「住まなくなった家をどう処分したらいいの?」

「相続した空家は放置しておいても問題ないの?」

空家の所有者の中には、このような悩みを持っている人が多くいるでしょう。

総務省によると、令和5年の国内における空家数は約900万戸で、過去最多になったとの発表がありました。その中でも、利用目的のない空家は385万戸と2018年と比べ37万戸増加しました。このように、空家は日本全体の問題となっており、空家を放置しているとさまざまなリスクを背負うことになります。

この記事では、空家を売却する5つの方法や放置すると発生するリスクなどについて解説します。空家の処分に困っている人は、この記事を参考に売却を検討してみてはいかがでしょうか。

空家を売却する方法5選

空家の売却方法には、主に次の5つが挙げられます。

  • そのまま売却する

  • リフォームをして売却する

  • 解体後に更地にして売却する

  • 不動産会社に買い取ってもらう

  • 個人間売買を行う

それぞれの売却方法を具体的に解説します。

そのまま売却する

空家の売却方法の1つ目は、解体やリフォームをせずにそのまま売却する方法です。手を加えずに売却ができるため、最も手間がかからない売却方法と言えます。

そのまま売却するメリットは、手間に加え修繕費もかからない点です。しかし、そのまま売却すると購入者側に修繕費や解体費用がかかるため、売却価格を下げないと売れない可能性があります。

空家をそのまま売却するコツとしては、できるだけ室内をきれいに保っておくことです。特に、古い空家は見た目の印象が悪くなるケースが多いため、室内外の清掃やこまめな換気を心がけましょう。

リフォームをして売却する

空家の売却方法として、リフォームをした後に売却することも挙げられます。見た目の印象を良くするためにリフォームを行うのです。

リフォームを行うメリットは、外観や内装、設備などが新品になるため物件の第一印象が良くなることです。リフォーム代を上乗せした価格設定ができるので、工事代金の回収も可能です。ただし、リフォーム内容が買主の希望と合わなければ購入に至らない可能性があります。また、売却前に費用がかかる点がデメリットとして挙げられるため、手持ちの資金に不安がある人にとっては不向きな方法です。

リスクを避けるためにも、壁紙やフローリングなど費用がかからない割に見た目が大きく変わる部分に手を加えてみるのもいいでしょう。

解体後に更地にして売却する

空家を売却する3つ目の選択肢は、空家を解体後に更地にして売却する方法です。

更地にして売却するメリットは、買主が解体費用を負担する必要がなくなる点です。また、築年数が古い空家を解体することで、家を維持管理する手間が省けるという点もメリットです。デメリットとしては、売却前に売主が解体費用を負担しなければならない点と、更地にすると固定資産税の減税措置の対象ではなくなり負担額が上がってしまうことです。

空家を更地にすれば新築用地として検討している買主にとってはメリットが多いですが、リフォームを検討している人は購入対象に入りません。空家の築年数や状態によって、解体するかどうかを判断する必要があるでしょう。

不動産会社に買い取ってもらう

空家の売却方法4つ目は、不動産会社に買い取ってもらう方法です。不動産会社による買い取りは、一般のお客様に売却する方法とは違い不動産会社が提示した金額に同意すれば売却が進みます。

この方法は、できるだけ早く空家を現金化したい場合に有効です。提示された金額に同意すれば売買契約に進むことができ、最短1週間程度で残代金を受け取れるケースもあります。しかし、不動産会社による買い取りは、売却価格が相場の6〜7割ほどになってしまう点に注意が必要です。不動産会社は転売目的で仕入れるため、相場より低い金額で買い取らなければ利益が得られないのです。

このように、不動産会社による買い取りは短期間で現金化できる反面、価格が下がってしまうおそれがあります。本当に今すぐ現金が必要なのかを慎重に考え、現状に合わせて選択するようにしましょう。

個人間売買を行う

空家を個人間売買で売却する方法も1つの選択肢です。知り合いや親族、親子間など取引相手が決まっている場合におすすめの売却方法です。

個人間売買のメリットは、不動産会社が仲介に入らないため仲介手数料を支払う必要がない点です。また、物件価格が市場価格にとらわれにくく、双方の希望に沿った金額で取引できる点も個人間売買のメリットです。デメリットは、不動産会社が仲介に入らないことによる専門知識不足や、法的リスクです。書類や手続きの不備があった場合、大きなトラブルに発展する可能性があります。

個人間売買は専門知識がなければ行うことが難しい売却方法です。そのため、個人間売買を行う場合は、事前準備やリスクに対する対策を十分に講じておくことが重要です。

空家を売却せずに放置すると発生する5つのリスク

空家を売却せずに放置することで、以下のリスクが発生します。

  • 資産価値が低下する

  • 固定資産税の負担が続く

  • 固定資産税の軽減措置が受けられなくなり維持コストが上がる

  • 近隣に迷惑がかかる

  • 不法侵入者の目に留まり犯罪の温床になる恐れがある

具体的にどのようなリスクなのかを解説します。

資産価値が低下する

空家を売却せずに放置すると、不動産の資産価値が低下してしまいます。家に住んでいれば、傷んでいる箇所の修繕や換気ができますが、空家の状態ではこまめに管理できません。

家が傷んでしまうと購入希望者の印象が悪くなり、売却価格の低下につながります。さらに、設備の劣化やシロアリなどの害虫が発生する可能性もあるため、買主が購入を見送るケースが多くなるのです。

資産価値が下がると売却時に手取り額が減ってしまうため、少しでも高値で売却したい人は早い段階での売却をおすすめします。

固定資産税の負担が続く

空家を放置するリスクの2つ目は、固定資産税の支払いによる負担が続くことです。不動産の所有者には固定資産税を納める義務があり、不動産によっては年間数十万円の負担が続くことがあります。

特に、資産価値が高い都市部では固定資産税の負担が大きい傾向にあります。固定資産税に加え、建物の修繕費や庭の除草などの負担が続くと家計が圧迫され、生活が苦しくなることがあるでしょう。このように、住まなくなってからも所有者に固定資産税の負担が続くことが、空家放置のリスクです。

固定資産税の軽減措置が受けられなくなり維持コストが上がる

空家を売却せずに放置していると、固定資産税の軽減措置が受けられなくなり維持コストが上がってしまうおそれがあります。

宅地に建っている建物は、特例により固定資産税が最大6分の1、都市計画税が最大3分の1に軽減されています。しかし、放置されている空家が周辺に危険を及ぼす「特定空き家」に指定されると、税金の軽減措置が受けられなくなり固定資産税の負担が増額されてしまうのです。さらに、空家の適切な管理を怠っていると自治体が強制的に空家を解体し、その費用を所有者に請求してくるケースがあります。

このように、空家を放置しているだけで維持コストが上がり、自治体による解体費用を負担しなければいけない可能性があります。空家の放置は、費用面でも大きなリスクがあることがわかります。

近隣に迷惑がかかる

空家を放置することで近隣に迷惑がかかる点もリスクの1つです。空家が原因で第三者に損害を与えてしまうと、所有者が責任を負わなければなりません。

近隣にかかる迷惑の原因には以下が考えられます。

  • 害獣や害虫が発生する

  • 建物が老朽化し屋根や外壁が崩れ落ちる

  • 庭の雑草が生い茂る

上記が原因で周りの建物や通行人に危害が及んだり、景観が悪くなったりする可能性が考えられます。家は人が住まなくなると急激に劣化が進むため「知らない間に怪我を負わせていた」などのことも起こり得るでしょう。

不法侵入者の目に留まり犯罪の温床になる恐れがある

空家を売却せずに放置する5つ目のリスクは、空家が犯罪の温床になるおそれがあることです。放置された空家が不法侵入者の目に留まり、拠点にされることがあります。

たとえば、空家の中で大麻が栽培されたり、犯罪者の拠点として使われたりすることがあります。それにより所有者も共犯ではないかと疑われてしまう可能性もあるでしょう。さらに、空家が放火されることも考えられ、周辺に延焼するとその責任も問われることになります。

空家を放置することによる治安悪化も、リスクとして理解しておきましょう。

空家を高値で売却するポイント

空家を高値で売却するためには、以下の3点を心がけてみましょう。

  • 家財道具などを撤去する

  • ハウスクリーニングを行う

  • 特別控除や特例を活用する

それぞれのポイントを詳しく解説します。

家財道具などを撤去する

空家を高値で売却する1つ目のポイントは、家電や家財道具を撤去しておくことです。家財道具が家の中に放置されたままだと、散らかった印象になってしまい物件自体のイメージが悪くなってしまうのです。

家財道具を撤去する方法には、主に次の5つが挙げられます。

  • 自治体のゴミ回収を利用する

  • リサイクルショップに持ち込む

  • 売却を依頼している不動産会社に相談する

  • 不用品回収業者に依頼する

  • ネットオークションやフリマアプリを利用する

おすすめは、売却を依頼している不動産会社に相談することです。提携している不用品回収業者を紹介してくれることがあり、売却のスケジュールに合わせた撤去も行ってくれます。できるだけ早く家財道具を撤去して、印象が良い状態で販売活動を行うことが重要です。

ハウスクリーニングを行う

見た目がきれいな空家は、そうでない物件と比べて高値で取引される可能性が高いです。長い期間空家の状態で掃除が行き届いていない家は、買主にとってイメージダウンにつながるからです。

専門業者にハウスクリーニングを行ってもらうことが一番きれいになる方法ですが、費用面がネックになる場合は「水回りだけ」など部分的に行ってもらうことも可能です。できる範囲を自ら清掃し、業者に依頼する部分を減らすことでハウスクリーニング費用を節約できます。

リフォームほどの費用がかけられない人は、ハウスクリーニングによるイメージアップを試してみてはいかがでしょうか。

特別控除や特例を活用する

空家の売却時に手元の資金を増やすコツとして、特別控除や特例を活用する方法があります。特別控除や特例を活用して譲渡所得(売却時の利益)を減らせば、所得税や住民税の支払いを軽減できるのです。

空家の売却でおすすめの特別控除や特例は次の3つです。

  • 居住用財産の3,000万円特別控除

  • 相続空き家の3,000万円特別控除

  • 10年超所有軽減税率の特例

特に「相続空き家の3,000万円特別控除」は、相続した空家を売却した際に利用できる特別控除です。適用期間や適用条件がありますが、うまく活用すれば大きな節税につながります。

空家の売却時にどの特例が利用できるのかは、不動産会社の担当者や税理士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談すると良いでしょう。

まとめ

この記事では、空家を売却する方法や放置するリスク、高値で売却するポイントについて解説しました。空家を売却するには、そのまま売却する方法やリフォームして売却する方法、解体して更地にして売却する方法などがあります。また、空家を売却せずに放置していると、近隣に迷惑がかかったり、不法侵入者による犯罪の温床になるおそれがあります。

空家を放置せずにできるだけ早く対処すれば、さまざまなメリットが得られます。空家の売却に困っている人は、この記事を参考に自分に合った売却方法を見つけてみましょう。