住宅ローンを組んでマイホームを購入した人の中には「抵当権抹消費用はどれくらいなのか」「抵当権抹消はいつ必要なのか」という疑問を持っている人もいるでしょう。
最終的に抵当権を抹消しなければ、不動産を手放すことができません。また、抵当権抹消費用はケースによって異なるため、費用相場を理解しておくことが重要です。
本記事では、不動産売却や住宅ローンを完済した際に必要な抵当権抹消について解説します。抵当権抹消の費用相場や、放置するとどのようなリスクが発生するのかを知りたい人は、最後まで読んで参考にしてください。
この記事の目次
抵当権抹消費用の相場
抵当権抹消は一般的に以下の費用がかかります。
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司法書士に依頼する場合:15,000〜20,000円程度
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自分で手続きを行う場合:2,000〜5,000円程度
それぞれの費用について詳しくみていきましょう。
司法書士に依頼する場合
司法書士に抵当権抹消を依頼する場合、15,000円前後の手数料がかかります。登録免許税や調査費用を含めると15,000〜20,000円程度かかることが多いとされています。
日本司法書士連合会が公表している抵当権抹消登記の相場は以下の表のとおりです。
画像引用:日本司法書士連合会「報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)」
この表を見ると手数料の平均値が13,000〜18,000円となっており、司法書士によって費用が異なることがわかります。この費用に加え、登録免許税や調査費用が含まれた金額を司法書士に支払うことになるのです。
自分で手続きを行う場合
自分で抵当権抹消の手続きを行う場合は、登録免許税や調査費用の実費がかかります。それぞれの費用は次のとおりです。
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抵当権抹消の登録免許税:不動産1個につき1,000円
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事前調査費用:331円〜600円
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事後謄本取得費用:331円〜600円
事前調査費用とは、抵当権抹消を行う前に登記記録を調査する費用です。登記情報提供サービスを利用して不動産登記情報を取得する場合は331円、法務局で登記簿謄本を取得する場合は500〜600円が必要です。
事前謄本取得費用とは、手続き完了後に抵当権が無事抹消されたかどうかを確認するために不動産登記情報を取得する費用です。この場合も事前調査費用と同様の費用がかかります。
たとえば、土地が2筆、建物が3筆の一戸建ての抵当権抹消を行う場合は以下の費用がかかります。
1,000円×2(土地の登録免許税)+1,000円(建物の登録免許税)+600円(事前調査費用)+600円(事後謄本取得費用)=4,200円(抵当権抹消費用)
ただし、自分で抵当権抹消の手続きを行うためには、抵当権抹消登記申請書や委任状などが必要です。書類の作成や手続きに自信がない人は、司法書士に依頼するのがおすすめです。
抵当権抹消の基礎知識
抵当権抹消費用の相場がわかったところで、抵当権抹消の基礎知識を理解しましょう。
抵当権抹消とは?
抵当権抹消とは、不動産に登記されている抵当権を抹消するための手続きです。マイホーム購入時に住宅ローンを組んだ場合、金融機関に対象の不動産を担保として提供するため、抵当権が設定されます。抵当権が設定されると、住宅ローンが滞った際に金融機関が不動産を差し押さえることができ、売却して返済に充てられるようになります。
抵当権は住宅ローンを完済することで抹消できますが、抹消するためには必要書類を準備し、登録免許税を支払わなければなりません。そのため、住宅ローンを完済した際はそのまま放置するのではなく、できるだけ早く金融機関に連絡して抵当権抹消手続きを行うことが重要です。
不動産売却では抵当権抹消と引き渡しを同時に行う
抵当権抹消手続きは、不動産売却のシーンでも行われます。抵当権が設定されたまま家が第三者に引き渡されると、金融機関が知らないうちに差し押さえてしまう可能性があるのです。
不動産売却で抵当権を抹消するタイミングは、残代金を受領し不動産を引き渡す「決済日」が一般的です。売却代金を無事受領した段階で金融機関へ住宅ローンを完済し、抵当権を抹消します。
残代金を受領したタイミングで抵当権を抹消しなければ、契約違反になる可能性があるため、事前の準備を忘れないようにしましょう。
売却時の費用負担者は売主
不動産売却時の抵当権抹消費用は売主が負担します。抵当権は、住宅ローンを組んだ売主により設定されるものだからです。
金融機関によっては一括返済の手数料がかかります。手数料として10,000〜50,000円程度の費用がかかるため、売却時はかならず金融機関に手数料を確認しましょう。
抵当権抹消が必要な3つのタイミング
抵当権抹消が必要なタイミングには、次の3つがあります。
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不動産を売却してローンを完済したとき
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抵当権のある不動産を相続するとき
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新たな融資を受けるとき
それぞれのタイミングを詳しく解説します。
不動産を売却してローンを完済したとき
抵当権を抹消する1つ目のタイミングは、不動産売却で住宅ローンを完済したときです。先述のとおり、抵当権が設定されたままでは売却ができないため、残代金を受領して住宅ローンを完済したタイミングで抵当権を抹消するのです。
不動産売却の流れとして、不動産売買契約を先に行い、1〜2ヶ月後に引き渡しを行うことが一般的です。不動産売買契約では売買契約書の交付と署名捺印のみが行われ、所有権移転は不動産が引き渡たされる決済日に行います。所有権移転と残代金の支払い、抵当権の抹消を同時に行うことで安心して不動産を引き渡せるのです。
そのため、不動産売却は売買契約の締結で終わりではなく、次のステップとして抵当権抹消手続きがあることを忘れないようにしましょう。
抵当権のある不動産を相続するとき
抵当権が設定された不動産を相続する際にも、抵当権抹消手続きが必要になります。相続が発生したからといって自動的に抵当権が抹消されることはありません。ただし、ケースによって抹消するかどうかは異なるため、抵当権が設定された不動産を相続した際は、専門家に相談することが重要です。
たとえば、親がすでに住宅ローンを完済しているにもかかわらず抵当権が設定されたままの場合は、相続人が抵当権を抹消しなければなりません。一方、親が相続対策で建てたマンションなどを相続して相続人がローンを返済していく場合、抵当権を存続する必要があるため、契約者の名義を変更することになります。
新たな融資を受けるとき
住宅ローンを完済しているにもかかわらず抵当権が残っている場合、その不動産を担保とした新たな融資が受けられない可能性があります。よって、新たに融資を受けるときが抵当権を抹消するタイミングと言えます。
たとえば、住宅ローンを完済してすぐに抵当権を抹消していなかった場合、自宅を担保に事業用ローンを組もうとした場合などに問題が発生します。ローンを借りる前に抵当権抹消の手続きが必要になるでしょう。
抵当権抹消をせずに放置するリスク
抵当権を抹消せずに放置しておくと、以下の3つのリスクが発生します。
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抹消登記が必要になった際に手続きが複雑になる
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関連書類を紛失するおそれがある
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新たなローンが組みにくくなる
抵当権を抹消しないリスクをここでしっかり理解しておきましょう。
抹消登記が必要になった際に手続きが複雑になる
抵当権を抹消しない1つ目のリスクは、抹消登記が必要になったタイミングで手続きが複雑化することです。抵当権が設定されたままだと、住宅ローンが完済されているのかの判断がつかなくなり、それを証明するのに手間と時間がかかってしまいます。
さらに、抵当権が残ったまま相続が発生すると、それぞれの手続きを同時に行わなくてはいけなくなり、いざ売却しようとしたときにスムーズに進まない可能性があります。このように、抹消登記をしないまま放置すると、あらゆる手続きが後手に回ってしまうため、忙しくて抹消手続きの時間が取れなくても早めに済ましておくようにしましょう。
関連書類を紛失するおそれがある
抵当権抹消の手続きをせずに放置することは、関連書類の紛失につながります。住宅ローンの完済証明などの書類は再発行が可能ですが、金融機関が合併や倒産してしまった場合、再発行には余計な時間と手間がかかるでしょう。
関連書類が紛失すると、売却活動に支障をきたしてしまうかもしれません。書類の再発行に時間かかり、不動産の引き渡しまでに抵当権抹消が間に合わないことも起こり得ます。そのような事態を回避するためにも、関連書類を紛失しないようできるだけ早め手続きを行いましょう。
新たなローンが組みにくくなる
抵当権抹消手続きを放置するリスクとして、新たなローンが組みにくくなる点も挙げられます。
金融機関は、抵当権が残ったままの不動産を担保として融資を行うことに難色を示す場合が多いです。それは、抵当権の優劣は先に抵当権を設定した債権者が優先されるため、抵当権が後順位の場合、競売による弁済が受けられないおそれがあるからです。
したがって、抵当権が設定された不動産を担保に新たなローンを組む場合は、あらかじめ抵当権を抹消してローン審査に臨むと良いでしょう。
まとめ
この記事では、抵当権抹消費用の相場や抵当権を抹消するタイミングについて解説しました。抵当権抹消の手続きを司法書士に依頼する場合は15,000〜20,000円程度、自分で行う場合は2,000〜5,000円程度の費用がかかります。また、抵当権抹消は不動産売却以外にも、不動産を相続するケースや新たなローンを組むタイミングで必要になります。
抵当権を抹消しなければ、不動産を手放すことは困難です。住宅ローンを完済したタイミングや売却する際にかならず抵当権抹消が必要になるため、手続きをスムーズに進めるためにも準備を怠らないように心がけましょう。