個人ではなく不動産業者に売却するマンション買取は、マンションを早く売らなければならない差し迫った事情がある場合におすすめの売却方法です。しかし、不動産業者にマンションを売ることについて、安く買いたたかれるのではないか、だまされてしまうのではないかと不安を感じる人もいるのではないでしょうか。

マンション買取を成功させるためには、特に不動産業者の見極めが重要です。あらかじめ知っておくべきマンション買取の注意点や、業者の見極めに当たって見るべきポイントなどについて解説します。

マンション買取と仲介による売却の違いは?

マンション買取とは、一般の消費者ではなく不動産業者にマンションを売却することです。不動産業者は修繕や改良を施してから他の消費者へマンションを転売します。売却に要する期間は1週間~1ヶ月程度で、仲介と比較して早く売れるメリットがある一方、買取価格は仲介よりも安くなるのがデメリットです。

一方、仲介による売却の場合は、売主が他の消費者へ直接マンションを売却することになります。仲介のメリットはマンションを高く売れることであり、デメリットは4ヶ月~6ヶ月など売れるまでの時間がかかることです。

マンション買取を利用するメリットとデメリット

マンション買取を利用する最大のメリットは売却期間の短さですが、そのほかにも売主が負う契約上の責任を小さくできるなどのメリットがあります。その一方で、不動産業者の選定に関する難易度は高い点に要注意です。

仲介よりも早く売却できる

仲介の場合は不動産業者の査定を受けてから、不動産業者が買い手を探すことになります。一方で、買取の場合は査定を受けて売手が納得すれば、買い手を探すことなくすぐに売買契約の締結に移るため、短期間で取引が完了します。早ければ1週間程度でマンションの現金化が可能です。

相続税の納税期限が迫っている、転勤するため家を売らなければならないなど、短期間でマンションを売却しなければならない場合は、マンション買取はおすすめの売却方法です。

隣近所に知られにくい

マンションの売却を考えている人の中には、売ろうとしていることを近隣住民に知られたくないという人もいるのではないでしょうか。

仲介の場合は買い手を探すために広告を出す必要がありますが、買取の場合はその必要がありません。ビラの投函やネット広告の掲出などが無いため、近隣住民に知られることなく取引を進められるのは、マンション買取が持つメリットの1つです。

仲介で売るよりも売主の責任を軽くできる

仲介でマンションを売却する場合は、売主は買主に対して「契約不適合責任」という責任を負うことになります。契約不適合責任とは、売主が事前に告知していなかった不具合が引渡し後に発覚した場合、売主が費用負担のうえ修繕する義務を負う責任のことです。

しかし、マンション買取の場合は、不動産の専門家である不動産業者がマンションを見たうえで取引をすることになるので、売主の契約不適合責任を免責できます。

売却価格は仲介よりも安くなる

不動産業者が転売する前提で査定をするため、マンション買取による売却価格は仲介で売る場合の6割~8割程度まで安くなるのがデメリットです。マンション買取による査定の場合は、修繕・改良にかかる費用や不動産業者の転売益を考慮したうえで価格提示されます。

その一方で、仲介の場合は市場価格そのままで売却できるため、売却価格にこだわりたいのであれば、仲介で売却するのがおすすめです。

比較できる不動産業者が少ない

不動産業者の側から見ると、マンション買取は1度に多額の費用を拠出するため、資金的に余裕のある不動産業者しか展開できないビジネスモデルです。このため、仲介には対応できるけどマンション買取には対応できないという不動産業者は多数存在しています。

仲介と買取のどちらであれ、売却する前に不動産業者を比較することは重要です。しかし、買取の場合は仲介よりも比較できる不動産業者が限られる点に要注意です。

買取価格の交渉は難しい

仲介の場合は売却価格の最終的な決定権を売主が持っています。しかし、買取の場合は価格を査定する不動産業者に主導権を握られるため、売主からの価格交渉は通りにくい点がデメリットです。

仲介でも買主からの価格交渉が入ることはありますが、不動産業者と相談しながら対応の内容を決められます。しかし、買取の場合は第三者的な相談先を売主が自ら探す必要があるので要注意です。

マンション買取を利用する時の注意点

仲介でマンションを売却する場合は不動産業者から様々なアドバイスを受けられます。その一方で、買取の場合は不動産業者との取引になるので、売主自らの判断が求められます。売主としてあらかじめ確認すべきポイントなどをまとめました。

買取価格の妥当性は自分で判断する必要がある

マンション買取では不動産業者の査定結果が買取価格になるため、不動産業者の言い値で価格が決まりがちです。買取価格の妥当性は、査定を提示された売主が自ら判断する必要があります。

マンション買取の価格は仲介による市場価格の6割~8割となるため、仲介による市場価格を把握できれば、査定価格の妥当性を判断可能です。

仲介による市場価格は、SUUMOなどの不動産ポータルサイトで同じエリア・同じ広さのマンションを検索すれば把握できます。そのほか、国土交通省が運営する「土地総合情報システム」というウェブサイトには、2017年以降に実施された不動産取引の内容が掲載されています。同じエリアで近い時期に実施された取引事例を見つけられれば、精度の高い相場価格を把握できるでしょう。

買取の条件を必ず確認する

マンション買取を検討している人の中には、自分のマンションは買取で売却できるのか疑問に思う人もいるのではないでしょうか。立地条件が良くない、築年数が大幅に経過しているなど、仲介では売りにくいマンションでも売れるのが買取のメリットです。

しかし、どんな状態のマンションであれば買取できるのかという条件については、不動産業者ごとに対応が異なります。設備が故障しているなど明確に修繕を要する場合は特に、事前に不動産業者に問い合わせて確認することが必要です。また、運び出すのが大変な家具など残置物がある場合も事前に確認しておくと良いでしょう。

そのほか、急いで売らなければならない場合は特に、明け渡し猶予の有無に関する確認も重要です。買取でマンションを売却すると引渡しまでの期間が短くなるため、引越しよりも先に引渡しが来てしまうこともあります。

なお、時間的に余裕はあるけど最終的には必ず売却したいという場合には、買取保証という方法もあります。買取保証とは、仲介による売却を前提としてマンションを一定期間売出したあと、売れなかった場合は不動産業者による買取で売却するという方法です。ただし、仲介による売却期間があるため、買主による内覧の対応など、買取の場合にはない手間が発生します。

また、引越し先の住居確保に不安がある場合にはリースバックという方法もあります。リースバックとは、マンションを不動産業者に買取ってもらったうえで、賃貸入居者として同じマンションに住み続けるというものです。ただし、住み続けるためには家賃を支払う必要があります。

ローンの残債額を確認しておく

ローンの返済が終わっていないマンションを売却する場合は、買取によって残債を一括返済できるか、事前の確認が必要です。ローンを組んで購入したマンションには金融機関が抵当権を設定しており、抵当権はローンの返済が終わらないと解除できません。

また、抵当権が設定されているままでは、仲介か買取かに関わらずマンションの所有権を移転できません。買取の査定額がローンの残債額に満たない場合は、自己資金を投下して返済する必要があります。買取の場合は仲介よりも価格が低くなるため特に、ローンに関する事前の確認は重要です。

売主が負担する着手金や仲介手数料は発生しない

マンション買取は買い手を探す必要が無いため、仲介と違って仲介手数料が発生しません。ただし、買取に対応していない不動産業者が、買取に対応できる業者を見つけてきた場合は仲介になってしまうため、手数料が発生します。

そのほか、価格査定は一般的に無料で実施されるため、売主は不動産業者に着手金などを支払う必要がありません。しかし、悪質な不動産業者は何かしらの理由をつけて費用を請求してくることがあります。

マンション買取を依頼する場合は、不動産業者との関係性や買い手が誰になるのかといった点に注意が必要です。万一不要な費用を請求されたり仲介手数料を請求されたりした場合は、別の不動産業者に切り替えるのが良いでしょう。

いつでも不動産業者を切り替えられるようにするため、最初は同時並行で複数の不動産業者に接触するのがおすすめです。

必要書類を確認する

マンション買取のメリットはとにかく早く取引が完了することです。とはいえ不動産取引には必要な書類が複数あり、その中には印鑑証明書など役所で取得しなければならないものも含まれています。公共窓口は平日にしか対応していないことが多いので、書類の取得にあたってはスケジュールの調整が必要です。

書類の取得によって取引完了までの期間が伸びてしまわないように、必要な書類は事前に確認して用意しておくと良いでしょう。

なお、所有権移転に関する書類は買取料金の入金日まで不動産業者に渡さないようにしましょう。書類が揃えば所有権移転登記ができてしまうため、入金手続きを待たずに移転手続きをされてしまう恐れがあります。

売却完了後には確定申告が必要

仲介か買取かを問わず、マンションの売却が購入した時の価格を上回った場合には「譲渡所得税」という税金が課税されます。譲渡所得税は通常の所得税などと違って天引きされるものではないので、確定申告と納税手続きが必要です。

マンション買取における不動産業者の選び方

不動産業者と直接取引をすることになるので、マンション買取に際してはどうしたら悪質な業者を避けられるのか疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。業者選びにおける最大のポイントは、買取の実績や会社規模などについて複数の不動産業者を比較することです。

複数の不動産業者を比較する

不動産査定のやり方には法律などで決められたものがありません。査定のやり方・根拠のつけ方・価格の提示方法などは不動産業者によって異なっています。このため、査定の対応には不動産業者の個性が出ており、対応を比較することが不動産業者の比較につながります。

査定の段階で複数の不動産業者に接触しておけば、不動産業者の比較が可能です。売主側の手間はかかりますが、3社以上の不動産業者に査定を依頼したうえで、査定の考え方や営業マンの質を比較すると良いでしょう。査定価格だけで不動産業者を決めてしまうと、最終的な取引の満足度が下がることもあるので要注意です。

マンション買取に関する実績を確認する

戸建の扱いに慣れた業者や土地の扱いに慣れた業者など、不動産業者はそれぞれ得意分野と不得意分野を持っています。戸建に慣れた業者に対してマンションの買取を依頼すると、市場価格に見合わない査定価格を提示されることがあるので要注意です。

できれば査定を依頼する前の段階で、不動産業者の得意分野について確認することをおすすめします。マンションの買取り実績を豊富に持っていれば、その不動産業者はそれだけ資金力があるということにもなります。

不動産業者が本当にお金を払ってくれるのか不安があるという場合は特に、マンション買取に関する実績を確認するのがおすすめです。

自分のマンションが対応エリア内にあるかを確認する

マンション買取に対応している不動産業者が必ずしも全国で対応しているとは限りません。多くの不動産業者は対応エリアを限定しています。地方に建っているマンションを売却する場合は特に、不動産業者の対応エリアに関する確認が必要です。

資金力に問題のない不動産業者を選ぶ

マンションの買取は仲介と違って不動産業者が多額の費用を拠出するビジネスモデルです。資金力に余裕がある不動産業者にしかできないため、会社規模の大小が取引の安全性に関する1つの指標となります。

上場企業である、拠点が日本各地にあるなど、会社規模や資本金が大きい不動産業者を選べば安心して取引を進められるでしょう。

まとめ

マンション買取は仲介よりも早く取引が完了する一方で、買取価格は仲介よりも安くなります。売却価格にはこだわらないので早く売りたいという場合は、マンション買取を利用するのがおすすめです。

ただし、買取額は不動産業者主導で決まるため、売主が自分で価格の妥当性を判断する必要があります。また、不動産業者を選ぶ上では、マンション買取の実績などについて複数の業者を比較することが重要です。できる限り会社規模が大きく実績豊富な業者であれば、安全に取引を進められるでしょう。