「不動産を売るときの売り出し価格はいくらにすればいいの?」

「売り出し価格の決め方を知りたい!」

不動産売却時の売り出し価格を曖昧に設定してしまい、想定よりも安く売却してしまう人は少なくありません。特に不動産売却が初めての方は、不動産会社に言われるがままに売り出し価格を設定してしまう人も多いでしょう。

そこでこの記事では、不動産売却における「売り出し価格」の意味や決め方などを詳しく解説します。この記事を読めば、「売り出し価格の意味」や「失敗しない売り出し価格の決め方」などがすべてわかります。

不動産売却が初めての方でもわかるように解説しているので、ぜひこの記事を参考に「失敗しない売り出し価格」を決めてみましょう。

売り出し価格とは実際に売り出す際の価格

不動産売却における「売り出し価格」とは、実際に売り出す価格のことです。

例えば、3,000万円で成約したい場合は売り出し価格を3,000万円に設定して、不動産情報サイトや広告などに掲載します。

ただし、売り出し価格どおりに成約できるとは限らず、売り出し価格よりも安い価格で成約するケースも多くあります。「売り出し価格=成約価格」ではないことを理解しておきましょう。

不動産売却におけるその他の「価格」との違い

売り出し価格について解説しましたが、不動産売却においては「査定価格」や「成約価格」などの価格も存在します。

それぞれの価格は不動産売却において重要となるため、売り出し価格との違いや特徴などを解説します。

査定価格との違い

査定価格とは、不動産会社がおこなう「査定」に基づいて算出された価格です。査定では、物件の所在地や築年数、周辺の利便性などが考慮され、「これくらいの価格で売れそう」と不動産会社が売却価格を想定します。

ただし、あくまでも「売却予想価格」のため、査定額どおりに売れるとは限りません。査定価格を鵜呑みにしてしまうと「思っていたよりも安く売れてしまった」などの状況になる場合もあるので気を付けましょう。

それでも、査定価格は売り出し価格を決める際の参考になり、査定精度の高い不動産会社であれば査定価格どおりに売れるケースもあります。

成約価格の違い

成約価格とは実際に成約した価格です。例えば、3,000万円で売り出した結果2,500万円で成約した場合、2,500万円が成約価格です。

前述のとおり、「売り出し価格=成約価格」とは限らないため、成約価格が想定よりも大幅に安くなる可能性があります。特に、周辺の利便性や治安が悪かったり築年数の経過した古い家だったりする場合は、買主から値下げ交渉され、成約価格が安くなる可能性が高いです。

不動産を売却する際は「成約価格がいくらになりそうか」を想定することが大切なので、その点を考慮しつつ以下に紹介する手順で売り出し価格を決定しましょう。

不動産の売り出し価格を決める際の手順

不動産の売り出し価格を決める際の手順を解説します。売り出し価格の決め方がわからない方は以下の流れで進めてみましょう。

  1. 希望の売却価格を決める

  2. 自分で売却相場を調べる

  3. 不動産会社の査定を受ける

  4. ②と③を参考に売り出し価格を決める

STEP①:希望の売却価格を決める

まずは、自分が希望する売却価格を決めましょう。

人によって不動産を売る目的や理由は異なります。

  • 住み替えるための資金が欲しい

  • 生活をより充実させるために売却益が欲しい

  • 不動産を相続したけど住む予定がないからすぐに売りたい

このように目的や理由はさまざまで、高く売りたい人がいれば安くてもいいから早く売りたい人もいます。

「なぜ不動産を売るのか」「いくらで売れれば目的が達成できるのか」などを考えたうえで理想の売却価格を決めることが大切です。

STEP②:自分で売却相場を調べる

希望の売却価格が決まったら、自分で売却相場を調べてみましょう。

売却相場を調べることで「実際に売れそうな価格」を把握できるため、売り出し価格を決める際の参考になります。なお、売却相場を自分で調べる方法は以下3つの方法があります。

  • 不動産ポータルサイトで調べる

  • レインズ・マーケット・インフォメーションで調べる

  • 不動産情報ライブラリで調べる

不動産ポータルサイトで調べる

「SUUMO」や「ホームズ」などの不動産ポータルサイトで売却相場を調べられます。

ポータルサイトには、実際に売り出されている不動産の情報が掲載されており、どのような不動産がいくらで売り出されているのか閲覧できます。また、エリアを絞って検索すれば、自分のエリアの売り出し物件に限定して閲覧できるのでより参考にできるでしょう。

初心者の方でも比較的簡単に利用できるので、一度利用してみてください。

レインズ・マーケット・インフォメーションで調べる

レインズ・マーケット・インフォメーションとは、実際に成約した不動産の取引情報が掲載されているサイトです。

マンションと戸建ての取引情報が掲載されており、都道府県や市区町村などに絞って取引情報を閲覧できます。また、築年数や間取り、駅からの距離などの細かい条件まで絞れるので、より詳細な情報を参考にできます。

ポータルサイトだけではわからない「実際に売れた価格」を閲覧できるので、より具体的な売却相場を把握したい方は利用してみましょう。

不動産情報ライブラリで調べる

不動産情報ライブラリとは、不動産の取引情報や地価公示、都市計画情報など不動産に関する幅広い情報を掲載しているサイトです。

不動産取引情報だけでなく地価公示までわかるため、土地売却を検討している方には特におすすめです。地価公示は、市区町村で絞ったり地図から検索したりできるので、一つひとつの土地価格が把握できます。

また、国土交通省が運営しているサービスなので信頼性も抜群です。レインズ・マーケット・インフォメーションと併せて利用することでより正確な売却相場を把握できるでしょう。

STEP③:不動産会社の査定を受ける

売却相場を把握できたら、不動産会社の査定を受けましょう。不動産会社がおこなう査定には「訪問査定」と「机上査定」の2種類があり、それぞれで特徴が異なります。

 

訪問査定

机上査定

査定方法

担当者が実際に訪問して査定する

物件条件のみを参考に査定する

査定額算出までの日数

1週間前後

1~3日

査定の精度

おすすめな人

正確な査定額を知りたい人

手軽に査定したい人

訪問査定は、不動産会社の担当者が実際に訪問して査定する方法です。物件の外観や室内状況などを目で見て査定します。また、設備状況や周辺状況まで考慮されるため、より正確な査定額を知りたい人におすすめです。

一方で机上査定は、不動産の所在地や築年数などの基本的な情報をもとに査定する方法です。不動産会社のホームページから査定依頼でき、家にいながら査定できるのが特徴です。「気軽に査定依頼したい」「担当者に見てもらうほどではない」と考えている人は依頼してみましょう。

STEP④:②と③を参考に売り出し価格を決める

売却相場を自分で調べたり不動産会社の査定を受けたりしたら、最後に売り出し価格を決めます。

自分で調べた売却相場と不動産会社の査定額をそれぞれ比較して、「この価格で売れそうだな」と思う価格に設定しましょう。また、自分で決めるのが不安な方は不動産会社へ相談するのがおすすめです。

不動産会社と契約を結べば、売り出し価格の設定や物件の掲載などの売却活動を不動産会社がすべておこなってくれるので、初心者の方でも安心して売却活動を進められます。

売り出し価格を決める際のポイント4選

売り出し価格を決める際の4つのポイントを解説します。不動産売却を成功させるためにも、以下の点を押さえて売り出し価格を決めてみましょう。

  • 売却相場からかけ離れた価格で売り出さない

  • 値引きされるのを想定した価格にする

  • 複数の不動産会社へ査定依頼する

  • 不動産の売れやすい時期を把握する

売却相場からかけ離れた価格で売り出さない

売却相場と比べて極端に高い価格で売り出すのは避けましょう。

買い手は売却相場を理解している人が多く、相場からかけ離れた価格では売れ残る可能性が高いです。「高く売りたいから」といって相場に見合わない価格に設定しまうと売却が長期化してしまい、結局値下げせざるを得ない状況になりかねません。

「駅から近い」「商業施設が近くにある」など、特別買い手に需要のある不動産であれば高くても売れる可能性はあります。しかし、一般的な不動産であれば相場に見合っているかどうかが重要なため、売却相場からかけ離れた価格で売り出さない方がよいといえます。

値引きされるのを想定した価格にする

売り出し価格は値引きされるのを想定した価格にしましょう。

不動産売買は買主から値下げ要求されるケースが多く、売り出し価格どおりに売れる可能性の方が低いです。値下げ額は買主によって異なりますが、売り出し価格の10%前後を目安にしておくとよいでしょう。

例えば、3,000万円で売りたいのであれば300万円前後値下げ要求されると想定できるので、3,300万円くらいで売り出します。値下げの許容範囲については担当者と話し合ったうえで判断しましょう。

複数の不動産会社へ査定依頼する

不動産会社への査定依頼は複数社へ依頼しましょう。複数の査定額を比較できるので、適正な査定額を判断しやすくなります。

査定額は不動産会社によって異なり、大きいものだと100万円単位で査定額に差が出る場合もあります。また、売主と契約するために意図的に高い査定額を提示してくる不動産会社も存在するため、査定額の比較は非常に重要です。

3~5社程度の不動産会社へ依頼することで相場感が把握でき、適切な売り出し価格を設定しやすくなります。

不動産の売れやすい時期を把握する

不動産の売れやすい時期を把握するのも重要なポイントです。

不動産は1年のなかでも売れやすい時期と売れにくい時期があり、月別によって成約件数が異なります。以下は、 東日本不動産流通機構が公表している「首都圏における中古戸建ての月別成約件数」です。

成約件数

2023年/5月

1,111

6月

1,138

7月

1,155

8月

837

9月

1,099

10月

1,220

11月

969

12月

1,082

2024年/1月

962

2月

1,167

3月

1,349

4月

1,223

5月

1,096

参考:公益財団法人 東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2024 年 5 月度」

2〜3月、10月などの成約件数が多いのがわかります。特に2~3月は不動産全体の取引件数が増える時期であり、買い手の需要が増す時期でもあります。一方で8月や11月などは成約件数が少なくなりやすい時期のため、売り出すのは避けた方がよいでしょう。

このように月によって不動産の成約数が異なるので、2~3月に成約するためにも、できれば12月や1月頃に売り出すのがよいといえます。

売り出し価格と成約価格の乖離率

売り出し価格と成約価格の乖離率を解説します。以下は、東日本不動産流通機構が公表している「首都圏における中古戸建ての売り出し価格と成約価格」を示した表です。

月(2023年~2024年)

売り出し価格(万円)

成約価格(万円)

乖離率

5月

4,173

3,722

10.8%

6月

4,192

3,750

10.5%

7月

4,228

3,848

9%

8月

4,209

3,725

11.5%

9月

4,237

3,924

7.4%

10月

4,270

3,947

7.6%

11月

4,301

3,816

11.3%

12月

4,388

3,926

10.5%

1月

4,337

3,803

12.3%

2月

4,207

3,895

7.4%

3月

4,323

4,137

4.3%

4月

4,385

4,035

8%

5月

4,221

3,864

8.5%

参考:公益財団法人 東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート2024 年5月度」

乖離率は平均9%前後であり、売り出し価格より成約価格が安くなる傾向にあります。

このように、売り出し価格を決めたとしても必ずその価格で売れるとは限りません。売り出し価格から9%前後差し引いた価格で成約すると想定したうえで価格を決めるのがよいでしょう。

売り出し価格に関するよくある質問

売り出し価格に関するよくある質問をご紹介します。売り出し価格の決め方に不安や疑問を抱いている方は参考にしてみてください。

  • 不動産会社の査定額は信用できるの?

  • 何ヶ月売れなかったら値下げした方がいいの?

  • 売れない場合はどうすればいいの?

不動産会社の査定額は信用できるの?

信用できるかどうかは不動産会社によって異なります。

査定額とは、「これくらいの価格で売れるだろう」と予想した価格であり、必ずしも査定額どおりに売れるとは限りません。また、不動産会社によって査定時に見るポイントも異なるため、査定額が大きく異なる場合もあります。

売り出し価格を決める際は、自分で調べた売却相場やほかの不動産会社の査定額を比較することが大切です。なお、査定依頼する際は、不動産会社の取引実績や運営歴、担当者の対応などを総合的に考慮することで信頼できる不動産会社へ依頼できます。

何ヶ月売れなかったら値下げした方がいいの?

3ヵ月以上買い手が現れなければ値下げを検討した方がよいです。

不動産は基本的に3ヶ月前後で売れるケースが多く、長いと6ヶ月以上かかる場合もあります。必ず値下げする必要はないですが、売れない状況が続くと「売れ残り物件」として買い手に認知されてしまう恐れがあり、当初の価格では売れにくい状況になってしまいます。

3ヶ月以上買い手が現れない場合は、これ以上同じ価格で売り出しても売れ残る可能性が高くなるため、一度担当者と相談して価格の値下げを検討した方がよいでしょう。

売れない場合はどうすればいいの?

いつまでも売れない場合は、売り出し価格を値下げしたり不動産会社を変更したりしましょう。

売り出し価格を値下げすることで、相場より安くなるので買い手が現れやすくなります。ただし、売却価格が安くなるため、手元に入る金額も安くなるので状況をしっかりと判断したうえで値下げすることが大切です。

それでも売れない場合は、思い切って依頼先の不動産会社を変更してみましょう。不動産会社によって運営歴や取引実績、得意な不動産ジャンルなどが異なります。

マンションの売却が得意な企業もあれば、一戸建て売却が得意な企業もあります。一戸建てを売りたいのにマンション売却の得意な不動産会社へ依頼していれば、戸建て売却のノウハウが少ないので、売れる可能性も低くなるでしょう。

いつまでも売れない場合は、価格の値下げや不動産会社の変更などをおこなうことで状況を変えられるかもしれません。

まとめ

不動産売却時の売り出し価格について解説しました。

売り出し価格とは実際に売り出す価格のことで、「この価格で売却したい」と思う価格を設定します。売り出し価格を決める際は、自分で売却相場を調べたり不動産会社に査定依頼したりすることで正確な価格を設定できます。

ただし、「売り出し価格=成約価格」になるとは限らず、買主からの値下げ交渉などにより成約価格が安くなる可能性があります。そのため、値下げされるのを想定したうえで売り出し価格を設定するのがよいでしょう。

不動産売却を成功させるには売り出し価格や成約価格などの「価格」の意味を理解することが非常に重要です。不動産売却を検討している方は、ぜひこの記事を参考に売り出し価格を決めてみましょう。