「家を売りたいけどどのようにしたらいいのかわからない」「なんとなく手続きしていたら自分が損しそうで怖い」と悩んでいないでしょうか。

家の売却は数百万円から数千万円動く大きなイベントなので、損したくないという気持ちになるのは珍しくありません。

しかしやってはいけないことを知り、正しく売却活動を行うことで、はじめての方も減点を防ぎながら適正価格で家を売却できます。

そこでこの記事では、家の売却でやってはいけない22のことを「売却準備中」「売却活動中」「売却後」3つの時期に分けてまとめました。

記事後半には高値で家を売るためのコツもまとめているので、損をしたくない方や高値で売りたい方は参考にしてみてください。

この記事の目次

家の売却準備中にやってはいけないこと9選

家を売却した経験がなく「この段階で何をしたらいけないのかわからない」「損するのが怖い」と悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。

そこで以下では、家の売却準備中にやってはいけないことを9パターン紹介します。

事前にやってはいけないことを確認し、減点を回避してください。

ローン残高を確認せずに取引をはじめる

家の売却準備中に、ローン残高を確認せず取引をはじめるのは避けましょう。

ローンを返済できない状態で売却を考えても、金融機関からの許可がおりない可能性があるからです。

住宅ローンには抵当権と呼ばれる権利がついていて、完済するまでは金融機関が住宅に関する権利をもっています。

基本的にローンを完済せずに抵当権は抹消できないため、残高を確認せずに取引をはじめないように気をつけてください。

住宅ローンの残高は償還表や利用している金融機関のアプリなどでチェックできます。

スケジュールの余裕がない状態で活動をはじめる

家を売却する際、スケジュールに余裕がない状態で活動をはじめるのはおすすめしません。

不動産会社や買い手に買い叩かれてしまい、希望額で売却できない可能性があるからです。

半年以上はスケジュールに余裕をもち、「希望額を下回っているので売らない」との判断をできる状態にしてください。

不動産会社への相談なしで建物を解体する

古家などを所有している場合、不動産会社への相談なしで建物を解体するのはおすすめしません。

解体せずに売却できるケースもあり、費用が無駄になってしまうからです。

「この状態では買い手がつかない」と思っている方も、一度不動産会社に取り扱えるか確認してみましょう。

解体に踏み切るのは、複数社とやりとりして売れないとわかってからでも問題ありません。

相場を自分で調べずに査定に出す

家を売却する際、自分で相場を調べずに査定に出すのはおすすめしません。

不動産会社から買い叩かれていることを気づかずに売却する可能性があるからです。

相場を調べる際は、下記の方法を試してみましょう。

【家の相場を調べる方法】

  • 不動産情報ライブラリを参照する

  • レインズマーケットインフォメーションを活用する

  • 不動産会社のポータルサイトを参照する

これらの方法で似た物件の売り出し価格と成約価格を確認し、適切な価格で販売してください。

1社だけ決めうちで査定に出す

家を査定に出す際、1社だけに絞って連絡するのはおすすめしません。

より高値の査定額を出してくれる会社を逃している可能性があるからです。

家の査定をもらう際は、複数社に申し込みながら高値で取引してくれる会社を見つけましょう。

不動産会社のコネクションがない場合、不動産一括査定サイトを活用すると1度の情報入力で4社から6社程度に査定をもらえます。

思考停止で有名な会社だけに査定をもらう

「広告で見たことがある」「不動産会社といったらここ」のような形で、有名な会社だけに査定をもらうのはおすすめしません。

査定額の高さや対応の良さは、会社の規模感とは必ずしも比例しないからです。

これから家を査定に出すなら、会社の規模にかかわらず複数社に依頼しましょう。

フラットな目線で、査定額が高く対応がいい会社を選ぶと損しません。

なんとなく「買取」を選んでしまう

売却と買取の違いを理解せず、なんとなく買取を選ぶのはおすすめしません。

一般的に買取は売却よりも安くなる傾向にあるため、違いを知らないまま買い取ってもらうと思いがけず損する可能性があります。

売却と買取の違いは、下記を確認してみてください。

 

不動産買取

不動産仲介

買主

不動産会社

個人が中心

売却にかかる期間

1カ月ほど

3カ月から6カ月程度

売却価格

基本的に相場を下回る

相場に合わせる

費用

印紙税や司法書士依頼料など

仲介手数料やその他諸費用

買取は業者が改修費用などを差し引いた金額で買い取るため、相場よりも安い金額での取引となります。

「3カ月から6カ月程度の猶予がある」「すぐにお金を用意できなくても問題ない」という方は、仲介での売却を前提に考えてみてください。

契約形態の違いを知らずにいいなりで契約する

契約形態の違いを知らずに言われるがままに契約すると、損をする可能性があります。

媒介契約には「一般媒介」「専属媒介」「専属専任媒介」の3種類があるので、下記の表で違いを確認しておきましょう。

 

一般媒介

専任媒介

専属専任媒介

依頼する会社数

複数社(1社も可能)

1社

1社

契約期間

3カ月以内

3カ月以内

3カ月以内

自分も買い手を探せるか

×

レインズへの登録

可能

契約締結日から7日以内

契約締結日から5日以内

参照元:レインズ|媒介契約制度
 

所有している家の状況にあわせて、自分にあった形態で契約してください。

仲介手数料を過度に値引き交渉する

家を売却する際は、仲介手数料の過度な値引きもおすすめしません。

仲介手数料は不動産会社の重要な収入源で、過度に値引き交渉をすると販売意欲が低下するからです。

また過度に売り手が仲介手数料を削ると、ポータルサイトに情報を掲載せず他の不動産会社に契約させない「囲い込み」を行う可能性があります。

まずは高値で査定を出してくれる会社を探し、仲介手数料以外で譲渡益を増やせないか模索しましょう。

不動産売買価格

仲介手数料の上限額

200万円以下

売買価格×5%+消費税

200万円〜400万円以下

(売買価格×4%+2万円)+消費税

400万円超

(売買価格×3%+6万円)+消費税

参照元:全日本不動産協会 埼玉県本部・不動産保証協会 埼玉県本部
 

ただし上限以上の費用を請求されないよう、仲介手数料を請求された際は上記の計算式に当てはめて超過していないか確かめてみてください。

家の売却活動中にやってはいけないこと7選

「不動産会社と媒介契約を結んだあとにやってはいけないことを知りたい」という方に向けて、売却活動中にやってはいけないことを紹介します。

下記を参考に、正しい方法で買い手を見つけてください。

相場よりも大幅に値上げして売りに出す

家を売り出す際、相場よりも大幅に値上げして売りに出さないようにしましょう。

買い手は複数の物件を見て判断するため、同じ条件にもかかわらず極端に値段が高いと検討すらされない可能性が高いからです。

似たような条件の物件の売り出し価格や成約価格を確認し、不動産会社と妥当な値付けをしてください。

買い手に不利益な情報を隠す

ポータルサイトに情報を載せるときや営業の際、買い手に不利益な情報を隠すのは避けましょう。

伝えるべき情報を隠して売却すると、トラブルに発展するケースが多々あるからです。

中古物件である以上、何かしらのデメリットがあることは珍しくありません。

不利益な情報も公開し、購入後トラブルに発展しないように対応してください。

不動産会社に任せきりにする

不動産会社と媒介契約を結んだあと、すべて任せきりにするのは思わしくありません。

買い手がつかない場合は広告や価格を改善する必要があり、手を打たずにいると売れない可能性があるからです。

レインズやポータルサイトに情報をアップした直後は反応が良くても、その後内見申し込みが入らないことはよくあります。

定期的に担当者と連絡をとり、買い手がつかない場合は次の手を考えてみてください。

ネットに掲載する写真を適当に撮影する

家を売りに出す際、ポータルサイトに掲載する写真を適当に撮影するのはおすすめしません。

買い手からの印象が悪くなり、ネットで見た段階で対象外にされる可能性があるからです。
 

【写真撮影で注意したいポイント】

  • 写真が過度にオレンジ色になっていないか

  • 明るくしようとするあまり白っぽくなっていないか

  • 写真の枚数は適切か

  • 一部分だけ撮影して全体像を隠していないか

上記のポイントを押さえつつ、魅力的に映るような写真を撮影してください。

「自分では上手に撮れない」という方は、フォトグラファーに依頼するのもおすすめです。

不動産業界のルールを無視して広告を打つ

家を販売する際、チラシやポータルサイトなどに広告を作成して販売する方も多くいらっしゃるでしょう。

そのときは、宅地建物取引業法や不当景品類及び不当表示防止法などの規制を守って広告を打たなければなりません。

具体的には以下の規制があります。

宅地建物取引業法

  1. 誇大広告等の禁止

  2. 広告の開始時期の制限

  3. 取引態様の明示

不当景品類及び不当表示防止法

  1. 過大な景品類の提供を禁止 

  2. 不当な表示の禁止

参照元:公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会|不動産広告のルールと注意すべきポイント ~あなたの広告は大丈夫ですか?~
 

不動産会社と確認しながら、規制を超えた過度な広告を打たないように注意してください。

内見前の清掃を怠る

購入希望者の内見予約が入った際、内見前の清掃を怠ると買い手の購入意欲を削ぐ可能性があります。

「写真で見ていたよりも汚いな」と思われてしまうと、第一印象は良くても購入にはつながらないかもしれません。

内見に来たお客さんに好印象を与えられるよう、下記のポイントに注意して清掃をしましょう。

【清掃のポイント】

  • 水回りの水垢を除去する

  • 不要なものやホコリを掃除しておく

  • 換気をして生活感のあるニオイを除去する

すでに住んでいない家を販売する場合は、水回りにチョウバエが湧いているケースも少なくありません。

内見に来た方に好印象を残すためにも、室内の清掃は徹底してください。

価格交渉をすべて拒否する

引用:レインズ|築年数から見た 首都圏の不動産流通市場(2023年)
 

販売活動をしていると購入希望者から「〇〇万円でしたら即決します」のような交渉が入ることもあるでしょう。

その際すべての交渉を拒否していると、買い手がつかない可能性があります。

画像からもわかるように、売り出し価格と成約価格は同じでないケースが一般的です。

「売り出し価格以外では売らない」とすべての交渉を突っぱねてしまうと、機会損失になると理解しておきましょう。

家の売却後にやってはいけないこと6選

家は買い手を見つけたら終わりではありません。

契約回りや確定申告など重要な事務手続きがあるため、ここからの対応も慎重に行う必要があります。

売却後の手続きをていねいに行わないとトラブルや税金の申告漏れにつながるので、下記を参考に知識を身につけてください。

契約書を読んでいない

家の引き渡しの際、契約書を読んでいないのは危険です。

後のトラブルは契約書に沿って処理されるため、内容を理解しておかないと思うような対応がなされない可能性があります。

印鑑を押して双方で合意すると、契約書の内容は覆せません。

手続きや条件など、気になる点や読んでいてわからないところは担当者に質問しておきましょう。

家の引き渡し前に退去の手続きを終わらせていない

居住中の物件を売却する際は、家の引き渡し前に退去手続きが済んでいないのはNG行為です。

手続きが滞って契約日に住めない状態だと、違約金が発生する可能性があります。

契約者に迷惑をかけないようにするためにも、引き渡しの1カ月前を目安に引っ越しの手続きを済ませてください。

契約締結後に一方的にキャンセルする

契約締結後の一方的なキャンセルも、当然NG行為です。

売り手都合でのキャンセルであれば違約金が発生するため、トラブルにならないよう売却意思を固めてから売り出しましょう。

家族がいる方は自分の意思だけではなく、親族からも了承を得た状態で売りに出してください。

不用品を家に残して退去する

不用品を家に残して退去するのもやってはいけない行為です。

粗大ゴミや退去作業で出たゴミは必ず廃棄したうえで引き渡してください。

しかし、粗大ゴミなど廃棄できる時期が限られているものは、スケジュールに余裕をもたせて廃棄する必要があります。

自治体の処理センターに依頼する際は、退去の1カ月前を目安に手続きをすると収集漏れを防げるでしょう。

急遽出てしまった廃棄物はリサイクルセンターや民間の処理会社に依頼し、自宅にゴミが残らないようにしてください。

確定申告を怠る

家を売却して利益が生じた場合は、確定申告をする必要があります。

売却の結果赤字を計上した場合は不要ですが、利益が出たり税制特例を活用したりした場合は確定申告書を提出しなければなりません。

「やったことがないから」「個人の税金なんて取り締まられない」と考えて先延ばしにしていると、多額の延滞税を納めることになります。

万が一確定申告の方法がわからない場合は、税理士に依頼しましょう。

不動産会社によっては税理士と提携しているケースもあるので、コネクションがないか確認してみてください。

適用される税制特例について調べない

家を売却した際、適用される税制特例を調べずに売却しないように注意しましょう。

数千万円規模の控除を逃す可能性があり、大きな損失につながるからです。

家を売却した際に利用できる税制特例の一例を以下にまとめました。

ケース

受けられる可能性がある税制優遇

自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ったとき

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例

売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えているとき

マイホームを売ったときの軽減税率の特例

マイホームを令和5年12月31日までに売って、代わりのマイホームに買い換えたとき

特定の居住用財産の買換えの特例

相続・遺贈で取得した家や敷地を売ったとき

被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例

住宅ローンが残っている家を売却した際に損失が発生したとき

特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

家を買い換えて譲渡損失が出たとき

マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

控除できる所得の申請漏れがないよう、利用できる制度はないか確かめたうえで確定申告を行ってください。

家を高値で売却するためのコツ

「家の売却を失敗したくない」と考えているのと同時に「どうせ売るなら高値で売却したい」と思っている方もいるのではないでしょうか。

そこで以下では、家を高値で売却するためのコツを3つ紹介します。

どれもシンプルなアクションプランなので、ひとつずつ実践してみてください。

複数社に査定を出す

家を高値で売却したい方は、複数社に査定を依頼しましょう。

査定額は各社異なるため、複数社から査定をもらったほうが高値で取引してくれる会社は見つかります。

現段階で不動産会社とのコネクションがない方は、不動産一括査定サイトを活用した査定依頼がおすすめです。

家の情報を一度入力するだけで、4社から6社程度同時に査定を依頼できます。

また不動産会社から査定をもらえたら、その金額になった根拠を確認してください。

売り出し後に価格を下げないようにするためにも、査定の段階で根拠のある金額になっているかチェックしましょう。

スケジュールに余裕をもって活動をはじめる

高値での売却を考えている方は、スケジュールに余裕をもって活動をはじめましょう。

急いで売却しないといけないような状況だと、不動産会社や買い手から安値で買い叩かれる可能性があるからです。

具体的には、1年程度の余裕があると過度に値下げをせずに買い手を選べる余裕が出るでしょう。

1年も余裕がない方は、3カ月から6カ月程度の猶予を設けておくと安心です。

とくにはじめて家を売却する方は手間に感じるかもしれませんが、手元に残るお金を増やすためにも早めの対応を心がけてください。

地域の相場をリサーチする

家を売却する際は、必ず地域の相場をリサーチしましょう。

提示している売り出し価格が地域の相場よりも割安だと、数十万円から数百万円損する可能性があるからです。

地域の相場を調べる際は、下記3つの方法がおすすめです。

【家の相場を調べる方法】

  • 不動産情報ライブラリを参照する

  • レインズマーケットインフォメーションを活用する

  • 不動産会社のポータルサイトを参照する

価格には売り出し価格と成約価格があるので、いずれも調べたうえで「いくらで売り出していくらで成約するか」を明確にしてみてください。

家の売却でよくある質問

家を売却する際によくある質問をまとめました。

売却経験のない方は、以下を参考に疑問点を解消してください。

家を売ってお金が入るまでにはどれくらいかかりますか?

売却してから引き渡しまでにかかる期間は、1カ月から3カ月程度です。

一般的には売買契約時と引き渡し時の2回に分けて支払われるため、あらかじめ理解しておきましょう。

売れない家はどうしたらいいですか?

家が売れない場合は、売り出し価格を下げたり広告や宣伝の内容を見直したりする対策が考えられます。

また室内に傷や汚れが目立つ場合は、ハウスクリーニング依頼するのもひとつの手でしょう。

不動産会社に相談しながら、どのような対策をすべきか検討してみてください。

まとめ

本記事では、家の売却でやってはいけないことを「売却準備中」「売却活動中」「売却後」の3つの観点でまとめました。

家の売却をスムーズに行うためには、事務手続きを怠らず、ていねいに対応してくれる担当者を見つける必要があります。

また高値で売却し譲渡益を多く残したい場合は、相場や利用できる税制特例を調べるなど、自分自身で情報をキャッチする姿勢も欠かせません。

数カ月から1年程度かかる作業になりますが、スケジュールに余裕をもって売却活動をはじめてください。