マンション売却を検討している人の中には「売却の全体像を知りたい」「マンション売却にどの書類が必要なのかわからない」と考えている方が多いのではないでしょうか。
マンション売却には3ヶ月から半年近くかかることが多く、全体像を知っておかなければスムーズに売却が進まず、相場より低い成約価格になってしまうかもしれません。
この記事では、マンション売却の流れを8ステップに分けて詳しく解説します。また、マンションを高く売るポイントや売却時の注意点も紹介しています。マンション売却の全体像を掴み、より高い金額で成約したいという方は、本記事を最後まで読み参考にしてください。
マンション売却の流れ8ステップ
ここではマンション売却の流れを8ステップに分けて解説します。
資金計画や書類準備などの事前準備を行う
マンションをスムーズに売却するためには、事前準備が重要です。まずは査定依頼を出す前に、物件に関する書類を準備しましょう。準備しておくと良い主な書類は以下のとおりです。
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登記簿謄本(全部事項証明書)
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公図・建物図面・地積測量図
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固定資産評価証明書
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購入時の売買契約書・重要事項説明書
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物件パンフレット
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管理規約・細則
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権利証
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身分証明書
また、購入時に組んだ住宅ローン残高をあらかじめ確認し、資金計画を立てましょう。たとえば、住宅ローン残高が3,000万円であれば、物件価格と自己資金を合わせて3,000万円以上なければ全額返済することができません。資金計画は不動産会社に相談することもできますが、まずは自分で資金繰りを把握しておくことが重要です。
査定を依頼する
書類と資金計画の準備ができれば、不動産会社に査定を依頼します。査定とは、周辺相場や過去の成約事例から、物件の売出価格を見積もることです。
不動産一括査定を利用する
査定依頼の方法としては、不動産会社一括査定の利用がおすすめです。不動産一括査定とは、複数の不動産会社へ同時に査定依頼できるシステムです。それぞれの不動産会社に足を運ばなくても、不動産一括査定を利用すれば一度にコンタクトが取れるため、査定依頼の手間を大幅に削減することができます。
不動産一括査定は、以下の手順で簡単に査定を申し込めます。
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不動産一括査定サイトから査定する物件情報を入力する
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お客様情報を入力する
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査定会社を選択して申し込みの完了
査定依頼をお願いしたい特定の不動産会社が決まっていない場合や、さまざまな不動産会社から査定結果を得たい場合は、不動産一括査定を利用してみましょう。
「机上査定」または「訪問査定」を受ける
マンションの査定には「机上査定」と「訪問査定」の2種類があります。
机上査定とは、担当者が現地に訪れることなく周辺相場状況などを参考に不動産価格を算出する査定方法で、1〜3日で査定結果を提示してもらえます。すぐに査定結果を知りたいという方は、机上査定が向いています。ただし、机上査定は不動産会社が実際に現場を見ずに査定を行うため、査定の精度にばらつきが出てしまう点に注意が必要です。
一方、訪問査定とは、担当者が実際に物件を訪問・調査をした後に査定結果を算出する方法です。現地に出向き詳細な調査を行うため、査定結果が出るまで5〜10日程度かかります。訪問査定は、資料だけでは確認できない物件の状況を現地で詳しく調査するため、成約価格に近い査定結果を得られることが特徴です。
「1日でも早く査定結果が知りたい」など特段の事情がない限り、成約価格に近い結果が得られる訪問査定を依頼すると良いでしょう。
不動産会社を選定する
不動産一括査定を利用して複数社から査定結果が届けば、販売活動を依頼する不動産会社を選びます。
不動産会社を選ぶ基準は、主に以下が挙げられます。
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マンションの売却が得意か
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物件の周辺エリアに精通しているか
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熱心に動いてくれるか
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言葉遣いや態度は悪くないか
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不動産知識が豊富か
特に、マンション売却が得意な不動産会社かどうかを見極めることが重要です。
不動産会社と媒介契約を締結する
販売活動を依頼する会社が決まれば、次に不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約の種類には3種類があり、それぞれの特徴は以下の表の通りです。
専属専任媒介契約 |
専任媒介契約 |
一般媒介契約 |
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依頼可能社数 |
1社 |
1社 |
制限なし |
不動産流通機構への登録義務 |
媒介契約から5日以内 |
媒介契約から7日以内 |
登録義務なし |
募集状況の報告義務 |
7日に1回 |
14日に1回 |
報告義務なし |
自ら購入者を見つけてきた場合 |
自ら探した相手と 契約不可 |
自ら探した相手と 契約可 |
自ら探した相手と 契約可 |
「販売状況を詳しく把握したい」「不動産会社に販売を引っ張ってもらいたい」という人は専任媒介契約か専属専任媒介契約を選びましょう。一方、複数の不動産会社と連絡することに抵抗がない人や、自分が主導権を握って販売活動を行いたい人は一般媒介契約を選ぶと良いでしょう。
売出価格を決めマンションの販売活動を行う
販売活動を依頼する不動産会社が決まれば、売出価格を設定し販売活動を開始します。売出価格は不動産会社と相談して決めますが、高すぎると売れ残り、安すぎると損をしてしまう可能性があります。そのため、適切な売出価格を設定できるよう、自分でも周辺相場や競合物件を調べておきましょう。
販売活動が始まると、購入希望者が内覧に訪れます。内覧時は事前準備をしっかり行い、物件の印象を良くすることを心がけましょう。たとえば、内覧前に室内の掃除を徹底したり、ペットを飼っている場合は誰かに預けたりすれば、購入希望者が気持ちよく内覧できます。
不動産会社に販売活動を丸投げするのではなく、自分もできる限りの行動を起こすことでマンションの早期売却につなげましょう。
買主と売買契約を締結する
マンションの販売活動を経て無事買主が決まれば、次に売買契約を締結します。売買契約は、売主、買主、不動産会社の3者が揃った状態で行うのが一般的です。
重要事項説明を受ける
売買契約に先立ち、不動産会社から重要事項説明を受けます。重要事項説明書とは、売買契約までに宅地建物取引士から物件についての重要な事項の説明を受けることです。
重要事項説明では、大きく3つの内容が説明されます。
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土地・建物・権利関係など物件に関する説明
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手付金や契約解除に関する内容など取引条件の説明
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特約条項や管理規約などその他の説明
どの内容も売却に関して重要な内容のため、取引を進めるにあたりしっかり理解しておきましょう。
売買契約を締結し手付金を受領する
重要事項説明が完了すると、いよいよ売買契約に進みます。売買契約とは、売買対象の不動産を買主が購入し売主が売り渡すことを合意する契約です。売買契約書には、物件代金や支払期限、解除に関する内容や特約などが記載されています。
売主と買主が売買契約の内容に合意し、署名・捺印が完了すれば、買主から売主へ手付金が支払われます。手付金の額は物件価格の5〜10%程度が一般的です。
マンションを引渡す
売買契約が無事締結できれば、マンションの引き渡しに向けて動き出しましょう。売買契約から引き渡しまでは1ヶ月〜半年程度が一般的ですが、契約内容によって期間が異なるため、引渡し時期を必ず把握しておきましょう。
新居へ引っ越す
マンションは原則、室内を空っぽの状態で引き渡す必要があります。あらかじめ新居に引っ越さなければならないため、引越しのスケジュールをしっかりと組むことが重要です。
費用面で考えた場合、引越しにおすすめの時期は8月と12月です。真夏と真冬は極端な暑さ・寒さのため引っ越しの需要が減り、費用相場が下がるのです。また、週末は需要が高く、引っ越し料金が割高になるため、費用を抑えたいのであれば平日の引越しがおすすめです。
決済を行う
マンションを引き渡せる状態にすれば、決済を行い残代金を受領します。決済とは、締結した売買契約に基づいて取引を完了させる最終段階のことで、物件残代金の支払いと物件の引き渡しが行われます。
決済の事前準備として、住宅ローンの抹消手続きを行わなければいけません。住宅ローンを組んでいる金融機関へマンション売却の旨を伝えて、抹消手続きを進めてもらいましょう。
決済には以下のものが必要です。
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写真つき身分証明書
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実印
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印鑑証明書
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通帳
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仲介手数料などの諸費用
ケースによって決済時の必要書類は異なります。必要書類を忘れると売却ができなくなる可能性もあるため、担当者への確認を怠らないようにしましょう。
司法書士による本人確認や登記関連書類の確認が行われた後、住宅ローンが実行され物件残代金を受領します。それと同時に鍵や書類を引き渡せば決済の完了です。
確定申告を行う
マンションを売却して売却益(譲渡所得)が出た場合、税金の支払いが発生するため確定申告が必要です。ただし、損失が出た場合も「損益通算」により減税の特例を受けられるケースがあるので、確定申告をおこなうことでかえって得になる場合もあります。
譲渡所得と納税額を計算する
確定申告を行うためには、譲渡所得と納税額を算出しなければいけません。
譲渡所得税の計算式は以下のとおりです。
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譲渡所得=売却金額−取得費(購入金額)−譲渡費用−特別控除額
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譲渡所得税=譲渡所得✕税率
※譲渡費用とは、マンション売却にかかった仲介手数料などの費用を指します。
たとえば、自宅として2,000万円で購入したマンションを6,000万円で売却し、譲渡費用が200万円かかった場合は以下のようになります。※購入して8年で売却
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6,000万円−2,000万円−200万円−3,000万円(居住用財産の3,000万円特別控除)=800万円(譲渡費用)
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800万円(譲渡所得)✕20.315%(長期譲渡所得)=162万5,200円(納税額)
計算方法がわからない場合は、税理士や税務署職員に相談して解決するようにしましょう。
確定申告書類を作成し提出する
確定申告はマンションを売却した翌年の2月16日~3月15日の間に、管轄の税務署で行います。
確定申告は以下の方法で行うことができます。
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インターネットを利用して自宅で手続きをする(e-Tax)
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税務署の窓口に持参する
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税務署に郵送する
譲渡所得が発生したにも関わらず確定申告を怠ると、延滞税や無申告税がかかる場合があります。「残代金を受け取ったから終わり」ではなく、確定申告まで済ませることを忘れないようにしましょう。
マンションを高く売却する6つのポイント
マンションを高く売却するために意識しておくべきポイントがあります。
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売出価格を適切に設定する
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販売開始の時期を見極める
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自身でも相場を把握しておく
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複数社へ査定を依頼する
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余裕を持ったスケジュールを立てる
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マンション販売に強い不動産会社を選ぶ
ここでは、それぞれのポイントを詳しく解説します。
売出価格を適切に設定する
マンションを高値で売却するためには、適切な売出価格を設定することが重要です。売出価格が高すぎると、売却が長引き値下げせざるを得なくなる可能性あります。一方、低すぎる売出価格の場合は、得られる金額が少なくなり損をしてしまうかもしれません。
売出価格を適切に設定するためには、不動産会社からの査定内容を精査し、根拠を確認するようにしましょう。売主の気を引くために高い金額を提示している可能性があり、相場を無視した価格が設定されているかもしれません。売出価格がマンション売却のカギとなるため、複数社の査定結果を参考にして慎重に設定することが重要です。
販売開始の時期を見極める
マンション売却において、販売開始の時期を見極めることも重要なポイントです。販売時期を見誤ると、需要が少ないタイミングで売り出してしまい、高値で売れない可能性があるのです。
販売開始に向いている時期として以下が挙げられます。
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物件を探す人が多くなる3〜4月
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競合物件が少ないタイミング
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大規模修繕工事が行われた後
特にマンション売却の場合は、同じマンション内の競合物件が多いと値下げ競争になりやすい傾向にあります。できるだけ競合物件が少ないタイミングで販売を開始することを意識しましょう。
自身でも相場を把握しておく
マンションを高く売るためのポイント3つ目は、自分でも相場を把握しておくことです。不動産一括査定を利用した場合、複数の査定結果から売出価格を設定しなければならないため、自分の中で基準を持っておくことが重要です。
以下のサイトを利用すれば、自分で周辺相場を調べられます。
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不動産情報ライブラリ
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レインズ・マーケット・インフォメーション
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ポータルサイトや不動産会社のホームページ
「不動産情報ライブラリ」と「レインズ・マーケット・インフォメーション」を利用すれば、エリアを指定して過去の成約事例を調べられます。また、ポータルサイトや不動産会社のホームページには現在売り出されている物件情報が掲載されており、そこから相場を算出することが可能です。
複数社へ査定を依頼する
複数社に査定を依頼して販売活動を行うことも、マンションを高く売却するポイントです。不動産会社によって査定基準に違いがあり、1社だけの査定結果ではその価格が適正かどうかを判断しづらいのです。
複数社に査定を依頼する方法として、不動産一括査定が挙げられます。不動産一括査定であれば、1度の申し込みで複数の不動産会社に査定依頼ができ、簡単に査定結果を比較検討できます。中には、査定結果に数百万円の違いが出ることもあるので、できるだけ多くの不動産会社から話を聞いてみましょう。
余裕を持ったスケジュールを立てる
マンションを高く売却するためには、スケジュールにゆとりを持つことが重要です。余裕がないスケジュールで売却を進めてしまうと、売却に焦りが出てしまい安易に値下げせざるを得ないケースもあります。
東日本不動産流通機構の「首都圏不動産流通市場の動向(2023年)」によると、2023年の中古マンションの登録から成約までの平均期間は約80日という結果でした。
参考:東日本不動産流通機構の「首都圏不動産流通市場の動向(2023年)」
そのため、少なくとも引越したい時期の半年前には売却の準備を整え、査定依頼を済ましておくと良いでしょう。ギリギリのスケジュールを避け、気持ちに余裕を持った状態で売却に臨めば、良い条件でのマンション売却が可能です。
マンション販売に強い不動産会社を選ぶ
複数社に査定依頼をした場合、その中でもマンション販売に強い不動産会社を選びましょう。不動産会社にはそれぞれの強みや特徴があり、それに合わせて販売を依頼すればスムーズに売却が進むのです。
不動産会社の中には、都心に店舗を構えてマンションを中心に販売している会社や、地域密着により特定エリアの土地や戸建を中心に取り扱っている会社などがあります。特定の不動産に強い会社は、購入意欲の高い顧客を抱えている可能性があるため、好条件で売却できる可能性が広がります。
マンション販売に強いのかどうかを知るためには、担当者に販売実績を聞いたり、ホームページに掲載しているメインの物件が何なのかを調べたりしてみましょう。
マンション売却の注意点
マンション売却では、以下のポイントに気をつけましょう。
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設備の不備をあらかじめ伝えておく
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住宅ローンの残債を確認しておく
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売却後にかかる税金に気をつける
大きなトラブルを防ぐためにも、それぞれのポイントを詳しく解説します。
設備の不備をあらかじめ伝えておく
マンション売却を進める際は、設備の不備をあらかじめ不動産会社に伝えておきましょう。事前に告知していなければ売却後に買主とトラブルになり、訴訟問題にまで発展することがあります。
設備の告知を行う方法として、契約時に「付帯設備表」や「告知書」を交付する方法が挙げられます。給排水管や給湯器の故障、建具の歪みや凹みなど、事前に買主に伝えておくことでトラブルを回避できるでしょう。
長期間空家にしているマンションを売却する場合は、業者によるインスペクション(建物状況調査)で設備の確認や損耗を確認することも検討してください。事前の告知は買主に安心感を与える効果があり、高い金額で売却することにもつながります。
住宅ローンの残債を確認しておく
マンション売却の注意点として、住宅ローンの残債を確認しておくことも重要です。マンションを売却するためには抵当権を抹消する必要があり、抵当権抹消には住宅ローンを完済しなければいけないのです。
中には、残債が多いことで物件を売却しても住宅ローンを返済しきれないケースがあり、その場合は自己資金を加えることで完済しなければいけません。自己資金を足しても完済しきれない場合は、住み替えローンを利用する方法が考えられます。
住み替えローンとは、現在の住宅ローン残債と新居の購入資金を同時に借り入れるローンです。ただし、住み替えローンは金利が高く審査が厳しい傾向があるため、利用にはハードルが高いことを理解しておきましょう。
売却後にかかる税金に気をつける
マンション売却の注意点3つ目は、売却後の税金に気をつけることです。マンション売却で大きな売却益が発生した場合、高額の税金が課される可能性があります。あらかじめ売却にかかる税金の知識を深めておきましょう。
売却後にかかる税金として「譲渡所得税」が挙げられます。譲渡所得税は所有期間によって税率が異なり、所有期間が長いほど税率が低くなります。
税率と所有期間の関係は以下のとおりです。
所得区分 |
所有期間 |
税率 |
短期譲渡所得 |
所有期間5年以下 |
39.63% ※所得税:30% 住民税:9% 復興特別所得税:0.63% |
長期譲渡所得 |
所有期間5年超 |
20.315% ※所得税:15% 住民税:5% 復興特別所得税:0.315% |
売却後の手取りを多くするためには、特別控除や特例を活用しましょう。「居住用財産の3,000万円特別控除」を利用すれば、マイホームの譲渡所得が3,000万円まで控除されます。また「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」では、所有期間が10年以上を超えると所得税率が軽減されます。
マンション売却でできるだけ多くの資金を手元に残せるよう、税金の支払いを含めた資金計画を事前に立てておくことが重要です。
まとめ
この記事では、マンション売却を進めるための8ステップや、マンションを高く売却するためのポイントについて解説しました。マンション売却を成功させるためには、複数の不動産会社に査定を依頼し、根拠に沿った売出価格を設定しなければいけません。また、マンション販売に強い不動産会社を選び、スケジュールにゆとりを持った販売活動を心がけましょう。
マンション売却の流れを把握しておけば、次にどのような行動を起こせば良いのかがわかるようになります。不動産会社の指示に従うばかりでなく自分が率先して動けるよう、この記事を参考にマンション売却に臨んでみてはいかがでしょうか。