「田舎の土地を売りたい」「しかし売却するためのコツや流れがまったくわからない」と悩んでいるのではないでしょうか。
田舎は都市部と比較して人の流動性が低いことから、土地売却までに時間がかかることも珍しくありません。
考えなしに売却活動をはじめると、いつまで経っても売却できずに固定資産税がかかってしまうことも考えられるでしょう。
そこで本記事では、田舎の土地を売りたいと考えている方に向けて、具体的なアクションプランや注意点をまとめます。
いつまでも所有し続けて無駄なコストがかからないよう、記事にまとめていることを実践してみてください。
この記事の目次
田舎の土地を売りたい!7つのコツを解説
「田舎の土地を売りたい」と考えている方は、コツをおさえた売却活動が重要です。
都心部と比較して人口が少ない地域での売却となるため、何も考えずに売りに出すと数年間買い手がつかないことも考えられるでしょう。
買い手がつかずに値下げして売却とならないよう、田舎の土地売却でおさえたい7つのコツをチェックしてください。
成約価格を確認して適切な価格を設定する
田舎の土地を売りたい方は、成約価格を確認して適切な価格設定を心がけましょう。
買い手は周辺の土地や物件と比較するため、相場からかけ離れた条件を提示しても購入には至りません。
レインズのデータによると、新規登録物件価格と成約価格では500万円から700万円ほどの差があるとわかっています。
つまり、値引き交渉が入ることを想定しつつ、極端に高すぎない価格で売りに出す必要があります。
成約価格を調べる際は、国土交通省が運営している「不動産情報ライブラリ」の活用がおすすめです。
地域を検索すると国土交通省が公表している地価を確認できるため、価格に根拠を持たせるためにもチェックしてみてください。
一括査定サイトを活用して相性の良い不動産会社を見つける
田舎の土地を売る際は、不動産一括査定サイトを活用して相性の良い不動産会社を見つけましょう。
査定額や顧客対応を比較すると、より自分にあった不動産会社を見つけられます。
はじめから「田舎の土地売却は地域の不動産に依頼しよう」と決めてしまうと、査定額の高い会社や顧客対応の良い会社を逃してしまうかもしれません。
相談する会社の目星をつけている方も、不動産一括査定サイトを活用して査定額の高い会社を見つけてください。
関連記事:不動産一括査定26サイトを紹介|あなたに合ったサイトが見つかる!
余裕をもったスケジュールで売却活動をはじめる
土地の売却を考えている方は、余裕のあるスケジュールで売却活動をはじめましょう。
都市部での売却でも3カ月から6カ月程度の時間がかかるため、田舎の場合はより余裕をもったスケジュール設定が必要です。
最低でも1年程度の期間を見積もっておくと、値下げして無理やり売却せずに適正価格で取引できます。
人口や引っ越してくる方が少ない地域だと長期戦は避けられないので、余裕のあるスケジュールで売却活動をはじめてください。
一般媒介で媒介契約を結ぶ
田舎の土地を売却する際は、不動産会社との契約形態を「一般媒介」に設定しましょう。
複数の不動産会社に土地の仲介を依頼でき、買い手に露出する機会を多く設けられるからです。
不動産会社との契約形態は、下記の種類があります。
契約形態 |
内容 |
一般媒介契約 |
依頼者が他の不動産会社に重ねて依頼できる契約。自分で買い手を見つけられる |
専任媒介契約 |
専属で不動産会社に依頼する契約。自分で買い手を見つけることも可能 |
専属専任媒介契約 |
専属で不動産会社に依頼する契約。自分で買い手を見つけてはいけない |
参照元:近畿レインズ|媒介契約制度とは
田舎の土地は都心と比較して高値での取引が難しく、不動産会社の対応が後手にまわる可能性があります。
利益が少なく広告費を出し渋る可能性もあり、売却までに時間がかかってしまうかもしれません。
そこで一般媒介契約を結んで複数社と取引すれば、自分の土地が認知される可能性が高まります。
田舎の土地を売却する際は、一般媒介契約を結んで複数社と取引してみてください。
価格の妥協ラインを決めておく
田舎の土地をスムーズに売却するために、価格の妥協ラインを決めましょう。
価格交渉が入った際にあらかじめ決めたラインをもとに判断できるため、とっさな判断で間違った意思決定をせずに済みます。
たとえば事前に「500万円までなら値下げに対応する」と決めておけば、200万円で売ってくれないかと言われても応じずに済むでしょう。
また買い手がつかない場合は、妥協ラインを下げて売り切ることを重視した売却活動が可能です。
売りに出す前に妥協ラインを決めると、その後の意思決定が楽になります。
初心者ほどとっさの判断で損するケースが多いので、妥協ラインを決めたうえで判断してみてください。
隣人に土地はいらないか聞いてみる
「所有している土地を売りたい」と考えたときは、隣人に土地はいらないか聞いてまわりましょう。
なかには事業や駐車場のために土地を探しているケースもあるため、不動産会社に依頼して面倒な手続きを行う手間を省けます。
不動産会社へ連絡する前に、仲の良い隣人に「余った土地を買い取ってくれないか」と聞いてみましょう。
農業を営んでいる家や車を多く使っている自営業者などは土地を求めていることもあるので、積極的に声をかけてみてください。
最寄りの「空き家バンク」に登録する
「土地が売れる見込みがない」と悩んでいる方は、最寄りの空き家バンクに土地の情報を登録しましょう。
空き家バンクとは各自治体が運営している不動産情報サイトのことで、空き家や更地の情報を複数掲載しています。
とくに田舎は登録されている土地や空き家の件数が少なく、移住や土地の購入を希望している方の目に留まりやすい点が大きなポイントです。
ただし、自治体によっては空き家バンクを運営していないところもあります。
空き家バンクへの登録を検討している方は、「(地域名) 空き家バンク」と検索してサービスを運営しているか確かめてみてください。
田舎の土地を売るときに知っておきたい買い手の活用方法
田舎の土地を売る際は、購入者がどのような目的で購入する可能性があるか分析する必要があります。
「駐車場としても活用できます」「自宅を建てるには十分な面積です」のように、ひとこと言葉を添えるだけで購入希望者に刺さる訴求ができるからです。
そこで以下では、田舎の土地を売るときに知っておきたい買い手の活用方法をまとめます。
住む場所としてのニーズ
【具体的なニーズの例】
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買い手の活用方法として知っておきたいのは、住む場所としてのニーズです。
「都市部から自然豊かな地域に移住したい」「別荘地として自然豊かな地域に家がほしい」など、住む場所として土地の購入を求めているニーズが一定数あります。
近年テレワークの普及や経済的自立と早期退職を掛け合わせたFIREの浸透などにより、働き方に対する価値観が変化しました。
お金をかけずに生活できる田舎には一定数のニーズがあるため、土地を持っている方は売却できるチャンスがあります。
所有している土地はどのような方が利用するのか仮説を立てて、ニーズに沿ったアピールポイントをまとめてみてください。
農業など事業用途のニーズ
【具体的なニーズの例】
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広い土地を所有している方や立地のいい土地を所有している方は、事業用途でのニーズが期待できます。
たとえば農場として活用したり、角地や駅近の土地ならコンビニエンスストアや飲食店として活用したりすることも考えられるでしょう。
また所有している土地が広大な場合は、駐車場やトランクルームなど規模の大きな事業で活用できるかもしれません。
不動産会社と相談しながら、積極的に事業主へのアピールも行ってください。
田舎の土地を売るまでの流れ
田舎の土地を売却するまでには、9つのステップを踏む必要があります。
基本的に不動産会社が手続きを代行してくれるため、すべてを完璧に覚える必要はありません。
ただし自分自身でも知っているとスケジュールを立てやすくなるので、以下を参考に売却までの全体像を確認してください。
1.測量士による土地の測量
田舎の土地を売却するために、土地の測量を行います。
測量とは土地の大きさや形を測り、隣人との境界線を明確にする行為のことです。
土地の測量は専門の資格を所有した測量士が行うため、取引している不動産会社にコネクションはないか確認してみましょう。
関連記事:土地を売りたいときはどこに相談する?ケースごとのおすすめを解説
2.不動産会社による土地の査定
その後、不動産会社が土地の査定を実施します。
査定とは、不動産会社の営業担当者が土地を実際にみて、いくらで売却できる見込みがあるか判断することです。
提示される金額は不動産会社によって異なるため、複数の不動産会社から査定を受けると良いでしょう。
不動産会社とのコネクションがない方は、不動産一括査定サイトを活用してみてください。
3.不動産会社との契約
複数社から査定をもらったら、条件のいい会社と媒介契約を結びます。
媒介契約とは、土地売却を不動産会社に委託する契約のことです。
媒介契約の種類や契約期間、契約時にかかる手数料などが明記されているので、印を押す前に必ず契約内容を確認してください。
4.販売活動開始
不動産会社と媒介契約を結んだら、販売活動をはじめます。
田舎の土地は買い手が付きにくい可能性があるので、不動産会社と土地の特徴や訴求するメリットを考えながら買い手に魅力的と映るような戦略を立ててください。
売り手と不動産会社で立てた戦略をもとに、広告やインターネットを通じて土地を販売していると伝えます。
5.買い手との条件交渉
土地の購入検討者が現れたら、条件交渉を行います。
提示されている条件のまま購入されるケースは少なく、買い手から条件交渉が入ることは珍しくありません。
不動産会社が間に入って買い手からの要望を伝えられるので、要望を受け入れられるか確認してください。
買い手からの要望では、購入価格や土地の引渡時期、支払い方法などの条件が伝えられます。
事前に不動産会社に相談しながら妥協ラインを明確にしておくと、交渉が入った際も落ち着いて対応できるでしょう。
6.売買契約
買い手との条件がまとまったら、売買契約を結びます。
基本的には書面での契約で、土地の情報や金額などの条件を記載した書類に印鑑を押します。
印を押す前に買い手から質問が来るケースもあるので、公平な契約となるように応じてください。
7.境界の明示
売買契約が完了すると、売り手は買い手に対して境界を明示します。
境界の明示とは、隣接している土地との境界線を明確にすることです。
買い手への境界の明示は売り手の義務となっているため、土地家屋調査士などの有資格者に依頼して境界をはっきりとさせてください。
8.土地の引き渡し・決済
ここまでの手続きが済んだら、土地の引き渡し・決済が行われます。
契約時に提示している代金を受領し、引き渡し・決済は完了です。
代金の受領や引き渡しの手続きは不動産会社と買い手で行うため、売り手が直接代金を回収することはありません。
すべての取引が完了したら、手数料を差し引いた金額を不動産会社から売り手へ支払われます。
9.確定申告
土地の売却で得たお金は所得と呼ばれ、確定申告の対象となります。
売却した土地の所有期間によって税率が変わるため、税理士に相談しながら正しく確定申告を行ってください。
不動産会社によっては税理士を提携しているケースもあります。
個人で税理士を探す前に不動産会社で提携していないか確認すると、スムーズに税理士を見つけられるかもしれません。
田舎の土地を売る際の注意点
田舎の土地を売却する際の注意点を3つまとめました。
とくに農地の売却を検討している方は、さまざまな制限があることを知っておかなければなりません。
以下で紹介する注意点を参考に、ミスなくスムーズに売却できるように対策を立ててください。
農地として売却するなら相手は農家のみ
農地の売却を検討している方は、相手は「農業委員会に申請して許可を受けている方」のみ権利を取得できると理解しておきましょう。
農地法によって購入者に制限がかけられており、許可を受けずに行った売却は無効となります。
農地を売買又は貸借する場合(農地転用目的を除く。)には、当事者(譲受人と譲渡人)が、原則として農業委員会に申請し、許可を受ける必要があります。(許可を受けないでした行為は無効) 〔農地法第3条〕
農地の売却または購入を検討している方は、農業委員会に申請書を提出し、市町村長からの意見をもらったうえで委員会からの許可通知を受けなければなりません。
不動産会社と購入希望者間だけで完結する問題ではないと知っておきましょう。
農地転用できない土地もある
農地転用を考えている方は、転用できない土地の条件を知っておきましょう。
農地転用をするには、営農に適した条件などから判断する「立地基準」や、事業の確実性や周辺区域への被害から判断する「一般基準」から外れている必要があります。
立地基準は明確に定められているため、下記の表を参考にしてみてください。
立地基準の種類 |
内容 |
農用地区域内農地 |
市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域に指定された農地で、転用申請は原則として許可されない |
第1種農地 |
良好な営農条件を備えている農地で、転用申請は原則として認められない
|
甲種農地 |
街化調整区域内にあるとくに良好な営農条件を備えている農地では農地転用は認められない
|
第2種農地 |
市街地の区域内や市街地化の著しい区域に近接する地域内の農地や、将来市街地化がみこまれる農地。また小集団で生産力の低い農地で、その事業が周辺にある他の土地でも目的を達成できると認められる場合は農地転用不可 |
たとえば10ヘクタール以上の集団農地は第1種農地と呼ばれ、一般的に農地転用は許可されません。
また資金計画をみて事業の遂行性や土地活用の有効性が認められないと判断した場合は、一般基準をもとに農地転用を却下されます。
まずは売却を考えている農地が「立地基準」を満たしていないか確認し、その後「一般基準」に該当しないか自治体に相談してみましょう。
相談なしに古家を解体しない
「建っている家が古く魅力的に映らない」という場合も、不動産会社への相談なしでの解体はおすすめしません。
解体費用がかかってしまい、売却後手元に残せる金額が少なくなるからです。
古家を残しておくメリットは、リノベーションをして住みたいと考えている買い手にアピールできる点があります。
一方で解体する場合は買い手に負担がかかるため、必ずしも古家付き土地で売却すればいいわけではありません。
メリット・デメリットを考慮して適切に判断するためにも、不動産会社に相談してからのアクションがおすすめです。
「古家付き土地で売り出してみてはどうか」「売れる見込みはないので解体したほうがいい」などのアドバイスをもらえるため、無駄な費用負担をおさえられるでしょう。
田舎の土地が売れないときの対処法
土地を所有していて「売却を試みたけれども売れなかった」と悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。
田舎は都市部と比べて人口が少なく売却できるチャンスが少ないため、買い手が現れないケースも少なくありません。
しかし土地を所有しているだけで固定資産税などの維持費がかかるので、放置せずに何かしらのアクションを取ったほうが損せずに済みます。
そこで以下では、土地が売れないときの対処法を3つ紹介します。
自治体や法人に寄付
田舎の土地を売れずに困っている場合は、自治体や法人に寄付できないか相談してみましょう。
市役所や区役所、NPO法人などに土地を売却できないか話を持ちかけると、寄付を受け入れてくれる可能性があります。
しかし私たちが払っている固定資産税は自治体の重要な収益源なので、必ず引き取ってくれるわけではないと理解しておきましょう。
また知り合いの会社や周辺の法人に「余っている土地を引き取ってくれないか」と声をかけてみるのもおすすめです。
事務所や駐車場として活用できるケースもあるので、自治体や法人に寄付できないか相談してみてください。
相続放棄
現段階で土地を受け取っておらず断る選択肢があるなら、相続放棄も手段のひとつとしておすすめです。
相続放棄とは、相続が発生した際に資産や負債などを一切引き継がずに放置することを指します。
申請が通る状況であれば、そもそも土地を受け取らずに済むので手間を省けるでしょう。
しかし相続放棄はマイナスの財産だけでなくプラスの財産も放棄するため、行使すべきかの判断は慎重に行わなければなりません。
また相続人が相続を開始すると知ったときから、3カ月以内に家庭裁判所へ手続きを行う必要があるので、現段階で相続放棄の権利を行使できるか確認してみましょう。
個人に譲渡
売りに出しても買い手がつかなかった場合、隣人に無償で譲渡できないか検討してみましょう。
駐車場として活用したい方や仕事道具を置くスペースを探している方など、ニーズがあれば受け取ってもらえる可能性があります。
「無償で譲渡するのは抵抗がある」と思う方もいるかもしれませんが、今後固定資産税を支払わずに済む点においては得をしていると考えられるでしょう。
使わずに所有しているだけで税金を支払うことになるため、譲渡を受け入れてくれる方がいるなら早めに譲ってみてください。
関連記事:田舎の土地を売却する5つのコツ|売れない理由も併せて解説
まとめ
本記事では田舎の土地を売りたいと考えている方に向けて、具体的なアクションプランや注意点をまとめました。
都市部と比較して人の流れが少ないため、田舎の土地売却は難易度が高い可能性があります。
そのため記事内で紹介している7つのコツなどを参考にしながら、売却できるようにアクションを起こしてみてください。
不動産会社を選ぶ際は、不動産一括査定サイトを活用して複数社への相談がおすすめです。
地元の不動産屋だけに頼らないよう、フラットな目線で取引する会社を探しましょう。