売却の中で最も多かった理由は「よりよい住まいへの住み替え」でした。
「金銭的な負担の解消」「転勤・転職・子どもの進学・子どもの独立などの生活の変化」は同率2位となっています。
不動産の売却理由はさまざまで、仮に特別な理由でも購入希望者が現れないわけではありません。
どのような理由であっても、まずは不動産会社に相談して売却できるか確かめてみましょう。