「土地の権利書を紛失していて、どのように対応したらいいかわからない」「土地を相続したが、権利書らしきものが見当たらない」このように悩んでいないでしょうか。

土地の権利証とは、登記が完了したときに渡される登記名義人が示された書類で、正式には登記済権利証と呼ばれます。

万が一紛失しても代わりの方法で申請できるため、焦る必要はありません。

本記事では、土地の権利書の概要を紹介し、紛失・盗難時の対応方法も紹介します。

土地の権利書の概要

土地の権利書を持っている方は、使い道や登記簿との違いを確認しておきましょう。

以下では、土地の権利書の概要を解説します。

どのようなことに使う書類なのか

土地の権利書とは、登記が完了したときに登記所から渡される書類です。

正式名称を登記済権利証と呼ばれています。

登記名義人が示されていて、不動産の所有者とは関係ない第三者が所有権を移せないよう、不動産を取得したときに法務局から発行されます。

具体的な用途は、下記の通りです。

  • 不動産の譲渡

  • 抵当権の設定

  • 所有権の移転登記

今所有している不動産を第三者に譲渡するときは、登記名義人本人からの申請であることを示すために用います。

抵当権を設定するときや所有権の移転登記を行うときも、土地の権利書を用いる目的は変わりません。

その不動産や土地の所有権が自分にあることを示すための資料だと理解しておきましょう。

登記済権利証と登記簿の違い

土地の権利書(登記済権利証)と登記簿の違いは、保管している主体と目的です。

土地の権利書(登記済権利証)は登記されたときのみ発行される資料で、土地や不動産の所有者が保管します。

書類を持っていると、土地の所有移転手続きが完了していることの証明として示せるのが特徴です。

一方登記簿は法務局が管理していて、その土地が誰のものでどのような目的で利用されているのかわかります。

法務局で手数料を支払えば発行してもらえるため、必要なタイミングで法務局に発行を依頼しましょう。

土地の権利書が必要なタイミング

土地の権利書こと登記済権利証が必要なタイミングは大きく3つあります。

以下のような手続きを控えている方は、手元に登記済権利証があるかどうか確認しておきましょう。

不動産を売却するとき

土地の権利書は、不動産を売却するときに使います。

自分の不動産だと証明できる資料なので、紛失していない場合は提出する書類として有効でしょう。

不動産の売却を考えている場合は下記のような書類が必要になるため、事前に用意してください。

  • 土地の権利書(登記済権利証)

  • 物件の間取り図

  • 確認申請書・確認済証・検査済証

  • 本人確認書類

  • 固定資産税、都市計画税納税通知書の写し

  • 実印・印鑑証明書

  • 固定資産評価証明書

  • 住民票

  • 土地測量図

  • 抵当権抹消書類など

そのほかにも必要な書類が発生する可能性があるので、まずはこの資料を用意したうえでほかに必要なものがないか担当の不動産会社に確認してください。

不動産を生前贈与するとき

土地の権利書は不動産を生前贈与するときにも必要です。

生前贈与とは、存命中に財産を他者に贈与することを指します。

権利書のほかにも下記の書類が必要になるので、事前に用意しておきましょう。

  • 権利書

  • 登記申請書

  • 登記原因証明情報

  • 印鑑証明書

  • 固定資産評価証明書

  • 住民票

  • 印紙台紙など

なお生前贈与の手続きは複雑だといわれているため、司法書士などの専門家から助言をもらいながら贈与をしたほうが滞りなく行えます。

専門家に相談しながら、抜け漏れがないように手続きを進めてみてください。

住宅ローンの借り換えをするとき

住宅ローンの借り換えを考えている方は、権利書があるとスムーズに手続きを行えます。

他の手続きと同様に権利書以外にも必要な書類があるので、事前に用意しておきましょう。

  • 権利書

  • 抵当権設定契約書

  • 登記識別情報通知

  • 登記原因証明情報

  • 金融機関が発行した委任状

  • 代表者事項証明書

  • 履歴事項全部証明書など

住宅ローンの借り換えを考えている方は、金融機関に相談しながら上記の書類を用意してみてください。

土地の権利書は再発行できない!紛失時の対処法を解説

「土地の権利書を紛失した」「どこで再発行できるか知りたい」と悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。

結論、土地の権利書は再発行に対応していません。

しかし代替案が用意されているため、権利書が見当たらない方も焦る必要はありません。

下記で紹介する対処法を参考に、できることを実践してみてください。

司法書士・弁護士に本人確認情報を用意してもらう

土地の権利書を紛失したときは、司法書士や弁護士に本人確認情報を用意してもらいましょう。

本人確認情報とは、不動産や土地の所有者であることを証明するための資料です。

司法書士や弁護士が、その不動産や土地の所有者があなたであると判断できれば、本人確認情報を元に登記を行えます。

権利書を紛失してしまった場合は、司法書士や弁護士に本人確認情報を用意してもらってください。

事前通知制度を活用する

権利書を紛失した場合でも、事前通知制度を活用すれば登記に関する申請を行えます。

事前通知制度とは、不動産や土地を所有していた方の住所に送られる書類を元に本人確認を行う方法のことです。

具体的な内容は、法務局の説明を参考にしてみてください。

この「事前通知」とは,登記済証(権利証)を提供すべき登記名義人の住所地にあてて,本人限定受取郵便により,登記の申請があった旨,及びその申請の内容が真実であるときは2週間以内にその旨の申出をすべき旨の通知をし,この通知に対して,2週間以内に申請に間違いがない旨の申出がされることをもって,本人からの申請であること を確認するというものです。

引用元:法務局|○登記済証(権利証)を紛失したのですが,どうしたらよいので すか?

事前通知制度を活用するときは、権利書なしで登記手続きを行います。

その後法務局から事前通知に関する書類が送られてくるので、内容を確認して返送してください。

公証人に本人確認を行う

権利書を紛失した場合は、公証人からの本人確認でも対応が可能です。

公証人の本人確認では、公証人の面前で登記申請に関する書類に署名・捺印し、間違いなく本人が申請しているものであると認証します。

本人確認を行う際は、署名または記名押印がないと成立しません。

必ず印鑑を持参のうえ、公証人の本人確認を行ってください。

参照元:日本公証人連合会|9-1 私署証書の認証

土地の権利書の盗難にあったときの対処法

土地の権利書を紛失して「盗難されたのではないか」と不安な方もいらっしゃるでしょう。

大前提として、土地の権利書を盗まれただけでは、不動産や土地の権利を失うことはありません。

また土地の権利書を盗難されてしまった際も、下記のように対処すれば悪用されずに済みます。

紹介している内容を参考に、申請してみてください。

不正登記申出制度を活用する

土地の権利書の盗難にあった方は、不正登記申出制度を活用しましょう。

不正登記申出制度とは、権利書の紛失・盗難などで不正な登記がされる可能性があるときに、申出から3カ月は登記を防止する制度のことです。

申出から3カ月以内に登記があった場合は、不正登記申出制度を活用した方宛に通知が入ります。

身に覚えがない登記であれば却下できる仕組みなので、不正な登記は防止できるのです。

「土地の権利書を盗難された」と気づいたときは、法務局に不正登記申出制度を活用できないか相談してみてください。

参照元:法務局|1 土地・建物の登記でお困りの皆様へ

登記識別情報の失効申出をする

土地の権利書を盗難された場合は、登記識別情報の失効申出をしましょう。

登記識別情報の失効申出とは、登記識別情報の紛失・盗難時に情報を失効できる制度のことです。

登記名義人や相続人、その他一般承継人が登記所で申請すると、登記識別情報を失効できます。

申請には下記の書類・情報が必要になるので、あらかじめ準備しておきましょう。

一 申出人の氏名又は名称及び住所

二 申出人が法人であるときは、その代表者の氏名

三 代理人によって申出をするときは、当該代理人の氏名又は名称及び住所並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名

四 申出人が登記名義人の相続人その他の一般承継人であるときは、その旨及び登記名義人の氏名又は名称及び住所

五 当該登記識別情報に係る登記に関する次に掲げる事項

イ 不動産所在事項又は不動産番号

ロ 登記の目的

ハ 申請の受付の年月日及び受付番号

ニ 次項第一号に掲げる方法により申出をするときは、甲区又は乙区の別

引用元:e-GOV法令検索|第六十五条 登記識別情報の失効の申出

土地の権利書を盗難された場合は、下記の方法で登記識別情報を執行してください。

土地売却で行う登記と必要な書類

さて、権利書が必要になる土地売却の際には、大きく分けて3つの登記が行われます。

それぞれの登記で必要な書類について解説するので、今後土地売却を考えている方は参考にしてみてください。

住所変更・氏名変更登記で必要な書類

土地や不動産の所有者の住所や氏名に変更がある場合は、「住所変更登記」または「氏名変更登記」を行います。

引っ越し・結婚・離婚などのタイミングで行う手続きなので、手続きで必要な書類を確認しておきましょう。

住所変更・氏名変更登記で必要な書類は下記の通りです。

住所変更登記※1

・登記申請書

・登記原因証明情報

・登録免許税

氏名変更登記※2

・登記申請書

・委任状

・戸籍関係書類

・住民票の写し

※1参照元:法務局|登記されている住所・氏名に変更があった方へ

※2参照元:法務局|氏名の変更登記の申請に必要な書類とその入手先等

必要な書類を用意して、法務局にて手続きをしてください。

所有権移転登記で必要な書類

土地や不動産の売買や相続があった場合は、持ち主が変わるため所有権移転登記をしなければなりません。

事前に書類を用意する必要があるので、下記を参考に用意しましょう。

  • 不動産登記申請書

  • 委任状

  • 登記原因証明情報

  • 登記済権利証

  • 発行から3カ月以内の印鑑証明書

  • 固定資産評価証明書

  • 身分証明書

参照元:法務局|不動産登記の申請書様式について

司法書士への依頼の有無によって、必要書類や費用が変わります。

複雑な手続きとなるため、基本的には司法書士など専門家に依頼して滞りなく手続きを進めてください。

抵当権抹消登記で必要な書類

住宅ローンを完済した方は、抵当権抹消登記を行う必要があります。

抵当権とは債務者の返済が滞ったときに競売にかけられる、金融機関が有している権利のことです。

完済したあとに自分で申告しないと抵当権は外せないため、住宅ローンを完済したら金融機関から抵当権抹消登記の委任状を受け取らなければなりません。

必要な書類は下記を確認してみてください。

  • 登記識別情報

  • 登記原因証明情報

  • 会社法人等番号

  • 代理権限証明情報

  • 登録免許税

参照元:法務局|住宅ローン等を完済した方へ(抵当権の登記の抹消手続のご案内)

住宅ローンの完済に伴い金融機関から抵当権抹消の委任状を受け取ったら、速やかに法務局に登記申請を行いましょう。

専門家に相談したい場合は、司法書士や弁護士へ相談してみてください。

土地の権利書でよくある質問

土地の権利書にまつわるよくある質問をまとめました。

土地の権利書がなくても相続できますか?

相続をする場合は、土地の権利書は不要です。

故人名義の権利書が見つからない場合も、相続登記に大きな影響はありません。

土地の権利書は再発行できますか?

土地の権利書は再発行できません。

代用として事前通知制度や公証人による本人確認を活用すると、土地の権利書がなくても手続きが可能です。

土地の権利書を紛失したら悪用されますか?

土地の権利書だけを紛失しても、基本的に悪用されることはありません。

登記をするにも印鑑証明書や本人確認書類などの書類が必要になるため、土地の権利書だけで大きな問題は起こらないでしょう。

権利書を紛失してしまったらどうすればいいですか?

万が一土地の権利書を紛失した場合は、不正登記申出制度や登記識別情報の失効申出などを行い、不正利用されないように対策してください。

基本的に土地の権利書だけで登記情報を塗り替えることはできませんが、不正利用されないように対策をしておくと安心です。

まとめ

本記事では、土地の権利書の概要や必要なタイミングなどを解説しました。

土地の権利書とは、登記が完了したときに登記所から渡される書類です。

不動産を売却するときや生前贈与のときなどに必要なので、紛失しないように保管しましょう。

万が一紛失すると、再発行はできません。

土地の権利書の代わりに司法書士・弁護士の本人確認や事前通知制度などで対応できるため、紛失したときは別の方法で所有権を持っていると証明しましょう。