オーバーローンの家は売却できないという話を聞いて、自分は該当しているのか不安になった人もいるのではないでしょうか。しかし、きちんと条件を整えれば、オーバーローンの状態でも家を売却することは可能です。

オーバーローンとは、住宅ローンの残債が売却価格よりも高くなってしまう状態のことを指します。しかし、住宅ローンが残っている場合でも、転勤や離婚などの事情によりどうしても家を売却したいということはあるでしょう。

本記事では、オーバーローンとは具体的にどういう状態のことを指しているのか、自分がオーバーローンの状態なのかを確認する方法、さらに、オーバーローンの家を売却するための具体的な方法などについて解説します。

オーバーローンとは具体的にどういう状態?

オーバーローンとは、住宅ローンの残債が不動産の売却価格よりも高くなってしまう状態のことを指します。つまり、家を売却してもローンを完済できず残債が残ってしまう状態のことです。

オーバーローンの状態で家を売却しようとしても、抵当権が設定されているために売却が難しくなります。抵当権とは、借り入れの担保として金融機関が不動産に対して持つ権利のことです。万が一債務者がローンを返済できなくなった場合は、金融機関はその不動産を売却して貸し付けたお金を回収します。

金融機関は、万が一債務者が返済不能に陥った場合のリスクヘッジとして抵当権を設定します。抵当権が設定されたままでは、たとえ家の売買契約が成立したとしても、所有権を移転できません。このため、オーバーローンの状態になっている家を売ろうとするときには、状況に合わせた対策が必要です。

ちなみに、購入時に家が新築だった場合は特に、オーバーローンになる確率が高くなります。新築住宅は、周辺エリアの相場価格より数10%単位で高く売られていることが多いからです。これは、新築住宅には不動産会社の利益を考慮した価格がつけられていることに起因しています。

一方で、誰かが1度でも家に住んだ瞬間にその家は中古住宅になり、新築の時と比べて数10%単位で価格が下がるのが実態です。総じて、新築住宅を買ってすぐに売ろうとすると、オーバーローンの状態になりやすいので要注意です。

自分がオーバーローンの状態なのか確認するための方法

オーバーローンの状態で家を売るためには対策を考える前に、自分がオーバーローンの状態にあるかどうかを正しく把握する必要があります。まずはオーバーローンの状態なのか確認するための方法について解説します。

金融機関にローン返済がいくら残っているのかを確認する

まず最初に行うべきなのが、現在の住宅ローン残債を確認することです。多くの場合、毎年1度など金融機関から定期的に届く「返済明細票」や「残高証明書」などの書類に現在の残債が記載されています。また、インターネットバンキングを利用していれば、オンライン上で残高を確認することも可能です。

これらの方法で残債が確認できない場合は、金融機関の窓口やコールセンターに問い合わせて、正確な残債を教えてもらうのが適当です。

家がいくらで売れるのか自分で調べてみる

次に、現在の住宅の売却価格を把握します。不動産の売却価格は、物件の種類や築年数、立地などによって大きく異なるものです。しかし、インターネットで条件が近い物件の取引事例を調べれば、おおよその相場を把握可能です。

国土交通省が提供している「不動産情報ライブラリ」では、「不動産価格の情報をご覧になりたい方へ」の項にある「データの検索・ダウンロード」から、地域や物件の種類などを入力することで、過去の不動産取引事例を確認できます。

そのほか、不動産流通機構が運営するREINS MARKET INFORMATIONのサイトでも過去の取引事例を検索可能です。条件の似た物件の売却価格を参考にすることで、自宅の売却相場が見えてきます。

不動産会社に机上査定を依頼する

インターネットで調べても直近の取引事例が見つからない、あるいはもっと正確な金額を知りたいという人もいるのではないでしょうか。さらに詳しく自宅の売却価格を知りたい場合は、不動産会社に机上査定を依頼するのがおすすめです。

机上査定とは、不動産会社にオンラインや電話で物件の概要を伝え、おおよその査定額を教えてもらうサービスです。インターネットで複数の不動産会社に一括で査定依頼できるサービスを利用すれば、直接不動産会社に接触することなく、手間をかけずに査定依頼できます。

ただし、査定額は会社によって差が出ることもあるので、なるべく3社以上の不動産会社に査定を依頼することが必要です。

実際にオーバーローンの状態だった時の対処法

確認した結果、実際にオーバーローンの状態に該当していた場合は対策を考える必要があります。対策として考えられる方法を3つ紹介します。

自己資金を取り崩して返済する

オーバーローンの対処法として最も簡単でシンプルなものは、預貯金などの自己資金を取り崩してローンの残債と売却価格の差額を補填する方法です。

十分な預貯金がある場合や家族からの援助が得られる場合などは、この方法が有効です。特に、ローンの残債と売却価格の差額があまり大きくない場合や、決まっている売却期限まであまり時間が無い場合などは、自己資金を充当できれば最適です。ただし、工面しきれないほど多額の資金が必要になる場合は、別の方法を検討する方が適当と言えます。

金融機関の住み替えローンを利用する

住み替えローンとは、現在の住宅ローンの残債と新しく購入する住宅の購入費用を合算して借り入れるローンです。住み替えローンを利用すれば、オーバーローンの状態でも、現在の住宅を売却して新しい住宅を購入できます。

ただし、この方法を利用する貯めの条件は金融機関の審査を通過することです。借入額が家1件分よりも多くなるため、審査通過のハードルは相応に高くなります。また、物件の売却と購入のタイミングを合わせる必要があるため、スケジュール管理が難しい点もデメリットです。

住み替えローンの利用が適しているのは、借入額が多くなったとしても審査に通過できるだけの状況にある人や、手元にあまり多くの現金がない場合、住み替え先の住宅を同時に購入しなければならない場合などです。

このままローン返済を続ける

自己資金が十分でなく、住み替えローンの利用も難しいという場合は、住宅ローンの返済を続けて売却を見送るというのも選択肢の1つです。オーバーローンの物件でも、ローンの残債が売却価格を下回れば売却が可能になります。そのため、しばらくローンの返済を続ければ、いずれは売却のチャンスが訪れるかもしれません。

ただし、この方法は売却までにかなりの時間を要することが予想されます。その間も住宅ローンの返済は続けなければならないため、返済の負担は重くなる点がデメリットです。

また、年数が経過して物件の老朽化が進むと、売却価格がさらに下がってしまう可能性もあります。返済を続ける方法は、売却のタイミングに大きなこだわりがない場合や、ローン返済を続けても家計に大きな影響がない場合などに適しています。

住宅ローンの返済を滞納するとどうなる?

住宅ローンの返済が困難になったとき、中にはもうどうしようもないから返済を止めてしまおう、結局売るのなら競売でよいのではと考える人もいるかもしれません。

しかし、ローン返済の滞納を続けて競売に進むことは、売主にとってかなりデメリットの多い方法です。滞納せざるを得ない状況であれば、金融機関に相談して家の売却方法を探るのが賢明です。

返済滞納を続けたときの流れ

住宅ローンの返済を滞納すると金融機関から返済督促の連絡が来ますが、督促に応じない状態が続くと、金融機関は裁判所に対して支払い督促の申し立てを行います。それでも返済がない場合、金融機関は抵当権に基づいて物件を差し押さえ競売にかけます。

競売に進むと持主の意向は関係なく、家は強制的に売却されることになります。売却代金は住宅ローンの返済に充てられますが、競売での売却価格は市場価格の半額程度など、かなり低いのが実態です。結果的に売却代金が住宅ローンの残債に満たないケースがほとんどです。残った債務は継続して返済しなければなりません。

また、住宅ローンの滞納情報は個人信用情報機関に登録されます。その結果、一定期間はクレジットカードの作成や他のローンの利用ができないなど、信用面でも大きな影響が残るので要注意です。

ローン返済できないならリースバックという方法も

どうしても滞納せざるを得ない場合は、リースバックという方法も一つの選択肢です。リースバックとは、住宅を売却すると同時に、その住宅を買主から賃借して住み続ける方法のことを指します。住宅ローンの残債は売却代金で返済し、その後は買主に家賃を払って同じ家に住み続けることになります。

ただし、住宅を売却する際に残債が出た場合は、残債の返済と家賃の支払いを同時に行わなければならないというデメリットがあります。後の負担が重くなるため、リースバックではなく家賃が安い家に引っ越すという選択をする人も少なくありません。

最良の方法は任意売却

オーバーローンの状態になった場合や、住宅ローンの返済が難しくなった場合に最も推奨されるのは任意売却です。オーバーローンの状態でも金融機関の同意を得たうえで住宅を売却する方法のことを、任意売却と言います。

競売とは異なり、債務者主導で不動産仲介による売却活動を進められるため、市場価格で家を売却できます。任意売却によって住宅ローンを完済できれば、残債を抱えることなく住宅ローン問題を解決することが可能です。残債が出た場合でも、金融機関と相談したうえで無理のない返済計画を決められます。金融機関との交渉は、弁護士や司法書士などの専門家に依頼するのがおすすめです。

ただし、任意売却が可能なのは競売が始まるまでとなります。任意売却の手続きを取れば競売へ進むことがなくなるというわけではありません。競売が始まると任意売却の手続きを進められなくなるので、万が一ローン返済に行き詰まる可能性が出てきたら、すぐに金融機関へ相談するのがおすすめです。

まとめ

家の売却におけるオーバーローンとは、住宅ローンの残債が不動産の売却価格を上回る状態のことです。ローンの残債を確認したうえで不動産の売却相場を調べれば、自分がオーバーローンの状態にあるかを確認できます。

オーバーローン状態の対処法としては、自己資金の投入や住み替えローンの利用、返済の継続などがあります。なお、返済できずに売るのなら競売で良いと考えて、安易に住宅ローンの返済を滞納するのは推奨されません。

競売により他の方法よりも大幅に不利な条件で不動産を手放すことになりかねないからです。万一ローン返済に行き詰まる場合は、できるだけ早い段階で金融機関や専門家に相談し解決への道を探ることが重要です。