マンション売却を検討している人の中には「マンションを売却すると税金はかかるの?」「できるだけ税金がかからないタイミングを知りたい」と感じている方が多いのではないでしょうか。
マンション売却で大きな利益が出た場合、売却金額や所有期間によって納める税額が異なります。そのため、売却時に所有期間による税率の違いや特例などを知らなければ、無駄な税金が発生してしまうかもしれません。
この記事では、マンション売却にかかる税金の種類や節税ポイントを紹介します。また、具体的なシミュレーションも行いますので、ケース別の納税額を知りたい方は最後まで読んで参考にしてください。
この記事の目次
マンションの売却時にかかる税金の種類
マンションを売却すると以下の税金がかかります。
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譲渡所得税
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印紙税
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登録免許税
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消費税
それぞれがどのような税金で、いくらくらいかかるのかを解説します。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、マンションを売却した際に得た利益(譲渡所得)にかかる税金です。譲渡所得にかかる所得税、住民税、復興特別所得税をまとめて譲渡所得税と呼びます。※復興特別所得税は、平成25年から令和19年までの各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて納付する税金です。
譲渡所得税はマンションの所有期間によって税率が変わります。
所得区分 |
所有期間 |
税率 |
短期譲渡所得 |
所有期間5年以下 |
39.63% ※所得税:30% 住民税:9% 復興特別所得税:0.63% |
長期譲渡所得 |
所有期間5年超 |
20.315% ※所得税:15% 住民税:5% 復興特別所得税:0.315% |
一例として、譲渡所得が1,000万円出た場合の所有期間による譲渡所得税を計算してみましょう。
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所有期間5年以下(短期譲渡所得)
1,000万円✕39.63%=396.3万円
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所有期間5年超(長期譲渡所得)
1,000万円✕20.315%=203.15万円
このように、上記のシミュレーションでは所有期間が5年を超えているかどうかで190万円近い差が出ました。マンションの売却時には、所有期間が5年を超えるようタイミングを調整することで、効果的な節税効果を得られるでしょう。
印紙税
印紙税とは、課税対象になる文書を作成した際にかかる税金です。マンション売却において課税対象となる文書としては「不動産売買契約書」が挙げられ、契約書に記載された物件金額によって印紙税額が異なります。
不動産売買契約書にかかる印紙税は、以下の表を参考にしてください。
売買価格 |
印紙税額 |
100万円を超え500万円以下のもの |
1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの |
5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの |
1万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの |
3万円 |
※この表は、平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される契約書についての、印紙税税額の軽減が適用された場合の金額です。
引用:国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
印紙税は、契約書に印紙を貼り、そこに署名や印鑑で消印をすることで納税します。そのため、印紙を貼り忘れたり消印を忘れたりすると、納付額の2倍にあたる「過怠税」という罰則が発生します。売買契約の際は不動産会社の指示に従い、印紙の貼り忘れに注意しましょう。
登録免許税
登録免許税とは、マンションの名義変更にかかる税金です。マンションが売れた場合、売主から買主に名義を変える際の登記に税金が発生します。
その中でも、売主が支払う登録免許税は「抵当権抹消登記」にかかるものです。抵当権とは、住宅ローンを組んだ際に金融機関がマンションに付けた担保権のことで、この抵当権を登記簿謄本から消す登記を「抵当権抹消登記」と呼びます。
登録免許税にかかる金額は、不動産1つにつき1,000円です。マンションを売却する際は、一般的に建物と土地でそれぞれ登録免許税がかかるため2,000円が必要です。ただし、マンションによっては土地が数個に分かれて税額が上がる可能性があるため、登録免許税が気になる人は事前に登記簿謄本や購入時の売買契約書を確認しましょう。
消費税
マンション売却で消費税がかかるのは、課税事業者です。事業を行う目的でマンションを売却すると消費税がかかります。
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投資用としての売却
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事業用の店舗としての売却
課税事業者として、上記の売却を行うケースなどで消費税がかかります。居住用としてのマンション売却や、売主が課税事業者ではない場合は消費税がかかりませんのでご安心ください。
マンション売却時の税金シミュレーション
ここでは、マンション売却時にどれくらいの税金がかかるのかを、2パターンでシミュレーションします。※ここで登場する税金の控除や特例については、次の章で解説します。また、ここで紹介する税金以外にも各種手数料がかかるため、詳細は不動産会社にご相談ください。
シミュレーション①
シミュレーション前提
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2021年5月にマイホームとして購入したマンションを2024年2月に売却
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取得費(購入金額+購入時諸費用):3,500万円※住宅ローンを利用
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譲渡費(売却金額−売却時諸費用):4,500万円
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土地1筆、建物1筆
譲渡所得税は以下の計算式で算出します。
譲渡所得=譲渡費−取得費−特別控除額
譲渡所得税=譲渡所得✕税率
4,500万円(譲渡費)−3,500万円(取得費)−3,000万円(居住用財産の3,000万円特別控除)=0円(譲渡所得)※計算結果が▲2,000万円のため
このケースでは、マンション売却により1,000万円の譲渡所得を得ましたが、マイホームを売却したということで「居住用財産の3,000万円特別控除」が適用され、譲渡所得税は0円となりました。
また、売却時の売買契約書に貼付する印紙税が1万円、登録免許税は2,000円かかります。マイホームとしての売却のため、消費税はかかりません。
1万円(印紙税)+2,000円(登録免許税)=1万2,000円
したがって、このシミュレーションでは合計1万2,000円の税金を納付することとなります。
シミュレーション②
シミュレーション前提
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2018年2月にマイホームとして購入したマンションを2024年5月に売却
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取得費(購入金額+購入時諸費用):2,500万円(諸費用込み)※住宅ローンを利用
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譲渡費(売却金額−売却時諸費用):7,000万円(諸費用込み)
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土地3筆、建物1筆
7,000万円(譲渡費)−2,500万円(取得費)−3,000万円(居住用財産の3,000万円特別控除)=1,500万円(譲渡所得)
1,500万円(譲渡所得)✕20.315%(長期譲渡所得)=304万7,250円(譲渡所得税)
ここでは、売却により4,500万円の売却益を得ましたが「居住用財産の3,000万円特別控除」の適用で譲渡所得が1,500万円まで下がりました。マンションの所有期間が5年を超えているため、譲渡所得に長期譲渡所得税率(20.315%)をかけた結果、304万7,250円の譲渡所得税が算出されました。
また、売却時の契約書に貼付する印紙3万円、登録免許税が4,000円(土地・建物合計4筆のため)かかります。マイホームの売却なので消費税はかかりません。
304万7,250円(譲渡所得税)+3万円(印紙税)+4,000円(登録免許税)=308万1,250円
このケースでは、合計308万1,250円の税金がかかります。
マンション売却時に活用したい4つの特例
マンション売却では以下4つの特例を活用しましょう。
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居住用財産の3,000万円特別控除
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マイホームを売ったときの軽減税率の特例
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譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
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特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例
マンション売却により利益が出た場合、上記の特例を活用すれば譲渡所得税の支払いを軽減することが可能です。ここでは、それぞれの詳細を解説します。
居住用財産の3,000万円特別控除
居住用財産の3,000万円特別控除とは、マイホームを売却した場合に譲渡所得から3,000万円までを控除できるという制度です。この制度を利用すれば、譲渡所得3,000万円までの納税が必要なくなるため、譲渡所得納税を大幅に節税できるでしょう。
たとえば、5,000万円で購入したマイホームを7,000万円で売却し、譲渡所得が2,000万円発生した場合、居住用財産の3,000万円特別控除を利用すれば譲渡所得税額を支払わずに済みます。
また、2,000万円で購入したマイホームを6,000万円で売却したなど、3,000万円以上の譲渡所得が発生した場合でも、居住用財産の3,000万円特別控除の利用で譲渡所得を抑えることができます。(この場合は、4,000万円−3,000万円で1,000万円の譲渡所得になります。)
居住用財産の3,000万円特別控除は、主に以下の条件を満たせば利用できます。
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住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
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売却したマンションがマイホームであること
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売った年、その前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと
参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
注意点は、住宅ローン控除などの特例と併用することができないことです。マンション売却による手取り額を少しでも増やすために、どの特例を優先的に利用するのかを十分に検討することが重要です。
マイホームを売ったときの軽減税率の特例
マイホームを売ったときの軽減税率の特例とは、所有期間が10年を超えたマイホームを売却する場合に、譲渡所得税率の軽減を受けられる特例です。
短期譲渡所得、長期譲渡所得とマイホームを売ったときの軽減税率の特例の比較は、以下のとおりです。
所得区分 |
所有期間 |
税率 |
短期譲渡所得 |
所有期間5年以下 |
39.63% ※所得税:30% 住民税:9% 復興特別所得税:0.63% |
長期譲渡所得 |
所有期間5年超 |
20.315% ※所得税:15% 住民税:5% 復興特別所得税:0.315% |
マイホームを売ったときの 軽減税率の特例 |
所有期間10年超 |
14.21%(6,000万円以下の部分) ※所得税:10% 住民税:4% 20.315%(6,000万円超の部分) ※所得税:15% 住民税:5% |
マンション売却で5,000万円の譲渡所得が出た場合を考えてみましょう。
所有期間が10年以下の場合:5,000万円✕20.315%=1,015万7,500円
所有期間が10年超の場合:5000万円✕14.21%=710万5,000円
所有期間の違いで譲渡所得税額に約300万円の差が出ました。また、マイホームを売ったときの軽減税率の特例は、居住用財産の3,000万円特別控除との併用ができます。所有期間が長いマンションの売却は特例による恩恵が大きいので、所有期間も考慮の上で売却を検討しましょう。
譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例とは、マンションの売却額が購入額より低くなり、譲渡所得がマイナスになってしまった際に利用できる特例です。この特例を利用すれば、マンション売却で損失が出た金額(譲渡損失)を、他の所得から控除する「損益通算」ができます。
譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例のシミュレーションを行ってみましょう。
シミュレーション前提
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譲渡損失額:▲2,000万円
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給与所得:600万円(4年間変わらないものとする)
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マンションを売却した年:マンションを売却した年は、所得に対して1,400万円の赤字が生じます。そのため、この年の所得は0円とみなされ、住民税や所得税はかかりません。
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2年目:600万円−▲1,400万円=▲800万円
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3年目:600万円−▲800万円=▲200万円
※2年目と3年目は繰越控除額により所得額が0円とみなされ、住民税や所得税はかかりません。
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4年目:600万円−▲200万円=400万円
4年目の繰越控除額は200万円のため、差し引き400万円分の所得があるとみなされ、その所得に応じた住民税と所得税を納めることになります。
マンションが高く売れずに赤字が出てしまっても、譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例をうまく活用し節税に励みましょう。
特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例
特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例とは、所有期間10年超のマイホームを売却し新しい住まいに買い替えた際、売却による譲渡所得を買い替えた住まいの売却時まで先送りできる制度です。先送りされた譲渡所得は、「居住用財産の3,000万円特別控除」と「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」を選択することになります。
たとえば、3,000万円で購入したマイホームを7,000万円で売却し、9,000万円の住まいに買い替えた場合、通常であれば4,000万円(7,000万円−3,000万円)の譲渡所得が課税対象になります。しかし、この特例を利用すれば、売却した年にこの譲渡所得税の支払いは発生せず、課税されるのは新しい住まいを売却したときになります。
新しい住まいを将来1億円で売却した場合、このときの譲渡所得1,000万円(1億円−9,000万円)と、特例により繰り延べられていた4,000万円の譲渡所得を合算した5,000円に対して課税されるということです。
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マイホームの売却
7,000万円−3,000万円=4,000万円(譲渡所得)
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9,000万円で買い替えたマイホームを将来1億円で売却した場合
1億円−9,000万円=1,000万円(買い替えたマイホームの譲渡所得)
4,000万円(特例により繰り延べられていた譲渡所得)+1,000万円(買い替えたマイホームの譲渡所得)=5,000万円(課税される譲渡所得)
最終的には、算出された5,000万円に「居住用財産の3,000万円特別控除」と「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」のどちらを利用するのかを選択することになります。
この特例を利用することで、買い替えにより自己資金が少なくなり、税金の支払いが難しくなったとしても納税を先送りすることができます。ただし、特例により税金の支払額が軽減されるわけではないため、特例を利用する際は将来の納税に向けた資金計画が重要になります。
マンション売却における節税ポイント
マンション売却で意識するべき節税ポイントには、以下の2つが挙げられます。
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取得時の費用を適切に計上する
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所有期間5年以上で売却する
特別控除や特例とともに、ここで紹介するポイントをしっかりと理解しておきましょう。
取得時の費用を適切に計上する
節税ポイントの1つ目は、マンションの取得費(購入金額)を正確に計上することです。取得費を正確に計上していれば売却時の譲渡所得を適切に算出でき、無駄な税金を支払う必要がなくなります。
マンション売却時に取得費がわからない場合、売却金額の5%を「概算取得費」としたり、国税庁の「建物の標準的な建築価額表」を参考に建物価格を算出したりします。しかし、これらの方法では、実際に購入した金額より低く見積もられることが多いため、できる限り正確な取得費を計上できるようにしておきましょう。
取得費を正確に計上するためには、購入時の不動産売買契約や各種領収証をしっかりと保存しておくことが重要です。
所有期間5年以上で売却する
所有期間が5年以下のマンションは「短期譲渡所得」とみなされ、高い税率で譲渡所得税が課税されます。そのため、できるだけ購入から5年以上が経過した段階で売却するようにしましょう。
所有期間を計算する際の注意点として、短期譲渡所得は譲渡した年の「1月1日時点の所有期間が5年以下」を指すということが挙げられます。たとえば、2019年2月1日に購入した不動産を2024年6月1日に売却した場合、カレンダー上での所有期間は5年4ヶ月です。しかし「譲渡した年の1月1日時点の所有期間」で計算すると所有期間は4年11ヶ月になるため、短期譲渡所得の扱いになってしまい高い税率が適用されてしまいます。
マンション売却で高額な譲渡所得を得た場合、所有期間の違いで100万円以上の納税額の差が出ることがあります。売却するタイミングに困ったときは、不動産会社の担当者や税理士、ファイナンシャルプランナーなどに相談してみると良いでしょう。
まとめ
この記事では、マンション売却にかかる税金の種類や特例を解説し、実際にシミュレーションを行ってみました。売却には譲渡所得税や印紙税、登録免許税などのさまざまな税金がかかり、所有期間や物件価格によって税額が異なります。また、少しでも手取り額を増やすためには、特別控除や特例を十分に理解し活用することが重要です。
この記事を参考にマンション売却でかかる税金を理解し、少しでも手取りを増やせるような売却活動を行ってみてはいかがでしょうか。