家の売却を考えている人の中には、「内覧」の対応をすることになったものの、売主として具体的に何をすればよいのかわからないと不安を感じる方もいるのではないでしょうか。あるいは、家を売り出しているけどなかなか売れないので、今度やることになった内覧でアピールしたいと考えている人もいるかもしれません。

内覧とは、家の購入を検討している人に、実際に物件を見てもらう重要な機会です。成約につなげるためには、限られた時間の中でいかに家の良さをアピールできるかがカギを握ります。

そこで、この記事では家の売却に向けた内覧の事前準備から当日の対応まで、売主が意識すべきポイントを時系列に沿ってわかりやすく解説します。

内覧の事前準備

内覧を成功させるために最重要な事前準備は家の中をきれいにしておくことです。購入検討者の側から見ると、内覧は実際に物件を訪れることで住み心地をイメージする機会となります。

家の中が散らかっていたり、埃が溜まっていたりすると、家の良さが伝わりにくくなってしまいます。家の中がきれいに片付いているだけで、その家への好感度は大きく変わるものです。なお、時間が無いなどの事情によって自分で掃除するのが難しい場合は、ハウスクリーニングの業者に依頼しても問題ありません。

家の中の片付けと掃除

内覧前の片付けと掃除で特に意識したい場所は「玄関」「水回り」「リビング」「バルコニー」の4つです。

この4箇所は購入検討者の印象を大きく左右します。

玄関

玄関は家に入った人が最初に目にする場所です。明るく清潔な玄関は家全体の第一印象を良くします。まずは、靴は極力下駄箱の中にしまっておくことが大切です。そして、傘も傘立てなどにまとめておきます。

掃除機やほうきで玄関の床に落ちているホコリを取り除き、できれば水拭きまでしておくとベターです。汚れが気になる場合は床用洗剤を使ってきれいに拭き上げます。また、ドアノブや手すりなども磨ければ玄関の清潔感がアップします。

水回り

水回りとは、トイレ・風呂場・台所のシンクなど水を使って作業をする場所のことです。水回りは日常生活の中でも使用頻度が高い上に家の印象を大きく左右します。水回りが汚れていると「不衛生な家」という印象を強く与えてしまうため、特に注力して掃除しておくのがおすすめです。

台所のシンク・蛇口・鏡などは水垢や石鹸カスを落としておきます。また、排水口の汚れや臭いがある場合は、重曹などを使って取り除いておきましょう。

トイレや浴室は床や壁面のカビ対策も重要です。カビ取り剤を使って目地の黒ずみをきれいにしておくと好印象につながります。また、汚れを取るだけでなく整理整頓も重要です。ボトル類や洗面用具はすっきりと見えるよう収納しておくと良いでしょう。

リビング

リビングでは家族が最も長い時間を過ごすので、訪問者が引っ越してきた後の生活をイメージする上で重要な場所です。まずは不要な物を処分し、家具の配置を見直すことから始めます。目に見える床の広さが広いほど「広いリビング」という印象を与えやすくなります。また、窓ガラスやテレビ画面なども拭き掃除しておくと良いでしょう。

バルコニー

バルコニーは、眺望や日当たりをアピールできる重要なスペースです。今まで使っていた側からすると見落としがちですが、手入れの行き届いたバルコニーは家への好印象につながります。

床面に溜まった落ち葉やホコリは掃き掃除で丁寧に取り除きます。排水溝の目詰まりがある場合は、最低限目に見える範囲だけでもきれいにしておくと良いでしょう。また、玄関と同様に不要なものがある場合は片付けておきます。網戸があれば掃除機などでホコリを取っておきましょう。

事前に準備しておくべきもの

内覧の当日までに売主が事前に準備しておくと良いものがいくつかあります。まず、内覧に訪れた人が履くスリッパを用意しておきましょう。使い捨てのもので構わないのでスリッパを複数用意しておき、訪問者が来る前に玄関に並べておくと良いでしょう。

また、家を購入した際に受け取ったパンフレットや図面、設備の取扱説明書などがあれば、まとめて内覧の際に見せられるよう準備しておくとベターです。

購入時に受け取ったパンフレットの中には、家の周りにある生活利便施設などが示されていることもあるので、事前に目を通しておくと内覧者とのスムーズなコミュニケーションにつながります。

当日の対応

実際に買主候補者が訪れるだけに、内覧の当日は売主としてどう振舞えばいいのかわからないと不安を感じる人もいるのではないでしょうか。内覧当日に売主として意識したいポイントを解説します。

部屋の換気

内覧の当日は訪問者を迎える前に家の中の換気をしておくことが大切です。換気には大きく分けて2つの目的があります。1つは部屋の空気を入れ替えて新鮮な空気を取り込むこと。もう1つは家の中に漂う生活臭を取り除くことです。

特に梅雨や夏場など湿度の高い時期は、カビ臭さが気になることもあるでしょう。また、ペットを飼っている場合はペット特有の臭いが家に染み付いていることも少なくありません。そのほか、タバコを吸う人がいる家庭では喫煙による臭いにも要注意です。

このような臭いは、家に住んでいる人は気づきにくいものです。しかし、初めて家を訪れる内覧者にはとても敏感に感じ取られてしまいます。このような生活臭を取り除くには、内覧の直前に家中の窓を開けて1時間ほど換気を行うのが効果的です。

照明をつけて明るくしておく

内覧の当日は家の中を明るくしておくことも重要なポイントです。繰り返しになりますが、内覧者は実際にその家に住むことをイメージしながら物件を見学します。部屋が薄暗いと生活をイメージしにくいだけでなく、部屋が狭いという印象を与えたりすることがあります。

そのため、内覧の際はできるだけ家中の照明をつけて明るい雰囲気を演出することが大切です。太陽の光が差し込む日中の内覧であれば、カーテンを開けて自然光を取り込むことも効果的でしょう。リビングやダイニングなど家族が集まる空間は、特に明るさが重要視される傾向にあります。

なお、できれば照明器具を清掃しておくとベターです。照明器具にホコリや汚れが溜まっていると明るさが軽減されてしまいます。

買主候補者との接し方

内覧当日に買主候補者とどのように接するかは、売主にとって特に不安を感じるポイントかもしれません。内覧者はその家を買うか検討している買主候補者でもあります。このため、内覧者に失礼のない丁寧な対応をするのが基本です。

しかし、内覧者に良い印象を与えたいあまり、過剰な売り込みをすると逆効果になります。内覧は営業の場ではなく、物件の現状を確認する場であると考えておきましょう。

内覧の際は、不動産会社の担当者が同行して物件の説明をしてくれます。売主はあまり前面に出ず内覧者の様子を見守る姿勢を心がけましょう。内覧者から直接質問を受けた場合は、簡潔に正直に答えることが大切です。自分が日ごろから感じていることを素直に答えられれば問題ありません。

なお、引っ越す理由などは聞かれることが多いので、不動産会社の担当者と相談して受け答えを想定しておくと良いでしょう。内覧は売主が営業する場ではないものの、ネガティブな理由を強調して伝える必要はありません。

内覧後には不動産会社の担当者から内覧者の反応や感想を聞けます。良かった点や改善点を把握することで、次の内覧に備えるのが肝心です。

内覧回数の相場は?

内覧を実施してもなかなか買主が決まらず、売却まで至らないケースがあります。内覧を何回実施すれば売却できるのか、疑問に感じる人も多いのではないでしょうか。

一般的に内覧の回数に明確な基準はありません。物件の種類や立地、価格帯などによって異なるものの、平均的には10回から15回程度の内覧を経て売却に至るケースが多いと言われています。

しかし、1回の内覧で買主が見つかりスムーズに売却が決まるケースもあれば、20回以上の内覧を実施しても売却に結びつかないケースもあります。内覧の回数が少ない場合、まずは物件の価格設定が適正かどうかを見直す必要があるでしょう。

内覧は行われても成約に至らないケースが多い場合。不動産会社の担当者と相談の上、内覧対応を含めた物件の問題について再考しましょう。

まとめ

家の売却を成功させるためには、内覧の事前準備と当日の対応も重要なポイントとなります。事前準備では、家の中をできる限り片付け、清掃しておくことが必要です。

玄関や水回りなどは特に、内覧者が注目する場所なので念入りに整えておきましょう。また、内覧当日までに、内覧者用のスリッパなどを準備しておくことも効果的です。

当日の対応では、内覧者への丁寧な対応を心がける一方で、過度な売り込みは控えることが重要です。なお、内覧の必要回数は物件によって異なりますが、急遽内覧対応することになっても良いよう、家をきれいにしておくことが売却成功への近道となります。いずれも不動産会社の担当者とコミュニケーションを取りながら取り組むことが重要です。