「そろそろ住宅ローンを完済するからその後の手続き方法を知りたい」「抵当権抹消登記の委任状が送られてきたけど、書き方がわからない」このように悩んでいないでしょうか。

住宅ローンを完済したら抵当権抹消登記を行う必要があり、委任状に必要事項を記載しなければなりません。

一般的に手続先の法務局は平日しか開いていないため、書類に不備があると数少ない平日の休みを無駄にする可能性があります。

そのため事前に委任状に書くことや手続き方法への理解が大切です。

本記事では抵当権抹消登記の委任状について、ケース別の書き方や注意点をまとめます。

記事を参考に、滞りなく抵当権を抹消できるような知識を身につけてください。

抵当権抹消登記の委任状とは?概要や必要性を解説

住宅ローンを完済・完済間近の方は、抵当権抹消登記に関する基本情報を確認しておきましょう。

抵当権抹消登記は住宅ローンを完済するときに、金融機関が持っている不動産の権利を解除する手続きのことを指します。

より詳しい説明や必要性は以下で解説しているので、抵当権抹消登記にまつわる理解を深めてください。

抵当権抹消登記の概要

抵当権抹消登記とは、所有している不動産に設定されている抵当権を抹消するための手続きのことです。

抵当権とは住宅ローンを組むときに金融機関が設定する権利のことで、いわゆる担保のような仕組みを指します。

住宅ローンを組んで家を購入した場合、完済するまでは抵当権を抹消できません。

また完済しても自動で消えるものではないので、完済したタイミングで不動産を所有している法務局に抹消の手続きが必要となるのです。

はじめて抵当権抹消登記を行う方は「金融機関についている権利を抹消するための手続き」と理解しておきましょう。

参照元:全国銀行協会|完済したら抵当権の登記抹消をお早めに!

抵当権抹消登記の委任状の必要性

抵当権を抹消するには、委任状が必要です。

しかし「自分で手続きをするのになぜ委任状が必要なのだろう」と悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。

抵当権とは、ローンを返済できなかったときに金融機関が家を競売にかけて現金化できる権利です。

つまり債務者の独断では権利を抹消できないため、完済したタイミングで金融機関にも申請してもらう必要があります。

これから抵当権の抹消登記を行う方は、自分で委任状を書きつつ、金融機関にも申請する必要があると理解しておきましょう。

また抵当権抹消登記の委任状は、「誰が申請するのか」によって取るべき対応が異なります。

具体的には自分で登記する場合・司法書士に依頼する場合・配偶者に依頼する場合で異なるので、それぞれの対応方法も確認してください。

【自分で登記する場合】抵当権抹消登記の委任状の書き方

引用元:法務局|抵当権の登記を抹消する場合の申請書の様式・記載例

自分で抵当権抹消登記の委任状を書く場合は、大きく3つのステップで記載します。

基本的に委任状は抵当権を設定している金融機関から送られてくるので、まずは郵便物やメールが届いていないか確認してみてください。

「金融機関から委任状が来ない」という方は、法務局が用意しているひな形を参考にしてみましょう。

以下では法務局のひな形を参考に、書くべきことを3つに分けて紹介します。

1.何を委任するのか記載する

まずは何を委任するのか記載しましょう。

基本的には下記の内容をそのまま記載していれば問題ありません。

1下記の登記に関し、登記申請書を作成すること及び当該登記の申請に必要な書面と共に登記申請書を管轄登記所に提出すること

2 登記が完了した後に通知される登記完了証を受領すること

3登記の申請に不備がある場合に、当核登記の申請を取下げ、または補正をすること
4 登記に係る登録免許税の還付金を受領すること
5 上記1から4までのほか、下記の登記の申請に関し必要な一切の権限

参照元:法務局|抵当権の登記を抹消する場合の申請書の様式・記載例

2.登記の目的・原因・権利者・義務者を記載する

次に登記の目的・原因・権利者・義務者を記載しましょう。

登記の目的は抵当権抹消、原因にはローン完済の日にちを記載してください。

権利者には物件の住所と所有者の名前、義務者には取引している金融機関の住所と社名を記します。

下記の内容を参考に記載してみてください。

登記の目的 抵当権抹消(順位番号記載の通り)

原因    令和◯年◯月◯日解除

権利者   〇〇市〇〇町〇〇 法務太郎

義務者   〇〇市〇〇町〇〇 株式会社〇〇

参照元:法務局|抵当権の登記を抹消する場合の申請書の様式・記載例

3.不動産の情報を記載する

ここまでの情報を記せたら、最後に不動産の情報を記載します。

不動産の情報で書くべき8つの項目と概要をまとめるので、参考にしてみてください。

【不動産の情報で記載すべき内容】

  • 所在:不動産がある住所

  • 地番:土地を特定するための番号

  • 地目:ここでは主に「宅地」を指す

  • 地積:土地の面積

  • 家屋番号:不動産登記上、建物を識別するための番号

  • 種類:ここでは主に「居宅」を指す

  • 構造:木造・鉄筋コンクリート造など

  • 床面積:床の面積

これらの情報を記載する際のイメージは、下記のようになります。

所在   〇〇市〇〇町〇〇

地番   〇番

地目   宅地

地積   100.00平方メートル(順位番号 〇番)

 

所在   〇〇市〇〇町〇〇

家屋番号 〇番

種類   居宅

構造   鉄筋コンクリート造

床面積  75.00平方メートル(順位番号 〇番)

参照元:法務局|抵当権の登記を抹消する場合の申請書の様式・記載例

イメージを参考に、過不足のないよう不動産にまつわる情報を記載してください。

【司法書士に依頼する場合】抵当権抹消登記の委任状の書き方

登記手続きについてまったく知識のない方や調べる手間や時間を買いたい方は、司法書士への依頼がおすすめです。

司法書士に抵当権抹消登記を依頼する場合は、金融機関からの委任状と司法書士に依頼する際の委任状の2つが必要になります。

それぞれの手順について解説するので、下記を参考にしてみてください。

金融機関から委任状を受け取る

住宅ローンを完済したら、金融機関から送られる委任状を受け取りましょう。

また司法書士への依頼に際して、不動産の情報がわかるような下記の資料を用意してください。

【司法書士に依頼する際に必要な資料】

  • 不動産の登記簿謄本

  • 不動産の登記識別情報通知

  • 固定資産納税通知書

  • 金融機関から送られる抵当権抹消の委任状

  • 売買契約書(不動産を売買で取得した場合)

  • 遺産分割協議書(不動産を相続で取得した場合)

受任者は司法書士となるため、金融機関からもらった抵当権抹消登記の委任状は記載せずに空欄にしておきましょう。

債務者自身で作成した委任状を記載する

次に債務者自身で作成した委任状を記載します。

基本的に委任状は司法書士からフォーマットが用意されるため、確認のうえ必要事項を書きましょう。

【配偶者に依頼する場合】抵当権抹消登記の委任状の書き方

抵当権抹消登記を配偶者に依頼する場合は、金融機関から送られる書類で手続きが可能です。

金融機関から送られるフォーマットに沿って必要事項を記しましょう。

なお、配偶者が手続きをする場合も、受任者に記載する名前は不動産の所有者で構いません。

配偶者が書類を提出する行為は「委任」ではなく「代理」となるため、配偶者の名前は記載せずとも手続きは完了します。

法務局に資料を提出する際も、一般的に本人確認などは行いません。

抵当権抹消登記の委任状を作成する際の注意点

抵当権抹消登記の委任状を作成する際、書類の不備や用意すべきものがないと時間がかかってしまいます。

法務局は土日祝日が休業日となっていることがほとんどなので、とくにビジネスパーソンは数少ない平日の空き時間で確実に手続きを済まさなければなりません。

書類の不備で何度も法務局に行く手間がかからないよう、下記で紹介している5つの注意点を参考にしてください。

実印や認印を用意する

抵当権抹消登記の委任状を作成する際は、実印または認印を用意しましょう。

実印とは自治体に登録されている印鑑のことで、認印とは印鑑登録をしていない印鑑のことです。

シヤチハタはゴム製で劣化の恐れがあることから、有効な印鑑として認められません。

朱肉を使って押すタイプの印鑑を用意し、委任状に押印してください。

不備がないか確認しつつ必要事項を記載する

委任状が手元に届いたら、内容に不備がないか確認しつつ書類に必要事項を記載しましょう。

金融機関から届いた書類に不備がある可能性も0ではないため、それぞれ確認しながら進める必要があります。

委任状では金融機関を委任者、私たちのことを受任者と呼んでいます。

委任者の項目に不備がないか確認し、受任者の部分は自分で必要事項を書いてください。

とくに間違えやすいのは、「委任日」「原因」などと呼ばれる項目です。

こちらには住宅ローンの完済日を記載するので、書類を作成した日にちを書かないように注意しましょう。

代表者が辞任している場合はその旨を記載する

契約時の金融機関の代表と現在の代表が変わっている場合は、その旨を委任状に記載しましょう。

住宅ローンを返済している中で、契約時の代表が辞任しているケースは多々あります。

代表者が辞任している場合は、委任状の金融機関情報を記載しているところの配下に下記のような内容を補足してください。

登記義務者の〇〇の代表権限は消滅している。代理権を有していた時期は平成〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日までである。

委任状を紛失した場合は再発行する

委任状を紛失した場合は、金融機関に再発行を依頼しましょう。

担当者の連絡先を知っている場合は直接連絡を取り、連絡先を知らない場合は取引している窓口に連絡しましょう。

委任状自体に期限はありませんが、住宅ローンを完済したら早めに手続きを済ます必要があります。

紛失したらそのままにせず、早めに再発行を依頼してください。

現在の住所や氏名と異なる場合は変更登記を行う

不動産を購入したときとローンを完済したときで住所や氏名が変わった場合は、変更登記が必要です。

登記簿上の住所や氏名と申請した情報が異なっていると、抵当権抹消の登記は正しく行われません。

住所変更・氏名変更それぞれ必要な書類をまとめるので、参考にしてみてください。

【住所変更の場合】

  • 法務局でダウンロードできる登記申請書

  • 住民票の写し

  • 登録免許税2,000円

 

【氏名変更の場合】

  • 法務局でダウンロードできる登記申請書

  • 戸籍の記録事項証明書

  • 住民票の写し

  • 登録免許税2,000円

 

参照元:法務局|登記されている住所・氏名に変更があった方へ(住所変更登記・氏名変更登記の申請手続のご案内)

これらの書類を用意して、抵当権抹消の委任状と一緒に法務局へ提出しましょう。

抵当権抹消登記の委任状でよくある質問

抵当権抹消登記の委任状を作成する際によくある質問をまとめました。

大事な休暇を手続きばかりに費やさないよう、先人が悩んでいたことをチェックしてみてください。

抵当権抹消は誰が代理で行えますか?

委任状が正しく記載されていれば、誰でも代理で手続きできます。

配偶者や友人が代理で手続きをする際も、所有者の名前や印鑑が入った委任状が必要です。

抵当権抹消手続登記義務者は誰ですか?

抵当権抹消手続における登記義務者は、金融機関のことです。

委任状には金融機関の住所・社名・法人番号・代表者氏名を記入してください。

抵当権抹消登記は誰が行いますか?

一般的に抵当権抹消登記は、所有者本人が行います。

平日法務局に行けないなどの理由がある場合は、司法書士や配偶者も対応が可能です。

まとめ

この記事では、抵当権抹消登記の委任状の書き方や注意点をまとめました。

基本的に、抵当権抹消登記の委任状は金融機関から送付されるものを使用します。

万が一金融機関か委任状が送られない場合は、法務局が用意しているフォーマットを参考にしてみてください。

抵当権抹消登記は本人以外でも、司法書士や配偶者の手続きにも対応しています。

記事内で説明している書き方を参考に、滞りなく手続きを進めましょう。