売却活動を進めてもなかなか土地が売れなければ、「なぜ売れないかよく分からない」「どうすればいいか分からない」と思ってしまうのも無理はありません。

売れない土地を何も対策せずに所有し続けていると、固定資産税の負担や管理の手間が尽きないだけでなく、ますます売れにくくなる可能性もあります。土地が売れない理由はいくつか考えられます。この記事は、7つの理由を紹介するとともに、それを踏まえて、売れない土地を手放す8つの方法について解説します。

土地が売れない理由

土地が売れない場合、まず理由を明確にしたうえで対策を考えることが必要です。ここでは考えられる7つの理由について解説します。

立地が悪く需要が少ない

まず、立地が悪く需要が少ないことが考えられます。

最寄り駅からの距離が遠くなると、土地の需要が減り、余っている土地も目につくようになります。そのような立地の土地の売却は難易度が上がります。

土地の需要、つまり土地を活用する方法はいろいろあります。自宅用地以外にも、駐車場や賃貸経営、トランクルーム経営などさまざまな方法が考えられますが、多くは収益性が期待できなければ活用が難しいでしょう。

立地条件が悪い土地は、都市部と比べて収益性を見込むことが難しく、活用方法が限られるこため売れにくくなります。

価格設定が高い

価格設定が高いことが考えられます。

ある程度の需要がある土地でも、周辺相場と比べ価格設定が高すぎると問合せや反響数が減り、売れない状況が続くことがあります。特に、土地面積が広い場合、売却金額自体が高額になりやすいため、価格設定を間違えると購入層が少なくなりやすい傾向です。

また、需要が少ない立地条件の場合、そもそも土地売買の事例が少ないないことが考えらえます。土地の査定方法には、いくつか方法がありますが、取引事例が少ないエリアでは、適正な価格を算出することが難しくなります、

不動産会社によって査定価格に違いが出やすいため、売り出し時点で価格設定が間違っていないかを考えることが必要です。

土地の形状が悪い

形状が悪い土地は売却が難しくなります。

土地には、形状が正方形や長方形である「整形地」と「不整形地」があります。不整形地として挙げられるのは、台形や三角形に近い形状、旗竿地※、傾斜地などです。

※旗竿地とは、道路から通路を経由した先に敷地がある土地

土地上に建物を建築する場合、日当たりを確保するため建築基準法をはじめ斜線制限や隣地からの距離制限などさまざまな制限があります。

この点、土地の形状が悪い不整形地は、建築設計の難易度が上がります。また不整形地は、無駄あるいは使いにくいスペースが生じやすく、有効活用できないケースも少なくないため売れにくくなります。

なお整形地でも、道路に面する間口が狭く奥行が長い土地や、逆に間口は広くても奥行が少ない土地は、活用しづらいため売れにくい場合があります。

接道状況が悪い

接道状況が悪く、売れない場合もあります。

建築基準法第43条では、建築物の敷地は、道路に2m以上接していなければならないと規定しています。ここでいう道路は、原則幅員4m以上の道路を指しますが、特定行政庁が指定したもので4m未満でも道路と認められるケースがあります。

そもそも接道義務を満たさない土地は、原則として再建築できません。そのため、土地の活用方法は制限され売却は難しくなります。

また、接道義務を満たしている土地でも、旗竿地や変形地で接道する距離が短い、あるいは接道する道路の幅員が狭い場合があります。このような土地では、日当たりや車の出し入れなどで問題が生じやすく、需要は少なくなる傾向です。

なお、接道状況の悪い土地は利用しにくいだけでなく、資産価値も下がりやすいため売れにくくなります。

隣地との境界が確定していない

隣地との境界が確定していない土地は、売却が難しくなります。

境界が確定していない土地は、購入後に隣地所有者とトラブルとなる可能性があります。建物を新築したり、新たに塀や垣根を作ろうとしたときに、境界がはっきりしていなければ隣地所有者と紛争になり、裁判まで発展することもあるでしょう。

また、そもそも土地を売却するためには、境界を確定することが必要です。費用はかかりますが、土地家屋調査士に確定測量を依頼し、隣地所有者との境界の同意を取得し確定測量図を作成します。

特に、地価が高いエリアの土地は、敷地面積によって価格に与える影響が大きいため、正確な土地面積が求められます。そのためには境界が確定していることが必要です。

境界を確定していなくても、それを契約条件として売却することも可能です。ただし、なかには売却の仲介を受けない不動産会社もあるでしょう。

このような理由から隣地との境界が確定していない土地は売れにくいといえます。

地中埋設物や土壌汚染などの問題を抱えている

地中埋設物や土壌汚染などの問題がある土地は、売却が難しくなります。

地中埋設物とは、以前建っていた建物の基礎やコンクリート片のほか、古い水道管や浄化槽、井戸など地中の廃棄物です。

地中埋設物があると、購入後、建物を建てようとしたときに、地盤の強度が不足する、基礎工事に障害が発生するなどのリスクがあるため、そのままの状態での売却が難しくなります。

一方、土壌汚染は、工場などで使用された有害物質や排水などが、地表面から浸透し土壌に蓄積されている状態です。

土壌汚染については、土壌汚染対策法に基づき、都道府県知事が指定する「要措置区域」と「形質変更要届出区域」があります。

「用措置区域」は、人への健康被害が生じる恐れがあるため汚染の除去などの措置が必要と認めた地域です。また、土壌汚染は確認されているものの、人への健康被害が生じる恐れがないため、除去などの措置を求められない地域を「形質変更要届出区域」といいます。

これらの区域は自治体のホームページで公開されており、指定区域にある土地は売却が難しい傾向です。売買契約時の重要事項説明も必要です。

不動産会社の動きが悪い

不動産会社の動きが悪いこともなかなか売却できない原因として考えられます。

不動産会社のなかには、マンションが得意な会社や取引のほとんどが新築一戸建てという会社もあり、それぞれ特徴や得意分野が異なります。

土地売却に慣れていない不動産会社だと、価格設定や広告掲載の仕方が悪く売れない場合があるため、慎重に依頼先を決めることが必要です。

また、需要が少ない土地だと売却価格が下がりやすく、仲介手数料収入も少なくなるため、十分な広告費がかけられていない場合もあります。数多くの案件を抱える担当者であれば、優先順位が下がり動きが悪くなっていることも考えられます。

土地の売却にかかる平均的な期間

土地を売却する場合、どれくらいの期間がかかるのでしょうか。

下表は、首都圏におけるレインズ登録から成約に至るまでの日数をまとめたものです。

日数

2019年

90.7日

2020年

111.0日

2021年

106.3日

2022年

83.6日

2023年

79.0日

年度によって差はありますが、おおむね3~4カ月程度かかっていることが分かります。これは首都圏の土地取引に関するデータのため、地方都市や郊外の土地だと売却期間はさらに長くなることも予測されます。

ただ、1つの目安として、売却活動開始から3カ月経過しても反響や問合せが少ない場合は、何らかの対策を講じていくことが必要です。その対策について次章で紹介します。

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏の不動産流通市場の動向(2023年)」

売れない土地を手放すための8つの方法

土地が売れない理由を踏まえ、売れない土地を手放す8つの方法について解説します。

不動産会社を変える

なかなか売れない場合、不動産会社を変えることを検討しましょう。

売れない期間が長くなるほど、担当者の動きが悪くなっていくことも考えられます。反響や問合せがほとんどないにもかかわらず、販売活動の報告は毎回同じ内容の繰り返しで改善策や新たな提案などがない、質問や問合せへのレスポンスが遅い場合などは、不動産会社を変えたほうがよいでしょう。

ただし、不動産会社を切り替えるとしてもタイミングには注意が必要です。不動産会社に売却依頼する際に媒介契約を締結します。媒介契約のうち、1社のみ売却を依頼できる「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の場合。通常3カ月の契約期間で締結します。

契約期間途中でも解除事由に該当するものがあれば別ですが、一方的に売主の都合で解除すると違約金が生じる可能性があるため、契約更新のタイミングで解除しましょう。

隣地や周辺住戸の需要を確認する

隣地や近隣など土地周辺地域の需要を確認することも1つの方法です。特に、立地条件が悪く、ネット広告を掲載しても、反響が少ない場合は進めるべきでしょう。

隣地の所有者が、駐車場や庭を広くするために土地を買い増しする場合、子ども世帯が近くに住む土地を探している場合などもあります。土地周辺地域で重点的にポスティングするなど、近隣の需要を探ってみましょう。

ただし、近隣の住民に自ら接触する場合、媒介契約上問題がないか注意が必要です。媒介契約のうち「専属専任媒介契約」は、自分で買主を見つけて取引する「自己発見取引」が禁止されているためです。媒介契約の内容を確認してみましょう。

境界を確定させる

境界が確定していない土地は、費用はかかりますが、確定測量して境界を確定させることで売れやすくなります。

確定測量は、私有地、公有地すべての隣地所有者の立ち合いのもと境界を確定させる測量です。境界を確認した証明として双方が署名・捺印した境界確認書を作成し、それぞれが保有します。

確定測量後、登記簿に記載されている面積と実測した面積が違う場合、地積更正登記することで登記簿面積と確定測量の面積を一致させることが可能です。

境界の数や隣接する土地の数などで確定測量にかかる期間は変わり、早ければ1カ月程度、長くなると半年以上かかるケースもあります。特に、官民境界は、道路反対側の所有地の同意も必要なため時間がかかります。

確定測量には、土地家屋調査士に依頼する費用や登記費用が必要です。境界の数や同意を取得する隣地の数で変わりますが、50~100万円程度が目安となります。

値下げする

問合せが少なくなかなか売れない場合、値下げすることも必要です。

下表は、首都圏の土地(100~200㎡)のレインズ新規登録時と成約時の1㎡あたりの価格を比較したものです。

 

新規登録価格(万円/㎡)

成約価格(万円/㎡)

登録価格と成約価格の乖離率

2019年

23.33

19.96

14.4%

2020年

22.23

19.41

12.6%

2021年

22.40

20.41

8.8%

2022年

28.38

23.47

17.3%

2023年

30.42

24.37

19.8%

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2023年)」

売り出し開始時にレインズに登録した新規登録価格と成約価格には、概ね10~20%近くの差があります。つまり、売り出し価格から10~20%程度価格を変更して売却していることが示されいます。新規登録時期と成約時期に年度間でずれが生じている可能性はありますが、参考にはなるでしょう。

不動産会社の見直しにあわせて、複数の会社にもう1度査定してもらい価格を見直すことも必要です。

土壌汚染や埋設物の調査をする

土壌汚染や地中埋設物の問題を抱える土地は、費用はかかりますが、土地を調査し問題を解消する対策工事をすることが考えられます。

地中埋設物の調査には、地中レーダー探査を使用した非破壊検査やボーリング調査があり、一般的な住宅地の場合10~30万円程度の費用が必要です。

埋設物を撤去する場合、コンクリート片や瓦などのガラ、基礎杭、浄化槽など、埋設物によって費用は大きく変わります。基礎杭などは地中奥深くまで打ち込まれているため、撤去費用は高額になります。

また、土壌汚染について、調査費用(100㎡あたり)の目安は、調査本数や土地の状況で変わり、20~100万円程度です。土壌汚染が確認され対策工事を実施するとなると、対象物質や濃度などによりますが、100~1,000万円程度の費用がかかります。

自治体へ寄付する

自治体に寄付を申し出て、無償で引き取ってもらう方法もあります。

自治体にとって、公園や駐車場、その他の公共施設の用地として活用できる場合、引き取ってもらえる可能性があります。ただし、寄付を受け付けることは、自治体からすると固定資産税等の収入が減ることにつながるため、可能性は高くありません。

相続土地国庫帰属制度を活用する

相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈によって土地を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地の所有権を手放し国庫に帰属できる制度です。

利用する予定のない土地を放置することで、将来、所有者不明土地が発生することを防止する制度です。

必要書類を準備のうえ、法務局で相談、申請が必要であり、審査の結果、国が引き取ると判断した場合、負担金を期限までに納付しなければなりません。負担金は、一筆20万円を基準とし、地目や面積等に応じて算定される場合もあります。

ただし、申請が必ず通るわけではなく不承認となる場合もあります。

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度のご案内」

不動産会社や買取業者に買い取ってもらう

価格を下げても売れない場合、不動産会社や買取業者に買い取ってもらう方法があります。

買取は、不動産会社や買取業者が買主となる売却方法です。不動産会社は、買い取った物件を転売したり、改修して再販売することを目的とするため、買取価格は低くなります。

一般の買主を募集して仲介で売却する場合と比べ、およそ70~80%となることが一般的です。

ただし、買取の場合、売主が負う契約不適合責任を免責にできるほか、引渡し、現金化までのスピードが早いというメリットがあります。契約不適合責任は、引渡された目的物が売買契約の内容と異なる場合に負う売主の責任です(民法562条)。

売却価格より早く、確実に売りたい場合、買取は活用しやすいでしょう。

売れない土地を所有し続けるデメリット

売れない土地を所有し続けるデメリットとしてどういったことが考えられるのでしょうか。

固定資産税がかかる

活用しないまま売れない土地を所有し続けてても、固定資産税や都市計画税の負担が続きます。

固定資産税は、毎年1月1日時点の不動産などの所有者に課される税金です。税額は、「課税標準額×税率」で決まり、一般的に次の税率になっています(自治体によって違う場合があります)。

・固定資産税=固定資産税評価額×1.4%

・都市計画税=固定資産税評価額×0.3%

固定資産税評価額が1,000万円の土地であれば、およそ15万円/年の負担が続きます。

管理の手間がかかる

固定資産税などの負担以外にも、管理の手間がかかります。

管理されていない土地を放置し続けると、不法投棄されたり、害虫などの住みかとなることで、近隣住民とトラブルになる可能性があります。雑草や樹木が越境することで隣地からクレームがくることも考えられます。

遠方にある土地を相続した場合などは、管理のための時間と費用の負担が生じやすいでしょう。

まとめ

土地がなかなか売れないとき、まず、その理由を考えることが大切です。さまざまな要因が複合的に影響していることもありますが、それを解消するための対策をしていく必要があります。

売却を依頼している不動産会社に有効な対策が期待しにくい場合、不動産会社を変えることが必要です。

また、マンションと比べて、土地や一戸建ては不動産会社によって査定価格に差が出やすいため、売り出し価格が適正なものであるかをしっかりと確認することが大切です。

どうしても売却できない場合は、不動産会社へ買取を依頼しましょう。

【土地が売れない理由】

  • 立地が悪く需要が少ない

  • 価格設定が高い

  • 土地の形状が悪い

  • 接道状況が悪い

  • 隣地との境界が確定していない

  • 地中埋設物や土壌汚染などの問題を抱えている

  • 不動産会社の動きが悪い

【売れない土地を手放すための8つの方法】

  • 不動産会社を変える

  • 隣地や周辺住戸の需要を確認する

  • 境界を確定させる

  • 値下げする

  • 土壌汚染や埋設物の調査をする

  • 自治体へ寄付する

  • 相続土地国庫帰属制度を活用する

  • 不動産会社や買取業者に買い取ってもらう