タワーマンションの売却を検討しているものの「売りにくいといわれているのが心配」「うまく売却するにはどうすればよい?」といった不安や疑問を抱えている方は多いでしょう。
この記事では、タワーマンション売却におすすめのタイミングを紹介するとともに、売却しにくいといわれる理由をわかりやすく解説します。
売りにくさを解消する対策、高く売却すること、売却時の費用など、事前に押さえておきたい情報をまとめているので、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
タワーマンション売却におすすめのタイミング5選
まずはタワーマンションの売り時に適した5つのタイミングを紹介します。
取得から5年目以降
不動産売却時に利益が発生した場合、譲渡所得税が課せられる仕組みとなっているのですが、所有期間に応じて税率は次のように変動します。
保有期間 |
税率(所得税+住民税) |
|
短期譲渡所得 |
5年以下 |
30.63%+9% |
長期譲渡所得 |
5年超 |
15.315%+5% |
引用元:東京主税局 |土地・ 建物等の譲渡に係る所得税( 国税)・ 住民税( 地方税)
違いは一目瞭然で、所有期間が5年以下と5年超の税率を比較すると、およそ2倍の開きがあることを示しています。
少しでも税負担を減らしたいなら、長期譲渡所得に該当する所有期間が超えてから売却するのがお得ですが、所有期間は不動産を売却した年の1月1日時点で5年を超えているかどうかで判断されるため注意しましょう。
取得から10年目以降
不動産売却時の譲渡所得においては、「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」という制度が用意されています。
マイホーム(居住用財産)を売って、一定の要件に当てはまるときは、長期譲渡所得の税額を通常の場合よりも低い税率で計算する軽減税率の特例の適用を受けることができます。
ここで気になるのが「一定の要件」と記されている部分ですが、ポイントは不動産を売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていることです。
つまり、居住していたマンションを所有期間10年経過後に売却した場合、課税される譲渡所得税が軽減されるわけです。
【マイホームを売ったときの軽減税率の特例の詳細】
長期譲渡所得金額 |
所得税の税率 |
住民税 |
6,000万円以下 |
長期譲渡所得金額×10% |
4% |
6,000万円超 |
(長期譲渡所得金額-6,000万円)×15%+600万円 |
5% |
本特例は、前述の長期譲渡所得に対する税率からさらに低い税率が適用される形となっているため、所有期間が10年に迫っている場合は少し待ってからタワーマンション売却を進めるとよいでしょう。
大規模修繕が実施される前
建物は年月の経過とともに劣化が進んでいくため定期的な修繕が必要ですが、ひとつの建物を多くの人が所有する区分所有マンションについては国が以下のようなガイドラインを定めています。
30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とします。
つまり、マンションについては30年間に2回の頻度で大規模修繕を実施するのが推奨されているわけです。
そもそも建物の設備は10~15年程度で法定耐用年数が切れるタイミングが多く、建物自体の経年劣化も考えると、定期的な大規模メンテナンスは欠かせません。
タワーマンションを売却する場合もこの大規模修繕のタイミングを意識し、大規模修繕前のタイミングで売りに出すのがおすすめです。
買い手からすれば、長期間メンテナンスされていない物件を購入するのは不安ですが、大規模修繕をする前のタイミングで売りに出せば「しっかりとメンテナンスした物件が手に入る」という安心感が生まれ、物件の評価につながる可能性は高くなるでしょう。
金利や税金が上昇する前
金利や税金が上がる前のタイミングは、タワーマンションの売り時を判断するひとつの目安です。
買い手の心理としては、「少しでも低い金利でローンを組みたい」「少しでも税金が低いタイミングで購入したい」と考えるものですから、金利や税金が上がる前には駆け込み需要が期待できます。
金利や税金が変動する前にはある程度の予備時間が存在するため、こまめにニュースをチェックしておけば売り時を逃さずに対応しやすいでしょう。
また、専門家である不動産会社はより早く情報をキャッチできるため、金利や税金が上がりそうなタイミングで連絡するように依頼しておくのも手です。
不動産価格が上昇している時期
不動産市場は常に変動しているものであるため、市場価格が上昇している時期はタワーマンションの売り時だといえます。
【首都圏における中古マンションの価格推移】
引用元:公益財団法人東日本不動産流通機構 | 首都圏不動産流通市場の動向(2023年)
上記は首都圏の中古マンション売却価格推移をまとめたグラフですが、2013年以降右肩上がりの状態を示しているのがわかります。
もちろん未来の動向を正確に予想することはできませんが、ここ数年は中古マンションが高値で取引されているのは事実です。
一方で、不動産価格が上昇している時期は物件を売りに出す人も比例して増えることから、価格競争が激しくなる可能性は考慮しておきましょう。
周辺で売りに出されている物件をチェックしながら相場を把握し、自分の物件の魅力を最大限アピールできる戦略を立てることも、タワーマンションを少しでも高く売却するコツです。
タワーマンションが売却しにくいといわれる理由
タワーマンションが売却しにくいといわれるのには、もちろん理由があります。
ここではタワーマンションの売却を難しくする6つの理由とあわせて対策を紹介するので、チェックしてみましょう。
管理や修繕積立金が高い
タワーマンションは一般的なマンションと比べて設備やサービスが充実している傾向にあり、比例して管理や修繕積立金が高額になる性質をもちます。
以下はタワーマンションの具体的な設備やサービスの一例です。
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専用ジム
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プール
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温泉
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シアタールーム
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ゲストルーム
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コンシェルジュサービス
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ハウスキーピング
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施設内のコンビニ
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併設クリニック
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送迎サービス
これらの設備やサービスはタワーマンションならではであり、維持・管理にコストがかかるため、必然的に所有者が負担するコストも高くなります。
高額な管理や修繕積立金はタワーマンション売却時にネックとなるだけでなく、将来的に修繕費や管理がアップする可能性も考えなければなりません。
一方で、タワーマンション設備やサービスが充実しているのは一般的にも広く知られており、タワーマンションの購入希望者はその事実を踏まえたうえで購入を検討します。
そもそもジムやプール、ハウスキーピングなどを単体で利用することを考えれば、管理自体は高くないと感じる人もいるでしょう。
大切なのは、設備やサービスの充実度や利便性をしっかり説明したうえで「管理や修繕にお金がかかるのはそれだけの価値がある」点を理解してもらう工夫であり、無駄にコストがかかるわけではないことが伝われば、より売却しやすくなるでしょう。
階数や方角によって人気に差がある
タワーマンションは階数、戸数ともに多い建物であるため、階数や部屋の方角によって人気に差が出ます。
とくに以下のようなタワーマンションの部屋は売りにくくなる可能性があるでしょう。
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日当たりが悪い
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低階層
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方角が北向き
一見するとこれらの特徴をもつ部屋は売却で不利に働くように感じますが、戦略次第で印象を変えることも可能です。
「夏の日差しがさえぎられる」「家具が日焼けしない」「南向きの部屋より景観がよい」など、その部屋独自の強みを打ち出すことで、物件を魅力的に見せられる可能性は十分にあるでしょう。
一般的なマンションより高額
タワーマンションは基本的に富裕層や高所得者むけに展開されている物件であるため、元々の価格設定が高額です。
間取りは同じでも周辺エリアの一般的なマンションと価格に大きな差が出るケースは珍しくありません。
その分、共用設備やタワーマンション独自のサービスなど付加価値は大きいものの、価格が高い分「一般的なマンションより売りにくい」と感じる人はいるでしょう。
ただし、タワーマンションの購入希望者はそもそもタワーマンションのプレミア感や付加価値に魅力を感じているわけですから、一般的なマンションと単純に価格を比較できません。
逆にタワーマンション独自の強みを打ち出し、適正に価格を設定すれば、希望する価格で売却できる可能性を高められるでしょう。
建物の利便性に難がある
タワーマンションは建物の利便性の低さから、売却するのが難しいといわれるケースもあります。
以下はタワーマンションの利便性に関する問題点の具体例です。
-
強風対策や景観の都合上、ベランダに洗濯物を干せない
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エレベーターの待ち時間が長い
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高層階の電波がつながりにくい
もちろんすべてのタワーマンションに共通するわけではありませんが、購入希望者が利便性に問題を感じて購入を見送る可能性は考えられます。
タワーマンション売却時には客観的な視線も取り入れながら建物の利便性に関する問題を洗い出すとともに、問題を解消するための対策について不動産会社と協議するとよいでしょう。
災害リスクがある
タワーマンションは高層かつ戸数が多いゆえに、以下のような災害リスクがあります。
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災害時にエレベーターが停止するリスクがある
-
階段での上り下りに時間がかかる
こうした災害時のリスクはタワーマンションならではであるため、「タワーマンションは売却しにくい」といわれる要因となります。
一方、タワーマンションならではの強みが存在するのも事実です。
とくにタワーマンションは高い免震・耐震機能を備えているため、日本の大きな災害リスクである地震が起こった時に倒壊するリスクは低い建物です。また、タワーマンションの多くがオール電化である点も災害時に火事が起きるリスクの軽減につながるといえるでしょう。
こうしたタワーマンション独自の強みを訴求することで、弱点を相殺し、スムーズな売却につなげられる可能性を高められます。
周辺の施設に人が集中する
周辺施設に人が集中する問題もタワーマンションが売却しにくいといわれる要因のひとつです。
-
近隣の施設に人が集中する
-
エリア内の保育所、小中学校の定員がオーバーしてしまう
こうした利便性の問題は確かにデメリットであり、購入希望者にとってはマイナスの評価につながるでしょう。
ただし、対策を立てることは可能です。
とくに近隣エリアに人が集中する問題については、以下のような部分をチェックしましょう。
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混雑緩和に対する自治体の対策、将来的な計画
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近隣エリアの開発計画
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保育所、小中学校の収容能力改善への取り組み
こうした部分をチェックしたうえで何らかの有効な対策を確認できた場合には、売却時に購入希望者へ説明することでマイナスの評価を払しょくできる可能性があります。
タワーマンションを高く売却するためのコツ
タワーマンションは売りにくいという声はあるものの、工夫次第で高く売却できる可能性を高めることは可能です。
タワーマンションを高く売却するための4つのコツを紹介するので、参考にしてください。
複数の不動産会社に査定してもらう
タワーマンションに限らず、不動産の売却は「どの不動産会社に依頼するのか」によって売却価格が変わります。
同じタイミングで物件を売却するなら少しでも高く売ってくれる不動産会社に依頼すべきなのは当然ですが、不動産会社選びが難しいと感じる方は多いでしょう。
そこでおすすめなのが、不動産査定一括サイトです。
不動産査定一括サイトとは、一度の申し込みで複数社にまとめて査定依頼を出せるサービスのことで、手間と時間を節約して複数の不動産会社から査定結果を取得できます。
タワーマンションの適正価格を算出するには、複数の不動産会社に査定してもらったうえで査定の根拠を踏まえて相場を把握するのが効果的ですから、売却に興味がある場合は不動産査定一括サイトをまず利用してみましょう。
タワーマンションの売却実績が豊富な不動産会社を探す
タワーマンションを少しでも高く売却するためには、タワーマンションの売却実績が豊富な不動産会社に依頼するのがおすすめです。
一言で不動産といっても、土地や戸建て、アパートなど、不動産の種類は複数あり、売却する不動産の性質に応じて売却戦略は変わります。
タワーマンションの売却実績が豊富な会社であれば、過去の経験にもとづき、タワーマンションの購入を希望する買い手のニーズ、物件を魅力的にアピールする見せ方、適切な価格設定などのノウハウに期待できるでしょう。
状況に応じて媒介契約の種類を選ぶ
タワーマンションの売却に伴い、不動産会社に仲介してもらう媒介契約には以下の3種類が存在します。
一般媒介契約 |
専任媒介契約 |
専属専任媒介契約 |
|
複数社への依頼 |
〇 |
× |
× |
自己発見取引※ |
〇 |
〇 |
× |
契約期間 |
制限なし |
3カ月以内 |
3カ月以内 |
レインズ登録 |
任意 |
媒介契約締結から7日以内 |
媒介契約締結から5日以内 |
販売活動の報告 |
義務なし |
2週間に1回以上 |
1週間に1回以上 |
※売主が自分で探した買主と売買契約をすること。
上記のとおり、媒介契約の種類によって自己発見取引の可否や契約期間は異なりますが、タワーマンション売却時には以下のポイントを参考にしながら契約方法を検討するとよいでしょう。
物件の特徴 |
おすすめの媒介契約 |
理由 |
人気エリア |
一般媒介契約 |
人気エリアは物件を探している人の数が多く、複数の不動産会社を競わせることで販売活動を有利に進めやすくなる |
近隣に競合物件が多い/人気エリアから外れている |
専任媒介契約/専属専任媒介契約 |
問い合わせや内覧希望者が多い人気エリアとは異なり、買い手側から積極的に販売活動を展開していく必要がある。専任媒介契約/専属専任媒介契約は自己発見取引が認められておらず、売却すれば必ず不動産会社に仲介手数料が入るため、不動産会社が高いモチベーションで販売活動に取り組んでくれる期待がもてる |
大規模修繕中に売り出さない
大規模修繕前のタイミングはタワーマンションの売り時ですが、大規模修繕時の売り出しは避けるのが無難です。
大規模修繕自体は買い手にとって「しっかりメンテナンスされた物件を購入できる」という安心感につながるものの、大規模修繕時に売り出してしまうと以下のようなデメリットが発生します。
-
マンション全体がカバーや足場でおおわれるため、外観がわかりにくい
-
内覧時に本来の眺望や日当たりが確認できない
大規模修繕時にはタワーマンションの魅力を伝えるのが難しくなってしまいますから、大規模修繕が開始される前に売却成立を目指して計画するとよいでしょう。
タワーマンション売却時にかかる費用
タワーマンションを売却できればお金を得られますが、同時にさまざまな費用も発生します。
費用の種類や費用目安を紹介するので、チェックしておきましょう。
タワーマンション売却時の諸費用
まずはタワーマンション売却時に発生する主な諸費用です。
概要 |
費用目安 |
|
仲介手数料 |
不動産会社と媒介契約を締結したうえで売却が成立した場合の報酬。売主自らが探した買主と個人的に売買契約をおこなう自己発見取引の際は仲介手数料不要。 |
・取引物件価格400万円超:取引物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税 ・取引物件価格200万円超~400万円以下:取引物件価格(税抜)×4%+2万円+消費税 ・取引物件価格200万円以下:取引物件価格(税抜)×5%+消費税 ※宅地建物取引業法により定められた上限額 |
抵当権抹消費用 |
ローンが残っている物件を売却する場合は、ローン完済後に抵当権抹消手続きをおこなう。手続きは司法書士に代行してもらうのが一般的。 |
司法書士に依頼した場合、15,000円前後が目安※1 |
ローン一括返済手数料 |
住宅ローンを一括繰り上げ返済に伴い、金融機関に支払う手数料 |
おおむね2万円~5万円が目安だが、金融機関によって異なる |
引っ越し費用 |
タワーマンションに居住していた場合の引っ越し費用。 |
- |
※1 参照元:日本司法書士連合会|報酬アンケート
仲介手数料は売却が成立した際に発生する報酬であるため、タワーマンション売却成立時に支払う形となります。
一般的には、売買契約時に仲介手数料の半額、引き渡し完了時に残額を支払う形となるため準備しておきましょう。
タワーマンション売却時の税金
タワーマンション売却時に発生する税金は主に以下2種類です。
概要 |
費用目安 |
|
印紙税 |
契約書や証書の作成時に課税される収入印紙のことで、課税額は契約書記載の金額に応じて変動する。 |
契約書記載の金額によって200円~60万円の間で変動 ※契約金額1万円未満は非課税 |
譲渡所得税 |
不動産売却によって発生する利益を表す譲渡所得に対して課される税金。金額に応じて所得税、住民税、復興特別所得税が課税される |
・5年以下の短期譲渡所得:30.63%+9%(所得税+住民税) ・5年超の長期譲渡所得:15.315%+5%(所得税+住民税) |
譲渡所得税については、タワーマンションの所有期間だけでなく、マイホームとして住んでいたか、相続で取得したものか、などの条件によって税率が変動します。
正確な税率を知りたい場合は査定依頼時に不動産会社へ相談してみるとよいでしょう。
まとめ
タワーマンションが売却しにくい理由は複数あるものの、対策や戦略次第でスムーズに売却できる可能性を高めることは可能です。
ただし、なるべく高くスムーズに売却するには専門的なノウハウが求められるため、まずは信頼できる不動産会社を慎重に選ぶことに注力しましょう。
不動産一括査定サイトなら、少ない手間で複数の不動産会社にまとめて査定依頼を出せるので、タワーマンションの売却を検討する際にはうまく活用してください。