今の年収で3,000万円の住宅ローンはきついのではと迷われている方もいると思います。住宅ローンの負担を考える際には年収ももちろん大切ですが、返済計画や購入時の年齢、家族構成によっても返しやすさは変わります。

この記事では、以下の内容を具体的なシミュレーションも交えながら解説します。

  • 3,000万円の住宅ローンを無理なく返済できる年収

  • 3,000万円借入した場合の月々返済額

  • 3,000万円を借入するために必要な年収

  • 3,000万円の住宅ローン返済が厳しくなる要因

  • 3,000万円の住宅ローン返済がきつくならないためのコツ

マイホーム購入の資金計画に是非お役立てください。

3000万円の住宅ローンを無理なく返済できる年収

3,000万円の住宅ローンを無理なく返済できる年収はどれくらいなのでしょうか。住宅ローンの審査基準の1つでもある返済負担率から解説します。

無理のない返済負担率

返済負担率は、年収に対する年間の住宅ローン返済額が占める割合です。

例えば、年収600万円で住宅ローンを年間120万円(月10万円ボーナス返済なし)支払っている場合、返済負担率は、120万円÷600万円×100=20%となります。

返済負担率は、金融機関の融資における審査基準の1つですが、住宅ローン返済以外の車や教育ローン、携帯電話の分割払いなどがあれば、それを含めて審査されます。

そして、住宅ローンを返済するうえで無理のない返済負担率は20%が目安といわれ、最大でも25%以内に抑えるのが理想です。ただし、家族構成やライフスタイルによって家計支出は異なり、同じ20%でも実際の負担感は1人1人異なる点には注意してください。

3000万円の借入に対して無理のない年収は?

では、3,000万円の住宅ローンを借りるうえで無理のない年収はいくらか、返済負担率を20%までに抑える前提で試算します。

試算条件は次のとおりです。

・借入金利:①0.50%(変動金利想定)②1.50%(全期間固定金利想定)

・借入期間:35年間

・返済方法:元利均等返済・ボーナス返済なし

下表は、3,000万円を借入した場合の毎月の返済額と1年間の返済額をまとめたものです。

 

毎月の返済額

年間返済額(毎月返済額×12)

①0.50%の場合

77,875円/月

93万4,500円

②1.50%の場合

91,855円/月

110万2,260円

①0.50%で借入した場合、年間返済額は93万4,500円です。ここから無理のない返済負担率20%以内に抑えるために必要な年収は、934,500÷0.2=467万2,500円、およそ470万円となります。

②1.50%で借入した場合、年間返済額は110万2,260円です。同様に、返済負担率20%以内に抑えるための必要年収は、551万1,300円、およそ550万円となります。

変動金利と固定金利で必要な年収の差は80万円程度です。

変動金利で借りた方が返済額は少なく必要な年収も少なくなりますが、全期間固定金利と異なり、金利上昇のリスクがあります。途中、金利が上がれば返済額は増え、同じ年収であれば返済負担率は20%を超える可能性があります。

また、注意しなければならないのは、返済負担率は返済期間によって変わる点です。このシミュレーションでは返済期間を35年としましたが、返済期間は短いほど年間の返済額は増えますので、返済負担率は上がります。つまり、返済プランで返済期間を短くすればするほど必要な年収は上がるということです。

住宅ローン3000万円借入したときの月々返済額

無理のない借入金額を判断するうえで、今支払っている家賃と毎月の住宅ローン返済額を比較して考える人も少なくありません。そこで、現在の金利水準で3,000万円を借入した場合の返済額をまとめました。

ここでは、auじぶん銀行の「変動金利型」と「期間選択型(10年固定)」ならびに「全期間固定のフラット35」の金利水準でそれぞれ算出します。

借入金利

返済期間30年

返済期間35年

年0.319%

(auじぶん銀行

変動金利 全期間引下げプラン)※1

 

87,395円

 

75,499円

年1.355%

(auじぶん銀行

固定10年 当初期間引下げプラン)※1

 

101,461円

 

89,739円

年1.850%

(フラット35)※2

108,649円

97,085円

※1auじぶん銀行、フラット35とも2024年6月適用金利

※2フラット35は返済期間21年以上~35年以下・融資率9割以下の場合

金利タイプで毎月の返済額は異なりますが、現在の金利水準で3,000万円を借入した場合の返済額です。

現在支払っている家賃と住宅ローン返済額を比較して借入金額を判断することはできます。ただし、住宅購入後の維持費などこれまでと家計の支出が変わる点を踏まえて判断することが大切です。

住宅ローン3,000万円を借入するための年収

では、住宅ローン3,000万円を借入するためにはどれくらいの年収が必要なのでしょうか。それぞれ金融機関は、融資額を判断するための審査金利と返済比率をもうけています。

ここでは、大手都市銀行と住宅金融支援機構の審査基準をもとに3,000万円の借入に必要な年収を試算します。

審査金利・返済負担率からみた必要年収

メガバンクの住宅ローン審査基準は、金融機関によって異なりますが次のようになっています。

・審査金利:3.10~4.00%

・返済比率:35~40%未満(年収400万円以上)30~35%未満(年収400万円未満) 

ここでは、審査金利3.50%、返済比率35%(年収400万円以上)として試算します。

※住宅ローン返済以外の借入はない前提です

審査金利3.5%で3,000万円借入した場合の必要な年収は次のようになります。

 

返済期間30年

返済期間35年

毎月返済額

134,713円

123,987円

年間の返済額

161万6,556円

148万7,844円

必要な年収目安

約461万円

約425万円

返済期間35年の場合、約425万円、返済期間30年の場合、約461万円が3,000万円を借入するための必要年収の目安となります。

先ほどご紹介した無理のない返済負担率からみた必要な年収と比べると低くなっています。つまり、無理のないと思われる借入金額以上の融資を受けることも可能ということです。

ただし、金融機関の審査では、年収や返済負担率のほか、完済時の年齢や勤続年数、物件の担保評価などさまざまな項目を総合的に審査され、それによって借入できる金額は変わります。

フラット35の基準でみた必要年収

次に、フラット35の基準でみたときの3,000万円を借入するために必要な年収です。

フラット35は、民間の金融機関のように毎月の適用金利と別に審査金利があるのではなく、適用金利が審査金利となります。また、返済比率は次のとおりです。

・審査金利:毎月の適用金利(2024年6月の場合:1.850%※)

・返済比率:35%以下(年収400万円以上)30%以下(年収400万円未満) 

※返済期間21年以上35年以下・融資率9割以下の場合

これをもとに3,000万円借入した場合の必要な年収を試算すると、次のようになります。

 

返済期間30年

返済期間35年

毎月返済額

108,649円

97,085円

年間の返済額

130万3,788円

116万5,020円

必要な年収目安

400万円

約388万円

民間の金融機関と比べフラット35の審査金利は低いため、3,000万円を借りるための必要年収は低くなります。

参照:住宅金融支援機構「フラット35利用条件」

3000万円の住宅ローン返済がきつくなる要因

住宅ローンは、長期間にわたり返済していかなければならないため、途中、返済が厳しくなることもあります。ここでは住宅ローン返済が厳しくなる要因について解説します。

住宅購入後の維持費の見通しが甘い

住宅購入後の維持費の見通しが甘ければ、住宅ローン返済が厳しくなる可能性があります。

賃貸住宅での生活と異なり、マイホーム購入後はローン返済以外に維持するための費用が必要です。

  • 固定資産税・都市計画税

  • 火災保険料・地震保険料

  • 将来のメンテナンス・修繕費用

  • 管理費

  • 修繕積立金 など

マンションの場合、管理費と修繕積立金が必要ですが、修繕積立金は段階的に増額していく「段階増額積立方式」を採用しているマンションが多く、将来的に維持費が増えていきます。また、車を保有する場合の駐車場代も考えることが必要です。

住宅ローン返済以外にかかる費用をしっかりと見積もることが大切です。

諸費用を含めて借入可能額ぎりぎりまで借りている

借入可能額ぎりぎりまで借入していると、返済が厳しくなる場合があります。

多くの金融機関で、物件価格以外の仲介手数料や住宅ローン手数料、登記費用、印紙税などの諸費用の借入が可能です。その結果、借入可能額ぎりぎりまで借入する場合もあります。

ただし、先ほどシミュレーションしたように、金融機関から借入できる金額と無理なく返済できる借入金額は異なりますので借入し過ぎている可能性があります。

また、物件価格以上の借入をすることは、住宅ローン借入時点で物件価格より借入金額が多くなる、いわゆるオーバーローンの状態ということです。

借入金額が大きいほど金利が上昇した場合、返済額の上昇幅は大きくなります。諸費用を含めて借入すること自体が悪いわけではありませんが、借入金額として問題ないかしっかり確認することが大切です。

世帯収入の見通しが甘い

世帯収入の見通しが甘いと返済が厳しくなることもあります。

国土交通省の住宅市場動向調査をみると、一次取得者(はじめて家を購入した人)の平均年齢は、購入する物件種別で異なりますが、平均的に30代後半から40代前半となっています。

購入から30年あるいは35年の返済期間中、収入の頭打ちや再雇用による収入減少もあるでしょう。また、ペアローンや収入合算で2人の収入で借入する場合、配偶者の出産や子育てのための時短勤務、休職期間などで収入が減ることも考えなければなりません。

個人事業主やフリーランスであれば、病気やケガによる収入への影響は大きくなりやすいでしょう。万一の場合、保険を活用することも含めて、世帯収入の見通しを確認することが大切です。


 

参照:国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」

教育費や必要な貯蓄など家計の支出の見通し

教育費や必要な貯蓄など家計の見通しが甘く、返済が厳しくなることもあります。

子どもの数が増える、あるいは成長に伴って教育費や習い事、学習塾などの負担が増えることが予想されます。特に、子どもが多い家庭では影響が大きいでしょう。

購入時の年齢や子どもをもうけた年齢によっては、収入が減る時期と教育費かかる大学進学時期と重なることもあります。

一方で、将来の老後資金の積立もしなければなりません。一般的に貯蓄しやすい時期は、子どもの幼少期と子どもが独立後リタイアするまでの間と言われています。その間にしっかりと将来必要な資金を準備できるかを考えることも必要です。

ライフプランを作成すると長期的に家計の状況を把握しやすくなります。

住宅購入後の金利変動を考慮していない

住宅ローン金利タイプには、変動金利型、全期間固定金利型、固定期間選択型の3つがあります。

変動金利は、多くの金融機関が6ヶ月おきに適用金利の見直しを行います。日銀の金融政策や経済状況、金融機関の営業方針など、さまざまな要因で金利は変わる可能性があります。

借入金額が大きい、返済負担率が高いほど金利上昇の影響を受けやすいため、金利が上昇した場合、返済額がどれくらい変わるかシミュレーションしておくとよいでしょう。

なお、変動金利の場合、ほとんどの金融機関では金利が上昇しても、すぐに返済額が増えるわけではありません。毎月の返済額は5年間変わらない「5年ルール」、5年後に返済額が増えても上限はそれまでの125%までとする「125%ルール」を採用しています。

ただし、その間返済額が変わらなくても利息負担は増えている点に注意してください。

また、固定期間選択型は、借入当初何年間かの金利を固定し、固定期間終了後は変動金利になるか、もしくは再度、固定期間選択型の商品を選び直す金利タイプです。固定期間が終了後の金利は上昇する可能性が高いため、注意が必要です。

3000万円の住宅ローン返済がきつくならないコツ

3,000万円の住宅ローン返済がきつくならないために、借入する際にどういった点に注意すべきなのでしょうか。ここでは6つのポイントについて解説します。

返済期間を短くしすぎない

住宅ローンの返済計画を決めるときに、最初から返済期間を短くしすぎないことです。

なかには返済期間40年としている金融機関もありますが、多くの金融機関では返済期間を35年までとしています。住宅ローン審査上問題なければ、これより短い期間で返済計画を立てることも可能ですし、その方が良い場合もあります。

ただし、最初から早く完済したい、リタイアまでに完済したいと返済期間を短くすると、毎月の返済が厳しくなる可能性があります。住宅ローンは、大きな金額を長期間の返済を前提に借入するものです。できるだけ早く完済することも大切ですが、返済期間中の生活も大切です。

また、余裕があれば繰り上げ返済して返済期間を短縮することは簡単にできますが、途中返済が厳しくなってから返済条件を見直すのは簡単ではありません。

最初から返済期間を短くし過ぎないように、長期の視点で返済計画を決めることが必要です。

ボーナス返済を利用しない

住宅ローン返済計画では、ボーナス返済を併用できますが慎重な判断が必要です。

公務員の方はまだしも、民間の企業では会社の業績がボーナスに直結することも少なくありません。職種によっては、営業成績がボーナスに連動する場合もあるでしょう。

ボーナス返済が占める割合にもよりますが、ボーナスが減るもしくは支給されないことで、返済が厳しくなる可能性があります。

この点、ボーナス返済を利用しなくても、ボーナス月に繰り上げ返済することも可能です。多くの金融機関では、ネットで一部繰り上げ返済すると手数料もかかりません。

ボーナス返済を利用するか否か、ボーナス返済利用するにしてもその割合は慎重に判断しましょう。

金利上昇のシミュレーションをしておく

変動金利タイプを利用する人は金利上昇をシミュレーションしておくことが大切です。

例えば、3,000万円を借入して、借入から5年後、10年後に住宅ローン金利が上昇した場合の返済額をシミュレーションしてみます。※当初金利0.50%返済期間35年、元利均等返済、ボーナスなしの前提

 

当初返済額

5年後に上昇

10年後に上昇

0.5%上昇

 

77,875円

83,719円

81,750円

1.0%上昇

89,830円

87,814円

1.5%上昇

96,207円

93,066円

金利の上昇幅、上昇するタイミングでいくら返済額が増えるかは異なります。金利上昇のタイミングが早いほど借入残高が多い分、上昇幅も大きくなります。家計に与える影響も踏まえながらシミュレーションするとよいでしょう。

団信を含めて住宅ローン選びにこだわる

住宅ローン選びでは、金利水準は大切ですが、団体信用生命保険(以下「団信」)も含めて判断することが必要です。

団信は住宅ローン契約者が死亡あるいは高度障害状態になったときに、残された家族に大きな負債を残さないためにローンを完済する保険です。

各金融機関は一般団信以外に、がんや3大疾病、8大疾病、全疾病保障などが付いた特約付団信を取り扱っています。

変動金利を中心に低金利の状況が続いてきたなかで、金利水準では他行との差別化が難しい状況です。そのため特約付団信に力を入れている金融機関が増えたという経緯もあります。

特約付団信の保障内容や上乗せ金利(保険料)は各金融機関それぞれ異なります。万一、病気になったとしても住宅ローンの返済は続きますので、住宅ローン選びでは、団信を含めて判断することが大切です。

融資率を意識する

住宅ローンの借入金額を決めるときに、融資率を意識することも大切です。

融資率とは、物件価格に対して住宅ローン借入金額が占める割合です。例えば、4,000万円の物件を購入し、住宅ローン借入金額が3,600万円の場合、融資率は3,600万円÷4,000万円×100=90%です。

つまり、自己資金(あるいは頭金)が多いほど融資率は低くなり、住宅ローン審査上有利になります。

融資率は、金融機関よっては借入金利に影響します。例えば、住宅金融支援機構のフラット35では、融資率が9割以下か9割超えかで適用金利が年0.11%違い(2024年6月時点)、他にも融資率によって金利が変わる金融機関があります。

また、住宅ローン返済期間中に返済が厳しくなった場合、家を売却して住み替えることも1つの方法です。このとき、借入時点で融資率が高いほどオーバーローン、つまり売却金額より住宅ローン残高のほうが多い状態になりやすく、売却が困難になる可能性があります。

住宅ローンの借入時点で融資率を意識して、物件選びや借入金額を判断することも大切です。

まとめ

3,000万円の住宅ローンを無理なく返済するために必要な年収、また、3,000万円の住宅ローンを借入するために必要な年収について解説しました。

住宅ローン選びの難しさは、返済計画や適用金利によって返済負担率が変わることです。特に、返済期間中、金利が変動する可能性がある変動金利タイプの場合、金利上昇によって変わります。

また、住宅ローンは長期間の返済を前提とするものです。返済期間中の収入や支出の変化など、借入時点では予測しにくい点もあります。

そのため、3,000万円の住宅ローン返済がきついとならないためには、借入時点だけでなくライフプランを作成するなどできるだけ長期の視点で判断することが大切です。