マイホームの売却を検討している中で「戸建て売却は難しい」という言葉を聞いたことがある人がいるかもしれません。

実際に、戸建てはマンションに比べて売却が難しいと言われており、その理由を理解した上で適切な対策を立てることが重要です。

この記事では、戸建て売却が難しいと言われる理由や、売却が難しい戸建ての特徴を紹介します。これから戸建ての売却を検討している人や、現在売却活動をしていて中々成約までたどり着かないという人は、この記事を最後まで読んで参考にしてください。

戸建て売却が難しいと言われる4つの理由

不動産売却の中でも戸建ての売却が難しいとされている理由には、次の4つが考えられます。

  • 資産価値が低下するスピードが早い

  • 日本人は新築戸建てを好む傾向にある

  • 新築に比べて住宅ローンが不利になる

  • 耐震性を考慮してマンションを選ぶ人が多い

戸建て売却が難しい理由を詳しく解説します。

資産価値が低下するスピードが早い

戸建て売却が難しいと言われる1つ目の理由は、戸建てはマンションに比べて資産価値が低下するスピードが早い点にあります。「法定耐用年数」を比較してみると、資産価値が0になるまでの期間は、鉄筋コンクリート造のマンションが47年、木造の戸建てが22年です。法定耐用年数とは、国が定めた税法上固定資産として扱える年数のことです。

また、国土交通省が公表している中古住宅のグラフを見ると、木造戸建て住宅は築10年で資産価値が約半分、築20年で10%程度まで資産価値が下がっていることがわかります。

引用:国土交通省「中古住宅流通、リフォーム 市場の現状」

このように、木造の戸建ては資産価値の低下が早く、築年数の経過による価格減少が著しいことから、戸建て売却は難しいと言われています。

日本人は新築戸建てを好む傾向にある

日本人は、中古戸建てより新築戸建てを好む傾向にあることも、戸建て売却が難しいと言われる理由です。「新築信仰」という言葉があるとおり、日本人が住宅を購入する際にまず考えるのは新築戸建てというケースが多いのです。

新築戸建てが人気の理由として、以下が挙げられます。

  • 中古戸建ては建物の状況が分かりづらく、不具合がある可能性がある

  • 新築戸建てのほうが税制上優遇されている

  • 時代遅れの間取りの場合がある

  • 新築戸建てのほうが耐震性能や設備性能に優れている

中にはレトロな雰囲気の中古戸建てを好む人もいますが、少数派と言えます。新築戸建てのほうが安心して新生活を始められるという点が、日本人が新築戸建てを好む理由だと考えられます。

新築のほうが住宅ローンに有利

戸建て売却が難しいと言われる3つ目の理由として、新築戸建てのほうが住宅ローンに有利だという点が考えられます。金融機関が融資を行う際、購入する物件を担保として設定するため、物件の担保評価を審査します。担保評価=資産価値となるケースが多いので、資産価値が高い新築戸建てのほうが、融資可能金額が増えたり、借入期間が伸びたりするのです。

合わせて、住宅ローン控除にも新築戸建てのほうが有利だという側面があります。以下は住宅ローン控除の控除期間と借入限度額、最大控除額を表した表です。(2024年6月現在)

【新築戸建てにおける住宅ローン控除】

住宅の種類

控除期間

2024〜2025年入居

借入限度額

(最大控除額)

長期優良住宅

認定住宅

13年間

4,500万円

(409.5万円)

ZEH住宅

13年間

3,500万円

(318.5万円)

省エネ住宅

13年間

3,000万円

(273万円)

その他の住宅

13年間

※0円

※2023年に建築確認を受け、2024年~2025年に入居した場合は、借入限度額2000万・借入期間10年間の対象です。

【中古戸建てにおける住宅ローン控除】

住宅の種類

控除期間

2022〜2025年入居

借入限度額

(最大控除額)

長期優良住宅

認定住宅

ZEH住宅

省エネ住宅

10年間

3,000万円

(210万円)

その他の住宅

10年間

2,000万円

(140万円)

上記の表からも、新築戸建てのほうが控除期間や控除額が大きいことがわかります。

たとえば、長期優良住宅の新築戸建てと中古戸建てがあり、どちらも4,500万円の住宅ローンで購入できるとしましょう。その場合、新築戸建ては13年間で最大409.5万円の控除を受けられますが、中古戸建てだと10年間で最大210万円しか控除が受けられないのです。※実際に還付される金額は納めている所得税や住民税によって異なります。

住宅ローン控除の差からも、住宅ローンを組んで戸建てを購入する際に新築戸建てを選ぶ人が増えているのです。

耐震性の高いマンションを選ぶ人が多い

戸建てより耐震性が高い鉄筋コンクリート造のマンションを選ぶ人が多いのも、戸建て売却が難しいと言われる理由の1つです。とくに、耐震基準改正前の建物である1981年以前に建築された中古戸建ては、耐震性の理由から敬遠されることが多いのです。

1981年の建築基準法が改正され、それ以降に建築された建築基準法を満たしている建物は、震度6強~震度7でも倒壊しにくい構造になっています。しかし、一般的なイメージとして、木より鉄のほうが強いイメージがあるため、木造よりも鉄筋コンクリート造の建物を選ぶ傾向にあるのです。

木は、鉄にないしなやかさがあり軽量であるため、揺れ自体が少ない特徴がありますが、そのイメージがまだまだ浸透していない実情があると言えます。

売却が難しい戸建ての特徴5点

売却しにくい戸建てには理由があります。

  • 立地条件が悪い戸建て

  • 築年数が古い戸建て

  • 再建築不可の戸建て

  • 個性的でこだわりが強すぎる戸建て

  • 土地の形状が特殊な戸建て

ここでは、上記の特徴にスポットを当てて解説します。

立地条件が悪い戸建て

売れにくい戸建ての1つ目の特徴は、立地が悪いことです。立地が悪い戸建ては買い手から敬遠される傾向にあり、売却に時間がかかることが多いのです。アクセスが悪い要因として、主に以下が挙げられます。

  • 最寄駅から遠い

  • スーパーなどの商業施設が近くにない

  • 学校まで遠い

  • 大通りに面していて騒音が気になる

立地により不動産の価値は大きく左右されます。とくに、都心部など最寄駅からの距離が近い物件ほど人気が高いため、駅からの距離が遠い戸建ては売却が難しくなるケースが多くなるでしょう。

築年数が古い戸建て

築年数が古い戸建ても売却が難しくなります。1981年以前に建てられた「旧耐震基準」の建物や、設備や外壁などの劣化が進んでいる建物は、購入後に多くの手入れを行う必要があるため、買い手に避けられやすくなってしまいます。

また、築年数が古い戸建ては今の生活とマッチしていない間取りが多いことも特徴です。たとえば、「リビングが狭い」「手前の部屋を経由しないと奥の部屋にたどり着けない」「和室が多い」など、築年数が古い戸建てには生活しにくいと感じる間取りが多いため、売りにくいと言われています。

ただし、古い戸建ての雰囲気が好きで、敢えて築年数が古い戸建てを選ぶ人もいます。築年数が古い=売れないというわけではないので、売却を諦める必要はありません。

再建築不可の戸建て

売却が難しい戸建ての特徴として、再建築不可の場所に建っているケースが挙げられます。再建築不可とは、建築基準法上の接道義務を果たしていないため、建て替えることができないことです。

建築基準法上では、幅員4m以上の道路に土地が2m以上接していなければ、建物を建築することができません。しかし、法律が誕生する前に建てられた建物の中には、接道義務を満たしていない戸建てが存在するのです。

再建築不可の戸建てが売却しにくい理由として、以下が挙げられます。

  • 住宅ローンが組めないケースが多い

  • ライフラインが整っていないことがある

  • 家を取り壊すと再建築できない

とくに、住宅ローンが組めない点が大きなデメリットです。築年数が古く物件価格が安いとは言え、全額自己資金で購入できる人は少ないでしょう。このような理由から、再建築不可の戸建ては売却がしにくいと言えます。

個性的でこだわりが強すぎる戸建て

売主のこだわりが詰まった個性的な戸建ても売れにくい傾向にあります。物件のデザインや間取りが買い手の好みに合わないと購入まで至らないのです。

たとえば、二世帯住宅で特殊な間取りの場合は、二世帯同居を検討している買い手に限定されてしまうでしょう。また、中二階やステップフロアがある戸建てはバリアフリーを重視している層に避けられます。

物件が個性的でも、築年数が古ければリフォームやリノベーションを前提に購入を検討できますが、築浅戸建ての場合はそのまま住むことを想定するので、敬遠されやすくなります。建築の際にこだわりをたくさん詰め込むと、その分売りにくくなる可能性があることを理解しておきましょう。

土地の形状が特殊な戸建て

建てられている土地の形状がいびつであったり、狭すぎたりする戸建ても売却しにくいとされています。一般的に、正方形や長方形のような整形地のほうが人気が高いのです。

土地の形状がいびつだと、特殊な間取りの配置になってしまい生活しにくくなります。また、土地が狭すぎると十分な広さの建物が建てられず満足度が下がってしまうでしょう。道路に接している出入り口が狭く奥にまとまった敷地がある「旗竿地」の場合は、日当たりが悪くなるケースが多いことからも買い手からの人気は高くありません。

このように、土地の形が特殊な戸建ては活用方法が限られるため、売却がしにくい物件の1つだと言えます。

戸建て売却が難しい場合の対策4選

戸建ての売却に困った場合は、次の4つの対策が有効です。

  • 戸建て販売に強い不動産会社に依頼する

  • 建物を解体して更地にする

  • ホームステージングを行う

  • 不動産買取を検討する

戸建て売却がうまくいかず悩んでいる人は、ここからの内容を参考にしてください。

戸建て販売に強い不動産会社に依頼する

1つ目の対策として、戸建て販売に強い不動産会社に売却を依頼することが挙げられます。不動産会社には得意・不得意分野があるため、戸建て販売の実績が多くある会社であれば、最適の販売方法を提案してもらえるのです。

戸建て販売に強い不動産会社は、戸建てを探している買い手の情報を豊富に持っているケースがあります。また、戸建てに適したリフォームを積極的に提案してくれる会社もあるため、このような強みを生かした不動産会社へ依頼することをおすすめします。

戸建て販売に強い不動産会社を見極めるためには、販売実績をホームページで確認したり、ホームページの物件情報に戸建てが多く掲載されているかをチェックしたりすると良いでしょう。

建物を解体して更地にする

築年数が古い戸建ての場合、建物を取り壊して更地の状態で売却することも検討しましょう。更地にすることで、新築用地を探している買い手の目にも留まるようになります。また、老朽化した家を放置しておくと、火災の原因になったり屋根が飛んで近隣に迷惑がかかったりすることがあります。

更地にして売却する際の注意点としては、売却前に解体費がかかってしまうことが挙げられます。建物によっては解体費に100万円以上がかかることもあるため、資金計画を十分に検討した上で行いましょう。

また、更地にすることで固定資産税が高くなるケースがあります。建物がある状態だと軽減措置が適用されますが、更地にすると適用されないことがあるため、費用負担が大きくなるのを避けたい人には不向きな方法だと言えます。

ホームステージングを行う

戸建ての売却がうまく進まない場合、ホームステージングを行い、買い手に暮らしを想像してもらう方法があります。ホームステージングとは、販売中の物件に家具や小物、照明などを配置してモデルルームのように演出するサービスです。

ホームステージングを行うと、インターネットやチラシ広告の見栄えが良くなり内覧希望者が増える効果があります。また、家具を配置することで購入後の生活がイメージでき、早期売却につながるでしょう。

ホームステージングを行いたい場合は、売却を依頼している不動産会社に相談するか、ホームステージングの専門業者に依頼しましょう。ホームステージングには数万円の費用がかかりますが、物件の印象をアップさせて早期売却を実現させたい人は検討してみてはいかがでしょうか。

不動産買取を検討する

戸建て売却が難しい場合は、不動産会社による買取を検討するのも1つの方法です。買取とは不動産会社に直接買い取ってもらう方法で、メリットは金額に合意すれば早くて1週間程度で現金化できることです。一方、買取価格は相場の7〜8割程度になることがほとんどのため、少しでも高く売りたいと考えている人には不向きな方法と言えます。

戸建ての売却期限が決まっている場合、期限までは第三者に売却する仲介にチャレンジし、期限内に売却できなかったときに買取をしてもらう「買取保証付き仲介」を行う方法もあります。戸建ての立地や状況により買取してもらえないケースもありますが、多少金額が下がってでも不動産を処分したい場合は、不動産会社に買取を相談してみましょう。

まとめ

この記事では、戸建て売却が難しいと言われている理由や、売却が難しい場合の対策について解説しました。戸建て売却が難しいのは、マンションに比べて資産価値の減少が早いことや、日本人が新築戸建てを好む傾向にあるという理由が挙げられます。また、戸建て売却が難しい場合は、戸建て販売に強い不動産会社に依頼したり、解体して更地の状態で販売活動をしたりすると良いでしょう。

戸建ては、売却のタイミングや販売方法を間違うと売れ残る可能性が高い不動産です。とくに、立地条件や築年数の条件が悪い戸建ての場合は、不動産会社のアドバイスをよく聞くだけでなく、自らも売却前に失敗しないための注意点をしっかりと確認することが重要です。