なかなか売れそうもない実家を処分する方法は何かないのか、あるいはもし古くなった実家を所有し続けるとしたらどんなリスクがあるのかなど、悩みを抱える人は多いのではないでしょうか。もし実家に住む予定が無いのであれば、所有しておくとしても空き家のまま放置するのは様々なリスクを伴います。

この記事では、処分できない実家を空き家のまま放置しておく場合の金銭的・社会的リスクなどに加えて、何とかして処分するための方法を提案します。

実家を相続したけど処分できない:売れない理由は?

実家を処分するとなると、最初に考えるのは「何とかして売れないだろうか」ということです。しかし、売ろうとしてもなかなか売れないというのは、めずらしいことではありません。最初に、実家を処分できない、売れない理由としてよくあるものについて解説します。

築古で建物の状態が良くない

実家を相続するとなると、実家が古くて建物が傷んでしまっているということも多いでしょう。築古の家は買主から敬遠されやすい上に、建物の状態が悪くなってしまっていると、なおさら売れにくいのが実態です。

東日本不動産流通機構が発表している「首都圏の不動産流通市場の動向(2023年度)」を見ると、築年数が経過すればするほど登録物件数と成約物件数の差が開いており、成約する確率は下がっていくことがわかります。

※引用:東日本不動産流通機構

 

古い住宅は修繕や改良をしてから住む前提で買われるほか、修繕や改良などをしたうえで他の消費者へ転売されるのが一般的です。

しかし、築年数が経過すればするほど、修繕・改良にも費用や時間がかかるようになります。転売するとしても採算が取れなくなってしまうので、古くて傷んでいる家は売れない可能性が高いものです。

再建築不可物件だから

再建築不可物件とは、現状の建物を取り壊すと新たな建物を建設できない家などのことを指します。火事などの災害時に備えて、消防車や救急車など緊急車輌が通れるように、建物を建てる時には敷地が道路に2m以上接していないといけないという法律があり、これを「接道義務」と言います。

再建築不可物件とは、この接道義務を満たしていない建物のことです。もし売り出されている家が取壊しも検討されるほど古くて劣化している場合は、買主は購入後に建て替えることも検討するでしょう。

しかし、再建築不可物件は建て替えができないため、もし実家が再建築不可物件に該当している場合は、買主は購入候補物件から外してしまう可能性が高くなります。

交通利便性や生活利便性が良くない

家は後々建て替えるとしても、最終的には誰かがその家に住む可能性が高いものです。もし実家が駅から極端に遠い場所にある、学校や商業施設から遠い、近くに背の高い建物があって日当たりが良くないなどの場合は、居住目的の買主から敬遠されてしまいます。

周辺相場と比較して売出価格が高い

不動産を売り出す上で価格設定はとても重要なポイントです。思い入れの詰まった実家であれば特に、売り出すのならば少しでも高く売りたいと思う人もいるのではないでしょうか。相続税の納税対策などを考慮すればなおさらです。

しかし、同じエリア・同じくらいの広さの物件と比較した時に、1割以上高い価格で売り出している場合は、よほど大きなセールスポイントがない限りは売れにくくなります。なかなか買い手がつかないと販売期間が長期化し、長く売れ残っている物件は「売れない理由が何かある」と思われて、一層売れにくくなるという悪循環に陥りがちなので要注意です。売出価格を設定する上では、売却を依頼する不動産業者とよく相談するなどして決めると良いでしょう。

なお、不動産の市場は入学・就職・転勤が最も多い2月~3月の時期に活発化します。春頃に売り出せば売れる確率が高まる一方で、市場が落ち着く夏頃などに売り出すと、実家の立地や築年数など条件によってはかなり売れにくくなるため要注意です。

売主として買手に良くない印象を与えてしまった

不動産の売却は全てを不動産業者に丸投げできるわけではありません。例えば買主が購入前に実際の家を見て確認することを内見と言います。内見は不動産業者と売主が一緒に対応するものであり、内見時に売主として良くない印象を与えてしまうと、結果的に売れないこともあるでしょう。

また、内見時に実家の中が片付いていない、特に水回りが汚れたままなどの場合は印象が悪くなり、これも売れない原因になり得ます。実家を売り出すと決めたのであれば、早めに遺品整理をして片付けることが必要です。

処分できない実家を空き家のまま放置するとどうなる?

売り出すと決めたのであれば、早々に整理・清掃するのがおすすめですが、なかなか実家の処分に踏み切れないという人もいるのではないでしょうか。しかし、もし実家が空き家になっている場合は、放置していると所有者として様々なリスクを背負うことになります。

近隣から苦情をもらうリスク

住んでいる時と比較すると、家は住んでいない時の方が汚れる上に早く劣化していくものです。管理・修繕していない家屋や手入れしていない庭などは、どんどんと荒れていってしまいます。

空き家を放置すると害虫が発生しやすくなって近隣住民の迷惑となる上に、庭に草木が生い茂っていくと、街としての景観も悪くなるでしょう。また、樹木が隣地に向かって伸びすぎると「迷惑しているから切ってほしい」とクレームをもらう可能性もあります。

家は住んでいないから手入れをしなくてもいいというものではありません。所有者である以上は建物や敷地の管理をする必要に迫られます。また、将来的に事情が変わって売り出すことになる可能性もあるでしょう。

一方で、自分が住まない家の管理・手入れには費用や時間がかかるものです。家としての機能や景観の維持を考慮すると、最低でも月に1回程度は現地での作業が必要になります。

防犯上の問題が発生するリスク

地域に寄りますが、人が住んでいないと知られている家屋には、ホームレスの人などが住みついてしまう可能性もゼロではありません。そのほか、知らないうちに犯罪集団の拠点として利用されてしまうことも考えられます。

そのほか、外観が傷むほど周囲からの印象が悪くなるため、ゴミを不法投棄されてしまったり、最悪の場合は放火されて周辺の家屋に延焼したりということもあり得るでしょう。

倒壊や災害時のリスク

実家を空き家のまま長期間放置した結果、万が一老朽化した建物が地震などで倒壊してしまうと、通行人や周辺住民などに被害を及ぼす可能性も出てきます。もし近隣住民などに被害が出ると、所有者として責任を問われるリスクもあるでしょう。最悪の場合は裁判に発展して損害賠償を請求されるといったこともあり得ます。

税金に関するリスク

実家を空き家にして長期間放置していると、固定資産税が6倍になるリスクがあります。家を所有している人に対しては、その家に住んでいるといないとに関わらず、必ず固定資産税という税金が課税されます。固定資産税は家を所有している限り毎年課税される税金です。

固定資産税には「小規模住宅用地の特例」というものがあり、家が建っている敷地が200㎡以下の場合は、固定資産税額が6分の1に軽減されます。ちなみに、例えば敷地が300㎡以上の場合は、200㎡分の固定資産税が6分の1になり、100㎡分については通常通りという計算になります。

しかし、空き家にしている実家が「特定空き家」とみなされると、行政から適切な維持管理をするよう指導・勧告を受ける上に、固定資産税を軽減する特例が適用されません。

なかなか売れない実家はどうしたら良い?処分する方法

最後に、実家を売り出したけどなかなか売れないという場合に、何とかして処分するための方法を5つ解説します。

何らかの運用で収益を得る

実家がどんな場所に建っているかによりますが、どうしても実家が売れないのであれば、何らかの方法で収益物件として運用するのも1つの方法です。例えば宿泊施設として民泊を始めるのも良いでしょう。あるいは、建物内にある程度の部屋数があるのならシェアハウスとして貸し出すことも考えられます。そのほか、場所によっては更地にしたうえで駐車場として運用するのも良いかもしれません。

ただし、どちらも実家が綺麗な状態でなければ運用として成立しません。修繕や改良の手間・コストがかかる上に、集客のための広告なども必要です。どの方法であれ、運用するのなら管理運営などを委託できる不動産業者を探して契約するのがおすすめです。

空き家バンクに登録する

空き家バンクとは、空き家を買いたい人が空き家を探せるようにするための仕組みであり、各地の自治体が運営しています。空き家状態の実家を処分するのであれば、空き家バンクに登録するのも1つの方法です。

ただし、空き家バンクの運営に必ず不動産の専門家が入っているとは限りません。また、運営する自治体は不動産業者ではないので、買い手に対して積極的にプロモーションをしてくれるわけでもないので要注意です。

そのほか、買い手が現れたとしても、契約関係のことなどを運営者に任せられるわけではないので、利用する上では売主としてやらなければならないことをよく理解する必要があります。

自治体に寄付する

空き家の問題が深刻化している自治体では、対策の一環として空き家とその敷地を自治体に寄付できるという制度を設けているところもあります。ただし、あくまでも一部の自治体が仕組みを設けているというだけであり、どこでも寄付できるというわけではありません。

また、自治体が寄付を受け付けてくれるのは、採算性のある公共施設に建て替えられるなど、自治体にとって明確な使い道を想定できる空き家だけです。このため、寄付するためには自治体ごとの条件が設けられており、条件が厳しいためにあまり利用されていないのが実態と言えます。

建物を取り壊し土地として売却する

建物が建っている状態ではなかなか売れなくても、建物を取り壊して土地だけの状態にすれば売れるというケースもあります。このため、どうしても売れないのであれば、建物を解体した上で土地として売り出すのも1つの方法です。

ただし、もし再建築不可物件に該当する場合は、建物の解体によって用途がかなり限定されてしまうため、反対に買い手がつかないという事態に陥る恐れもあります。また、固定資産税に関わる「小規模住宅用地の特例」が適用されるのは、建物が建っている土地だけです。

建物が建っている場合と比較すると、土地だけの状態では売却額が下がる可能性もある上に、万一土地として売り出しても売れなかった場合は、固定資産税が上がるので要注意です。

最初から建物を解体するのではなく「土地としてなら買いたい」という買い手が現れた場合に、売買契約がまとまってから解体工事を進めると良いでしょう。

不動産業者に買い取ってもらう

住む家を探している人向けに売り出した結果売れないとしても、不動産買取のサービスを展開している不動産業者であれば、買い取ってもらえる可能性があります。

不動産買取は仲介による通常の売却と比較すると売却価格が下がりますが、売却完了までの期間が短いことや、売主としての手間がほとんどかからないなどの点は大きなメリットです。何より、処分に困っている不動産を買い取ってもらえるという点で、利用する価値は大いにあるでしょう。

また、一定期間は市場向けに仲介で売り出した後、売れなかった場合に限って買い取ってくれる「買取保証」というサービスを展開している不動産業者もいます。

不動産業者の選び方

実家の処分に困っている人にとって、不動産買取はとても有効な手段です。しかし、本当に不動産業者が買い取ってくれるのか、だまされそうで怖いなどと感じる人もいるのではないでしょうか。

仲介で市場向けに売り出すにしても、買い取りをいらいするにしても、必ず複数の不動産業者を比較することが重要です。具体的には、不動産の一括査定サービスを利用して、査定額や営業マンの印象、査定の根拠などを比較すると良いでしょう。2~3社の不動産業者に査定依頼するのがおすすめです。

なお、不動産の一括査定はインターネットのサイトを使えばできますが、仲介専門のサイトと買取専門のサイトに分かれているので要注意です。

まとめ

実家をなかなか処分できないという場合には、建物の状態や交通利便性が良くないなど様々な理由が考えられます。しかし、税金や近隣住民への影響などを考慮すると、実家の処分を諦めて空き家のまま放置しておくというのは、あまりおすすめできません。

なかなか売れない実家を処分するためには、土地として売りだしたり、不動産業者に買い取りを依頼したりといった方法が考えられます。そのほか、実家が建っている立地が良いのであれば、シェアハウスや民泊物件などとして運用するのもおすすめです。