「不動産売却時にかかる税金を抑えたい……」

「税金対策って具体的になにをすればいいの?」

不動産売却時にはさまざまな税金がかかり、必要以上に税金を支払っている人も少なくありません。

そこでこの記事では、不動産売却時に発生する税金の種類や税金対策などを詳しく解説します。

不動産売却時の税金を少しでも安くしたい方はぜひ最後までご覧ください。

この記事の目次

不動産売却時にかかる4つの税金

不動産売却時には主に以下4つの税金がかかります。

  • 譲渡所得税

  • 印紙税

  • 登録免許税

  • 消費税

それぞれの意味や税額などを先に確認しておきましょう。

譲渡所得税

譲渡所得税とは、不動産売却によって得た譲渡所得に対して課される税金です。具体的には、譲渡所得額に応じて所得税や住民税などが課せられます。

譲渡所得とは、当時買ったときの価格よりも高く売れた際の差額をいいます。例えば、当時3,000万円で買った家が5,000万円で売れた場合は差額の2,000万円が譲渡所得です。

ただし、譲渡所得を求める際は譲渡費用や取得費などの経費を差し引いて計算するため、差額がすべて譲渡所得になるとは限りません。譲渡所得は以下の計算式で求められます。

▼譲渡所得の求め方
譲渡所得=不動産売却価格-譲渡費用-取得費-諸費用

そして求めた譲渡所得に対して税率がかけられます。

▼譲渡所得税の求め方
譲渡所得税=譲渡所得×所有期間ごとの税率

譲渡費用や取得費などの詳細は後述していますが、譲渡費用や取得費などを多く計上できれば譲渡所得を安くできるため、譲渡所得税も抑えられます。

印紙税

印紙税とは、不動産売却時の売買契約書や領収書などの課税文書に課される税金です。

売買契約の際、売買契約書に収入印紙を貼り付けて納税します。なお、課税文書に記載されている金額によって収入印紙額は異なります。

契約金額

本則税率

軽減税率

10万円を超え 50万円以下のもの

400円

200円

50万円を超え 100万円以下のもの

1千円

500円

100万円を超え 500万円以下のもの

2千円

1千円

500万円を超え1千万円以下のもの

1万円

5千円

1千万円を超え5千万円以下のもの

2万円

1万円

5千万円を超え 1億円以下のもの

6万円

3万円

1億円を超え 5億円以下のもの

10万円

6万円

5億円を超え 10億円以下のもの

20万円

16万円

10億円を超え 50億円以下のもの

40万円

32万円

50億円を超えるもの

60万円

48万円

引用元:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」

収入印紙はコンビニや郵便局で購入できますが、コンビニには高額な収入印紙を取り扱っていない可能性が高いため、郵便局で購入するのがよいでしょう。

登録免許税

登録免許税とは、不動産登記をする際にかかる税金であり、不動産売却時は主に抵当権抹消登記の際にかかる税金です。

抵当権抹消登記費用は不動産1件につき1,000円かかります。住宅ローンを組んで家を購入した際は、基本的に建物と土地の両方に抵当権が設定されるので、抹消費用は2,000円かかります。

なお、抵当権抹消登記は自分でもおこなえますが、書類を準備したり手続きしたりなどの手間がかかるため、司法書士へ依頼するのが一般的です。司法書士依頼料は1〜2万円程度が相場です。

消費税

不動産売却時にはさまざまな費用に対して消費税がかかります。

  • 仲介手数料

  • 司法書士依頼料

  • 住宅ローン一括返済手数料

これらの費用はすべて消費税10%が課税されます。特に仲介手数料は高額になりやすいため、事前に確認しておきましょう。

【種類別】不動産売却時の税金対策

不動産売却時の税金対策を解説します。各税金ごとに分けて解説するので、少しでも税金を安くしたい方は参考にしてみてください。

【譲渡所得税の対策①】譲渡費用を確実に計上する

譲渡所得税を抑えるためにも譲渡費用を確実に計上しましょう。

前述のとおり、譲渡所得税は譲渡所得に対して課税される税金であり、譲渡所得を抑えられれば譲渡所得税も安くできます。

▼譲渡所得の計算方法
譲渡所得=不動産売却価格-譲渡費用-取得費-諸費用

つまり、譲渡費用を多く計上するほど譲渡所得が安くなり、譲渡所得税も抑えられます。

譲渡費用には主に以下のような費用が含まれます。

  • 売却時の仲介手数料

  • 印紙税

  • 立ち退き料

  • 建物の取り壊し費用

  • 違約金

参考:国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」

不動産を売却するにあたって必要な費用であれば基本的に計上できるため、確実に計上しましょう。

【譲渡所得税の対策②】取得費を確実に計上する

譲渡所得税を抑えるためにも取得費を確実に計上しましょう。譲渡費用と同様に取得費も譲渡所得から差し引ける費用であり、多く計上できるほど譲渡所得を抑えられます。

主に以下の費用を取得費として含められるので確認しておきましょう。

  • 家の購入代金

  • 建築代金

  • 購入手数料

  • 設備費

  • 改良費

参考:国税庁「No.3252 取得費となるもの」

【譲渡所得税の対策③】5年を超える期間所有してから売却する

家を売却する際は所有期間が5年を超えてから売却しましょう。譲渡所得税率は家の所有期間によって税率が異なります。

所有期間

住民税率

所得税率

合計

短期譲渡所得:5年以下

5%

15%

20%

長期譲渡所得:5年超

9%

30%

39%

※上記税金に加えて令和19年までは、復興特別所得税として2.1%が課税されます。

参考:国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」 「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」

長期譲渡所得と短期譲渡所得で約2倍も税率が異なるため、5年を超える期間所有してから売却した方がよいでしょう。

【譲渡所得税の対策④】 3,000万円特別控除を利用する

3,000万円特別控除を利用することで3,000万円分の譲渡所得を控除できます。

例えば、家を売って3,000万円の譲渡所得を得た場合、譲渡所得をすべて控除できるので税金がかかりません。税金対策のなかでも特に節税効果の高い制度のため、家を売って譲渡所得を得た際は確実に利用したい特例といえます。

ただし、利用するには以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 実際に居住している家を売った

  • 前年、前々年に3,000万円特別控除を受けていない

  • 売った年、前年、前々年にマイホームの買換え特例などを受けていない

  • 売り手と買い手が親子や夫婦関係ではない

参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」

特例の概要や条件について詳しくは国税庁の公式サイトをご覧ください。

【譲渡所得税の対策⑤】軽減税率の特例を利用する

軽減税率の特例とは、10年を超える期間所有している家を売り、譲渡所得を得た際に利用できる特例です。

譲渡所得額に応じて、以下のように軽減税率が適用されます。

課税長期譲渡所得金額(=A)

税率

6,000万円超

A×10%

6,000万円以下

(A-6,000万円)×15%+600万円

※課税長期譲渡所得金額=(土地建物を売った収入金額)-(取得費+譲渡費用)-特別控除

例えば、譲渡所得6,000万円、取得費1,500万円、譲渡費用が1,000万円、3,000万円特別控除を利用した場合は以下の計算となります。

(6,000万円)-(1,500万円+1,000万円)-3,000万円=500万円

課税長期譲渡所得の500万円に軽減税率をかけます。

(500万円-6,000万円)×15%+600万円=-225万円

軽減税率適用後の譲渡所得がマイナスのため、譲渡所得税がかからなくなります。

このように、高額な譲渡所得を得た場合でも、軽減税率の特例を利用することで税金を大きく抑えられます。ただし、利用するには以下すべての条件を満たす必要があります。

  • 実際に居住している家を売った

  • 売った年の1月1日において所有期間が10年を超えている

  • 前年、前々年に軽減税率の控除を受けていない

  • 売った年、前年、前々年にマイホームの買換え特例などを受けていない

  • 売り手と買い手が親子や夫婦関係ではない

参考:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」

【譲渡所得税の対策⑥】マイホームの買換え特例を利用する

マイホームの買換え特例とは、家を買い換えた際の譲渡所得税の支払いを、買換えた家の売却時に繰り延べできる制度です。

家売却時に発生した譲渡所得税の支払いを先延ばしにできるため、買換え時の費用負担を軽減できます。

ただし、先延ばしにできるだけで免税されるわけではありません。買い換えた不動産を将来的に売却する際にまとめて支払うことになるため、将来的な費用負担が大きくなる可能性があります。

なお、利用するには以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 実際に居住している家を売った

  • 売った年、前年および前々年にほかの特例を受けていない

  • 売った家と買った家ともに日本国内にある

  • 売却代金が1億円以下

参考:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」

詳しくは国税庁の公式サイトをご覧ください。

【印紙税の対策①】売買契約は電子契約で締結する

売買契約を電子契約で結ぶことで印紙税を節約できます。

印紙税は、売買契約書や領収書などの課税文書に課される税金であり、課税文書1通ごとに税金が発生します。そのため、売買契約時は売買契約書を交付される売主と買主の双方の負担となります。

しかし、電子契約にすれば売買契約書自体がないため、印紙税がかかりません。少しでも税金を安くしたい方は、電子契約で進められないか不動産会社の担当者へ相談してみましょう。

【印紙税の対策②】買主に負担してもらう

印紙税は買主に負担してもらうことも可能です。

前述のとおり、印紙税は売買契約書などの課税文書に対して課される税金ですが、売主と買主が負担しなければいけない決まりはありません。

交渉次第では買主に負担してもらうことも可能なため、少しでも安くしたい方は一度相談してみましょう。

【印紙税の対策③】相手方に売買契約書を作成してもらい自分はコピーを取る

売買契約書を買主側に作成してもらい、自分は売買契約書のコピーを貰うことで節約できます。

印紙税は課税文書の原本に課されるため、コピーで済ませられるのであれば印紙税はかかりません。ただし、コピーは原本よりも証拠能力が低いとみなされる可能性があり、裁判などのトラブルに万が一発展した際に不利になる恐れがあります。

売買契約書は売主と買主の双方が原本を保管するのが一般的のため、万が一に備えたい場合はコピーで済ませるのは避けた方がよいでしょう。

【登録免許税の対策】抵当権抹消登記は自分でおこなう

登録免許税の税金対策として、抵当権抹消登記は自分でおこないましょう。

抵当権抹消登記とは不動産登記の一種であり、住宅ローンが完済された際に抵当権を抹消する手続きです。

司法書士へ依頼して抹消してもらうのが一般的ですが、依頼料として2~3万円程度かかります。その点、自分で手続きすれば依頼料を節約できるため、少しでも売却時の費用を抑えたい方におすすめです。

ただし、抵当権抹消登記をする際は必要書類を準備したり登記手続きをしたりするので、手間や時間がかかります。もし、自分で抵当権抹消登記をしたい場合は、法務局が提供している「住宅ローンを完済した方へ」を参考に進めてみましょう。

【その他の対策①】ふるさと納税を利用する

ふるさと納税とは、自分の好きな町に寄付する代わりに地域の名産品などが貰える制度です。

寄付したい地域の自治体に寄付することで、所得税の還付を受けられたり住民税が控除されたりします。ただし、以下の控除特例と併用して利用できないので注意が必要です。

  • 3,000万円の特別控除

  • 軽減税率の特例

  • マイホームの買換え特例

詳しくは総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」をご覧ください。

【その他の対策②】相続空き家の3,000万円特別控除を利用する

相続した空き家を売却した場合は「相続空き家の3,000万円特別控除」を利用しましょう。

前述した3,000万円特別控除は、居住している家を売却するのが条件でしたが、相続した家であれば居住していなくても利用できる場合があります。

適用するためは以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 被相続人が実際に住んでいた

  • 昭和56年5月31日以前に建築されたこと

  • 区分所有建物登記がされている建物でないこと

  • 相続開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと

  • 売却代金が1億円以下であること

参考:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

条件はほかにも多くあるため、国税庁の公式ページをご覧ください。

【その他の対策③】相続物件の取得費加算の特例を利用する

相続物件であれば、取得費加算の特例も利用しましょう。この特例を利用することで、譲渡所得から「取得費に加算する相続税額」を控除できます。

計算式にすると以下のようになります。

「譲渡所得=売却価格-譲渡費用-取得費-取得費に加算する相続税額-諸費用」

つまり、譲渡所得から差し引けるため、譲渡所得が少なくなり節税につながります。なお、「取得費に加算する相続税額」の求め方は国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を参考に計算してみましょう。

また、利用するには以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 相続や遺贈により財産を取得した者であること

  • その財産を取得した人に相続税が課税されていること

  • その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること

不動産売却時に譲渡損失が出た際の税金対策

不動産売却によって譲渡損失が発生した際の税金対策を解説します。損失が発生した際は、ほかの所得にかかる税金を安くできる場合があるので参考にしてみてください。

マイホーム買換え時の損益通算及び繰越控除の特例を利用する

マイホームを買い換えた際の譲渡損失を、給与所得などのほかの所得と損益通算できる特例です。

例えば、年収500万円の人が家の買換えによって1,000万円の譲渡損失となった場合、給与所得500万円を譲渡損失1,000万円と損益通算できます。

つまり、給与所得500万円を0円として申告できるため、所得税が一切かからなくなります。

また、損益通算しきれなかった分は3年間にわたって繰り越せるので、上記例だと残りの500万円分の譲渡損失分を翌年に繰り越して控除できます。

ただし、以下の条件をすべて満たさないと利用できないので確認しておきましょう。

  • 自分が住んでいるマイホームを譲渡すること

  • 譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超える資産で日本国内にあるもの

  • 譲渡の年の前年の1月1日から売却の年の翌年12月31日までの間に日本国内にある資産で家屋の床面積が50平方メートル以上であるものを取得すること

参考:国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」

マイホーム売却時の損益通算及び繰越控除の特例を利用する

マイホームを売却した際の譲渡損失を、ほかの所得と損益通算できる特例です。

前述した「買換え時の損益通算及び繰越控除」と似たような特例であり、売却した際の譲渡損失を給与所得や事業所得などと損益通算できます。

また、控除しきれない場合は3年間にわたって繰り越せます。利用する際は以下の条件をすべて満たしているかどうかを確認してから利用しましょう。

  • 譲渡する個人が居住の用に供している家屋で国内にあるもの

  • 譲渡する個人の親族等に対する譲渡および贈与または出資による譲渡でないこと

  • 譲渡する個人の家屋が災害により滅失した場合において、その個人がその家屋を引き続き所有していたならば、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えることとなるその家屋の敷地の用に供されていた土地等

参考:国税庁「No.3392 「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の対象となる「譲渡資産」及び「特定譲渡」とは」

不動産売却時の税金対策に関するよくある質問

不動産売却時の税金対策に関するよくある質問をご紹介します。税金の支払いや確定申告についての疑問や不安を参考にしてみてください。

不動産売却で税金がかからないケースは?

不動産を売却した際、譲渡所得を得ていない場合は税金がかかりません。ただし、印紙税や登録免許税などは譲渡所得の有無に関係なく発生します。

不動産売却時の主な税金は譲渡所得税であり、買ったときよりも高く売れた際の譲渡所得に対してされます。しかし、買ったときよりも安く売れたり控除特例を利用したりして、譲渡所得を0円もしくはマイナスにできれば譲渡所得税がかかりません。

買ったときよりも安く売れたら確定申告しなくていいの?

買ったときよりも安く売れた場合は譲渡所得を得ていないため、基本的には確定申告しなくても問題ありません。

しかし、控除特例などを利用する際は確定申告する必要があります。例えば、家を売って譲渡損失が発生した際に「マイホーム売却時の損益通算及び繰越控除の特例」を利用したいのであれば、家を売った翌年に確定申告しなければなりません。

確定申告の方法や時期は?

確定申告の方法は、「自分で申告する」か「税理士へ依頼する」の2種類です。

自分で申告すれば税理士依頼料がかからないため、費用を抑えられます。ただし、必要書類を準備したり手続きしたりする手間がかかります。

一方で税理士へ依頼する場合は必要書類を準備するだけでよく、手続きなどは税理士がおこなってくれます。ただし、依頼料として5万円前後かかるので費用面で負担となるでしょう。

また、確定申告の時期は毎年2月16日〜3月15日です。期限を過ぎてしまうと「無申告課税」としてペナルティが課せられる可能性があるので必ず期間内に申告しましょう。

まとめ

不動産売却時にかかる税金、ぞれぞれの税金対策について解説しました。

不動産売却時にはさまざまな税金が発生しますが、特に譲渡所得税は高額になりやすいため、控除特例などを活用して節税することが大切です。

印紙税や登録免許税は高額ではないものの、方法によっては節税できるので、少しでも税金を抑えたい方は参考にしてみてください。これから不動産売却を控えている方や確定申告を控えている方は、ぜひこの記事を参考に税金対策を実践してみましょう。