不動産売却を検討する中で、どのような必要書類を用意すれば良いのかという疑問を持つことがあるでしょう。不動産売却にはさまざまな書類が必要なため、あらかじめ用意することによりスムーズな売却が実現します。

この記事では、不動産売却の必要書類について解説します。それぞれの段階に分けて必要書類を紹介するので「今の自分にはどの書類が必要なのか」を意識しながら読み進めるとより効果的です。

不動産査定時の必要書類

不動産査定を受ける際は、物件の情報がわかる書類を用意しましょう。以下で詳しく紹介します。

登記識別情報(または登記済権利証)

不動産査定を受ける際、不動産の所有者を証明するために「登記識別情報」または「登記済権利証」を用意しましょう。

登記識別情報とは、登記名義人が不動産の真の所有者だということを証明する書類です。以前は登記済権利証という書類が発行されていましたが、平成18年以降は順次登記識別情報に移行されています。

登記識別情報は、不動産を購入し登記手続きを行った際に法務局から渡されます。また、相続の場合は相続登記が完了した際に法務局から渡される書類です。

土地測量図・境界確認書

一戸建てや土地の査定を依頼する場合は、「土地測量図」や「境界確認書」を用意します。これらの書類を用意することで、土地の面積や境界線の位置が確認できます。もし隣地との境界線が明確でないときは、売却をスムーズに進めるためにも不動産会社の担当者に相談して、これらの書類の作成を検討しましょう。

建物図面、設備の仕様書

建物図面や設備の仕様書があれば、建物の間取りや建物面積、設備の状況が確認できます。設備の仕様書とは、建物に付属している設備の有無や詳細が記載された書類です。この書類で設備のグレードが分かれば、査定額アップにつながるかもしれません。

建物図面と設備の仕様書は、購入時に発行されることが多いので、購入時の書類を確認してみましょう。

固定資産税納税通知書(または固定資産税評価証明書)

固定資産税納税通知書(固定資産税評価証明書)とは、固定資産税額の確認や登録免許税の算出に利用される書類です。

この書類には、不動産の固定資産税評価額が記載されているため、査定額の算出に役立ちます。固定資産税評価額とは、固定資産税を決める際に基準となる評価額で、一般的には時価の70%が目安とされています。

固定資産税納税通知書は、不動産の所有者に毎年送られてくる書類です。また、固定資産税評価証明書は市区町村役場で発行できる書類です。記載されている内容はおおよそ同じのため、どちらか一方を用意すると良いでしょう。

媒介契約から売買契約締結までの必要書類

不動産査定が完了した後、不動産会社との媒介契約から買主との売買契約までに必要な書類を紹介します。

本人確認書類

媒介契約時と売買契約時には、物件の所有者本人であることを証明するために本人確認書類を用意します。本人確認書類には、主に以下が挙げられます。

  • 運転免許証

  • マイナンバーカード

  • パスポート

  • 在留カード・特別永住者証明書

  • 各種福祉手帳

できるだけ顔写真付きの書類を用意すると良いですが、持っていない場合は不動産会社の担当者に相談しましょう。

建築確認済証、検査済証

一戸建ての売却の場合は、建築確認済証と検査済証を用意します。建築確認済証とは、建物が建築基準法に規定に適合していると確認された場合に交付される文書で、検査済証とは設計された内容で建築されたかを検査した際に発行される書類です。

この書類を用意すれば、建築基準法の基準を満たした建物だということがわかるため、買主に安心して取引を進めてもらえるでしょう。建築確認済証や検査済証は、一戸建ての購入時に引き渡される書類ですが、築年数が古い建物の場合は書類自体が残っていない場合もあります。

マンションの管理規約、使用細則、パンフレット

マンションの売却を進めるためには、媒介契約時にマンションの管理規約や使用細則、パンフレットなどを用意しましょう。

募集活動を行う際に「マンションの規約はどうなっているのか」「特別な決まりはあるのか」「ペットの飼育は可能なのか」などの情報が必要です。また、管理費や修繕積立金などの費用に関する情報も記載されているため、これらは募集活動に欠かせない書類と言えます。

さらに、パンフレットには間取り図が掲載されているため、不動産会社が広告や物件情報を作成するのに必要な書類です。できるだけで多くの情報を不動産会社に提供して、売却をスムーズに進めてもらえるようにしましょう。

マンションの維持費関連書類、長期修繕計画書

募集活動でマンションの維持管理に関する情報を提供するためにも、維持費に関連する書類や長期修繕計画書を用意しましょう。マンションの維持管理にかかる費用には、主に以下が挙げられます。

  • 管理費・修繕積立金

  • 駐車場・駐輪場代

  • 固定資産税・都市計画税

  • 専用庭・ルーフバルコニー使用料

これらのランニングコストは生活に直結するため、マンションの維持費関連書類は購入者にとって重要な情報です。

また、長期修繕計画書とは、マンションの修繕工事の長期的な計画が記された書類のことで、将来不足する修繕積立金の額や値上げ額が記載されていることがあります。この書類も購入者にとって重要な書類となるため、かならず用意するようにしましょう。

これらの書類はマンションの管理会社が所有しているので、売却の際は不動産会社の担当者に手配してもらいましょう。

耐震診断報告書、アスベスト使用調査報告書

築年数が古い物件を売却する場合、耐震診断報告書やアスベスト使用調査報告書があれば用意しましょう。どちらの書類も、築年数が古い物件を購入する買主の不安を取り除くための書類です。

耐震診断確認書とは、新耐震基準が導入される前の、昭和56年(1981年)6月1日以前に建てられた建物を対象に行われる耐震診断の報告書のことです。

アスベスト使用調査報告書とは、建物にアスベスト(石綿)が含まれる建材が使用されているかを調査し、結果をまとめた書類です。アスベスト使用調査報告書は、アスベストに関する法律が改正された1975年以前に建てられた物件の場合に用意しておくと良いでしょう。

引渡時の必要書類

物件を引き渡す際の必要書類を紹介します。

本人確認書類

物件の引き渡しの際にも本人確認書類が必要です。契約時と同様、顔写真付きの公的な書類を用意するようにしましょう。

実印・印鑑証明書

物件の引き渡し時には、実印と印鑑証明書が必要です。印鑑証明書は自身が住んでいる市区町村役場で発行するか、自治体によってはコンビニで交付することも可能です。ただし、印鑑証明書は発行から3ヶ月以内のものを用意しなければならないため、早く発行しすぎないように注意が必要です。

住民票

住民票は、所有者の現住所と登記簿上の住所が違う場合に用意します。住民票も、住まいの市区町村役場かコンビニで取得できます。また、住民票の有効期限も発行から3ヶ月間です

銀行口座書類

不動産売却では高額な金額を受け取ることになるため、振込みによる残代金受領が一般的です。そのため、振込先の支店番号や口座番号がわかるように通帳などを用意すると良いでしょう。

抵当権抹消書類

物件の売却時に住宅ローンが残っている場合、引渡時に抵当権抹消書類を用意します。抵当権とは不動産に設定された担保権のことで、抵当権を解除するために抵当権抹消書類が必要です。

抵当権抹消書類は住宅ローンを組んでいる金融機関が保有しているため、売却が決まった早い段階で金融機関に連絡をして用意してもらいましょう。

確定申告時の必要書類

物件の引渡しが無事完了すれば、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行います。ここからは、確定申告に必要な書類を紹介します。

確定申告書B

確定申告書Bは、すべての所得を対象とした申告書です。確定申告書Aという様式もありましたが、2023年1月に廃止され、確定申告書Bに1本化されました。また、確定申告書Bには、第一表(表面)と第二表(裏面)があり、どちらも記入する必要があります。取得方法は、税務署の窓口で受け取るか、国税庁のホームページからダウンロードするかの2つがあります。

確定申告書第三表

不動産売却により所得が生じた場合は、他の所得と分けて納税額の計算をしなければならないため、確定申告書第三表(分離課税用)を作成します。確定申告書第三表も税務署の窓口か国税庁のホームページから入手できます。

確定申告書付表兼計算明細書(譲渡所得の内訳書)

確定申告書付表兼計算明細書は、売却した不動産の所在地や売却価格、購入者などの情報を記入する書類です。この書類も税務署の窓口か国税庁のホームページで入手しましょう。

売却物件の購入時と売却時の売買契約書コピー

売買契約書は、買主と売買契約を締結した際に交わした書類です。また、不動産の取得費を算出するために、「購入時」の売買契約書のコピーも準備しましょう。

仲介手数料、登記費用などの領収書

売却でかかった費用を経費として計上し、譲渡所得税を抑えるために、仲介手数料などの領収書を用意しましょう。経費として計上できる費用には、以下が挙げられます。

  • 仲介手数料

  • 司法書士の代行手数料

  • 印紙税

  • 建物の解体費(売却のために解体した場合)

  • 土地の測量費(売却のために測量した場合)

できる限り譲渡所得税を抑えるためにも、忘れずに用意しましょう。

まとめ

この記事では、不動産売却の必要書類について解説しました。不動産の査定時には、登記識別情報や測量図、固定資産税納税通知書などがあれば適切に査定額を算出してもらえます。また、媒介契約から売買契約までは、建築確認済証やマンションの管理費、耐震診断書などの用意をしましょう。

引渡時には、印鑑証明書や抵当権抹消書類が必要になり、準備を怠ると取引できなくなってしまうおそれがあります。売却した後の確定申告も忘れてはいけません。それぞれの確定申告書や契約書のコピーなどを用意し、適切な納税を行うようにしましょう。

不動産売却では、さまざまな書類を用意しなければなりません。この記事を参考に「あらかじめ何を用意すれば良いのか」という全体像を把握し、スムーズな売却を目指しましょう。