自宅を担保に金融機関から融資を受けるリバースモーゲージですが、「マンションでも使えるの?」「利用条件は?」といった疑問をもっている方は多いでしょう。

本記事では、リバースモーゲージの基礎知識にくわえ、リバースモーゲージが使えるマンションの条件やメリット・デメリットなどをわかりやすくまとめます。

リバースモーゲージがマンションで適用外となった際の代替策、リバースモーゲージが向いている人の特徴も紹介するので、興味がある方は参考にしてください。

リバースモーゲージとは?

まずはリバースモーゲージの基本的な仕組みを解説します。

リバースモーゲージとは、自宅を担保に生活資金を借入れし、自らの持ち家に継続して住み続け、借入人が死亡したときに担保となっていた不動産を処分し、借入金を返済する仕組みです。

引用元:りそな銀行 | リバースモーゲージとは?

一般的な住宅ローンは、住宅購入に必要な金額を融資として受け取ったうえで月々返済をおこなっていき、借入残高が最終的にゼロになる仕組みです。

一方のリバースモーゲージは「リバース:逆、モーゲージ:抵当」という言葉の意味が示すとおり、最終的に不動産を処分することで最後にまとめて借り入れたお金を完済する仕組みとなっています。

わかりやすく言い換えると、自宅を担保にしたうえで老後資金を借り入れて、そのまま自宅にも住み続けられる高齢者向けの貸付制度です。

また、リバースモーゲージは公的機関と金融機関が提供していますが、マンションを対象としたリバースモーゲージを提供しているのは金融機関である点も覚えておくとよいでしょう。

リバースモーゲージはマンションでも使えるケースがある

結論、マンションであっても条件をクリアすればリバースモーゲージの対象となります。

リバースモーゲージの基本的な仕組みは自宅を担保に融資を受ける貸付制度であるため、戸建てでもマンションでも住んでいるのであれば担保の対象となるからです。

ただし、マンションがリバースモーゲージの対象外となるケースが多いのも事実です。

ポイントは担保評価の部分です。一般的に担保の価値としては、建物より土地の評価が重視される傾向にあることから、戸建てに比べると所有している土地が少ないマンションのリバースモーゲージは、積極的に取扱う金融機関が限られています。

住んでいるマンションでリバースモーゲージを検討する場合、まずは付き合いのある金融機関がリバースモーゲージでマンションを対象としているかチェックしましょう。

リバースモーゲージが使えるマンションの条件

リバースモーゲージは担保が必須の貸付制度であるため、希望する人全員が利用できるとは限りません。

ここでは、リバースモーゲージが使えるマンションの一般的な条件を紹介するので、参考にしてください。

資産価値が落ちにくい条件がそろっている

資産価値が落ちにくい以下のような条件がそろっているマンションは、リバースモーゲージの対象になりやすいといえます。

  • 好立地:人口が多いエリアや都市部

  • 生活利便性が高い:スーパーマーケットや駅、病院、学校などの施設が充実している

  • 治安がよい:周辺エリアの犯罪率が低い

  • 地盤が固い:地震や地盤沈下のリスクが低い

こうした条件が整ったマンションは、将来的にリバースモーゲージで貸し付けた資金を回収する際の不動産売却がしやすい点から、リバースモーゲージには好材料となります。

築年数が浅い

マンションは築年数の経過に伴い、反比例する形で売却価格が下がるため、築浅のマンションはリバースモーゲージの対象となる可能性が高いといえます。

一般的には20年以内が目安となりますが、立地や建物の状態、その他条件など総合的に判断されるため、あくまでひとつの参考材料として認識しておきましょう。

マンションの評価額が一定額以上

リバースモーゲージの可否を判断する基準のひとつがマンションの評価額です。

ただし、金額の基準は金融機関によってさまざまであるため、リバースモーゲージを取り扱っている金融機関を見つけた後に「リバースモーゲージを受けるにはいくらの評価額が必要なのか」直接聞いてみるとよいでしょう。

リバースモーゲージがマンションで適用外となった際の代替策

リバースモーゲージを受けるには金融機関が設定した条件をクリアする必要があるため、保有しているマンションが適用外となる可能性はあります。

ただし、リバースモーゲージを受ける主な目的は「老後資金の借り入れ」であり、それを実現するためにはリバースモーゲージ以外にもいくつかの選択肢があります。

リバースモーゲージがマンションで適用外となった際の代替策を4つ紹介するので、チェックしておきましょう。

不動産担保ローン

不動産担保ローンとは、所有している土地や建物を担保に融資を受けられる金融商品です。

大きなメリットは、カードローンなどの無担保ローンと比べて借り入れ可能額が高く設定されやすい点で、場合によっては億単位の借り入れが認められるケースもあります。

老後にまとまった資金が必要な場合には有効な選択肢のひとつですが、リバースモーゲージと違って月々元金と利息を返済していく仕組みとなっています。

万が一返済が滞った場合には担保である自宅を返済しなければならないため、リスクを踏まえて検討しましょう。

リースバック

リースバックとは、持ち家を売却したうえで、売却後も家賃を支払うことで住み続けられる商品です。

売却後は所有権が買主に移るため名義は変わりますが、リバースモーゲージと同じく「自宅に住み続けながら、まとまった資金を得られる」のが特徴です。

ただし、住み続けるためには家賃の支払いが必要となるため、中長期的な資金計画を立てたうえで利用の可否を検討しましょう。

マンションの売却

まとまった資金を得るのが主な目的なら、思い切ってマンションを売却するのもひとつの手です。

たしかにリバースモーゲージと異なり、自宅であるマンションを売却すると慣れ親しんだ場所を離れなければなりません。

一方で、借入金の返済、リースバックを利用した場合の家賃負担などを心配する必要がなくなるのはメリットです。

一長一短の側面はあるものの、人によってはリバースモーゲージより魅力を感じられる選択肢となるかもしれません。

マンションを賃貸に出す

マンションを手放したくないのであれば、賃貸に出して家賃収入を得ることも可能です。

他の方法のようにまとまったお金は得られませんが、毎月安定した収入は得られるため、老後に必要なお金をコツコツ受け取りたい方には向いているでしょう。

ただし、空室の間は収入が入らない、管理や修繕にコストがかかる、といったデメリットもあるため、まずは不動産会社に相談してみるのがおすすめです。

リバースモーゲージのメリット

リバースモーゲージについて詳しく知らない人からすれば、「利用することでどんなメリットがあるの?」と疑問に感じる部分もあるでしょう。

ここでは、改めてリバースモーゲージの主な4つのメリットを紹介します。

自宅を手放さずに融資が受けられる

自宅を活用して資金を得る方法といえば、従来では売却や賃貸が主流でしたが、いずれの場合も自宅に住み続けられないところが難点でした。

一方、リバースモーゲージは自宅を担保にした融資制度であり、資金を得られるだけでなく自宅にそのまま住み続けることが可能です。

慣れ親しんだ環境を変えずに資金を調達できる点は、リバースモーゲージのとくに大きなメリットだといえるでしょう。

融資金の使い道に関する自由度が高い

リバースモーゲージは借り入れた資金の使い道が比較的自由な点もメリットです。

生活費はもちろん、高齢者向け施設の入居一時金、住宅取得の費用など、ニーズにあわせてさまざまな用途に資金を使える点は、住宅ローンと比較して魅力的なポイントでしょう。

死後の借金が残らない

リバースモーゲージは死後に担保となる不動産を売却して借入金を完済する仕組みであるため、死後に借金が残ってしまう心配がありません。

カードローンをはじめとした一部のローンでは、本人が亡くなった場合、配偶者や子供などの相続人が債務の支払い義務を引き継ぐ形となるため、遺族に借金を負わせるリスクが心配ならリバースモーゲージを検討する価値があります。

高齢でも融資を受けられる

リバースモーゲージは高齢でも融資を受けられる数少ない金融商品です。

住宅ローンやカードローンの場合、借り入れたお金を少しずつ返済することが認められているため、融資額によっては完済までに長期間を要するケースも珍しくありません。

融資する側からすれば、高齢になるほど完済できないリスクが高くなることから、これらの金融商品では対象年齢に上限が定められています。

一方のリバースモーゲージは、不動産を担保としてお金を貸し出し、貸し出したお金は契約者が亡くなった後に不動産を売却して回収する仕組みです。

年齢が理由で資金調達が難しい場合でも、リバースモーゲージなら融資を受けられる可能性があるのは大きなメリットでしょう。

リバースモーゲージのデメリット・リスク

リバースモーゲージにはメリットだけでなくデメリットもあります。

代表的な3つのデメリットを紹介するので、メリットとあわせて特徴を把握し、検討に役立てましょう。

金利の変動

リバースモーゲージの多くは変動金利を採用しています。

変動金利とは金利が変動する金利タイプのことで、金利の変動にあわせて利息額も変わるため、金利が上昇すれば支払う利息も増えることも意味します。

もちろん必ず金利が上がるとは限りませんが、現在は金利が低い状況にあるため、将来的な金利変動のリスクを踏まえて検討することが大切です。

不動産価値の下落

リバースモーゲージのリスクとして覚えておくべきなのが、担保して設定している不動産価値の下落リスクです。

融資を提供する金融機関では定期的に担保評価を見直すのが一般的ですが、景気や環境の変化に伴い、担保評価額が変動する可能性は十分に起こり得ます。

担保評価額が低くなると、売却時に回収できる金額も低くなると予想されることから、利用者の融資限度額が見直される恐れがあります。

当初に設定されていた融資限度額が少なくなってしまうのは資金計画を立てるうえで利用者にとってデメリットであるため、あらかじめ留意しておきましょう。

長生きリスク

長生きするに越したことはありませんが、リバースモーゲージの仕組みを考えると、長生きすればするほど金銭的なリスクが高くなってしまうのは事実です。

リバースモーゲージでは、自宅の担保評価に応じて融資限度額が設定されますが、長生きするほど必要なお金は増えることから、途中で融資限度額に達してしまう可能性があるのです。

そもそも寿命は予想できるものではないため、リバースモーゲージを利用する際には予想以上に長生きした場合の展開も含めて資金計画を立てておきましょう。

リバースモーゲージが向いている人の特徴

リバースモーゲージにはメリット・デメリットの両方が存在しますが、そこで気になるのが「どのような人に向いているのか?」という点です。

ここでは、リバースモーゲージが向いている人の特徴3選を紹介するので、参考にしてください。

不動産の相続人がいない人

リバースモーゲージを利用した場合、契約者が亡くなると金融機関は対象の不動産を売却して貸し付けた資金を回収します。

つまり、自宅であるマンションを兄弟や子供などに相続することができません。

一方で、子供がいない、もしくは相続する意思を持つ人がいない場合などには、所有者が亡くなった後の不動産は扱いに困ってしまう可能性があるため、リバースモーゲージを利用した資金調達に適しています。

万が一に備えた自己資金を準備しておきたい人

病気、ケガ、自宅の修繕など、まとまったお金が必要になる可能性は誰しもが抱えていますが、不測の事態に見舞われた際でも自分たちで何とか対処したいと考える人は多いでしょう。

リバースモーゲージなら、自宅に住み続けながらまとまったお金を調達できるため、不測の事態に備えておきたい人にはおすすめです。

金銭的な備えがあれば、本人たちはもちろん、家族や周囲の人も安心して暮らせるでしょう。

毎月の支払いを減らしたい人

老後の収入が年金のみとなったにも関わらず、住宅ローンや光熱費、保険料など月々の支払いが負担となっている人は少なくありません。

リバースモーゲージなら住環境を変えることなく資金を調達できるだけでなく、住宅ローンの借り換えをおこなった場合は利息のみの返済となるため、毎月の支払いを減らしたい人には相性のよい商品だといえるでしょう。

まとめ

リバースモーゲージはマンションで使える可能性がありますが、利用には金融機関が設けた条件をクリアする必要があります。

仮にリバースモーゲージが利用できない場合でも資金調達は複数用意されているため、他の選択肢も視野に入れながら検討することが大切です。

ただし、不動産を活用した資金調達には専門的な知識が求められるため、まずは金融機関や不動産会社に相談するところからはじめるとよいでしょう。