「引っ越したいのに家が売れなくて困っている」と、悩んでいる人は多いことでしょう。売りにくい特徴をもった家を売るのは、非常に難しいものです。

しかし、売却するためには売れない理由に応じた対処法があり、しっかりと対策すれば売れるまでの期間を短縮できます。引っ越したいのに家が売れないことがないよう、売れない家の特徴や対処法を理解しておきましょう。

本記事では、売れない家の特徴5選や売るための対処法7選を紹介します。記事の後半では、急いで売りたくてもやってはいけないことも解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

家を売るために必要な平均日数

家が売れないと悩んでいる人の中には、売れるまでにどのくらい日にちがかかるのか疑問に思っている人もいることでしょう。

不動産の情報を多く取り扱っている「東日本不動産流通機構」よると、家を売るのに必要な平均日数は次のとおりであると公表されました。

調査年

中古マンション

中古一戸建て

2023年

80.1日

83.3日

2022年

71.4日

81.2日

2021年

74.7日

101.2日

2020年

88.3日

111.3日

2019年

81.7日

99.3日

東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2023年)」を参考に筆者作成

表の日数は、不動産会社に売却の依頼をしてから不動産売買契約が締結されるまでの平均日数です。

中古マンションと中古一戸建てでは売れる速度に違いがあり、マンションのほうが早く売れているとわかります。また、表の日数はあくまで首都圏のデータをもとにして計算されているため、地方での不動産売買にはさらに時間がかかるのではないかと推測できます。

引っ越したいのに家が売れない理由5選

引っ越したいのに家が売れない主な理由は、次の5つです。

  1. 相場よりも高い販売価格をつけている

  2. 建物や設備の状態が悪い

  3. 不動産会社の販売戦略が間違っている

  4. 駅が遠いなど立地が悪い

  5. 内覧の対応がよくない

なかなか売れない家を売却するには、まず売れない理由を理解しておかなければなりません。売れない理由を理解することで、どのような対策を講じればいいのかわかるようになります。

1.相場よりも高い販売価格をつけている

相場よりも高い販売価格で売り出していると、引っ越したくてもなかなか家は売れません。

売主としては少しでも高く不動産を売却したいと考えるのと同じく、買い手は少しでも安く購入したいと考えます。不動産の成約データはWebで簡単に調査できるため、買い手の多くは損をしないよう、あらかじめ不動産の相場を調べています。

高すぎる販売価格を設定していると、買い手はWebに掲載された情報を見ただけで購入しないと判断することも珍しくありません。引っ越したいのに家が売れないケースの多くは、相場よりも高い販売価格をつけているのが原因です。

2.建物や設備の状態が悪い

建物や設備の状態が悪い場合、修繕や取り換えの費用がかかるため引っ越したくてもなかなか売れません。

適切な販売価格をつけていても売れないケースとして、建物の設備や状態の悪さが原因となっている場合もあります。建物や設備の状態が悪いまま購入しまい、すぐに修繕や取り換えが必要になってしまうと費用の負担をしなければなりません。買い手は突発的な費用が発生するリスクを避ける傾向にあり、建物や設備の状態が悪いと購入を見送る可能性が高くなります。

また、建物や設備の状態の悪さは、不動産の雰囲気を悪化させる原因にもなります。不動産の雰囲気を購入判断の材料とする買い手もおり、この点においても売却が不利になってしまうと考えておきましょう。

3.不動産会社の販売戦略が間違っている

不動産会社の販売戦略が間違っていると、売れるはずの家でもなかなか売れなくなってしまいます。

販売戦略は不動産においても重要であり、間違った戦略をもとにした販売をおこなっていると家は売れません。たとえば、ワンルームや1Kなどの投資用マンションのチラシ広告を、ファミリー層が多い郊外の地域におこなったとしても効果は薄くなります。投資用マンションであれば、投資家がよく閲覧する投資用不動産サイトに掲載すべきでしょう。

不動産の販売を進める際には、不動産会社に販売戦略があるのか、戦略内容はどのようなものなのか確認しておくことが大切です。

4.駅が遠いなど立地が悪い

売却する不動産の立地が悪いと、売るのに時間がかかってしまいます。

不動産は売買価格が高く、誰も買える商品ではないため流通性が低いものとされています。適正な相場で売りに出したとしても、買い手の少なくなる条件が揃ってしまっているとなかなか売れません。

とくに駅が遠い、買物施設が近くにないなどの利便性の低さは売却の時間に大きく影響します。生活に不便だな、と感じる不動産を売却する際には、売却までの平均日数よりも時間がかかると考えておく必要があります。

5.内覧の対応がよくない

内覧の対応で買い手の心象を悪くしてしまうと、引っ越したくても家は売れません。

買い手は、不動産の購入をするか決断するために不動産を内覧します。買い手にとって非常に大切なイベントであり、内覧でいい印象を与えられなければ購入を見送られてしまいます。

内覧で悪い印象を与えてしまう主な例は、次のような行動です。

  • 室内や敷地の清掃、整理整頓をしていない

  • 室内の一部を見せない

  • 余計な発言をしてしまい買い手を不安にさせる

  • 積極的に話しかけすぎて買い手が室内をじっくり確認できない など

買い手にとっていい環境で内覧してもらえば、不動産に対していい印象が与えられるはずです。

引っ越したいのに家が売れないときの対処法7選

引っ越したいのに家が売れないときの対処法は、次の7つです。

  1. 販売価格を相場に合わせる

  2. 簡易的なリフォームをする

  3. ホームインスペクションをおこなう

  4. 住み替えの計画を変更する

  5. 売却の時期を見直す

  6. 買取を検討する

  7. 不動産会社を変更する

なかなか売れない家にも対処法はあり、最適な方法を選択すれば売却は可能です。どのような対処法があるのか確認し、家の売却を実現していきましょう。

1.販売価格を相場に合わせる

不動産の販売価格が高い場合、相場を確認して適正な価格に変更しましょう。

もし売れない家の相場がわからない場合は、国土交通省が運営するWebサイト「不動産情報ライブラリ」を参考にしてみてください。不動産情報ライブラリには、公示価格や不動産の成約データが掲載されています。

公示価格とは、国土交通省が発表している価格で、不動産の売買価格を決める基準となる数字です。また、売りに出している家と似たような成約事例が見つかれば相場の目安となります。ただし、不動産情報ライブラリを利用した相場確認はあくまで目安です。正確な相場が知りたい場合は、不動産会社の査定を再度受けましょう。

2.簡易的なリフォームをする

建物や設備の状態が悪い場合は、簡易的なリフォームを実施しましょう。

リフォームは日本語に訳すと「改善」という意味合いをもち、本来は大規模な工事ではなく建物や設備の修復を指します。状態がよいと買い手は修繕リスクを考慮しなくてもよくなり、売れる可能性が高くなるでしょう。また、リフォームを実施すると不動産の見た目もよくなり、買い手の購入意欲が高まるのもいい効果といえます。

ただし、実施するのは簡易的なリフォームにとどめておきましょう。設備の交換までおこなってしまうと多額の費用がかかってしまって手元に残るお金が減ってしまいます。リフォームする際には、どの部分を修繕すれば効果的なのか、不動産会社に相談しつつ進めましょう。

3.ホームインスペクションをおこなう

建物が古い場合、ホームインスペクションを実施するといいでしょう。

ホームインスペクションとは、住宅診断であり住宅に施す検査全般を指します。ホームインスペクションは基礎や外壁などの住宅の場所ごとにあるひび割れ、欠損のような劣化しているところを目視調査で状態を判断する検査としています。つまり、家が安全に利用できるか判断するための検査です。

ホームインスペクションを受けて家の状態が良好と判断されれば、買い手は築年数が経過している家でも安心して購入できます。

ただし、ホームインスペクションを受ける際には、費用の見積もりを取得しましょう。点検する業者や項目の多さによっては、多額の費用が必要になるからです。

4.住み替えの計画を変更する

住み替えを目的に家を売り出しているのであれば、計画の変更を検討してみましょう。

売却資金を利用し新居を購入する住み替えを検討する場合、家が売れないと引っ越しできません。家がなかなか売れない場合、購入計画よりも売却計画から練り直して、スケジュール変更を考える必要があります。余裕のないスケジュールで進めてしまうと、売り急いでしまって相場より安く売却してしまうおそれがあります。

住み替えを練り直すときには、一度計画をリセットする気持ちで進めていくといいでしょう。また、再度計画を立てる場合、不動産会社とともに進めていきましょう。プロのアドバイスを聞きつつ計画すれば、スムーズに住み替えが実現するはずです。

5.売却の時期を見直す

家がなかなか売れず引っ越しできない場合、売却の時期を見直すのも方法のひとつです。

不動産には、売りやすい時期と売りにくい時期が存在します。たとえば、新年度から新生活を始めたいと考えている人は、4月に不動産の引渡しを受けるために2月~3月には売買契約を締結しなければなりません。そのため、2月~3月には買い急いでいる人が、ほかの月よりも多い傾向にあります。

売却を急いでいない人であれば一度売却を中断し、不動産が売れやすい時期に再度販売を開始するのもいいでしょう。

6.買取を検討する

家が長期間にわたって売れないのであれば、不動産買取の利用を検討しましょう。

不動産買取を利用すれば、すぐに現金化できます。買取業者はビジネスチャンスがあると考えれば、すぐに不動産を購入してくれます。買取を依頼する買取業者によっては、1ヶ月未満で買い取ってもらうことも可能です。

ただし、不動産買取の場合、売れる金額が低くなってしまいます。高く買い取ってもらうためにも、複数の買取業者から買取査定を受けましょう。見積もりを比較すれば、高く買い取ってくれる買取業者がどこなのか判断しやすくなります。

7.不動産会社を変更する

家がなかなか売れず引っ越しできない場合、不動産会社の変更も検討してみましょう。

長期間にわたって家が売れない原因として、不動産会社の販売戦略が適切でなかったり、そもそも販売活動をしていなかったりするケースがあります。

不動産会社の販売力に不安がある場合、媒介契約の期間満了まで待って更新しないと不動産会社に伝えます。次に依頼する不動産会社では失敗しないよう、複数社に査定を依頼して担当者の質を見極めましょう。

引っ越したいのに家が売れないとどうなるのか?

引っ越したいのに家が売れない場合、次のようなことが起きてしまいます。

  • 新居の購入や建築費用にあてられない

  • 固定資産税や住宅ローンの二重払いになる

  • 管理が負担になる

売れ残ってしまうと、さまざまなデメリットが発生します。デメリットの影響を少なくするよう、家を売却するときには対処法を実践していきましょう。

新居の購入や建築費用にあてられない

住み替えを計画しているときに家が売れないと、新居の購入費用や建築費用にあてられません。

売却資金を当てにしなくても新居を購入できればいいのですが、売ったお金が必要であれば住み替えの計画がストップしてしまいます。

住み替えの計画を立てる際にはお金の流れだけでなく、いつ頃売れるのか、いつ新居を購入するのかなどスケジュールをしっかりと考慮しておきましょう。スケジュールを明確にしておけば売り急いでしまったり、焦って購入契約をしたりしなくなります。

固定資産税や住宅ローンの二重払いになる

新居を先に購入できたとしても、家がなかなか売れないと固定資産税や住宅ローンの二重払いになるおそれもあります。

売れない家の固定資産税の納税や住宅ローンの返済が続いたままで新居を購入したら、ランニングコストが二重になってしまいます。

家を売却する際には相場をしっかりと調べ、適正な販売価格で売り出しましょう。長期間にわたって売れないときには、住み替え計画に不動産買取を考慮しておくのも方法のひとつです。

管理が負担になる

住宅ローンの残っていない家から住み替えたとしても、元自宅を空き家にしていると管理が負担になります。

建築基準法第8条により、建物の所有者は建物とその建物の敷地を適法な状態を保たなければならないと規定しています。空き家にしても、建物を適法な状態に保たなければならず放置してはいけません。建物は閉め切って湿気が溜まると痛みだしてしまうため、定期的に空気を入れ替えに行く必要があります。また、敷地の草刈りや樹木の剪定などもおこなわなければなりません。

元自宅が遠方である場合、管理するだけでも大きな手間です。管理の委託も可能ですが、多額の費用がかかってしまいます。建物とその敷地の管理はかなりの負担になると理解し、できる限り元自宅を適正価格で売り出して早めに処分できるようにしておきましょう。

住宅ローンが残っている家から引っ越したい場合は?

住宅ローンが残っている家から引っ越したい場合、次のような方法が考えられます。

  • 自宅の売却資金や自己資金を住宅ローンの返済にあてる

  • 自宅を賃貸にして賃料を得る

  • 住み替えローンを利用して新居を購入する

家に住宅ローンが残っていても、引っ越しする方法はあるものの注意点もあります。たとえば、住宅ローンが残っているときに賃貸に出すケースです。ただし、家を購入するにあたって住宅ローンを利用していた場合、原則的に賃貸に出すのは禁止されています。金融機関の許可なく勝手に賃貸に出すと、住宅ローンの一括返済を求められる可能性もあり危険です。

また、住み替えローンの利用時も気をつけなければならないポイントがあります。住み替えローンは、住み替え先の不動産を担保にして、自宅の住宅ローンを融資で一括返済できるローンです。非常に便利なローンですが、住み替えローンの借入費用や住宅ローンの一括返済費用がかかります。それぞれの費用は高額になるケースもあるため、費用の見積もりを取得してから進めましょう。

急いで引っ越したくてもやってはいけないこと

急いで引っ越したいとしても、次のようなことはやってはいけません。

  • 急いで売却する

  • 無計画のまま引っ越しをする

  • リノベーションする

家がなかなか売れないからといって間違った対処をしてしまうと、かえって状況が悪くなってしまうこともあります。やってはいけないことを理解し、間違った行動をしないようにしていきましょう。

急いで売却する

急いで引っ越したいとしても、急いで売却するのはやめましょう。

売り急いでしまうと相場よりも低い金額で売ってしまったり、新居の購入契約の内容を精査せずに購入したりしてしまいます。どちらのケースも後悔する可能性が高く、新居に引っ越しできても嫌な思いを引きずってしまうおそれがあります。

家を売るには2ヶ月~4ヶ月程度かかると考え、長期的な売却計画を立てましょう。根拠もなく1ヶ月程度で売却できるだろうと、軽く考えていると気持ちだけ焦ってしまいます。

無計画のまま引っ越しをする

無計画のまま引っ越してしまうと、家が売れないときにさまざまな問題が起きてしまいます。

住み替えするには、詳細な費用の計算やスケジュール管理など綿密な計画が必要です。無計画に引っ越しをおこなうと、ランニングコストの二重払いを強いられたり、空き家の管理の負担に耐えられなくなってしまったりします。

住み替えの計画は不動産会社と打ち合わせしながら、じっくりと決めていきましょう。とくに費用面とスケジュール面は妥協せずに、計画していくことが大切です。

リノベーションする

家の状態が悪いとしても、独断でリノベーションするのは避けましょう。

リノベーションとは、家の価値を向上させるほどの大がかりな工事です。実施すれば新築同様の内装になりますが、工事に必要な費用は高額になります。リノベーションを実施しても売れない場合は大きな損害となり、かりに売れたとしても工事費用を払った関係で売却資金が大幅に減ってしまいます。

費用対効果を考えるとリノベーションは決して優れているとはいえず、室内や設備の状態をよくしたいのであれば簡易的なリフォームにとどめておきましょう。もし状態が非常に悪い一戸建てであれば、引っ越し後に解体して土地として売却するのもいいでしょう。

まとめ

引っ越したいのに家が売れないケースは多くあり、売れない家には一定の傾向があります。

相場より高い販売価格を設定していたり、建物や設備の状態が悪かったりするなどです。しかし、売れない理由に該当していたとしても、対処法があるため売却を諦める必要はありません。

ただし、家が売れないとランニングコストの二重払い、空き家の管理など負担が大きくなるおそれがあり、早めに対処しましょう。早めに対処すれば、スムーズな売却につながり負担も軽減します。

また、自分だけでは対処できないと感じたときには、不動産会社に相談しましょう。プロの視点から、よりよい対処法のアドバイスをしてくれるはずです。引っ越したいのに家が売れないとならないよう、しっかりと準備と対処を実行していくことが大切です。