マンションを早く売りたい事情がある場合は、不動産業者にマンションを売る「マンション買取」が有効です。しかし、買取にはどれくらいの期間がかかるのか、売主としてあらかじめ準備しておくべきことは何なのかなど、不安に感じる人もいるのではないでしょうか。
買取は仲介よりもかなり早く取引が終わりますが、早期完了させるためには事前の市場調査や書類の準備などが必要です。この記事では、マンション買取の流れや事前の準備事項などに加えて、買取と仲介の違いなどについて解説します。
この記事の目次
マンション買取と仲介の違い
自分は買取と仲介のどちらで売却するのが合っているのか、分からないという人もいるのではないでしょうか。マンション買取と仲介の違いや、それぞれに向いているのはどんな人なのか解説します。
マンション買取とは
マンション買取が持つ最大のメリットは取引期間の短さです。マンション買取では不動産業者にマンションを売ることになり、不動産業者が買手を探す期間が必要ありません。売れる価格は安くてもいいから、とにかく早く売却したい人にはマンション買取がおすすめです。
その一方で、マンション買取のデメリットは売却価格が安くなることです。不動産業者は買い取ったマンションを修繕・改良して他の消費者などに転売します。このため、マンション買取による買取価格は、修繕・改良や転売益を考慮した金額となります。
仲介によるマンション売却とは
仲介でマンションを売る最大のメリットは高く売れることです。仲介は買取と違って不動産業者のコストが関係ないため、市場価格でマンションを売れます。
一方で、仲介でマンションを売却するデメリットは、売出してから売却が完了するまでに時間がかかることです。仲介の場合は広告を掲出するなどして買手を探す時間が必要なので、買手を探さない買取と比較すると数ヶ月単位の時間がかかります。
マンションが売れるまでに時間がかかってもいいから高く売りたいという人には、仲介で売却するのがおすすめです。
なお、最初は仲介でマンションを売り出し、売れなかった場合は不動産業者に買い取ってもらう「買取保証」という方法もあります。売却のスケジュールに余裕はあるけど、最終的には必ず売却したいという場合は買取保証を利用するのが有効です。ただし、買取保証に対応している不動産業者は限られているため、事前確認を要します。
買取と仲介のどちらが良い?事情があるマンションを売る場合
買取と仲介のどちらが良いのかについて、より具体的な2つのケースに絞って解説します。
相続などで空き家を売却する場合
例えば、相続したために、人が住んでいない空き家のマンションを売却しないといけないという場合もあるでしょう。この場合は買取と仲介のどちらが適しているかというと、マンションの状態や立地などによって答えが変わってきます。
マンションの中に整理すべき残置物などが特になく、きれいな状態の場合は仲介で売却するのがおすすめです。
一方で片付けないといけない家具や荷物が多く残っている場合や、築古のマンションである場合、または駅から遠いなど立地が良くない場合などは、買取で売却するのがおすすめです。
築古や不便な場所のマンションは買手が見つかりにくく、仲介で売却するのは難しいと言えます。また、買取の場合は、残置物があっても不動産業者が買い取ってくれることもあります。家具などの処分にお金をかけたくない、マンションを相続したけど住む予定がなく、固定資産税などの費用をかけたくないといった場合も買取で売却するのがおすすめです。
そのほか、売りたいマンションが住んでいる場所から遠くにあって、あまり頻繁に行けない場合なども買取に出すと良いでしょう。仲介で売却しようとすると、買手候補の内覧などに対応しないといけないため、複数回に渡って売手が現地対応する必要があります。
スケジュールに制限がある場合
例えばもともと住んでいたマンションから住み替える場合など、引越しを伴う売却の場合は、スケジュールの調整を要します。また、引越しが迫ってきた段階になってもマンションが売れていない場合は、ローンや家賃の二重払いになる可能性があるでしょう。
このようにスケジュールに制限がある場合は、買取で売却する方が安全です。立地が良いなど売りやすいマンションであれば、仲介で売却してもスケジュールの見通しが立つものの、そうでない場合は売出してみないと売れるかどうかわかりません。万一仲介で売却期間が長期化すると、予定が狂ってしまうリスクが出てきます。
マンション買取を利用するメリットは?
マンション買取を利用する最大のメリットは早く売れることです。しかし、それ以外にもいくつかのメリットがあります。早いと言っても実際にはどのくらいの期間を要するのか、他にはどんなメリットがあるのか解説します。
仲介よりも短期間で売却が完了する
マンション買取を利用すると最短1週間程度で売却が完了します。買取の場合は不動産業者に問い合わせてから1週間~1ヶ月程度で売れると考えておけば良いでしょう。その一方で仲介の場合は、マンションが売れるまでに4ヶ月~6ヶ月程度の期間が必要です。
なお、4ヶ月~6ヶ月は平均的な期間であり、仲介で売り出すとマンションによっては6ヶ月かけても売れないこともあります。
築古など売りにくいマンションでも売りやすい
例えば築年数が大幅に経過している、大規模修繕工事を控えている、駅から通りなど不便な場所に建っているなどのマンションは、仲介だと買手が見つかりにくくなかなか売れません。マンションを探している人は、多くの場合は比較的新しく利便性の高いマンションを好むためです。
その一方で、買取の場合は不動産業者が修繕・改良する前提で査定します。このため、古いマンションでも買取なら売りやすいのが実態です。
仲介で売るよりも売主の責任が軽くてすむ
仲介で売却する場合は、売主は買主に対して「契約不適合責任」という責任を負います。これは、あらかじめ告知していなかった不具合が引渡し後に見つかった場合に、買主が修繕する費用などを負担するというものです。
しかし、買取の場合は、不動産のプロである不動産業者が事前にマンションを確認したうえで売却するので、契約不適合責任を免責にできます。
内密にマンションを売却できる
マンション買取を検討している人の中には、マンションを売ることを周辺住戸の住民に知られたくないという人もいるのではないでしょうか。仲介で売却する場合は、チラシを作ったりインターネットで広告を掲出したりするため、売出していることを周辺住民に知られる可能性があります。
しかし、買取の場合は広告の掲出やチラシの配布などが無いため、周辺住民に知られることなく売却することが可能です。
売主の手間が少なくスケジュールを立てやすい
仲介で売却する場合は、買手の都合を考慮してスケジュールを立てる必要があります。場合によっては売り手と買手のスケジュールが合わず、結果的に売却期間が長期化することもあるでしょう。
しかし、マンション買取の場合は不動産業者が相手になるので、売主の都合を優先したスケジュールを立てられます。仲介の場合は精算と引渡しを同時に行う必要がありますが、買取の場合はタイミングをずらすことも可能です。お金を受け取ってから引っ越すまで時間的な猶予をもらえることもあります。
不動産業者が査定に対応してくれれば必ず売れる
仲介で売却する場合は、売り出してみないと実際にマンションが売れるかどうかわかりません。しかし、買取の場合は不動産業者のホームページを見たり、事前に問い合わせたりすることで売れるかどうか判断可能です。
さらに、不動産業者が査定に対応してくれるのであれば、そのマンションは必ず買取で売却できます。ただし、例えば既に建て替えることが決まっているなどの場合は買取でも売却できないこともあるので要注意です。
また、買取は仲介と違って仲介手数料が発生しません。ただし、マンション買取に対応していない不動産業者が、買取に対応している別の不動産業者を連れてくることがあります。この場合は仲介に該当するため、仲介手数料が発生します。余計な費用の支払を抑えるためには、どの不動産業者に買い取ってもらうのか把握しておくことが必要です。
マンション買取の注意点
マンション買取は仲介と比較すると確実性が高い売却方法ですが、買取なら絶対に売れるというわけではありません。また、売却価格の安さは大きなデメリットとなります。
売却価格は安い
マンションを高く売りたいという場合は、買取で売却するのはおすすめできません。買取価格は転売による不動産業者の利益や修繕などの費用を考慮したものになるからです。買取価格は仲介で売却した場合の6割~8割で、修繕を要する箇所が多い場合などは5割程度になることもあります。
立地や築年によっては買い取ってもらえないこともある
不動産買取を全国展開している不動産業者は多くありません。首都圏や大阪圏など、一定のエリアに限って対応している不動産業者が大半です。このため、地方都市に立地しているマンションなどは対応エリア外ということで買い取ってもらえないこともあります。
また、1981年5月31日以前に建築確認を取得しているマンションは旧耐震基準で建設されているため、買取の対象外とされていることが多くなっています。
不動産業者の選定には要注意
マンション買取は、仲介と比較すると対応している不動産業者が少なく、業者同士の比較は難しい点がデメリットです。ただ、選択肢が少ない中でも比較検討することは、少しでも高く売るため、不動産業者を見極めるために重要なポイントです。
マンション買取の流れとしては、まず査定を依頼するところから不動産業者とのコンタクトが始まります。この段階で複数の不動産業者に査定を依頼することが重要です。査定は無料なので、査定価格を提示された時点で取引を断れば、売主が不動産業者に支払う費用などはありません。
マンション買取の流れ
ここからは、マンション買取の具体的な流れとともに、それぞれの段階で必要な書類などについて解説します。
市場価格などについて事前に調査する
不動産業者に接触する前に、売ろうとしているマンションを仲介で売ったらいくらになるのか調査することが重要です。マンション買取による査定価格は仲介で売った場合の6割~8割なので、仲介の市場相場を調べることで査定価格の目安を把握できます。
仲介の市場相場を調べるためには、国土交通省が運営している土地総合情報システムや、不動産流通機構が運営しているレインズマーケットインフォメーションなどを見て、同じエリア・似た広さのマンションなどを検索するのが有効です。
どちらのサイトも過去の取引事例などが記録されているため、類似物件の取引事例を確認することで、仲介による取引の価格相場を把握できます。
不動産業者に査定を依頼する
査定価格の目安を把握したら次は不動産業者に買取の査定を依頼します。査定を依頼する上で重要なポイントは、3社を目安に複数の不動産業者へ同時に査定を依頼することです。複数の不動産業者から査定を受けることで、不動産業者の比較検討ができます。
同時に複数の不動産業者と接触するためには、一括査定サイトを利用するのがおすすめです。一括査定サイトの利用にあたっては、費用は特に掛かりません。ただし、サイトの大半は仲介売却に対応したものであり、買取に対応しているサイトは限られるので、どちらに対応したサイトなのか確認する必要があります。
机上査定の結果を受け取る
最初の査定は机上査定と呼ばれるものです。例えば築年数や面積など査定依頼したマンションに関する情報を不動産業者に伝えることで、データを基に不動産業者が査定を進めます。机上査定にかかる期間は1~3営業日です。早ければ依頼した当日に査定結果が出ることもあります。
実際に買取を依頼する不動産業者を選ぶためには、査定価格に加えてマンション買取の実績・会社規模・営業マンの印象などを比較すると良いでしょう。マンション買取は不動産業者が多額の費用を支出することになるので、会社規模が大きく買取の実績が豊富な業者を選ぶことで取引のリスクを減らせます。
査定結果や営業マンの印象などに納得がいかない場合は、この段階で断りの連絡を入れて問題ありません。査定は無料なので、査定結果だけ受け取って断ったとしても手数料などは不要です。
現地査定に対応する
机上査定の段階で不動産業者を1社に絞り込んだら、その不動産業者から現地査定を受けることになります。机上査定はあくまでもデータに基づく仮の査定であり、査定の本番はこちらの現地査定です。
現地査定では依頼したマンションの現地に不動産業者の担当者が訪問し、住戸の状態をチェックします。現地査定は売主の立ち合いが必要です。なお、所要時間は住戸の広さなどによっても前後しますが、概ね30分~1時間と考えておけば良いでしょう。
不動産業者と売買契約を締結する
現地査定の結果に納得出来たら、不動産業者と売買契約書の取り交わしに移ります。事前に売買契約書の案文を確認しておくことが重要です。特に注意して確認すべきポイントは、引越し猶予の有無・契約不適合責任の有無・売主負担による修繕等の有無・残置物がある場合の対応などです。
売買契約の際には実印・印鑑証明書・住民票・固定資産税の納税通知書などが必要になります。印鑑証明や住民票などは役所に行って取得する必要があります。また、固定資産税の通知書が手元にない場合は、税務署への問合せが必要です。どちらもすぐに用意できるものではないので、あらかじめ準備しておくと良いでしょう。
なお、不動産業者によっては売買契約の締結と同時に手付金が支払われることもあります。手付金は売却額全体の10%などです。
買取金の決済
売買契約の締結後、あらかじめ決めていた決済日に買取金額が支払われます。事前に手付金を受け取っている場合は、手付金額を除いた残金が支払額です。支払方法は一括銀行振り込みであり、売主の希望がある場合は希望に合わせたスケジュールで支払われます。
売買契約で引越し猶予が設定されていて、売主が希望する場合は売買契約の締結と同時にお金が支払われることもあります。
なお、手付金を除いた残金について、不動産業者によっては支払金の調達を要する場合もあるので要注意です。この場合は不動産業者がお金を調達できないと契約解除に至ることもあります。資金調達については売買契約締結前の段階で確認しておくことが必要です。
不動産業者にマンションを引き渡す
不動産業者から買取金を受け取って決済が完了したら、マンションの引き渡しに移ります。引渡しに際しては、マンションの管理規約や登記済証など書類が必要になるので事前に準備しておくと良いでしょう。
また、ローンの残債があるマンションを売却する場合は、ローンの一括返済と抵当権の抹消手続きについてあらかじめ金融機関へ申し入れておきます。
確定申告をする
マンションの購入価格より高い金額で売却できた場合は、利益が「譲渡所得」として扱われるため確定申告が必要です。確定申告は売却した年の翌年2月15日~3月15日の間に行います。マンション売却の際に利用できる税控除の制度もあるので、事前に確認しておくと良いでしょう。
まとめ
マンションの買取と仲介にはそれぞれメリット・デメリットがあり、どちらの方が良いかは、売却にかけられる期間や売ろうとしているマンションの状態などによって異なります。
また、買取の流れの中で特に欠かせない手順は、事前の相場調査・机上査定時の買取業者絞り込み・売買契約締結前の契約内容確認です。相場調査と絞り込みはいずれも業者選定に関わる部分であり、このステップをちゃんとやるかどうかで取引の最終的な満足度が変わってきます。