家を売ることを検討している人の中には「売却にどれくらいの税金がかかるかわからないから怖い」「節税方法が知りたい」と考えている人もいるでしょう。

実際に、マイホームの売却にはさまざまな税金がかかります。そして税金を抑えるコツや売却のタイミングを知らなければ、損をしてしまうかもしれません。

この記事では、家を売る際にかかる税金の種類や計算手順、税金が優遇される特例について解説します。マイホームの売却前に税金の種類や金額を知っておきたいという人は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。

家を売るとかかる税金の4つの種類

マイホームを売却すると次の4つの税金がかかります。

  • 諸費用の支払時にかかる消費税

  • 売買契約書にかかる印紙税

  • 抵当権抹消にかかる登録免許税

  • 売却で得た利益にかかる譲渡所得税

それぞれがどんな税金でどれくらいかかるのかを詳しく解説します。

諸費用の支払時にかかる消費税

家を売るとかかる税金の1つに消費税があります。消費税は主に以下の手数料にかかります。

  • 不動産会社に支払う仲介手数料

  • 司法書士に支払う手数料

  • 金融機関に支払う繰り上げ手数料

一例を挙げてみましょう。3,000万円で成約、司法書士への手数料が1.5万円、繰り上げ返済手数料が3万円の場合は以下の消費税がかかります。

  • 仲介手数料:3,000万円×3%+6万円+消費税=105.6万円(うち消費税9.6万円)

  • 司法書士への手数料:1.5万円+消費税=1.65万円(うち消費税0.15万円)

  • 金融機関への手数料:3万円+消費税=3.3万円(うち消費税0.3万円)

この中で最も多くかかる消費税は、仲介手数料にかかる消費税です。仲介手数料は成約価格が高いほど金額が高額になります。

物件価格

仲介手数料の上限額を求める速算式

400万円超

物件価格✕3%+6万円+消費税

200万円超〜400万円以下

物件価格✕4%+2万円+消費税

200万円以下

物件価格✕5%+消費税

物件価格によっては、諸費用にかかる消費税だけで10万円以上かかるケースもあるため、資金計画を十分に立てておく必要があります。

売買契約書にかかる印紙税

不動産売却における印紙税とは、売買契約書にかかる税金です。不動産売却の場合は売買契約書に収入印紙を貼付する形で納税し、印紙税は物件価格によって変動します。印紙税の金額は以下の表のとおりです。

売買価格

印紙税額

100万円を超え500万円以下のもの

1,000円

500万円を超え1,000万円以下のもの

5,000円

1,000万円を超え5,000万円以下のもの

1万円

5,000万円を超え1億円以下のもの

3万円

※この表は、平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される契約書についての、印紙税税額の軽減が適用された場合の金額です。

引用:国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」

収入印紙は、郵便局や法務局で購入することができます。売買契約の締結時に収入印紙を用意できない場合は、不動産会社の担当者に用意してもらえるケースもあるため、あらかじめ相談してみると良いでしょう。

抵当権抹消にかかる登録免許税

不動産売却でかかる税金の3つ目は、抵当権を抹消する際にかかる登録免許税です。抵当権とは、住宅ローンを組んだときに対象不動産を金融機関の担保として提供するための権利で、抵当権を抹消しなければ不動産を引き渡すことができません。そのため、住宅ローンをすでに完済していたり、購入時に住宅ローンを組んでいなかったりする場合、抹消する抵当権がないため登録免許税はかかりません。

抵当権抹消の登録免許税は、不動産1つにつき1,000円がかかります。たとえば、土地が2筆、建物が1筆の一戸建ての場合、抵当権抹消にかかる登録免許税は3,000円です。売却する不動産にどれくらいの登録免許税がかかるのかを知りたい場合は、売買契約書で不動産の内容を確認するか、担当者に問い合わせてみましょう。

売却で得た利益にかかる譲渡所得税

家を売却した際に利益が出た場合、利益に対して譲渡所得税が課されます。逆に言うと、売却により利益が出なかった場合は譲渡所得税はかかりません。

譲渡所得税は不動産の所有期間によって税率が異なります。

所得区分

所有期間

税率

短期譲渡所得

所有期間5年以下

39.63%

※所得税:30%

住民税:9%

復興特別所得税:0.63%

長期譲渡所得

所有期間5年超

20.315%

※所得税:15%

住民税:5%

復興特別所得税:0.315%

譲渡所得税の計算式は以下のとおりです。

  • 譲渡所得=売却金額−取得費(購入金額)−譲渡費用−特別控除額

  • 譲渡所得税=譲渡所得✕税率

たとえば、3,000万円で購入した自宅を6,500万円で売却し、譲渡費用(売却時の諸費用)が200万円かかった場合は以下のようになります。※購入して9年で売却

  • 6,500万円−3,000万円−200万円−3,000万円(居住用財産の3,000万円特別控除)=300万円(譲渡費用)

  • 300万円(譲渡所得)✕20.315%(長期譲渡所得)=60.924万円(納税額)

自宅を売却する場合、「居住用財産の3,000万円特別控除」が適用され譲渡所得税がかからないケースが多いです。しかし、マイホームでない場合は居住用財産の3,000万円特別控除が適用されないため注意が必要です。

譲渡所得税の詳しい計算手順とシミュレーションは、次の章で紹介します。

家を売る際にかかる譲渡所得税の計算手順

マイホームを売却して利益が出た場合、譲渡所得税が課されます。ここでは、譲渡所得税の計算手順を解説します。

譲渡所得を算出する

マイホームを売却して出た利益を「譲渡所得」と呼びますが、単純に購入価格から売却価格を差し引いた金額が譲渡所得になるわけではありません。譲渡所得を算出する際は、購入時や売却時の諸費用を考慮する必要があるのです。

譲渡所得の計算式は以下のとおりです。

譲渡所得=売却金額−取得費(購入金額)−譲渡費用−特別控除額

この中の「取得費」とは、購入した物件価格と購入時の諸費用を合わせた金額です。また、「譲渡費用」が売却時の諸費用にあたります。

購入時の諸費用は、主に以下が挙げられます。

  • 仲介手数料

  • 税金(印紙税・登録免許税・不動産取得税)

  • 測量費

  • 解体費用など

また売却時の譲渡費用は主に次の費用が該当します。

  • 仲介手数料

  • 印紙税

  • 解体費用など

また、譲渡所得を計算する上で重要な特別控除には以下があります。

  • 居住用財産の3,000万円特別控除

  • 相続した空家の売却に使える特例

このように、活用できる特別控除や計上できる費用をしっかりと理解し、適切な譲渡費用を算出できるようにしましょう。

所有期間によって異なる税率を掛ける

譲渡所得が算出されたところで、次に所有期間によって異なる税率を掛けます。譲渡所得の税率は、不動産を長く所有していたほうが低くなります。

改めて所有期間と税率を表した表を確認しましょう。

所得区分

所有期間

税率

短期譲渡所得

所有期間5年以下

39.63%

※所得税:30%

住民税:9%

復興特別所得税:0.63%

長期譲渡所得

所有期間5年超

20.315%

※所得税:15%

住民税:5%

復興特別所得税:0.315%

所有期間を算出する際の注意点として、「家を売却した年の1月1日時点を判断基準とする」という決まりがあります。

たとえば、2019年5月に購入した家を2024年6月に売却した場合、実質的には5年以上が経過していますが、売却した年の1月1日時点では5年を経過していません。よって、この場合は所有期間5年以下の「短期譲渡所得」が適用されます。

家を売却するタイミングによって、納税額が大幅に変わる可能性があるため、所有期間に関する知識をしっかりと持ち、一番良いタイミングで売却できるようにしましょう。

譲渡所得税のシミュレーション

ここからは、2パターンのシミュレーションを行います。

①譲渡所得税がかからないケース

前提条件

  • 自宅を3,000万円で2018年8月に購入

  • 5,000万円で2023年10月に売却

  • 購入時諸費用:100万円

  • 譲渡費用:150万円

5,000万円【売却金額】−(3,000万円【購入価格】+100万円【購入時諸費用】)−150万円【譲渡費用】−3,000万円【居住用財産の3,000万円特別控除】=▲1,250万円【譲渡所得】

このケースでは、譲渡所得がマイナスになるため譲渡所得税はかかりません。

②譲渡所得税がかかるケース

前提条件

  • 自宅を2,000万円で2017年5月に購入

  • 6,000万円で2024年3月に売却

  • 購入時諸費用:100万円

  • 譲渡費用:200万円

6,000万円【売却金額】−(2,000万円【購入価格】+100万円【購入時諸費用】)−200万円【譲渡費用】−3,000万円【居住用財産の3,000万円特別控除】=700万円【譲渡所得】

700万円【譲渡所得】×20.315%【長期譲渡所得】=142.205万円【譲渡所得税】

このケースでは、譲渡所得が700万円計上され、5年以上所有のため長期譲渡所得が適用されました。よって、譲渡所得税が142.205万円かかる計算となります。

家を売る際の税金を抑える特別控除や特例3選

マイホームを売却する際に譲渡所得を抑えられる特別控除や特例には、主に次の3つが挙げられます。

  • マイホームの売却時に使える特別控除

  • マイホームの買い替えで使える特例

  • 相続した空家の売却に使える特例

これらの制度を正しく理解し、適切に譲渡所得を算出できるようにしましょう。

マイホームの売却時に使える特別控除

マイホームの売却時に使える特別控除として「居住用財産の3,000万円特別控除」があります。この特別控除は、マイホームを売却した際に所有期間にかかわらず最大3,000万円の控除が受けられる制度です。

居住用財産の3,000万円特別控除の主な適用条件は以下のとおりです。

  • 現在住んでいる、もしくは住まなくなって3年以内のマイホーム

  • 単身赴任の場合は配偶者が住んでいる家

  • 買主が親族や夫婦、同族会社などの特殊な関係ではない

  • 売却した年の前年と前々年に「居住用財産の3,000万円特別控除」や「マイホームの譲渡損失が出た場合の損益通算及び損失の繰越控除の特例」を利用していない

その他の要件は、国税庁の「No.3302 マイホームを売ったときの特例」を参考にしてください。

この特別控除を利用すれば、税金の計算上3,000万円までの売却益がなかったことになります。ただし、セカンドハウスに使えない点や、3年以内の再利用ができない点に注意しましょう。

マイホームの買い替えで使える特例

マイホームの買い替えで使える特例には「特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例」があります。この制度を利用すれば、10年以上所有しているマイホームを売却して新居を買い替えた際、売却による譲渡所得を買い替えた住まいの売却時まで先送りできるようになります。

たとえば、2,000万円で購入したマイホームを6,000万円で売却し、8,000万円の住まいに買い替えた場合、通常は4,000万円(6,000万円−2,000万円)の譲渡所得が発生します。しかし、この特例を利用すれば、売却した年にこの譲渡所得税の支払いは発生せず、課税されるのは新しい住まいを売却したときになります。

新しい住まいを将来9,000万円で売却した場合は、このときの譲渡所得1,000万円(9,000万円-8,000万円)と、繰り延べられていた4,000万円の譲渡所得を合算した5,000円に対して課税されるのです。

マイホームの売却

6,000万円−2,000万円=4,000万円(譲渡所得)

8,000万円で買い替えたマイホームを将来9,000万円で売却した場合

9,000万円-8,000万円=1,000万円(買い替えたマイホームの譲渡所得)

4,000万円(特例により繰り延べられていた譲渡所得)+1,000万円(買い替えたマイホームの譲渡所得)=5,000万円(課税される譲渡所得)

最終的に、この特例で算出された5,000万円に「居住用財産の3,000万円特別控除」と「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」のどちらを利用するのかを選択することになります。

マイホームを売ったときの軽減税率の特例とは、所有期間が10年を超えた家に適用される軽減税率です。

所得区分

所有期間

税率

短期譲渡所得

所有期間5年以下

39.63%

※所得税:30%

住民税:9%

復興特別所得税:0.63%

長期譲渡所得

所有期間5年超

20.315%

※所得税:15%

住民税:5%

復興特別所得税:0.315%

マイホームを売ったときの

軽減税率の特例

所有期間10年超

14.21%(6,000万円以下の部分)

※所得税:10%

住民税:4%

20.315%(6,000万円超の部分)

※所得税:15%

住民税:5%

「特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例」の注意点として、譲渡所得の支払いがなくなるというわけではないことに注意が必要です。あくまでも納税を先送りにする特例であるため、将来に向けた資金計画を十分に考慮することが重要です。

相続した空家の売却に使える特例

相続した空家の売却に使える特例とは、「相続した空家を売却する際に最大3,000万円の特別控除が受けられる特例」を指します。この特例は、相続した空家を更地にして売却する際にも利用できます。ただし、この特例を利用するためには、相続から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却しなければいけません。

適用される空家の主な要件は次のとおりです。

  • 相続開始の直前に被相続人が一人で居住していた建物

  • 相続時から売却時まで賃貸や、居住の用に供されていない

  • 相続により土地と建物の両方を取得している

  • 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された建物

  • 区分所有建物(マンションの一室)ではない

詳しい適用条件については、国税庁の「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を参考にしてください。 

この特例により、相続した空家をマイホームとして利用していなくても、売却時の大幅な節税が期待できます。相続により古い空家を相続した場合は、この特例を利用できるかどうかを不動産会社の担当者や税理士などの専門家に相談してみると良いでしょう。

家を売るときにかかる税金で注意するポイント3点

家を売却して税金を納める際に気をつけなくてはいけないポイントがあります。

  • 住み替え時に住宅ローン減税と売却時の特例は併用できない

  • 家を売却すると翌年に確定申告が必要になる

  • 税金の納付時期や納付方法に気をつける

どれも重要なため、ここでしっかり理解しておきましょう。

住み替え時に住宅ローン減税と売却時の特例は併用できない

マイホームを売却し住み替える場合、住宅ローン減税と売却時の特例は併用できません。住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んでマイホームを購入した人の負担を軽減するための制度です。新居の購入が初めての人には影響ありませんが、住み替えの際に「どちらも利用できると思っていたのにできなかった」ということにならないように注意しましょう。

たとえば、売却時に利益が3,000万円発生し、住宅ローンを組んで住み替える場合、「居住用財産の3,000万円特別控除」を利用して譲渡所得をなくすか、住宅ローン控除で最大13年間の還付金を受け取るかの選択をしなくてはいけません。

賢い選択をするためには、住宅ローン控除によってどれだけの税金が還付されるのかをシミュレーションしてみましょう。インターネット上で住宅ローン控除のシミュレーションが公開されているので、自分に当てはまる条件を入力して比較するだけです。比較が難しい場合は、ファイナンシャルプランナーなどお金の専門家に相談すると良いでしょう。

家を売却すると翌年に確定申告が必要になる

家の売却時に気をつけるべきポイントの2つ目は、マイホームを売却すると翌年に確定申告をしなければいけないという点です。確定申告は翌年の2月16日から3月15日までの間に行う必要があります。

確定申告を行うことで「居住用財産の3,000万円特別控除」などの特例が利用できます。さらに、売却において損をしてしまった場合でも「譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」を利用すれば、売却で損失が出た金額(譲渡損失)を、他の所得から控除する「損益通算」ができる可能性があります。

確定申告は、次の3つの方法で行えます。

  • 税務署に書類を提出する

  • 税務署に書類を郵送する

  • インターネット上で申告する(e-Tax)

確定申告の方法がわからない場合は、不動産会社の担当者に相談したり、各税務署の相談会場で相談したりすると良いでしょう。

税金の納付時期や納付方法に気をつける

家の売却で気をつける最後のポイントは、税金の納付時期や方法に気をつけることです。売却時に発生する税金はそれぞれ納付方法が違うため注意が必要です。

それぞれの納付方法は次のとおりです。

  • 印紙税:売買契約時に収入印紙を法務局や郵便局で購入する

  • 登録免許税:家の引渡時に司法書士か法務局に納める

  • 譲渡所得税:売却翌年の確定申告時に支払う

譲渡所得税は、印紙税や登録免許税と違い、取引後に時間差で支払うことになります。売却益が出た場合、どれくらいかかるのかを想定しあらかじめ資金を準備しておくことが重要です。

まとめ

この記事では、家を売却する際にかかる税金について解説しました。家を売るとかかる税金には「印紙税」「消費税」「登録免許税」「譲渡所得税」があります。その中でも譲渡所得税は、売却で利益を得た場合にかかる税金で、税金の算出方法をしっかり理解しておく必要があります。また、税金が優遇される特例や注意点を把握しておけば、売却時に支払う税金を抑えられるかもしれません。

家の売却にはさまざまな税金が発生します。売却を検討している人は、この記事を参考に適切な資金計画を立てられるようにしましょう。