築年数が古いマンションの売却を検討する際、「古くてもうまく売却できるのか」「今住んでいるマンションを高く売却するタイミングはいつなのか」という疑問を持つことがあるでしょう。
マンション売却には築年数ごとに気をつけるべきポイントがあり、そこを意識せずに売り出すと高値で売却できない可能性があります。
この記事では、マンション売却と築年数の関係性や築年数別の成約価格、マンションが売れやすいタイミングを紹介します。築年数が古いマンションでも高く売りたいと考えている方は、この記事を参考に売却のタイミングを見極められるようにしましょう。
この記事の目次
マンション売却と築年数の関係性
マンションの築年数と査定額には密接な関係があります。ここでは、マンションの築年数が査定額に与える影響について解説します。
築年数が経過するにつれ査定額は下落する
一般的にマンションの築年数が経過するにつれて、査定額は下落する傾向にあります。マンションの売却価格は戸建てと同じく土地と建物で構成されており、土地価格は年数の経過では減少しませんが、建物価格は築年数の経過とともに資産価値が減少します。
ただし、査定価格は築年数がすべてではありません。築年数が経過しても、周辺相場が上昇すると購入時より価格が上がる可能性があります。築年数は査定価格に大きな影響を及ぼしますが、多くの要素を総合的に考慮して最終的な査定額が決定されます。
マンションの法定耐用年数は47年
国により定められた鉄筋コンクリート造マンションの法定耐用年数は47年です。法定耐用年数とは、税金の計算に用いられる固定資産を使える期間のことです。ただし、47年という期間は税法上国が定めた年数のため、法定耐用年数が過ぎたからといって住めなくなるわけではありません。
法定耐用年数は、金融機関から住宅ローンを借り入れる際の借入期間に影響が及びます。たとえば、築年数が20年のマンションの場合、多くの金融機関では以下の計算式により借入期間が決定されます。
47年(法定耐用年数)−20年(築年数)=27年(住宅ローンの最大借入可能年数)
しかし、マンションの法定耐用年数が実際に住める年数より短いことで、築40年以上が経過したマンションには、価格が下がりにくいというメリットがあります。築年数が古いマンションを購入し、数年住んだ後に売却しても大きな損失なく売却できる可能性があるでしょう。
築年数別の比率と成約価格
ここでは、マンションの築年数別の成約物件比率と売却価格を紹介します。
築年数別の成約物件の比率
直近3年間の中古マンションにおける成約物件の築年数別比率は以下のとおりです。
年度 |
築0〜10年 |
築11〜20年 |
築21〜30年 |
築31年以上 |
2021年 |
23.8% |
27.5% |
19.1% |
29.7% |
2022年 |
23.7% |
26.3% |
18.5% |
38.5% |
2023年 |
22.9% |
25.7% |
19.6% |
31.9% |
参考:東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)」
上記の表を見ると、全体のうち最も高い比率を占めるのは築30年以上のマンションです。2023年における築30年以上の成約比率は、全体の30%を超えています。この表を見てわかるように、築年数が古いからといって不安に思う必要はなく、工夫次第で売却できる可能性が大いにあると言えるでしょう。
築年数別の売却価格
築年数別の売却価格は次のとおりとなっています。
築年数 |
価格(万円) |
面積(㎡) |
㎡単価(万円) |
築0〜5年 |
7,077 |
62.87 |
112.55 |
築6〜10年 |
6,655 |
66.19 |
100.54 |
築11〜15年 |
5,932 |
68.19 |
86.99 |
築16〜20年 |
5,509 |
70.49 |
78.15 |
築21〜25年 |
4,887 |
70.60 |
69.23 |
築26〜30年 |
3,344 |
64.94 |
51.48 |
築31〜35年 |
2,303 |
57.66 |
39.94 |
築36〜40年 |
2,672 |
57.63 |
50.49 |
築41年〜 |
2,260 |
56.00 |
46.37 |
参考:東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)」
この表を見てわかるように、築年数が経過するにつれて価格が減少しています。また、㎡単価も築年数が経つにつれ下がっているため、築年数の経過で資産価値が下がることがわかります。
マンションの売り時は築何年なのか
ここまでのデータで、築30年が経過したマンションでも売却できることがわかりました。この章では、近年の中古マンション市場の動向と売りやすいタイミングを解説します。
中古マンション価格は上昇傾向にある
以下のグラフは、国土交通省が公表している不動産価格指数(令和6年2月分)です。
画像引用:国土交通省「不動産価格指数(令和6年2月・令和5年第4四半期分)」
中古マンション価格は2013年頃から上昇を続け、コロナ禍でも堅調に推移してきました。2010年を基準にすると、約2倍の価格にまで高騰していることがわかります。このことからも、2024年現在はマンションの売りどきであると判断しても良いでしょう。
築11~20年が売りやすいタイミング
中古マンションの売りやすいタイミングを築年数でみた場合、築11〜20年が売りやすいタイミングです。それは、築11〜20年のマンションは設備や外観のダメージが少ないにもかかわらず、築浅マンションよりも価格を抑えて購入できるからです。
また、築11〜20年のマンションは長期間にわたる住宅ローンを組める可能性があることから、買い手から人気が高いとされています。さらに売主側からすると、この時期は住宅ローン返済期間が10年を超えているため残債額が少なく、売却価格だけで住宅ローンを完済できる可能性が高いでしょう。
築年数と成約価格の表を見ても、築年数が20年を超えると売却価格が急激に下落しています。このように、買い手からすると購入しやすく、売主からすると価格が下がりきる前に売却できる築11〜20年のマンションが売りやすいタイミングだと言えます。
マンション売却における築年数ごとのポイント
マンション売却は、築年数ごとに気をつけるべきポイントがあります。
-
築5年以下
-
築11〜20年
-
築21〜30年
-
築30年以上
それぞれの時期にどのポイントに気をつけると良いのかを詳しく解説します。
築5年以下のマンション売却は税金が高くなる
築5年以下のマンションを売却する際は、売却益が出た場合の税金に注意しましょう。マンションの所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、売却益に39.63%の譲渡所得税が課せられます。短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率の違いは以下のとおりです。
所得区分 |
所有期間 |
税率 |
短期譲渡所得 |
所有期間5年以下 |
39.63% ※所得税:30% 住民税:9% 復興特別所得税:0.63% |
長期譲渡所得 |
所有期間5年超 |
20.315% ※所得税:15% 住民税:5% 復興特別所得税:0.315% |
実際、築5年以下のマンションは希少性が高いため、立地やタイミングによっては購入時より高く売却できる可能性があります。しかし、売却益に高い税率の譲渡所得税が課せられるため、納税を見越した売却計画を立てる必要があります。
さらに、築5年未満のマンションは住宅ローンの支払い期間が短いため、残債が多く残っていることも特徴の1つです。よって、売却価格だけで住宅ローンを完済できないこともあるため、残債に気をつけて売り出し価格を設定しましょう。
築11~20年のマンションは一定の需要が見込める
先述した通り、築11~20年のマンションは売りやすいタイミングと言えます。マンションの状態と価格のバランスが良いため、買い手からの一定の需要が見込めるでしょう。さらに、新築から所有している場合、所有期間が10年以上になると「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」が適用され、売却益に対する譲渡所得税が軽減されます。
所得区分 |
所有期間 |
税率 |
短期譲渡所得 |
所有期間5年以下 |
39.63% ※所得税:30% 住民税:9% 復興特別所得税:0.63% |
長期譲渡所得 |
所有期間5年超 |
20.315% ※所得税:15% 住民税:5% 復興特別所得税:0.315% |
マイホームを売ったときの 軽減税率の特例 |
所有期間10年超 |
14.21%(6,000万円以下の部分) ※所得税:10% 住民税:4% 20.315%(6,000万円超の部分) ※所得税:15% 住民税:5% |
注意点は、マンションの大規模修繕工事のタイミングを見計らうことです。国土交通省が定めた長期修繕計画作成ガイドラインによると、大規模修繕工事は新築から12〜15年周期で行われることが多いとされています。
大規模修繕工事が行われると、外観や共用部分が整備され買い手の印象が良くなりますが、工事前後のタイミングで修繕積立金が値上がりする可能性があります。修繕積立金が値上がりすると買い手がつきにくくなるため、大規模修繕工事の時期をあらかじめ調べておくことが重要です。
築21~30年のマンションは見た目を良くする工夫を
築21〜30年が経過すると、建物全体に古さが目立ち始めます。そのため、この時期にマンション売却を検討する際は、ハウスクリーニングを実施したり、傷が目立つ部分を補修したりして少しでも見た目を良くする工夫を行いましょう。
また、築21~30年のマンションは市場に比較的多くの物件が出回っており、他の物件と比較されることが多くなります。そのため、住宅ローンの残債が少ない場合は、売れやすくするために価格を下げることを検討すると良いでしょう。
築30年以上のマンションはできるだけ早く売却する
築30年を経過すると、築浅物件と比較して売却価格が半額以下になるケースが多くなります。しかし、築30年以上のマンションは成約件数が多い時期でもあるため、できるだけ早く売却することを意識しましょう。
できるだけ早く売却する理由として、年数が経過する毎に売却価格がさらに下がっていく点や、マンションが古くなるにつれ毎月支払う修繕積立金が高くなることが挙げられます。築年数が古いマンションの中には、修繕積立金だけで毎月4万円以上の支払いが必要なケースもあり、毎月の負担が大きくなる前に売却することをおすすめします。
また、2024年と2025年は一定の基準を満たした中古マンションでも住宅ローン控除が活用できます。住宅ローン控除とは、物件の購入時に住宅ローンを利用した場合に税金の還付を受けられる制度です。
基本的に1982年以降に建築された中古マンションが住宅ローン控除の適用条件ですが、これ以上古い場合は「耐震基準適合証明書」があれば、住宅ローン控除が適用されます。建築士などの専門家に相談して耐震性に問題がないマンションだと証明できれば、買い手へのアピールにもなります。築年数が古いマンションを売り出す場合は、「耐震基準適合証明書」が発行できるかどうかを専門家へ相談してみましょう。
築年数が古いマンションを高く売る3つのコツ
築年数が古いマンションは、以下のポイントに気をつけて売却に臨みましょう。
-
リフォームか値下げかを慎重に判断する
-
複数の不動産会社に査定依頼をする
-
収益物件として売却する
ここからは、築年数が古いマンションを高く売るコツを解説します。
リフォームか値下げかを慎重に判断する
古いマンションを高く売却するためには、リフォームか値下げを行うのかを慎重に判断することが重要です。中には自分でリフォームをしたいと考える買い手がいるため、安易にリフォームをしてもその費用が無駄になることがあるのです。
たとえば、1,500万円で売りに出しているマンションを売りやすくするために、500万円分のリフォームを行ったとしましょう。しかし、そのマンションがリフォーム費用分を含めた2,000万円で売却できる保証はどこにもありません。
築年数が古いマンションを少しでも高く売りたい場合は、リフォームを行うか値下げするのかをよく検討しましょう。
複数の不動産会社に査定依頼をする
築年数が古いマンションを高く売却するためには、1社ではなく複数社に査定依頼をしましょう。1社だけに査定を依頼すると、その査定額が安いのか高いのかが判断しにくなるからです。
複数社に査定依頼を出すおすすめの方法は、不動産一括査定を利用することです。不動産一括査定とは、複数の不動産会社へ同時に査定依頼を申し込めるサービスで、無料で利用できます。一度に複数社に査定依頼できるため、1社ずつ連絡する手間や時間が省けるメリットがあります。
また、不動産会社の中には築年数が古いマンションの販売が得意な会社も存在します。不動産一括査定で複数社を比較し、自分に適した不動産会社を選びましょう。
収益物件として売却する
築年数が古いマンションは資産価値が下がりきっているため、これ以上値段が下がりにくい特徴があります。そのため、第三者にマンションを貸して収益物件として売り出すことで、資産運用がしやすい物件となり、不動産投資家の目に留まる可能性が高まるでしょう。
とくに、最寄駅からのアクセスが良いマンションや管理状況が良いマンションは不動産投資家から人気が高い傾向になります。築年数が古いマンションの売却に困った場合は、収益物件として売りに出し投資家をターゲットにする方法も検討してみましょう。
まとめ
この記事では、マンションの築年数と査定額の関係性や、築年数ごとの売却するポイントについて解説しました。一般的に、築年数が経過するにつれマンション価格が下落する傾向にありますが、築30年以上経過したマンションでも売れる可能性は十分にあります。また、マンションが売れやすいのは、価格と築年数のバランスが良い築11〜20年です。
マンション売却は、築年数ごとに注意するポイントが異なります。築年数が古いからといって売却を諦めるのではなく、この記事を参考に高値での売却にチャレンジしてみましょう。