「マンションを買った値段で売りたい」と、思っている人も多いのではないでしょうか。事例は多くありませんが、買った値段よりも高い値段でマンションが売れるケースもあります。
本記事では、高く売れるマンションの特徴、売るためのコツを解説します。記事の後半では、2024年の不動産市況の紹介もしていますので、マンションを売却するときの参考にしてみてください。
この記事の目次
マンションが買った値段で売れることはあるの?
マンションは、買った値段で売れるケースもあります。
ただ、事例としては多くなく、マンションの価値を上げる要因が重なった場合に限られます。また、価値が上がる要因があったとしても、買った値段で売れることには期待しすぎず、あくまでも値下がりしにくくなると考えておいたほうがいいかもしれません。
高く売れやすい要因を理解してマンションを購入すれば、資産価値が維持でき、売却するときにも値下がりしにくくなることでしょう。値下がり幅が少なければ、売却したときに手元に残る金額が多くなります。
高く売れやすいマンションの特徴10選
高く売れやすいマンションは、次の10つの特徴があります。
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築5年以上10年未満
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立地が良い
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角部屋
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高層階
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ブランド力がある
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ファミリー向けの間取り
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リフォームしたばかり
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競合が少ない
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賃貸需要が高い地域
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管理がしっかりしている
上記は、買い手に大きなアピールができる特徴です。なぜ大きなアピールにつながるのか理解し、マンション売却のときにアピールポイントを活用していきましょう。
築5年以上10年未満
築5年以上10年未満は需要が高い築年数であり、マンションが高く売れる時期です。
新築マンションの価格が高騰しており、新築に手を出せない人が中古マンション市場に流れてきています。
築5年以上10年未満の中古マンションは、新築並みの設備があるうえに価格は新築よりも少し下がっています。新築の購入を検討していた人にとっても、築5年以上10年未満の中古マンションは希望条件に極めて近いといえるでしょう。
新築を探していた人は高い予算で購入を考えており、いい物件であれば相場よりも多少高くても購入してくれるかもしれません。
立地が良い
立地が良いマンションはその分買い手が多くなり、高く売れる可能性があります。
マンションの購入を検討している人は、居住面積よりも利便性を優先する傾向にあるため、次のような立地にあると価値が高くなります。
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都心部なら駅から徒歩5分以内、郊外なら徒歩10分以内
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生活必需品を買える施設が周りに揃っている
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鉄道に乗車してすぐに大規模オフィス街に到着できる
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最寄りの駅が主要ターミナル駅 など
立地の良さは築年数とリンクしていないため、マンションが古くなっても価値が下がりにくくなります。資産としてマンションを保有するのであれば、立地の良さを重要視するといいでしょう。
角部屋
角部屋は希少性が高く、マンションが高く売れる要因になります。
何百戸もある大規模マンションでも、角部屋は決して多くありません。角部屋は存在自体が珍しいものであり、それだけで価値があります。
また、角部屋は中住戸に比べて窓の数が多い傾向にあり、日当たりや風通しがいいのも特徴です。日当たりや風通しの良さは、生活満足度の向上に影響します。
角部屋は希少性をもつだけでなく生活満足度の向上に直結するため、資産価値が下がりにくい部屋といえます。
高層階
高い場所に住めるのはマンション独自の特性であり、一戸建てにはない価値です。
高層階になればなるほど希少性も高くなり、価値が高くなっていきます。また、高層階になるほど日差しを遮る障害物が減っていき、日当たりを確保しやすくなります。将来、マンションの目の前に建物が建築されたとしても、高層階であれば影響を受けにくく資産価値の維持が可能です。
角部屋と同じく、高層階も希少性と生活満足度の向上の維持が期待できるため、マンションの価値が落ちにくい要因となります。
ブランド力がある
ブランド力があるマンションは、価値が上がるケースもあります。
マンションにおけるブランド力とは、次のようなケースを指します。
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高級住宅地に存在している
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大手マンション建築会社が建築したハイグレードマンションである
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デザイン性や設備の質が飛び抜けて高い など
ブランド力が高いのは、入居希望者が多い証拠です。一般的に高級住宅地と呼ばれる地域にあるマンションや、デザイン性が高い「ヴィンテージマンション」は買い手の需要が高く価値も上がります。
また、住友不動産や三井不動産など大手マンション建築会社が建築した、その会社のハイグレードマンションは価格が下がりにくくなります。大手マンション建築会社のマンションは建物や、設備の質が高い傾向にあるからです。
ファミリー向けの間取り
ファミリー向けの間取りのマンションは、高く売れる可能性があります。
ファミリータイプの中で、とくに資産価値が下がりにくいのは「3LDK」です。3LDKは子どもの数が多くても居住できますし、荷物の多いカップルでも居住できる間取りです。2LDKだと大人数では居住できまませんし、4LDKだとカップルには広すぎます。
不動産は需要の多さが価値につながるため、使い勝手のいい間取りは値段が下がりにくくなるわけです。とくに4LDKは一戸建てと競合する可能性があり、意外と価値が下がってしまう間取りといえます。
リフォームしたばかり
リフォームしたばかりの状態であれば、マンションが高く売れるでしょう。
室内や設備の状態は、マンションの価値に大きな影響を与えます。リフォームしたばかりであれば、室内や設備の状態がいいため、高く売れるケースがあります。
また、室内の状況がいいと雰囲気も良くなり、早期売却にもつながるでしょう。買い手は室内の雰囲気の良さを購入判断のひとつにするからです。リフォームした直後に売却しなければならなくなった場合、むしろ高く売るチャンスにもなります。
競合が少ない
売却する際に、競合となるマンションが少なければ高く売れる可能性があります。
買い手はマンションを購入するときに、多くの物件を比較し検討します。自分が売却するマンションと似た物件が多い場合、買い手には多くの選択肢がある状態となり、いい条件のものから購入するかどうかを判断していくでしょう。
買い手にとっていい条件とは、安く希望の条件を満たすマンションを購入することです。競合が多いほど高い値付けをしにくくなり、マンションの価格が下がってしまいます。
いくらいい条件を満たしていたとしても、競合が多いときに売り出すと価格が下がると考えておきましょう。
賃貸需要が高い地域
マンションの立地が賃貸需要の高い地域にある場合、投資物件として高く売れるケースもあります。
賃貸需要が高い地域とは、主に次のような場所です。
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駅から徒歩すぐの場所であり近ければ近いほどいい
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繁華街やオフィス街から近い
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大規模な大学が近い など
投資物件として見込めるマンションであれば、住まいとして購入する人だけでなく投資家も買い手の対象となります。買い手の幅が広くなれば、高く買ってくれる人が見つかる可能性も高まるでしょう。
管理がしっかりしている
管理がしっかりしているマンションは、建物の寿命が延びて高く売れる可能性があります。
建物は定期的に補修しなければ、すぐに傷んでしまいますが、長期間にわたって必要な修繕をおこなえば、建物の寿命は延びていきます。資産の状態が長く良好なまま維持できれば、価値も維持されるため高くマンションを売却できるでしょう。
また、管理がしっかりしていると、マンションの外観や敷地の雰囲気が良くなります。入居者は雰囲気が良くなれば退去しにくくなり、雰囲気が悪くなると質のいい入居者は退去してしまいます。ゴミが散乱している、設備が壊れたままになっているなどが続くと、空き家が増えてしまって管理に必要なお金が貯まりません。
しかし、入居し続けてくれる人が多ければ、管理に必要なお金が貯まりやすくなって定期的な修繕の実施ができるようになります。
マンションを高く売る5つのポイント
マンションを高く売るポイントは、次の5つのポイントです。
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売却の相場を自分で調べる
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内覧にきちんと対応する
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アピールポイントを整理する
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余裕あるスケジュールで売却する
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複数の不動産会社の査定を受ける
高く売れるマンションの特徴をもっていたとしても、買った値段で売るのはハードルが高いといえます。より高額で売買したいなら、マンションを高く売るポイントも押さえておきましょう。
売却の相場を自分で調べる
マンションを高く売りたいのであれば、自分で売却の相場を調べておきましょう。
不動産を売却する際には、不動産会社の査定を受けます。しかし、不動産会社の査定が正しいかどうか判断基準をもっていなければ、相場よりも安い査定金額を信じ込んでしまうケースもあるでしょう。
査定金額が正しいかどうか判断できるようにするには、国土交通省が運営する「不動産情報ライブラリ」を利用します。不動産情報ライブラリには、不動産価格の算出のもととなる「公示価格」や成約事例のデータが掲載されています。売却するマンションと似たような事例を探せば、おおよその売却相場が把握できるはずです。
調査した相場を基準として、査定金額を比較し、信頼できる不動産会社に売却の依頼をしましょう。
内覧にきちんと対応する
マンション売却中に内覧の希望が入った場合、きちんと対応しましょう。
内覧は、買い手がマンションの敷地や室内、設備などを確認し、購入するかどうか決める大事な事柄です。室内を清掃、整理整頓したり、買い手からの質問にきちんと答えたりすれば、買い手の購入意欲を高めたうえに不安も解消できます。
また、室内の汚れや設備の不具合がある場合、内覧時に正直と買い手に話しましょう。事前にマイナス面を伝えておけばトラブルが防止でき、信頼できる売主と思ってもらえるケースもあります。
アピールポイントを整理する
不動産会社からの査定を受ける前には、マンションのアピールポイントを整理しておきましょう。
マンションを売却する際には、不動産会社が買い手に対して物件をアピールします。しかし、不動産会社の担当者によっては、マンションのアピールポイントを理解しきれていないケースがあります。査定時にアピールポイントを担当者に伝えておけば、買い手にきちんとアピールしてくれるでしょう。
また、アピールポイントの整理は、入居者しかわからない事項を不動産会社に伝えるときにも有用です。マンションの良さの中には、住人しかわからないものがあります。不動産会社では把握できない事項をあらかじめ伝えれば、査定額アップや早期売却につながるケースもあるでしょう。
余裕あるスケジュールで売却する
余裕あるスケジュールをもって売却すれば、焦って相場よりも安く売ってしまうのを防止できます。
東日本不動産流通機構の「首都圏不動産流通市場の動向(2023年)」によると、マンションを売り出してから売買契約の締結までには約80日かかるとされています。売り出す前の準備に必要な時間を考えると、3ヵ月~4ヵ月程度かかるでしょう。
マンションを売るには時間がかかるにも関わらず、すぐに売れると勘違いしているとなかなか売れないと焦ってしまう人もいます。焦ってしまうと、買い手からの大幅な値段交渉を受けてしまい、高く売るどころか損してしまいます。
マンションをすぐに売却する必要ないなら、余裕をもった売却スケジュールを組んでおきましょう。
複数の不動産会社の査定を受ける
複数社から査定を受ければ、正確な査定金額と算出した根拠を比較でき、適切な販売価格で市場に売り出せます。
マンションを高く売るコツの中でも重要なのは、相場よりやや高めの金額で売り出すことです。相場よりも高い金額でも、多少の高さであれば売却が可能だからです。しかし、相場よりもやや高く売り出すには、正確な相場を理解していなければなりません。
正確なマンション相場を理解するには、不動産会社の査定の内容を比較するといいでしょう。1社の査定では比較できないため、3社程度の査定を受けるのがコツです。
2024年の市況は?今すぐ売却するとどうなる?
2024年の不動産市況は「三極化」していくでしょう。
国土交通省の「不動産価格指数(令和6年1月・令和5年第4四半期分)」によると、2010年から2023年までは不動産の価値が右肩上がりになっているとされています。
しかし、2024年以降は右肩上がりに進むかどうか、不透明になってきています。マンション価格の上昇に向かい風となる大きな要因が「ローン金利の上昇」です。日本銀行が金利政策や長期国債の金利に言及してから、固定金利を中心に金利が上昇しています。
金利が上昇してしまうと、ローンを借りての不動産を購入しにくくなり需要が低下してしまいます。結果、需要の高い都心部のマンション価値は上がり続けるものの、価値の上昇が止まったり、下がったりする地域が出てくると考えるのが妥当でしょう。
マンションの価値が止まったり、下がったりするおそれがある地域のマンションであれば売却したほうがいいかもしれません。逆に上昇がまだまだ見込める地域のマンションであれば、まだ売却しないほうがいいと考えられます。
安くなりやすいマンションの特徴
安くなりやすいマンションの特徴は、次のとおりです。
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管理費や修繕積立金が高い
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地域の需要にあっていない間取り
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築年数が古く修繕していない
高く売れるマンションには特徴があるように、安くなりやすいマンションにも特徴があります。安くなりやすい特徴をもっているマンションを売却する場合は、きちんと対策してから売ると価格の減少幅が少なくなります。
管理費や修繕積立金が高い
管理費や修繕積立金が高いマンションは、買い手から敬遠される傾向があります。
買い手は管理費・修繕積立金を払いつつ、住宅ローンを返済したり固定資産税や都市計画税を納税したりしなければなりません。管理費・修繕積立金が高いと相当な負担となり、生活に影響してしまいます。買い手はマンションを購入する前に、管理費・修繕積立金とほかの支払いを合計した金額を調べており、少しでも生活が苦しくなると感じたら購入を見送ってしまいます。
そのため、管理費・修繕積立金が高いマンションは、内覧に至る前に購入しないと判断されてしまうわけです。管理費・修繕積立金が高いマンションは、安くなる可能性があるだけでなく、売却に相当時間がかかると考えておかなければなりません。
地域の需要にあっていない間取り
地域の需要にあっていない間取りだと、買い手の数が激減してしまって売値が下がってします。
郊外の1LDKや、繁華街の中にある4LDKは地域の需要にあっていない間取りといえます。建築された当時は地域に需要のあった間取りだったとしても、リノベーションして間取りを変更すると需要とあわなくなるケースもあるため注意しなければなりません。
たとえば、郊外の4LDKマンションをワンルームに変更するといったケースです。リノベーションして室内がキレイになれば価値は上がるものの、地域にあっていない間取りにしてしまうと一気に価値が落ちると考えておく必要があります。
築年数が古く修繕していない
築年数が古く、修繕しないままのマンションは価値が下がります。
室内や設備を修繕しないまま利用していると、汚れや機能低下が発生します。状態が悪いまま放置すると、買い手にとってマイナスな面が多くなるため、なかなか売れずに価値が下がってしまうかもしれません。
また、修繕しなくても状態がいいケースもあるでしょう。しかし、古い設備は機能性が低く、キレイでもあまり買い手に評価してもらえません。古いものは悪いと判断されるケースが多いため、定期的にリフォームをおこないながら資産価値を維持するのがコツです。
マンションが買った値段より高く売れたときにかかる税金
高く売れるマンションの中には、買ったときよりも高く売れるケースもあります。
買ったときよりも高く売れた場合、「譲渡所得税」が課税されるおそれもあるため注意しなければなりません。譲渡所得税は高額になるケースもあるため、計算方法や税額を少なくする方法などの基礎知識を得ておきましょう。
ここからは、譲渡所得税の基礎知識について解説します。
譲渡所得税の計算方法と税率
譲渡所得税を計算するには、まず次の計算式で「課税譲渡所得金額」を計算します。
収入金額 -( 取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額 = 課税譲渡所得金額 |
引用:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
各単語の意味は、次のとおりです。
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収入金額:不動産の売買金額
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取得費:不動産を購入したときの購入代金と諸費用の合計金額
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譲渡費用:不動産を売却したときの諸費用
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特別控除額:居住用3,000万円特別控除などの特例で引ける金額
課税譲渡所得金額が計算できたら、譲渡所得税を計算します。
課税譲渡所得金額 × 税率 = 譲渡所得税 |
なお、税率は売却する不動産の所有期間で異なります。不動産の所有期間が売却する年の1月1日現在、5年以下なら「短期譲渡所得:税率30%」、5年を超えていれば「長期譲渡所得:税率15%」が適用されます。
譲渡所得税を少なくする方法
譲渡所得税を少なくするには、次のような特例を利用します。
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居住用3,000万円控除
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相続不動産3,000万円控除
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10年所有超軽減税率 など
たとえば、居住用3,000万円控除が利用できれば、課税譲渡所得金額から3,000万円を差し引けます。
なお、特例の利用にはさまざまな条件があります。各特例で条件が異なるため、不動産会社や税理士に特例が利用できるか確認しておきましょう。
まとめ
高く売れるマンションの条件を多く満たしている場合、買った値段で売れるケースもあります。
ただし多くの場合、高く売れる条件を満たしていてもあくまでも資産価値が下がりにくくなる程度だと考えておいたほうがいいでしょう。また、マンションが高く売れる条件を満たしていたとしても、高く売るコツを理解していないと、満足く価格にならないおそれもあります。
マンションを売るときには、高く売るコツをきちんと理解しておきしましょう。マンションは高額な商品ですから、少しでも売却価格が上がるよう準備しておくことが大切です。