「初めて不動産を売却するけど、何から始めていいかわからない」
「どんなことに注意すればいいかわからない」
「このまま進めてしまうと失敗しそうで不安」
このような悩みに答えていきます。
不動産売却は売却の流れに応じた注意すべきポイントがいくつもあります。中には気をつけないと売却活動そのものがストップしてしまうようなものもあるため、不動産売却を始める前に注意点を把握しておくことはとても重要です。
そこでこの記事では不動産売却の流れに合わせて注意すべきポイントを解説します。
ぜひ最後までお読みください。
この記事の目次
まずは不動産売却の全体の流れを把握しよう
不動産売却の注意点をより具体的に把握するために取引全体の流れを押さえておきましょう。
不動産売却は、大きく3つのステップに分けられます。
ステップ |
内容 |
期間の目安 |
1. 売却前の情報収集・不動産会社選び |
複数の不動産会社を比較検討し、最適な会社を選ぶ |
約1ヵ月 |
2. 売却活動・買い手探し〜売買契約 |
内覧時の準備や、不動産会社による広告出稿・営業活動 |
約3〜7ヵ月 |
3. 引渡し・残金受け取り |
物件の引渡し、残金の受け取り、確定申告 |
契約締結から約2ヵ月 |
不動産売却のステップと必要な期間の目安
売主は各ステップで求められる準備を怠らず、不動産会社と連携して進める必要があります。専門家との協力を通じて、円滑な不動産売却を目指しましょう。
1.不動産売却ををする前の注意点
不動産を売却する前には、下記の点について注意が必要です。
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物件の価格相場を把握しておく
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住宅ローンが完済できるか確認する
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不動産の名義人が売主になっているか確認する
これらの確認を怠ってしまうと、スムーズに売却が進まなかったり、そもそも売却自体できなかったりなどのケースに陥る可能性があります。
それぞれについて解説しますので、必ず押さえておきましょう。
物件の価格相場を把握しておく
物件の価格相場をあらかじめ把握しておくことは、売却計画を立てやすくし、スムーズに売却を進めるために重要です。
相場の確認方法にはいくつか手段があり、それぞれ特徴があります。シーンに合わせて組み合わせたり、使い分けたりするのがおすすめです。
方法 |
特徴 |
メリット |
デメリット |
不動産会社への査定依頼 |
実際の取引に基づく予想売却価格の提示 |
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不動産ポータルサイト |
多数の不動産会社の物件情報を一括掲載 |
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レインズマーケットインフォメーション |
不動産流通機構運営の取引価格情報サイト |
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土地総合情報システム |
国土交通省運営の取引価格情報サイト |
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それぞれの特徴について、もう少し詳しく見てみましょう。
不動産会社へ査定依頼する
不動産会社へ査定依頼することで、実際の取引から売却物件の予想売却価格を提示してもらえます。ただし、不動産会社によっては相場より高い、低い価格で提示する場合があるので、複数社に査定依頼をして相場を把握するのがおすすめです。
なお査定の方法には机上査定と訪問査定の2種類があります。机上査定と訪問査定の概要と特徴は下記表の通りです。
査定方法 |
概要 |
メリット |
デメリット |
机上査定 |
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訪問査定 |
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表の通り、訪問査定の方がより詳しく、正確に査定を行えます。売却を具体的に検討している場合は訪問査定で査定してもらうと良いでしょう。
不動産ポータルサイト
不動産ポータルサイトは、多数の不動産会社が物件情報を一括掲載しているため、膨大な数の物件が閲覧でき、詳細な条件検索が可能です。
不動産を購入する人向けのサービスですが、その膨大な物件データから不動産の価格相場を把握するのに便利です。ただし、掲載されているのはあくまで販売中の物件であるため、実際の成約価格が把握できないデメリットもあります。
レインズマーケットインフォメーション
レインズマーケットインフォメーションは、不動産流通機構が運営する不動産取引価格情報サイトで、実際の成約価格情報を提供しています。一般の方も利用可能な公開サイトです。
不動産ポータルサイトと同様に立地や築年数、部屋数などの物件の詳細条件で絞り込みが可能です。また成約時期でも検索が可能なため、最新の成約状況をチェックできます。
ただし、成約情報が少ないなどの理由で地域によっては検索できない場合があります。
土地総合情報システム
土地総合情報システムは、国土交通省が運営する不動産の取引価格情報を提供するWebサイトです。不動産会社などへのアンケート結果に基づいた実際の成約事例データを集積しており、一般の不動産ポータルサイトでは調べられない実際の取引価格を知ることができます。
ただし、アンケート回答は任意のため、データ量が少なく、地域によっては取引事例が表示されない場合もあります。
住宅ローンが完済できるか確認する
住宅ローンが残っている状態で不動産を売却する際、売却代金で住宅ローンの残債を完済できるかどうかを確認することは非常に重要です。
原則として、不動産売却時には残りの住宅ローンを一括で返済し、抵当権を抹消しなければなりません。残債が残ったまま住宅を売却されてしまうと、金融機関が抵当権の行使を行えず、債権の回収ができなくなるためです。
もし売却代金だけでは住宅ローンの残債が完済できない場合、貯金などを追加して一括返済する必要があります。それでも完済できない場合は、住み替えローンなどの対処法を検討しなければなりません。
不動産を売却する際は、売却代金と貯金の合計額で住宅ローンの残債が完済できるかどうかを事前に確認し、資金計画を綿密に立てることが極めて重要です。
不動産の名義人=売主でないと売却できない
不動産を売却する際、原則として、不動産の名義人自身が売主となって手続きを行う必要があります。名義人以外の人が勝手に売却することはできません。また、共有名義の場合は、すべての共有者の合意が必要であり、一人でも反対があれば売却することはできません。
ただし、相続などで名義人が亡くなった場合は、相続人が名義を引き継いで売却することができます。また、名義人から委任を受けた代理人が売却手続きを行うことも可能です。共有名義の場合、自分の持分のみを第三者に売却することはできますが、不動産全体を売却するには他の共有者の同意が必要となります。
したがって、不動産を売却するには、名義人または正当な権利者の関与が欠かせません。名義関係を確認し、必要な同意を得ることが重要なのです。
2.売却方法・業者を選ぶ際の注意点
不動産を売却する際、いくつかの方法があります。それぞれの手段について解説しましょう。
一般的には不動産会社と仲介の契約を結んで売却活動を行う
不動産を売却する際、一般的には不動産会社と仲介契約を結び、売却活動を行うことがほとんどです。理由は専門的な知識を有した不動産会社が当事者の間に入ることでトラブルを防止し、公正中立に取引を進められるためです。また不動産会社の豊富な顧客ネットワークや情報網を活用することで、個人が探す場合より高値での売却が可能になります。
仲介業務の大まかな流れは以下の通りです。
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売主は不動産仲介会社と媒介契約を締結
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仲介会社が物件を宣伝し、買主を募集
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購入検討者の問い合わせに対応し、内見を実施
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買主が決まれば、売買契約の締結を仲介する
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売買が成立すれば、仲介手数料を受け取る
仲介の契約方法は3種類存在する
不動産を売却する際の仲介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。
契約方法 |
契約可能業者数 |
自分で買主探し |
仲介手数料発生 |
レインズへの登録 |
専属専任媒介契約 |
1社のみ |
不可 |
必ず発生 |
契約翌日から5営業日以内に義務付け |
専任媒介契約 |
1社のみ |
可能だが手数料発生 |
必ず発生 |
契約翌日から7営業日以内に義務付け |
一般媒介契約 |
複数社可 |
可能で手数料不要 |
業者が売却に関与した場合のみ発生 |
任意 |
表の内容の通り、契約方法によって売主の自由度や仲介手数料の発生条件が変わるため、自分の希望や状況に合った契約方法を選ぶことが重要です。仲介手数料には上限が定められており、成約価格に応じて計算方法が変わります。400万円以上の取引の場合は、「成約価格×3%+6万円(+消費税)」という簡易計算式で上限額が求められます。多くの不動産取引額は400万円以上をこえるため、上記簡易計算で上限額を算定するのが一般的です。
なお専属媒介契約や専属専任媒介契約は売買契約が成立した際に仲介手数料が必ず発生するため、不動産会社としても広告が出しやすく、真剣に取り組んでもらえる傾向があります。
不動産会社を選ぶ際は査定価格と担当者との相性が重要
不動産会社を選ぶ際は査定価格と担当者との相性が重要です。
査定価格が高すぎると買主がつかず、売却期間が長期化する可能性があります。逆に低すぎると、売主が損をすることもあるでしょう。
また、不動産売却は売却完了まで付き合いになるため、担当者との人柄や相性が悪いと不安やストレスを感じることがあります。質問や依頼へのレスポンスが遅い、対応が適当な担当者は避けるべきです。
個人間での売買も可能だがトラブルに繋がりやすいため注意
先にも述べたとおり、不動産売買では、不動産会社の宅地建物取引士(宅建士)による仲介取引が一般的です。もちろん自ら売主で売却する際は、仲介を通さずに個人間での売却は問題ありません。しかし、不動産取引に関する専門知識を把握していない個人間では、どちらか一方が不利を被る契約になっていても気づかずに取引を進めてしまう恐れもあります。
個人間取引の場合は上記のようなリスクをしっかり把握した上で、慎重に取引を進めましょう。
3.不動産の売り出し時における注意点
不動産を売り出す際には、売却時期や物件の状態、不具合の開示など、売主が注意すべきポイントは多岐にわたります。
このタイミングでの注意点を怠ると損をしてしまったり、引渡し後のトラブルに発展してしまったりなどの恐れがあるため、ポイントをしっかり押さえておくことが大切です。
ここでは、不動産売却を成功に導くための、売り出し時の注意点について詳しく解説します。売却時期の選択から物件の準備、不具合の開示まで、売主が押さえておくべきポイントを確認しましょう。
時期によって売れ行きが変わる
不動産の売れ行きには、時期による違いがあります。一般的に、以下のような傾向があると言われています。
時期 |
月 |
売れ行きの傾向 |
背景 |
春 |
2月〜4月 |
良い |
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夏 |
7月〜8月 |
悪い |
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秋 |
9月〜11月 |
良い |
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冬 |
12月〜1月 |
悪い |
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この表は、不動産の売れ行きと季節の関係性を示しています。春の3月は最も取引が活発な時期です。秋の時期も春ほどではありませんが取引量は増加します。一方、夏と冬は売れ行きが悪くなる傾向にあります。売主は、この季節変動を考慮して、売却時期を戦略的に選ぶことが重要です。
ただ、売れ行きが良い時期に合わせて売り出しを始めてしまうと、すでに買い手が目星をつけている可能性があります。時期を意識しつつ、早めに売却活動を始めると良いでしょう。
物件は綺麗な状態を保つ
売却活動中は、購入検討者から内見の依頼があります。内見時の印象を良くすると、購入希望者のイメージも良くなり、成約につながりやすくなります。
そのためには、内外装の汚れを落とし、きれいな状態を保つことが大切です。たとえば普段使用しない家具や雑貨品はあらかじめ処分し、すっきりとした空間を演出しましょう。とくに玄関やリビング、キッチン、浴室など重要な部分は念入りに清掃・片づけを行うと印象が良くなります。また庭やベランダなどがあれば清掃や植栽の手入れも行うなど、見た目の印象を良くすることが重要です。
売却活動中は、できる限り生活感をなくすように心がけ、きれいな状態を保つことで、購入検討者の心象をより良いものにできるでしょう。
過度なリフォームは不要
印象を良くするためにリフォームを検討する人もいますが、原則として大規模なリフォームは不要です。
その理由は、中古物件購入者の中にはリフォーム前提で購入を検討する人がいるからです。もし少しでも印象を良くしたいという場合は、電球や照明器具の交換、カーテンの新調で明るく開放的な空間を演出するなど、簡易的に模様替えを行うと良いでしょう。また、必要最小限の家具とインテリア小物を配置し、すっきりとした空間を作るのも効果的です。
このように過度なリフォームは、かえって購入検討者の希望とずれてしまう可能性があるため、注意が必要です。
不具合は嘘偽りなく伝える
売却時に不具合を把握し、伝えることが重要な理由は以下の通りです。
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売主の責任を減らすため
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引渡し後のトラブルを防止するため
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適正な価格設定ができるため
不動産にはさまざまな不具合が潜在的にある可能性があります。これを瑕疵(かし)と呼びます。売主はこれらの瑕疵をできる限り詳細に買主や仲介の不動産会社に伝えることが必要です。契約書に記載するなど、瑕疵を告知し、買主に責任追及をしないと約束してもらいましょう。瑕疵の告知を怠ると、修繕や減額請求、最悪の場合は契約解除などの権利行使を行える「契約不適合責任」を追及される恐れがあるためです。
さらに、不具合の内容や程度によっては、物件の価値が下がる可能性もゼロではありません。
以上のようにトラブル防止や適正な価格設定を行うためにも、不動産売却では建物の不具合などを嘘偽りなく伝えるのが大切なのです。
4.契約〜引渡し後までの注意点
不動産売却において、契約から引渡し後までの過程では契約書の内容確認、引渡し後の確定申告などさまざまな注意点があります。不動産売却を円滑に進めるために、これらの注意点を十分に理解しておくことが重要です。
ここでは、売買契約書の内容確認の重要性や、確定申告の必要性と手続きの流れについて詳しく解説します。
売買契約書の内容は必ず目を通す
不動産売買契約を結ぶ際は、契約書の内容を十分に確認することが重要です。とくに、契約不適合責任の内容や期間、売買代金、手付金の種類と金額に問題がないかどうかを確かめる必要があります。
また、所有権移転と引渡し時期、契約後から引渡しまでに発生した損傷の保証に関する危険負担の取り扱いなども、契約書に明記されているはずです。これらが売主の意向と合致しているか、しっかりと確認しましょう。
さらに、違約金の設定額や瑕疵担保責任期間なども適切かどうか、よく吟味する必要があります。契約書の内容を十分に理解し、納得した上で契約を結ぶことが大切です。
確定申告が必要な場合は忘れず行う
不動産を売却した後は、税務処理として確定申告を行う必要があります。確定申告に関する概要は以下の表の通りです。
項目 |
内容 |
必要な書類 |
|
確定申告の手続き |
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税金の支払い |
|
不動産売却後は必要書類を揃え、適切に譲渡所得を計算し、期限内に確定申告を行う必要があります。手続きを怠ると重加算税が課される可能性があるので注意が必要です。
合わせて知っておくと良い不動産売却時のポイント
不動産売却を行う際には、譲渡所得税だけでなく、他にも注意すべき税金や価格形成の要因があります。ここでは、印紙税や登録免許税など、不動産売却時に発生する税金について解説します。また、住宅の築年数が売却価格に与える影響についても詳しく見ていきましょう。
不動産売却を円滑に進めるためには、これらのポイントを押さえておくことが重要です。税金の概要や住宅の価値下落の傾向を理解し、適切な売却時期や価格設定を行いましょう。
不動産売却には税金が発生する
不動産売却には、先に述べた譲渡所得税の他に、印紙税や登録免許税などの税金が必須です。
印紙税は、売買契約を結んだ時に支払う税金で、契約書に収入印紙を貼り、消印する形で納付します。税率は契約金額に応じて変動します。具体的な税額は下記表の通りです。
契約金額 |
印紙税額 |
10万円以下・契約金額の記載のないもの |
200円 |
10万円超~50万円以下 |
400円 |
50万円超~100万円以下 |
1,000円 |
100万円超~500万円以下 |
2,000円 |
500万円超~1,000万円以下 |
10,000円 |
1,000万円超~5,000万円以下 |
20,000円 |
5,000万円超~1億円以下 |
60,000円 |
1億円超~5億円以下 |
100,000円 |
5億円超~10億円以下 |
200,000円 |
10億円超~50億円以下 |
400,000円 |
50億円超 |
600,000円 |
登録免許税は、所有権の移転や抵当権の抹消登記など登記申請時に支払う税金です。収入印紙で納付しますが、司法書士が代わりに納付するのが一般的です。不動産売却に関わる登録免許税は、土地・建物ともに固定資産課税明細書の課税標準価額に一定の税率をかけて計算されます。
なお土地や自身が住んでいる建物に関する所有権移転においては軽減税率が適用されます。
それぞれ表にまとめたので参考にしてください。
区分 |
土地 |
建物 |
一般税率 |
2.0% |
2.0% |
軽減税率 |
1.5% (適用期限:令和8年3月31日まで) |
0.3% (適用期限:令和6年3月31日まで) |
印紙税と登録免許税は不動産売買の際の手続き時に必ず支払う税金で、売主と買主でそれぞれ負担します。金額は売買価格や登記の種類によって変わるため、事前に概算額を把握しておくと良いでしょう。
住宅の築年数と売却価格の関係性
住宅の築年数が経過するにつれて、成約価格は下落していく傾向にあります。
下記グラフは首都圏の一戸建て住宅とマンションの中古物件における、築年数と売り出し価格・成約価格の関係性を表したものです。
引用元:公益財団法人東日本不動産流通機構|レインズトピック 築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)
一戸建て住宅、マンションともに築年数とともに緩やかに価格が下がっていき、築30年を超えると築浅物件の半値程度にまで下落しています。それぞれの下落ペースは異なりますが、築年数の経過とともに成約価格は確実に下落していきます。売却を検討する際は、築年数を考慮して売り出す時期を決めると良いでしょう。
まとめ
不動産売却は、売却前の準備から契約、引渡し後の手続きまで、さまざまな注意点があります。不動産売却のポイントを押さえ、適切な準備と手続きを行うことで、スムーズな売却が可能になります。
これから具体的に不動産売却をしようと考えている人は、この記事で解説したように売却相場の把握が第一のステップです。売却査定やポータルサイトの情報を活用し、まずは売却予定物件の相場をチェックしてみましょう。いえぽーと編集部では不動産会社への査定を一括査定サイトで依頼するのをおすすめしています。
理由は複数の不動産会社に一括で手軽に査定依頼できることと、各一括査定サイトで厳選された不動産会社に査定依頼ができるためです。
以下の図は、いえぽーと編集部がおすすめする各一括査定サイトを特徴別に分類したものです。その下の表には各サイトの概要をまとめてあります。
それぞれ特徴が少しずつ異なるため、自身の希望にあうサイトをいくつかピックアップして依頼するのがおすすめです。
ぜひ参考にして一括査定サイトで査定依頼を行いましょう。