マンションを売ろうと考えている場合、相場はいくらくらいなのか、自分のマンションはいくらで売れるのか気になる人は多いのではないでしょうか。マンションの売り方には仲介と買取の2通りがありますが、この記事では買取の方に焦点を当てて、エリアごとの相場を解説するとともに、少しでも高く売るための方法などについて解説します。
この記事の目次
マンション買取価格の相場
築年数ごとのマンション買取価格の相場に加え、買取価格の決まり方について解説します。
買取額の相場は仲介市場の6割~8割
仲介で売却する場合と比較すると、買取によるマンションの売却価格は6割~8割です。なお、仲介で売却する場合も築年数の経過とともにマンションの売却価格は下がっていくため、マンションが古いほど買取による売却価格も下がっていきます。
以下のグラフは、不動産流通機構が発表している築年数別中古マンションの成約価格(首都圏)を基に、買取による売却価格を仲介の7割と仮定した場合の価格変化を表したものです。
※単位:万円
※参照:レインズデータライブラリー
築5年までの価格と築20年までの価格を比較すると、約33%値下がりしていることが分かります。また、築年数が25年以上経過すると値下がりのペースが上がっていきます。
築25年までのマンションと築30年までのマンションは約25%価格が下がっており、築30年を超えているマンションの取引価格は築25年までのマンション価格と比較して半額以下です。
買取が仲介よりも安い理由
買取は不動産業者が買取ったマンションを修繕・改良してから別の消費者へ転売する目的で行われます。買取の方が価格が低くなる理由は、不動産業者が負担する修繕費用や後の広告経費などを差し引いた金額が提示されるためです。
なお、買取再販するマンションが実際に売れるのか、売れるまでの期間などは不動産業者でも正確な予想が困難です。このため、不動産業者は販売期間が長引いた場合のリスクも考慮した上で査定金額を提示してきます。
また、2024年上半期時点では建材や建設現場の職人が不足しているという背景から、手のかかる修繕や改良が必要になるほど不動産業者としてもコストがかかるようになっています。このため、古いマンションは買取価格がより下がる可能性もあります。
エリアごとに買取価格の相場を試算
仲介による不動産価格相場はエリアによっても異なるものです。不動産流通機構が発表している都道府県別の成約状況に基づいて、エリア別のマンション買取価格の相場を試算します。
都道府県 |
仲介の平均成約価格 (万円) |
買取の想定価格相場 (万円) |
仲介で売買された物件の平均築年数(年) |
東京都 |
6,044 |
3,626.4 ~ 4,835.2 |
23.17 |
神奈川県 |
3,965 |
2,379.0 ~ 3,172.0 |
24.93 |
千葉県 |
2,820 |
1,692.0 ~ 2,256.0 |
27.83 |
埼玉県 |
2,921 |
1,752.6 ~ 2,336.8 |
25.67 |
愛知県 |
2,473 |
1,483.8 ~ 1,978.4 |
25.64 |
大阪府 |
3,221 |
1,932.6 ~ 2,576.8 |
26.98 |
福岡県 |
2,519 |
1,511.4 ~ 2,015.2 |
26.72 |
宮城県 |
2,708 |
1,624.8 ~ 2,166.4 |
23.00 |
※2024年5月の成約状況を参照
※買取の想定価格は仲介の6割~8割
※参照:レインズデータライブラリー
なお、2024年上半期時点では不動産市場が全体的に値上がり傾向にあり、中古マンションであっても高く売れやすいです。このため、マンション買取についても価格が上がってきていると言えるでしょう。
ただし、価格的に新築マンションを買えない人が中古マンションを探しているという側面もあり、値上がりしているのはニーズが集中している都心に偏りがちな一面もあります。
自分で買取価格を計算する方法
不動産買取の買取価格は仲介による市場価格の6割~8割なので、仲介の市場相場を把握できれば買取価格も見当をつけられます。ここからは、仲介の市場相場を調べる方法について解説します。
インターネットで仲介の相場を調査する
国土交通省が運営している土地総合情報システムにアクセスすれば、最寄り駅・間取り・不動産種別などから実際の取引事例を検索可能です。土地総合情報システムは誰でもアクセスできるデータベースであり、アカウント作成なども不要です。
不動産流通機構が運営するレインズマーケットインフォメーションというサイトも、土地総合情報システムと同じような使い方をできます。レインズマーケットインフォメーションも、利用にあたってアカウント作成などは不要です。
マンション買取の相場を調べる上では、同じマンションの売買事例を探すのが効果的です。同じマンションで別の部屋の売買事例が見つかれば、買取価格を計算する上で役に立つでしょう。同じマンションの事例が見つからない場合は、同じエリアの中で同じくらいの広さの事例を出来る限り多く探し、平均値を出してみるのもおすすめです。
複数の不動産業者から机上査定を受ける
買取価格を見定める上では、実際に不動産業者から査定を受けてみるのも有効です。査定には訪問査定と机上査定という2種類があり、机上査定の方はインターネットでマンションの情報を入力するだけで、不動産業者から簡易的な査定を受けられます。
机上査定を受ける上では、複数の不動産業者へ同時に査定依頼するのが有効です。1社だけでは査定額の妥当性を判断できませんが、複数社の査定を受ければある程度正確な査定額を把握できるでしょう。
なお、机上査定にかかる期間は即日~1週間程度であり、無料で受けられます。また、机上査定は査定を受けたら必ず不動産業者と取引しないといけないというわけではありません。査定結果だけ受け取って取引を断ることもできるので、とりあえず査定を受けてみるのも良いでしょう。
マンションの買取価格は何で決まる?
マンションの買取価格を大きく左右するのは、不動産業者が修繕などをする時にかかるコストと、不動産業者が再販する時に売れる可能性が高いかどうかです。築年数・立地・間取りの3つに絞って解説します。
築年数と立地
「マンション買取価格の相場」の項で示した通り、築年数が経過するほど買取価格は下がっていきます。不動産業者は買取ったマンションの再販を目的としていますが、再販にあたっては築浅物件の方が消費者に好まれるからです。
また、古いマンションは配管・配線や設備も古くなっており、不動産業者は再販に向けて更新工事をすることが多いものです。設備関連の更新工事も大きなコストがかかるため、買取価格が低くなります。一方で古いマンションには東京都心の駅前などに建っているものも多く、立地の良いマンションは古くても買取価格が高くなりやすいです。古いマンションは特に、高く売れるものとそうでないものとの差が付きやすいと言えるでしょう。
そのほか、1981年5月以前に建築確認を取得しているマンションは旧耐震基準で設計されています。旧耐震基準のマンションはローン審査に通りにくいものです。ローン審査に通りにくいということは、不動産業者が買取再販する時に売りにくいということにつながります。買手が現金決済できる人に限られるためです。
このため、2024年時点で築43年を超えているマンションは買取でも売れない可能性があります。不動産業者によって対応が変わるので事前確認が必要です。
また、立地に関しては間取りと関係してきます。ワンルームのマンションは一人暮らしのサラリーマンなどに好まれる間取りです。このため、とにかく駅から近いこと、オフィスの集まる都心駅に乗り換えなしで行ける、コンビニなどが近いといった条件であれば、そのワンルームマンションは買取でも高く売れるでしょう。
一方で、2LDKや3LDK以上の間取りは、主に子どものいるファミリー世帯がターゲットです。このため、治安が良いエリアである、スーパーや小学校などが近いといったマンションであれば、買取でも高く売れます。
間取り
間取りに関しては一般的な間取りを持つマンションの方が高く売れやすいです。間取りを自分でカスタマイズできるマンションや、リノベーションによって奇抜な間取りになっているマンションもありますが、これらのマンションは人によって好みが分かれます。
不動産業者から見ると、奇抜な間取りのままでは買取った後に売りにくく、間取り変更のために工事をするのは経費がかさむため、奇抜な間取りのマンションは買取価格が下がります。
マンションの買取価格を少しでも上げる方法
マンションの価格は所有者がコントロールできない部分で決まることも多いものです。しかし、売り方や売る時期などを工夫することで、高く売れる可能性を少しでも上げることができます。
買取保証を利用する
買取保証とは、一定期間仲介でマンションを売出した後、売れなかった場合に限り査定価格で不動産業者が買い取ってくれるというものです。マンションを現金化するまでに時間的な余裕があるけれど、最終的には必ず売却したいという場合は、買取保証を利用するのがおすすめです。
例えば、相続税の納税期限が決まっているものの納税期限までにはまだ余裕があるという場合や、子どもの進学に向けて引越したい時期が決まっているという場合などは買取保証を利用すると良いでしょう。
なお、仲介で売却する時には不動産業者と媒介契約という契約を結びますが、媒介契約の期間は3ヶ月にするのが一般的です。このため、お金が必要な時期までに3ヶ月以上の余裕があるなら買取保証も選択肢に入ってきます。
買取保証であれば、自分のマンションは本当に売れるのか、すぐに売れたらいいけど自信がない、などの不安を解消できるでしょう。
売出す時期を工夫する
家の買い替えや引越しが最も多くなるのは、大学入学・就職・転勤などが多くなる2月から3月です。この時期はマンションも売れやすくなります。一方で、7月から8月の夏場や11月から12月の年末などは引っ越す人が減るために、マンションを売り出すにはあまり適していません。
例えば最終的には3月までに売れるように買取保証を利用すれば、仲介の市場価格で売れる可能性を出来る限り残しつつ、最終的には必ず売れるという売り方が可能です。
なお、普通の買取を利用する場合でも1月~2月などに合わせると良いでしょう。不動産業者の修繕や改良には1ヶ月~2ヶ月程度かかることが多く、不動産業者としても3月までに売出せれば売れる可能性が高くなるからです。
まとめ
マンション買取による売却価格の相場は仲介で売却した場合の6割~8割です。ただし、築古のマンションになると不動産業者の修繕などにかかるコストも増えがちなため、相場より低い価格になることもあります。
マンション買取の相場価格を把握するためには、不動産取引の事例を公開しているサイトにアクセスするほか、机上査定を受けて見るなどの方法があります。ただし、査定を受ける上では、価格の妥当性を判断するために複数の不動産業者に依頼することが必要です。
また、少しでもマンションを高く売るためには、不動産市場の動きが大きくなる年度末に合わせて買取保証を利用するなどの方法がおすすめです。