「不動産売却した年の固定資産税は誰が払うの?」「負担割合はどうやって決める?」など、不動産売却時の固定資産税について疑問を感じている方は多いのではないでしょうか。
今回は、不動産売却した年の固定資産税をテーマに、納税義務者、日割り精算の詳細、具体的な計算例などを紹介します。
この記事を読めば、不動産売却時の固定資産税について正しい知識を得られますので、参考にしてください。
この記事の目次
不動産売却した年の固定資産税は誰が支払うのか
不動産売却した際の固定資産税について、基本的な仕組みと合わせて、誰が支払うのかを解説します。
課税されるのは1月1日時点の登記簿上の所有者
そもそも固定資産税とは、毎年の1月1日に土地や建物などの不動産所有者に課される税金です。
納税義務は1月1日時点の登記簿上の所有者に課される仕組みとなっており、年度の途中で不動産を売却した場合でも納税義務者は変わりません。
例えば3月1日に物件を引き渡しとしても、当該年度1年分の納税義務は1月1日現在で不動産を所有していたものに課されことになるのです。
ただし、これはあくまで税法上の取り決めであり、「不動産売却した年の固定資産税は売主が必ず負担する」というわけではないため、基礎知識として覚えておく程度にとどめましょう。
売主と借主で日割り精算するのが慣例
前述のとおり、不動産売却した年の納税義務は売主に課されるものの、実際には売主と買主との話し合いで双方が負担するのが一般的です。
双方が負担する場合、引渡日を基準に固定資産税を日割り計算して分担しますが、納税自体は売主が行うことになります。
慣例であり義務ではない
不動産売却時の固定資産税を売主、買主で日割り精算するのはあくまで慣例です。
法律で清算が定められているわけではなく、売主、買主が話し合ったうえで双方が同意することで、日割り精算が成立します。
この辺りの分担や契約書への記載方法などは不動産会社にサポートしてもらうとよいでしょう。
不動産売却の翌年からは買主が納税
固定資産税は、1月1日時点の登記簿上の所有者に課されるため、不動産を売却した翌年からは買主が納税義務者となります。
不動産売却時の固定資産税を日割り精算する方法
一般的に不動産売却時の固定資産税は売主、買主で日割り精算しますが、計算方法については注意が必要です。
日割り精算のポイント、具体的な計算例を紹介しますので、チェックしておきましょう。
日割り清算のポイントは起算日
固定資産税の日割り精算でポイントとなるのが「起算日」です。
起算日とは、固定資産税の精算時に売主と買主の所有期間を定める基準となる日を指し、1月1日と4月1日の2パターンが用意されています。
関東圏は1月1日、関西圏は4月1日を起算日とするケースが多いため、覚えておくとよいでしょう。
固定資産税の日割り精算計算例
【関東】起算日が1月1日
以下の条件で固定資産税の日割り精算計算例を紹介します。
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起算日は関東で一般的な1月1日
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年間365日
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年間の固定資産税額を30万円と仮定
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不動産の引き渡し日は8月10日
【計算式】
1年分の固定資産税額÷365日×所有日数(売主の場合は起算日の1月1日~引き渡し日の8月10日まで)
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売主負担額:182,466円(222日分を負担)
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買主負担額:117,534円(143日分を負担)
【関西】起算日が4月1日
以下の条件で固定資産税の日割り精算計算例を紹介します。
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起算日は関西で一般的な4月1日
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年間365日
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年間の固定資産税額を30万円と仮定
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不動産の引き渡し日は8月10日
【計算式】
1年分の固定資産税額÷365日×所有日数(売主の場合は起算日の4月1日~引き渡し日の8月10日まで)
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売主負担額:108,493円(132日分を負担)
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買主負担額:191,507円(233日分を負担)
固定資産税の計算方法
固定資産税は以下の計算方法で求めることができます。
固定資産税=固定資産税評価額(課税標準額)×1.4%
固定資産税評価額とは税額を計算する際にベースとなる課税対象額を指し、土地の公的価格、価格の時価額をもとに算定されます。
以下の書類で固定資産税評価額は確認できるため、気になる場合は調べてみましょう。
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固定資産税の課税通知書
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固定資産評価証明書
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固定資産課税台帳
不動産売却時に固定資産税以外で必要な精算
不動産売却時には、固定資産税以外にも複数の精算が発生します。
管理費/修繕積立金
マンションをはじめとした集合住宅では、共用設備の維持や建物の将来的な改修工事を見据えて住人から管理や修繕積立金を徴収しています。
不動産売却時には、売主、買主が協議のうえでこれらの費用を分担するケースがあるため、清算の有無や清算方法を話し合いましょう。
実測精算
不動産売買における契約方法には、登記に記録されている面積を基準とする「公募売買」と、実際に測量して得た面積を基準とする「実測売買」の2種類があります。
それぞれ公募面積もしくは実測面積をもとに価格が決定されますが、実測売買を行う場合は登記上の面積と実測面積の差異分を清算するケースがあります。
ただし、清算ルールが明確に取り決められているわけではないため、売主と買主の間で話し合って負担割合や清算方法を決定しましょう。
不動産売却時の固定資産税に関するよくある質問
固定資産税清算金とは?
固定資産税清算金とは、不動産の売買に伴い、その年の固定資産税や都市計画税を所有日数に応じた形で買主から売主へ支払うお金のことです。
起算日と引き渡し日を基準に双方の負担割合を計算して清算するの一般的です。
不動産売却時の固定資産税に消費税はかかる?
固定資産税の納税義務者はその年の1月1日に不動産を所有している者となるため、不動産売買に伴い売主と買主が固定資産税を分担する場合であっても、納税者は売主のみとなります。
つまり、買主が支払う固定資産税清算金は税金ではなく、売買代金の一部とみなされ、消費税の課税対象となる可能性があるため注意しましょう。
不動産の所有者が個人もしくは非課税事業者であり、直接取引した場合は課税の対象外となりますが、詳細の確認については専門家である不動産会社などにチェックしてもらうのが安心です。
固定資産税は経費にできる?
固定資産税は不動産を保有している限りは発生する税金であり、不動産売却とは無関係の費用です。
売却時の経費を表す譲渡費用に含めることができるのは仲介手数料、印紙代など、不動産取引に直接かかる費用に限られるため、固定資産税は経費になりません。
まとめ
不動産売却時の固定資産税は、慣例として売主と買主で日割り精算するのが一般的です。
ただし、固定資産税の精算はあくまで慣例であり義務ではなく、起算日によって負担割合も変わるため、売主と買主の双方が納得できるように協議することが大切です。
固定資産税の精算に限らず、不動産取引では専門的な知識を求められる場面が多いため、信頼できる不動産会社と相談しながら進めるとよいでしょう。