団地の所有者の中には「相続した団地を売却する方法が知りたい」「所有している団地を少しでも高く売却するコツを教えて欲しい」という悩みを持っている人が少なくありません。

団地の定義は明確に決められていませんが、高度成長期時代に同一敷地内に建てられた複数棟の共同住宅を指します。団地は昭和40年代以降に多く建てられ、現在では空家や老朽化などが問題となっています。

この記事では、団地を売却する方法や高く売るコツ、売却時の注意点を解説します。団地の売却について深く知りたい人は、この記事を読んでしっかりと売却準備を進めましょう。

団地の売却方法1.現状のまま仲介で売却する

団地の売却方法の1つ目は、手を加えずに現状のまま売却する方法です。ターゲットは、購入後に自分でリフォームやリノベーションを行いたいという買い手です。

リフォームやリノベーション、間取りの変更などをせずに売却することで、売却前に費用をかける必要がないため、リスクを背負わずに売却ができます。また、工事内容の検討や工事業者の選定など、多くの手間と時間を省略できます。

注意点は、売却までに時間がかかるおそれがあることです。現状のまま売り出された団地は手頃な金額だとは言え、築浅やリノベーション済み物件と比べると、どうしても見劣りしてしまいます。そのため、リフォーム・リノベーション済みの団地と比べると、売却活動が長期化する可能性が高いでしょう。

とはいえ、この方法が最もリスクの低い手段のため、リフォーム・リノベーションを行う前に現状のまま売却することを検討すると良いでしょう。

団地の売却方法2.リフォームして売却する

団地の売却方法2つ目は、リフォームをして売却する方法です。リフォームとは、古くなった状態から新築の状態に近づけるための改装のことを指します。

リフォームをして売却するメリットは、買い手に対して最新の設備があることをアピールできる点です。リフォームをして最新の設備を備えれば買い手の印象が良くなり、早期売却につながるでしょう。また、リフォームで資産価値を高めれば、高額での売却も期待できます。

ただし、リフォームにかけた費用が必ずしも物件価格に反映できるとは限りません。たとえば、リフォーム前に600万円の査定額が出された団地に400万円のリフォームを行っても、物件価格にリフォーム費用を上乗せした1,000万円で売れる保証はありません。売りに出したタイミングや団地の相場により、売却価格は変動するのです。

そのため、売却のためにリフォームを行う場合は、リフォーム費用と周辺相場をしっかり見極めた上で、少しでもリスクを抑えることが重要です。

団地の売却方法3.リノベーションして売却する

3つ目の団地の売却方法は、リノベーション工事を行って売却する方法です。リフォームは、できるだけ新築の状態に戻す目的で行われるの工事なのに対し、リノベーションは間取り変更などを行い性能を高めた上で、新築時よりも価値ある物件に生まれ変わらせる工事のことを指します。

リノベーションを行うことで現代風の間取りや設備にすることができるため、多くの人から物件に興味を持ってもらえます。また、最新の設備が備わった新築物件は購入価格が高額になる傾向にありますが、団地のリノベーション物件であれば、価格を抑えて購入することができるでしょう。

ただし、リノベーションにはリフォームよりも高額な費用が必要です。そのため、想定した売却金額で売れなかった場合、工事費用の回収ができずにマイナスになってしまうケースも考えられます。リノベーションには1,000万円以上の費用がかかることが多いため、リフォームを行う以上に慎重な検討と相場の調査を行うようにしましょう。

団地の売却方法4.現状のまま不動産会社に買い取ってもらう

団地を確実に売却したいのであれば、不動産会社への買取を検討しましょう。買取とは、不動産会社に物件を直接買い取ってもらう取引方法です。

不動産会社による買取のメリットは、金額の折り合いが付けば確実に現金化できるという点です。不動産会社の仲介で売却する場合は、買い手が見つかるまで販売活動が続きますが、買取であれば買い手を探すことなく売却が完了します。また、売買契約から数週間で売却が完了するというスピード感もメリットの1つです。

しかし、買取は売却金額が相場より低くなるということがデメリットです。不動産会社は転売目的で不動産を買い取るため、利益を確保するために安く仕入れようとします。一般的に、買取による売却価格は相場の6〜7割と言われているため、少しでも高く売却したい人には不向きな売却方法と言えるでしょう。

売却価格よりも、スピードや確実性を重視するのであれば、不動産会社による買取を検討してみてはいかがでしょうか。

団地を少しでも高く売却する4つのポイント

団地を少しでも高く売却するためには、以下のポイントを意識しましょう。

  • 新しい設備を採用する

  • 不動産一括査定を利用する

  • 団地の売却実績が豊富な不動産会社に依頼する

  • 高く売却するなら仲介を利用する

ここからは、それぞれのポイントを詳しく解説します。

新しい設備を採用する

団地を高額で売却するためには、リフォーム・リノベーション時にできるだけ新しい設備を採用しましょう。最新の設備を使ってリフォーム・リノベーションを行えば、築年数が古い団地でも快適に生活ができるのです。

最新設備を取り入れるべき箇所は、主に次の設備です。

  • キッチン:食洗機付きや大容量のシステムキッチン

  • トイレ:タンクレスや除菌消臭機能があるトイレ

  • 浴室:フルオート機能や浴室乾燥暖房が付いた浴室

最新設備を導入すれば、物件のアピールポイントにもなります。リフォーム・リノベーションによる価値の向上をより一層高めるためにも、現在の需要に合わせた設備の採用を検討しましょう。

不動産一括査定を利用する

団地を高く売却するための2つ目のポイントは、不動産一括査定を利用して複数の不動産会社へ査定依頼を行うことです。不動産一括査定とは、所定のフォームへ不動産の情報を入れて申し込むだけで、提携している複数の不動産会社へまとめて査定依頼ができるサービスです。

不動産一括査定を利用するメリットは、複数の査定結果を比較検討した上で、売却を依頼する不動産会社を選定できる点です。1社だけの査定だと、その査定価格が適正なのかの判断が難しいですが、複数社から査定結果を受け取ることで物件本来の価値を見出しやすくなります。

ただし、不動産一括査定を利用すると、複数の不動産会社から営業電話がかかってきて煩わしく感じることがあります。売却する意思がなくなったり、他の不動産会社へ依頼を決めたりした場合は、何度もかけ直されないよう早めに伝えることをおすすめします。

ただでさえ団地は売却金額が低い傾向にあるので、少しでも売却金額を高めるためにも不動産一括査定を有効活用するようにしましょう。

団地の売却実績が豊富な不動産会社に依頼する

団地を少しでも高く売却するためには、団地の売却実績が豊富な不動産会社に依頼することが重要です。不動産会社にはそれぞれ得意分野があり、団地の売却を得意とする不動産会社に依頼することで、高値で売却できる可能性が高まります。

団地の売却実績が豊富な不動産会社は、団地の販売を待っている既存顧客を抱えていることがあるため、スムーズに売却を進められるでしょう。また、団地の売却に関するノウハウを活かした販売戦略やサポートが期待できます。

販売実績を見極めるためには、ホームページに掲載されている過去の販売実績を確認するか、担当者に直接聞いてみましょう。

高く売却するなら仲介を利用する

団地を少しでも高く売却するのであれば、不動産会社による買取ではなく、仲介を利用しましょう。仲介とは、不動産会社が買い手との間に入り、広告活動や契約手続きなどをサポートすることです。

先述のとおり、不動産会社による買取は、売却価格が相場より安くなってしまいます。たとえば、700万円で査定結果が出た団地を売却するケースを考えてみましょう。

  • 買取の場合:700万円の7割で490万円の売却価格

  • 仲介の場合:100万円の値引き希望があったとしても600万円の売却価格

買取の場合は相場の6〜7割で売却する必要があるため、どうしても手取り額が減ってしまいます。ただし、仲介の場合は買い手が見つかるまでに時間がかかる可能性があるため、時間がかかっても高値で売却したいという場合は、仲介を利用しましょう。

売却の期限が決まっている場合は、期限まで仲介で買い手を探し、期限が到達した段階で買取に切り替える方法も考えられます。不動産会社と相談しながら、自分に合った売却方法を検討してみましょう。

団地の売却相場

一般的に団地と呼ばれている住宅は、昭和40〜50年代に建てられたものが多く、ほとんどが築40〜50年を経過しています。団地の売却相場は立地によりますが、500〜1,000万円程度と考えて良いでしょう。

東日本不動産流通機構が公表している「2022年年報マーケットウォッチ」では、築31年以上の成約価格は以下のとおりになりました。

【首都圏における築31年以上の中古マンションの成約価格】

暦年

2017年

2018年

2019年

2020年

2021年

2022年

成約価格

1,759万円

1,815万円

1,835万円

1,904万円

2,040万円

2,193万円

参考:東日本不動産流通機構「2022年 年報マーケットウォッチ 表15-① 中古マンションの築年帯別状況[首都圏]」

団地は築40年以上の物件が大部分を占めるため、上記の金額よりも低いと考えられます。また、自分で不動産の売却価格を調べるためには、次の3つのサイトを確認してみましょう。

  • 不動産情報ライブラリ

  • レインズ・マーケット・インフォメーション

  • ポータルサイトや不動産会社のホームページ

これらのサイトで自分が住んでいる団地の相場を調べれば、おおよその売却価格がわかります。団地を売却する際の参考にしてください。

相続した団地を売却する際の注意点

団地を売却する際に気をつけなければいけないポイントは3点です。

  • 名義変更が行われていなければ売却できない

  • 相続税を支払う必要があるのかを確認する

  • 譲渡所得税がかかるのかを計算する

ここで紹介する注意点に気をつけて、スムーズな売却を目指しましょう。

名義変更が行われていなければ売却できない

相続した団地を売却する場合、相続人の名義に変わっていなければ売却することができません。基本的に不動産の売却は本人でなければできず、相続前の名義では第三者へ所有権を移せないのです。

また、相続時に名義変更をしなければ、相続人の中で亡くなる人が出てきた場合に、話し合いがさらに複雑化してしまいます。そうなると相続手続きに時間や手間がかかり、最悪の場合は親戚同士のトラブルに発展しかねません。そのため、相続が発生した場合は速やかに名義変更の手続きを行いましょう。

相続をしても、自動的に名義が変わるわけではありません。名義変更は自身で行うこともできますが、専門的な書類や手続が多いため、不安な人は司法書士へ依頼すると良いでしょう。

相続税を支払う必要があるのかを確認する

団地の売却時に気をつけるべき2つ目のポイントは、相続税を支払う義務があるのかを確認することです。不動産を相続した場合、かならず相続税を支払わなければいけないという訳ではないため、自分に相続税の支払い義務があるのかを把握しなければならないのです。

相続税を支払うのは、相続財産の合計が基礎控除額を超えたときです。相続税の基礎控除額の算出方法は以下のとおりです。

基礎控除額=3000万円+600万円✕法定相続人の数

不動産の相続税額は、相続税評価額を基準に算出することができます。また、相続税は被相続人

が亡くなった日から10ヶ月以内に納める必要があるので、早めの手続きを心がけましょう。

団地以外にも相続財産が多く、相続税の支払いが発生する可能性がある場合は、税理士などに相談をして自分が課税対象なのか確認することが重要です。

譲渡所得税がかかるのかを計算する

団地を売却して利益が出た場合、譲渡所得税を支払う必要があるのかを確認しましょう。譲渡所得税とは、不動産を売却して発生した売却益に対して課税される税金です。

譲渡所得税を算出する手順は以下のとおりです。

  1. 課税譲渡所得を求める

※課税譲渡所得金額=収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額

  1. 課税譲渡所得に税率を掛けて譲渡所得税を算出する

※譲渡所得税=課税譲渡所得✕税率

【所有期間による税率の違い】

所得区分

所有期間

税率

短期譲渡所得

所有期間5年以下

39.63%

※所得税:30%

住民税:9%

復興特別所得税:0.63%

長期譲渡所得

所有期間5年超

20.315%

※所得税:15%

住民税:5%

復興特別所得税:0.315%

ただし、課税譲渡所得を求める際の特別控除によって、非課税となるケースがあります。自分に譲渡所得税がかかるのかを知りたい場合は、税理士やファイナンシャルプランナーなどに相談してみてください。

まとめ

この記事では、団地を売却する方法や高く売るためのコツを紹介しました。団地を売却する方法として、現状のまま売却する、リフォーム・リノベーションを行って売却する、不動産会社に買い取ってもらうなどが挙げられます。また、売却の際に不動産一括査定を利用して、複数の不動産会社に査定をしてもらうことで、高値での売却につながるでしょう。

団地はほとんどが築40年を超えているため、建物の劣化などが原因で、売却に苦戦する人が多い不動産です。この記事を参考に、少しでも高く団地を売却できるよう自分に合った売却方法を見つけてみましょう。