「固定資産税を負担するだけで活用していない」
「相続税の支払いのために納付期限までに売りたい」
など、土地を早く売却したいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、同時にできるだけ高く売却したいとも考えられると思います。
この記事では、土地を早く売るために必要な準備やコツ、高く売るための注意点について解説します。土地の売却にかかる費用についても紹介しますのでぜひ参考にしてください。
土地を早く売るための準備
土地を早く売却するためには準備が必要です。ここでは売却活動を始める前にやっておいたほうがよい準備について解説します。
事前に相場を把握しておく
土地を売却するためには、不動産会社に査定を依頼します。ただし、その前にある程度の相場を把握しておくことが大切です。
なぜなら、土地を早く売るには適正な価格設定が大切であり、不動産会社の査定価格が必ずしも適正とは限らないからです。
複数の不動産会社が査定しても、価格がそれぞれ違うことも珍しくありません。そのなかで、価格算出の根拠を聞きながら適正価格を判断するためには、自分でも相場を把握しておく必要があるということです。
土地の相場を把握する方法には、国土交通省の不動産ライブラリがあります。不動産ライブラリは、不動産の過去の取引価格や公示地価、都市計画情報、ハザードマップなど、不動産に関する情報をまとめて調べられるサイトです。
住所や最寄り駅からの距離、土地形状などの条件を設定して取引された土地の価格を検索できます。
ただし、土地の価値は、立地や広さ、形状、道路付け、周辺環境などさまざまな要因に左右されるため、事前に把握できるのは相場の目安として考えることが必要です。
最終的には、不動産会社の査定価格とその根拠から適正な相場、売り出し価格を判断することになります。
境界を確定させておく
土地を早く売るためには、隣接する土地との境界が明確になっていることが必要です。
なぜなら、境界が確定していない土地にはさまざまなリスクがあるためです。
・正確な土地面積が分からず売買取引後にトラブルになる
・土地を引渡し後に、隣地所有者と境界でもめる など
購入にあたってこのようなリスクがあれば、購入希望者は少なくなり、売却期間が長引く可能性があります。
また、仲介する不動産会社から売却前に境界を確定させることを求められることもあるでしょう。
境界には一般の個人や法人が所有する土地と接する「民民境界」と道路など官有地と接する「官民境界」があります。土地を売却する場合、基本的には土地家屋調査士などに依頼して確定測量図を作成する必要があります。
確定測量図は、すべての境界について、隣地所有者の立ち合いのもと確認を行い作成された測量図です。土地の状況や隣地所有者の数などで変わりますが、数カ月以上の期間を要する場合もあります。
越境の覚書を締結しておく
隣地境界上に樹木の枝や擁壁、雨樋、エアコン室外機、給排水管などの越境物がある場合、越境の覚書を締結しておくことが必要です。
越境の覚書とは、越境物の所有権や将来的な是正方法について隣地所有者と合意した文書です。現状問題なく住めている場合でも、買主が将来建て替えや土地を売却する際に越境が問題になる可能性があります。
買主に安心して購入してもらえるように越境の覚書を締結しておくわけです。
反対に、越境物があるにもかかわらず越境の覚書がない状態で売却活動を進めても、買主が見つかりにくいだけでなく、契約条件として越境の解消もしくは覚書の締結を求められ、結果的に販売期間が長くなる可能性があります。
事前に越境物の有無を確認し、必要な場合、越境の覚書を締結するようにしましょう。覚書の内容について分からない場合は、不動産会社や測量を依頼する場合は土地家屋調査士に相談できます。
特に、それまで住んでいなかった土地を相続した場合など、隣地からもしくは隣地への越境物がないかしっかり確認することが大切です。
土地を早く売る5つのコツ
土地を早く売却するためにはどういった点に気をつければよいのでしょうか。ここでは早期売却につながるつのコツについて解説します。
土地売却で実績がある不動産会社に依頼する
売却するエリアで土地の売却実績が豊富な不動産会社に依頼することが重要です。
大手から地域密着の不動産会社まで、それぞれの不動産会社には特徴があります。マンションを専門に取り扱う会社や取引のほとんどが新築一戸建てである不動産会社もあります。
エリアに精通し土地あるいは中古一戸建ての売却実績が豊富であれば、土地の状況に合わせて需要や適切な価格設定を判断しやすいでしょう。
また、不動産会社を探す際、一括査定サイトなど活用しながら複数の会社を比較、検討することが大切です。
売り出し価格は査定価格をもとに決めますが、マンションと比べて土地の査定価格は不動産会社によって違いが出やすい傾向にあります。
なぜなら、前面道路や敷地形状など1つ1つがすべて異なり、土地の価値を左右する条件がさまざまで比較が難しいためです。
そのため、1社の査定価格や販売方法で決めると、売り出し価格を間違い、販売期間が長期化する可能性が高くなります。
早期売却のためには、エリアに精通する会社を中心に複数の不動産会社を比較することがおすすめです。
売り出し価格を高くし過ぎない
早く売却するためには売り出し価格を高くし過ぎないことも大切です。
できるだけ高く売却したいと考えられると思いますが、高すぎる価格設定だと早期売却は難しくなります。
次の表は、首都圏の土地売買取引について、土地を売り出した時(新規登録時の価格)と契約が成立した価格(成約価格)を比較したものです。
新規登録時価格(㎡単価) |
成約価格(㎡単価) |
乖離率(%) |
|
2021年 |
22.40万円 |
20.41万円 |
約8.8% |
2022年 |
28.38万円 |
23.47万円 |
約17.3% |
2023年 |
30.42万円 |
24.37万円 |
約19.8% |
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2023年)」
年度によって違いはありますが、実際に売り出したときの価格より成約価格は10~20%程度下がっています。2,000万円の土地であれば、200万~400万円程度下がっていることになります。
マンションと比べ土地は価格設定が難しいとはいえ、一定の価格調整をしたうえで成約しているということです。買主からの値引き交渉を踏まえて価格設定するとしても、相場より高すぎる価格設定では、販売期間が長期化する可能性が高いといえます。
基本的に古家付きのまま売却する
土地を売却するとき、古家が付いた土地をそのまま売却するか、解体して更地にするか判断に迷うことがあります。
この点については、基本的には古家付きのまま売却するほうがよいでしょう。主な理由は次のとおりです。
-
解体費用がかからない
-
建物の価値を感じる人も購入対象とできる
-
土地の固定資産税を抑えながら売却できる など
建物の解体費用は、木造の場合3~5万円/坪かかります。35坪(約115㎡)の建物であれば、100~180万円の解体費用が必要です。古家付きで売却することでこういった費用を負担することなく売却できます。
また、立地や建物によっては古家でもリノベーションして住みたい、古民家として活用したいなどの購入層もターゲットにできる場合もあるでしょう。
ただし、早く売却するという意味では、解体して更地にしたほうがよい場合もあります。
古家付きの土地だと、土地全体のイメージがつきにくく、解体費用は買主が負担することが必要です。土地を購入してそのまま注文住宅で家を建てる場合、解体費用について住宅ローンの対象とならない場合が多く、自己資金の準備もしくはプロパーローンなどの活用が必要です。
そのため、一般の個人が購入しづらく購入層が戸建ての分譲会社や不動産会社中心になる可能性があります。
解体費用の資金がある、建物に利用価値が期待しにくい場合は、更地にしたほうが早期売却にはつながりやすいといえるでしょう。
解体費用をかけて売却する場合、費用の回収などのリスクもあるため、土地の需要を見極めながら適切な売却方法で進めることが必要です。
隣地所有者や近隣をあたってみる
不動産の売却活動は、suumoやアットホームなど不動産ポータルサイトや不動産会社のホームページでの集客が中心ですが、近隣住民の土地需要を探ってみることも大切です。
例えば、近隣に住む人が土地を買い増しして駐車場や庭を広げたい、あるいは将来的に近隣で子ども世帯が住める土地を探している場合があります。
長期的に土地を探している人は、日常的にネットで土地探しをしていない場合もあるため、隣地に声をかけるもしくは近隣にポスティングを実施することで買主が見つかる場合もあります。
ただし、近隣に直接声をかける場合、不動産会社との媒介契約の確認が必要です。媒介契約には、複数の会社に依頼できる「一般媒介契約」と1社のみに売却を依頼する「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類あります。
このうち、専属専任媒介契約の場合、自己発見取引、つまり売主自ら買主を見つけ個人間で売買することはできず、不動産会社を通す必要があります。これに反して個人間で取引を成立させてしまうと、違約金が発生する可能性があるため注意が必要です。
不動産会社の買取を活用する
早く売却するためにもっとも有効な方法は、不動産会社の買取を活用することです。
買取は、不動産会社が買主となり売主と売買契約する方法です。一般市場で広く買主を募集する場合、短くても3~6カ月程度の期間が必要ですが、買取の場合買主を探す必要がありません。
また、契約後もローンを利用せず現金で買い取ることもあるため、早ければ1カ月以内に現金化できます。
ただし、不動産会社は、土地上に建物を新築して販売したり、転売するために買取するため、買取価格は市場価格より低くなります。物件にもよりますが、相場の6~8割程度になることが多いでしょう。
土地を早く・高く売るときの注意点
ここでは、土地を早くかつ高く売却するための注意点について解説します。
できるだけ売却期間に余裕をもつ
売却期間にできるだけ余裕を持っておくことが大切です。
通常、土地の売り出すとき、3カ月程度で売却できる価格設定にしますが、実際に売却できるまで期間を予測することは簡単ではありません。
売却期間に余裕がなければ、買主から価格交渉があった場合も対応しづらく、また、価格を調整しながら長期的に販売計画を考えることも難しくなります。
次の表は、首都圏の土地取引において、成約までの日数をまとめたものです。
登録から成約に至る日数 |
|
2020年 |
111.0日 |
2021年 |
106.3日 |
2022年 |
83.6日 |
2023年 |
79.0日 |
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2023年)」
不動産会社が活用する情報ネットワークシステムであるレインズに登録してから契約に至るまでの平均日数は、およそ3~4カ月です。不動産会社に依頼して査定する期間や契約後から引渡しまでの期間を考えるとさらに1カ月程度が必要です。
これはあくまでも平均期間のため、1年以上の期間を要することもあります。できるだけ販売期間に余裕をもたせるようにしましょう。
需要が高まっている時期に売却する
できるだけ高く売却するためには需要が高い時期を選ぶことが大切です。長い視点で考えた場合、不動産価格指数が1つの参考になります。
下図は、令和6年度第1四半期までの不動産価格指数を表したものです。
住宅地については、2020年中頃から上昇傾向が続いています。場所によって地価推移は異なるため、不動産ライブラリの公示地価の推移を参考にしてみるのもよいでしょう。
また、1年間のなかで不動産の需要が高まる時期は12月~2月です。転勤や異動、進学などをきっかけに不動産を探す人が増えやすくなります。
ただし、注文住宅用地や戸建ての分譲用地は、時期に関係なく探している人も少なくありません。
出典:国土交通省「不動産価格指数(令和6年3月・令和6年第1四半期分)
隣地を買い取って土地の価値を上げる
資金があれば隣接する土地を買い取ってあわせて売却する方法があります。
自分の土地だけであれば条件として良くない場合でも、隣接地を買い増しすることで土地の価値が飛躍的に上がることもあります。
-
狭小地である
-
土地の間口が狭い
-
前面道路に出にくい
-
旗竿地である など
このようなケース土地について、隣地を購入することで一定の土地面積や間口を確保できれば、それぞれの土地が持つ価値以上の価格で売却できる可能性もあります。
また、土地の価値や売れやすさは、前面道路との関係が大きく影響します。道路を接する距離が短い、道路に出にくい土地は評価が低くなり売れにくい傾向です。土地を買い取ることで接道状況が改善できれば高く売却しやすくなります。
隣接する土地が活用されていない可能性がある場合、買取りの提案をしてみるのも1つの方法です。
土地を売却するときにかかる費用と税金
最後に、土地を売却するときにかかる費用と税金について解説します。
仲介手数料
不動産会社に支払う仲介手数料が必要です。
仲介手数料は、売主と買主の間で仲介した不動産会社に契約成立の報酬として支払うお金です。
仲介手数料は、宅地建物取引業法において上限が定められています。
売買金額 |
仲介手数料(上限) |
400万円超え |
売買金額×3%+6万円+消費税 |
200万円超え400万円以下 |
売買金額×4%+2万円+消費税 |
200万円以下 |
売買金額×5%+消費税 |
仮に、2,000万円の土地を売却した場合、2,000万円×3%+6万円+消費税(10%)=72万6,000円が上限となります。
なお、買取の場合は、不動産会社が直接買主となるため仲介手数料は必要ありません。
印紙税
印紙税は、売買契約書など課税文書にかかる税金です。
売買金額に応じて税額が決まっており、売買契約書に収入印紙を貼付し消印することで納付します。平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される不動産売買契約書については軽減措置があります。
印紙税額は以下のとおりです。契約金額が1万円未満のものは非課税となります。
契約金額 |
税額(軽減後) |
10万円以下 |
200円 |
10万円超え50万円以下 |
200円 |
50万円超え100万円以下 |
500円 |
100万円超え500万円以下 |
1,000円 |
500万円超え1,000万円以下 |
5,000円 |
1,000万円超え5,000万円以下 |
1万円 |
5,000万円超え1億円以下 |
3万円 |
1億円超え5億円以下 |
6万円 |
譲渡所得税
土地を売却したことで利益(譲渡所得)が生じた場合、譲渡所得税がかかります。
譲渡所得ならびに譲渡所得税の計算方法は次のとおりです。
譲渡所得=売却収入-取得費-譲渡費用-特別控除額 |
譲渡所得は、売却金額から土地を購入する際にかかった費用と売却のためにかかった費用を控除して計算します。居住用財産を売ったときの特例などが活用できる場合は、その金額を控除します。
譲渡所得税=譲渡所得×税率 |
譲渡所得税は、譲渡所得に税率を乗じて計算します。
税率は、不動産の所有期間によって異なります。
譲渡所得の種類 |
不動産の所有期間 |
税率 |
短期譲渡所得 |
5年以内 |
39.63%(所得税30%+住印税9%+復興特別所得税0.63%) |
長期譲渡所得 |
5年以上 |
20.315%(所得税15%+住印税5%+復興特別所得税0.315%) |
土地が値上がりしているなどで譲渡所得税が発生する場合、売却した年の翌年2月16日から3月15日の間に申告が必要です。
解体費用(更地にする場合)
古家付きの土地を解体して売却する場合、解体費用が必要です。
建物の構造によって解体費用にかかる相場は変わります。
構造 |
解体費用の坪単価(相場) |
木造 |
3~5万円/坪 |
鉄骨造 |
4~6万円/坪 |
鉄筋コンクリート造 |
6~8万円/坪 |
建物の構造だけでなく、解体する作業環境などでも費用は変わります。狭小地や住宅密集地で重機が入れない場合など、人件費が増え、工期が長くなるため費用は高くなる傾向です。
また、解体で生じる廃材が多ければ多いほど、処理コスト、運搬コストがかかります。家財などをできるだけ自分で処理したり、複数の会社の見積もりをとって比較することで解体費用を抑えやすくなります。
まとめ
土地を早く売るためには、まず準備が必要です。相場を調べるとともに、境界を明確にし越境を解消するなど、売却にあたって問題のない土地にしておくことが大切です。
土地は、マンションと比べても1つ1つ条件が異なり、物件に合わせた価格設定や販売方法を選択することがより重要となります。
古家付きのまま売却するか更地にするか、あるいは立地条件が良くなくネット広告からの問い合わせや反響が少ない場合は、近隣での需要を積極的に探ることも必要です。
物件の状況に応じた適正な売り出し価格や販売方法を知るには、複数の不動産会社の査定価格や販売方法を比較し、信頼できる不動産会社に依頼することが大切になります。