分譲マンションの売却を検討しているものの、「売り時がわからない」「高く売るにはどうすればよいのか」といった不安や疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、過去のデータを交えながら分譲マンションの売り時について解説するとともに、売却の流れ、スムーズに高く売るコツなど、事前に知っておくと役立つ情報を分かりやすく紹介します。
分譲マンションの売却を検討している方はぜひチェックしてみてください。
この記事の目次
分譲マンションの売却価格推移と売り時
不動産の価格は時の流れとともに変動するものですが、分譲マンションの価格は近年右肩上がりの状況が続いています。
参考として、公益財団法人東日本不動産流通機構が公表している「首都圏不動産流通市場の動向」データを見てみましょう。
【首都圏における中古マンションの価格推移】
引用元:公益財団法人東日本不動産流通機構 | 首都圏不動産流通市場の動向(2023年)
10年間で中古マンションの価格が上向きとなっているのは一目瞭然で、とくに新型コロナウィルスが発生した2020年以降は価格上昇の傾きが大きくなっています。
実際にここ数年間は不動産価格の上昇に伴い、首都圏では売却希望の物件数を示す新規登録件数が増えており、分譲マンション所有者の多くが「売り時」だと判断している傾向を示しています。
【首都圏における中古マンションの新規登録件数】
引用元:公益財団法人東日本不動産流通機構 | 首都圏不動産流通市場の動向(2023年)
もちろん不動産取引は市場価格だけでなく需要と供給のバランスで成り立っているため、売却希望物件数が多くなるほど「売却までに時間がかかる」「価格競争が激しくなる」という側面はあります。
それでも、実際に成約単価がアップしているのも事実であり、価格面では売り時の状況を迎えていると考えることもできるため、競合が多い点を踏まえたうえで戦略的な立ち回りが求められる状況にあるといえるでしょう。
分譲マンションを売却する方法・流れ
分譲マンションの売却にあたり、売り時を逃さないためには、売却の流れを理解したうえでスムーズな対応が求められます。
分譲マンションの売却方法・流れを7つのステップに分けて解説するので、チェックしておきましょう。
ステップ1:売却準備
分譲マンションをスムーズに売却するには、適切なスケジュール設定と事前準備がカギを握ります。
まずはスケジュール設定ですが、以下のポイントを心がけながらスケジュールを立てましょう。
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売却のトータル期間として2~4ヵ月程度を想定する
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売買契約から引き渡し完了まで1ヵ月程度かかる
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買い替えの場合は、「買い先行」「売り先行」のどちらにするか決める
とくに注意すべきなのが3つ目の買い替えです。
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売り先行:売却した後に購入する方法
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買い先行:購入を先におこなってから売却する方法
分譲マンションのローンが残っている場合、売却物件と購入物件の二重ローンを避ける目的で売り先行を選択するのが一般的です。
一方、ローンが完済している、または経済的に余裕がある場合は買い先行のメリットが大きくなります。
買い先行の場合、購入物件をじっくり検討する時間があるだけでなく、持ち物件売却時空き家状態で売りに出せるため、買いやすさ・売りやすさ両方でメリットがあるからです。
また、スケジュール設定とあわせて、以下のような売却時に必要な書類も準備しておきましょう。
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身分証明書
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権利証または登記識別情報
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固定資産税・都市計画税納税通知書
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固定資産税評価証明書
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マンション分譲時のパンフレット
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インスペクション報告書
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既存住宅売買瑕疵保険の証明書
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購入時の売買契約書
書類によっては用意するのに時間がかかるものもあるため、分譲マンション売却時にはなるべく早い段階で準備をはじめておくのがおすすめです。
ステップ2:売却査定
分譲マンションを売却する際は、いきなり売りに出すのではなく、まずは不動産会社に物件の査定を依頼するところからはじめます。
売却査定とは、不動産会社が市場の状況や過去の売却価格などを加味して物件の売却価格を見積もる作業のことで、「専門家に売却価格を予想してもらうプロセス」だと考えましょう。
近年では中古マンションの売却価格上昇に伴い、売却希望件数が増加している点を鑑みると、スムーズに売却するうえで適正な価格設定は欠かせません。
事前に査定で売却価格の目安を把握しておけば、適正価格からかけ離れた価格で売りに出す事態を防げるわけです。
ただし、1社だけの査定で適正価格を把握するのは困難であるため、一括査定サイトを活用しながら複数の不動産会社に査定してもらうとよいでしょう。
ステップ3:媒介契約の締結
分譲マンションの売却査定依頼を出した後は、査定してもらった不動産会社のなかから売却を依頼する不動産会社を決定し、媒介契約を締結します。
媒介契約とは、不動産会社に仲介を依頼する契約のことで、以下の3種類が存在します。
一般媒介契約:複数の不動産会社と契約できる
専任媒介契約:契約するのは1社のみだが、自分で買主を見つけて売買契約する直接取引が可能
専属専任媒介の特徴:契約するのは1社のみで、直接取引は不可
分譲マンションの売却においては信頼できる不動産会社を見つけるのはもちろん、媒介契約の違いを理解したうえで、自分にあった契約方法を選択することも重要です。
ステップ4:販売活動
不動産会社と媒介契約を締結した後は、いよいよ販売活動がはじまります。
専門的な手続きは不動産会社が対応してくれるものの、売主が何もしなくてよいわけではありません。
とくに重要なのが内覧対応で、成約を左右する大きな要因となるため、以下のポイントを心がけながら内覧対応の準備を整ておきましょう。
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スケジュールは内覧希望者の意向になるべく合わせる
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掃除は必須、必要に応じてハウスクリーニングも検討する
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ペット、たばこなど、ニオイ対策も忘れない
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間取りがわかりやすいように部屋のなかはなるべく整理し、無駄なものは置かない
ただし、空き家の場合は上記のような事前準備がそれほど必要ないため、不動産会社に内覧対応を任せるのもひとつの手です。
ステップ5:売買契約の締結
分譲マンションの買い手が現れた場合、購入希望者から受け取った購入申込者の内容をチェックしたうえで、売買契約を締結します。
購入申込書に記載されている主な内容は以下のとおりです。
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購入価格:買い手の希望購入価格
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支払い条件:手付金、内金、残代金の内訳
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スケジュール:契約、決済、引き渡しに関する希望日
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融資の利用予定:融資の利用有無、利用時の利用金額など
これらの内容を確認して納得できない条件がある場合は購入希望者と交渉をおこない、双方が合意した後に売買契約が結ばれます。
ステップ6:決済・引き渡し
売買契約締結後は、売却の最終ステップである決済・引き渡しのプロセスに入ります。
決済時には以下のような売買代金の支払いおよび清算がおこなわれます。
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手付金、内金を差し引いた売買代金の支払い
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マンションの管理費、修繕積立金、固定資産税などの清算
また、決済と合わせて引き渡しも進めることになるため、引き渡し日から逆算して必要書類、引っ越し、抵当権抹消などの準備を進めましょう。
引き渡し当時は書類と物件の鍵を買主に渡し、引渡し完了書を交わして完了となります。
なお、不動産会社への諸費用や仲介手数料の残高は引き渡し完了のタイミングで支払うのが一般的ですが、支払い時期のほか、決済・引き渡しに伴う対応内容もあわせて事前に不動産会社へ確認しておくのが安心でしょう。
ステップ7:確定申告
分譲マンションの売却活動自体はステップ6で終了ですが、分譲マンションを売却した後は確定申告も忘れずにおこないましょう。
原則として、売却翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告する必要があり、売却による譲渡益が出た場合は所得税や住民税などが発生します。
逆に譲渡損失が出た場合は控除や特例の対象となる可能性があるため、いずれにせよ確定申告は必須です。
分譲マンションをスムーズに高く売却するコツ
分譲マンションをなるべく高く、かつスムーズに売却するうえで役立つ6つのコツを紹介します。
売り時を見極める
分譲マンションの売却価格は、市場の動向に大きく左右されます。
例えば保有している物件と同条件の競合物件が1,000万円で売りに出されている時期と2,000万円で売りに出されている時期を比較すると、当然ながら後者のタイミングで売却した方が高く売れる可能性は高くなるでしょう。
近年は中古マンションの価格が上昇傾向にはあるものの、不動産の価値は景気の影響も受けながら常に上下動を繰り返しています。
分譲マンション売却時には、景気の動向や不動産市場の動きをチェックしながら、売り時を見極めましょう。
ただし、近隣エリアに競合物件が複数ある場合は価格競争が激しくなり、値下げの必要に迫られる可能性が高くなるため注意が必要です。
スケジュールに余裕をもつ
マンションの売却には売却活動開始から2~4ヵ月、場合によっては6ヵ月以上かかるケースも珍しくありません。
設定した売却活動期間が短くなるほど「早く売らなければいけない」と焦りが生じ、売却を成立させるために値下げという選択肢を取らざるを得なくなります。
なるべく高く売るためにはある程度余裕のある売却期間を設けることが大切なので、目安として引き渡しの3カ月前までには売却活動をはじめられるようスケジュールを立てましょう。
高過ぎる売り出し価格を設定しない
物件を高く売りたいと誰もが考えるものですが、高過ぎる売り出し価格を設定するのは危険です。
確かに売却価格をいくらに設定するのかは売主の自由です。しかし、希望する価格で売れなければ元も子もありません。
相場からかけ離れた高過ぎる価格を設定すると、「買い手が付かない」「売却のタイミングを逃す」といった事態に陥る可能性が高くなってしまいます。
結果的に売却するために値下げせざるを得なくなる可能性も十分に考えられますから、なるべく短期間に狙ったタイミングで売却したいなら最初から適正価格で売りに出すのがベストです。
適正な売却価格を見極めるためには複数社に査定依頼を出したうえで相場を把握するとともに、似通った条件の分譲マンションが実際にいくらで売りに出されているのか情報収集するとよいでしょう。
不動産会社選びは慎重におこなう
不動産の売買には専門的なノウハウや経験が求められるため、パートナーである不動産会社選びは重要です。
分譲マンションをなるべく高く、かつスムーズに売却するためには、以下のポイントを踏まえて慎重に不動産会社を選びましょう。
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査定の根拠が明確:「同条件の物件を売却した際の価格を参考にしている」「評価した点、評価されなかった点が具体的に示されている」など
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分譲マンション売却の実績が豊富:実績が豊富であれば多様なニーズに対して柔軟に対応するノウハウに期待できる
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販売戦略が明確:分譲マンションの広告展開、方針など、具体的な戦略を説明できる
複数の不動産会社を比較しながら上記のポイントをチェックすることで、自分と相性のよい会社を見つけやすくなるでしょう。
インスペクションを実施する
インスペクションとは、建築士をはじめとした不動産の専門家へ物件のコンディションを調査してもらう依頼のことで、既存建物状況調査とも呼ばれます。
中古の分譲マンションを売却する場合、買い手は経年劣化や生活仕様に伴う劣化、安全性などに不安を抱くケースが多いため、客観的な目線で実施されるインスペクションは買い手の安心感につながります。
買い手に「専門家が評価している物件なら信用できる」と判断してもらえれば、スムーズな売却への追い風となるでしょう。
最低売却価格を決めておく
分譲マンションを売却する際には、売りたい価格で売却価格を決定しますが、必ずしもその価格で売却できるとは限りません。
むしろ購入希望者から値下げを要求されるのは珍しくないため、そのことを想定してプランを立てておく必要があります。
当然ながら希望価格で売却できるのがベストですが、値下げを断固として許容しない姿勢を貫くと、売り逃しにつながるリスクが高くなるのも事実です。
売り時を逃すと、当初の希望価格を割り込むどころか市場全体の価格が引き下がってしまう可能性もあるため、売り逃しを防ぐためには「この価格までなら値引きしてもOK」という最低売却価格を決めておくとよいでしょう。
安易な売却は単純に損するリスクを高めるものの、当初設定した売却期間内に売り切るためには、必要に応じた値引き対応も選択肢として考えておくのがおすすめです。
分譲マンションを早く売却したい場合は買取も
分譲マンションをなるべく高く売却するためには、ある程度の時間をかけて販売活動をおこなうのが基本ですが、なかには「少しでも早く売りたい」という人もいるでしょう。
不動産会社を通してマンションを売却する方法には「仲介」と「買取」がありますが、仲介の場合、買い手を探したうえで交渉し、双方が同意して初めて売却が成立するためどうしても時間がかかってしまいます。
一方、買取は不動産会社に直接物件を買い取ってもらう方法であるため「買い手=不動産会社」となり、仲介で発生するプロセスを大幅にカットできます。
結果的に物件の売却がスピーディに成立するため、なるべく早く売りたい場合は検討してみるとよいでしょう。
ただし、買取の場合は仲介での売却相場と比べて価格が割安になるデメリットもありますので、メリット・デメリットを理解したうえで検討することが大切です。
分譲マンション売却時にかかる費用
分譲マンション売却時には諸費用や税金が発生するため、コストを踏まえて資金計画を立てましょう。
費用の具体的な内容を紹介するので、参考にしてください。
分譲マンション売却時の諸費用
分譲マンション売却時の主な諸費用について、詳細を以下にまとめます。
概要 |
費用目安 |
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仲介手数料 |
不動産会社と媒介契約を締結したうえで売却が成立した場合の報酬 |
・取引物件価格400万円超:取引物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税 ・取引物件価格200万円超~400万円以下:取引物件価格(税抜)×4%+2万円+消費税 ・取引物件価格200万円以下:取引物件価格(税抜)×5%+消費税 ※宅地建物取引業法により定められた上限額 |
抵当権抹消費用 |
抵当権抹消登記に伴う費用 |
司法書士に依頼した場合、15,000円前後が目安※1 |
ローン一括返済手数料 |
住宅ローンを一括繰り上げ返済に伴い、金融機関に支払う手数料 |
おおむね2万円~5万円が目安だが、金融機関によって異なる |
※1 参照元:日本司法書士連合会|報酬アンケート
分譲マンション売却時の税金
分譲マンション売却時には以下の税金が発生します。
概要 |
費用目安 |
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印紙税 |
契約書や証書の作成時に課税されるもので、課税額は契約書記載の金額に応じて変動する |
契約書記載の金額によって200円~60万円の間で変動 |
譲渡所得税 |
不動産売却によって発生する利益を表す譲渡所得に対して課される税金。金額に応じて所得税、住民税、復興特別所得税が課税される |
・5年以下の短期譲渡所得:30.63%+9%(所得税+住民税) ・5年超の長期譲渡所得:15.315%+5%(所得税+住民税) |
まとめ
分譲マンションをなるべく高く、スムーズに売却するためには専門的な知識や経験が求められます。
信頼できるパートナーとなってくれる不動産会社を見つけられるかどうかが成功を左右するといっても過言ではないため、不動産会社は慎重に選びましょう。
まずは複数社に査定依頼を出して目安となる物件の価格を把握するとともに、各社の特徴、強み・弱みを比較しながら、自分にあった不動産会社を探してみてください。