マイホームを売却しても、住宅ローンを一括返済できないケースがあります。住宅ローンを完済しなければマイホームを売却することができないため、できるだけ早い段階で対処しなければいけません。
この記事では、マイホームの売却時に住宅ローンを一括返済できない場合の対処方法について解説します。また、売却時の注意点や流れについても解説していますので、住宅ローンの残高が多く売却に困っている人は、この記事を参考に売却を進めてみてはいかがでしょうか。
住宅ローンをマイホームの売却時に一括返済できない場合の対処法4選
マイホームを売却しても住宅ローンを一括返済できない場合、以下の4つの対処法が考えられます。
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自己資金を用意する
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住み替えローンを利用する
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任意売却を利用する
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無担保ローンを利用する
上記の対処法がどのようなものなのかを詳しく解説します。
自己資金を用意する
対処法の1つ目は、売却価格で返済できない分を自己資金で補う方法です。自己資金で補うためには、以下の計算式を使います。
自己資金額=売却価格−諸費用−住宅ローン残高
例を挙げると、売却価格が5,000万円、諸費用が200万円、住宅ローン残高が6,000万円の場合は以下のようになります。
5,000万円−200万円−6,000万円=▲1,200万円(用意する自己資金額)
この例では、自己資金学を1,200万円用意すれば良いことがわかりました。自己資金を用意して返済する際の注意点は、諸費用に気をつけることです。売却時に100万円以上の諸費用がかかるケースもあるため、事前に諸費用のシミュレーションを行うことが重要です。
住み替えローンを利用する
住宅ローンを一括返済できないときは、住み替えローンの利用も検討しましょう。住み替えローンとは、新しい住まいの購入資金に加えて売却するマイホームの残債分も借り入れる住宅ローンです。住み替えローンを利用すれば、自己資金をその後の生活費に回すこともできます。
住み替えローンのメリットは、二重ローンにならずに済む点や、自己資金が少なくても住宅ローンを完済できる点です。ただし、住み替えローンは借入額が高額になるため審査が厳しい傾向にあり、金利が高く設定されています。
住み替えローンを利用する際は、メリット・デメリットに注意して慎重に検討するようにしましょう。
任意売却を利用する
住宅ローンを返済するための資金が用意できず、どの融資も利用できない場合は、任意売却を利用する方法があります。任意売却とは、金融機関から同意を得て不動産を売却することで抵当権を抹消してもらうことです。抵当権とは不動産に設定された担保権のことで、抵当権抹消に足りなかった分の費用は、別途金融機関に返済していくことになります。
任意売却は競売と違い通常の売却方法を利用できるため、相場に近い金額で売却することができます。また、完済に足りない分を分割返済できるので自己資金がなくても売却が可能です。しかし、任意売却を利用すると利用者の個人信用情報に傷がつきます。信用情報に傷がつくとしばらくはローンが組めなくなるため、任意売却はできるだけ利用しないことをおすすめします。
無担保ローンを利用する
物件を売却しても住宅ローンを返済できない場合、無担保ローンを利用する方法もあります。無担保ローンとは、その名の通り担保なしで利用できるローン商品のことです。
具体的には、住宅ローンの完済に300万円が必要なときに、無担保ローンを利用して300万円を捻出するという方法です。その300万円で住宅ローンが返済できるため、その後は無担保ローンを返済していくという流れになります。
無担保ローンを利用すれば自己資金がなくとも住宅ローンを完済できますが、金利が高く利用可能額が低く設定されています。注意点を十分に理解して利用しましょう。
住宅ローンを売却時に一括返済できないときの注意点
住宅ローンの一括返済が難しい場合に注意するべき点は次の2つです。
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ローン滞納により競売にかけられる可能性がある
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売却時の費用も含めてシミュレーションする
それぞれを詳しく解説します。
ローン滞納により競売にかけられる可能性がある
マイホームを売却しても住宅ローンを一括返済できないと悩んでいるうちに、住宅ローンを滞納してしまうと、最終的に競売にかけられてしまうケースがあります。
競売とは、返済が滞った際に、抵当権を設定している不動産を強制的に売却して債務を回収する方法です。任意売却は相場に近い金額で売却できますが、競売の場合は相場の50%ほどで落札されることが多いため、債務が重くなってしまいます。
住宅ローンの一括返済が難しい場合は任意売却という選択肢がありますが、任意売却の利用には期限があります。住宅ローン返済の滞納が続くと、任意売却ではなく金融機関により競売にかけられてしまう可能性があるため、返済が厳しくなった時点で早めに対応することが重要です。
売却時の費用も含めてシミュレーションする
住宅ローンの一括返済ができず、住み替えローンや無担保ローン、任意売却を利用する際には、売却にかかる諸費用がかかることを理解しておきましょう。売却時の諸費用は物件価格の5%前後がかかるため、売却価格が高額になるほど多くの諸費用が発生します。
売却時の諸費用には、主に以下が挙げられます。
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仲介手数料
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印紙代
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登録免許税
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引っ越し代など
上記の中で最も負担が大きいのは仲介手数料です。仲介手数料の負担額は以下の表を参考にしてください。
物件価格 |
仲介手数料の上限額 |
400万円超 |
物件価格✕3%+6万円+消費税 |
200万円超〜400万円以下 |
物件価格✕4%+2万円+消費税 |
200万円以下 |
物件価格✕5%+消費税 |
たとえば、物件価格が2,000万円の場合は726,000円、3,000万円の場合は1,056,000円、5,000万円の場合は1,716,000万円の仲介手数料がかかります。売却価格とは別に資金を捻出する際は、諸費用のシミュレーションを入念に行う必要があります。
住宅ローンが残っている場合の売却の流れ
住宅ローンが残っている場合、以下の流れに沿って売却が進みます。
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住宅ローン残高を確認する
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不動産一括査定を依頼し不動産会社を選定する
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媒介契約を締結し販売を開始する
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住み替え先を探しだす
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売り先行か買い先行かを決める
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引き渡しを行い住宅ローンを完済する
スムーズにマイホームの売却ができるよう、ここで全体像を把握しておきましょう。
住宅ローン残高を確認する
住宅ローンの返済中に売却する最初のステップは、住宅ローン残高を確認することです。住宅ローンを完済しなければマイホームの売却ができないため、返済額を把握する必要があるのです。
住宅ローンの残高を確認する方法は主に次の3つです。
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ローンを組んだ際に金融機関から発行される返済予定表を確認する
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毎年金融機関から送られてくる残高証明書を確認する
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インターネットバンキングを利用している場合、金融機関のウェブサイトを確認する
住宅ローン残高の金額により、今後の売却活動の方針が決まります。不動産会社へ査定依頼を行う前に、住宅ローン残高の確認を忘れないようにしましょう。
不動産一括査定を依頼し不動産会社を選定する
住宅ローン残高が確認できれば、次に不動産査定を依頼します。不動産査定は、簡単な手続きで複数社に査定を申し込める不動産一括査定がおすすめです。
不動産一括査定を利用すれば、それぞれの査定結果を比較検討できるメリットがあります。また、複数社から話を聞くことで対応の質を見極めることができ、自分に合った不動産会社を選べるでしょう。ただし、不動産一括査定は、査定サイトと提携している不動産会社にしか依頼できないので、査定依頼を出したい特定の不動産会社がある場合は不向きな方法です。
不動産売却に慣れていないという人は、不動産一括査定でできるだけ多くの不動産会社から話を聞くことを心がけましょう。
媒介契約を締結し販売を開始する
不動産一括査定で実際に販売活動を依頼する不動産会社が決まれば、その不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約の内容は次の表で比較してください。
専属専任媒介契約 |
専任媒介契約 |
一般媒介契約 |
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依頼可能社数 |
1社 |
1社 |
制限なし |
不動産流通機構への登録義務 |
媒介契約から5日以内 |
媒介契約から7日以内 |
登録義務なし |
募集状況の報告義務 |
7日に1回 |
14日に1回 |
報告義務なし |
自ら購入者を見つけてきた場合 |
自ら探した相手と 契約不可 |
自ら探した相手と 契約可 |
自ら探した相手と 契約可 |
販売状況を把握したい人や、不動産会社主導で販売活動を行ってほしい人は「専任媒介契約」か「専属専任媒介契約」を選ぶと良いでしょう。一方、不動産売却に慣れていて、自ら多くの不動産会社と連絡を取り合える人は「一般媒介契約」がおすすめです。
どの媒介契約にもメリット・デメリットがあるため、不動産会社と相談して自分に合った媒介契約を締結しましょう。
住み替え先を探しだす
売却を依頼する不動産会社と媒介契約を締結し、販売活動を始めるタイミングで、住み替え先を探しだします。このタイミングで探し出す理由としては、媒介契約を締結した段階で売り出し価格が決定するため、住み替え先の条件が整理できるのです。
住み替え先を探す方法として、主に以下が挙げられます。
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売却を依頼した不動産会社に探してもらう
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インターネットで物件情報を収集する
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ポストや新聞折込のチラシで探す
住み替え先を探する際は、希望条件を事前にリストアップしておくとスムーズに物件探しが進められます。予算や希望エリア、交通の利便性や理想の間取りなどを家族で話し合っておくと良いでしょう。
売り先行か買い先行かを決める
住宅ローンが残っているマイホームを売却する上で、「売り先行」か「買い先行」かを決めることも重要なステップです。
売り先行とは、住み替える際に先にマイホームの売却を進める方法です。売り先行は住み替えの資金計画が立てやすく、新居にあてる費用の計算がしやすいというメリットがあります。ただし、売り先行の場合は仮住まいが必要になるケースがあるため、資金にある程度の余裕があるときに利用することをおすすめします。
一方、買い先行とはマイホームの売却より先に、新居の購入を進める方法です。買い先行を利用すれば、住み替え先を時間をかけてじっくり選ぶことができますが、売り先行に比べて資金計画が立てにくいことや、二重ローンになる可能性がある点がデメリットです。買い先行の場合は、住宅ローン残高に注意し、完済できる資金を残しておくことが重要です。
引き渡しを行い住宅ローンを完済する
マイホームの売却が決まれば、引き渡しに向けて資金を用意します。引き渡しのタイミングで住宅ローンを完済しなければ、抵当権が抹消できず引き渡しが完了しないのです。
具体的には、残代金の受領と引き渡しを行う「決済日」までに、住宅ローンが完済できる資金を口座に入金しておきます。たとえば、売却価格が2,500万円、諸費用が100万円、住宅ローン残高が3,000万円のケースでは600万円を事前に用意しておきます。もし用意できない場合は、住み替えローンや無担保ローンを利用しましょう。
引き渡し時に住宅ローンが完済できなければ、契約違反となり違約金が発生してしまいます。そうならないためにも、事前に資金計画をしっかり立てておくことが重要です。
まとめ
この記事では、住宅ローンを一括返済できないケースでどのような対処をするのかを解説しました。売却価格だけで一括返済できない場合、自己資金を用意したり、住み替えローンや任意売却を利用したりします。一括返済できないからと住宅ローンの支払いが滞ってしまうと、競売にかけられることもあるため、返済に困ったときは早めに相談することがおすすめです。
また、住宅ローンが残っているケースでの売却の流れについても解説しました。住宅ローンが残っている状態でもマイホームをスムーズに売却できるよう、できるだけ早い段階で不動産会社や金融機関に相談するようにしましょう。