古家付きの土地を売却する際に、古家付きのまま売却すべきか、更地にして売却すべきか判断に悩む場合があります。
どちらにもメリット、デメリットがあり、それを踏まえ判断することが大切ですが、建物を解体し更地にする費用についてもしっかり検討する必要があります。
この記事では、更地にかかる費用から費用を抑える方法を紹介するとともに、土地を売却するうえで更地にすべきか否かの判断基準について解説します。更地にする際の注意点もありますので是非参考にしてください。
この記事の目次
古家付きの土地を更地にする費用
古家を解体して更地にするにはどれくらいの費用がかかるか、また、何が解体費用に影響するかについて解説します。
建物の構造別解体費用の目安
表1は、建物の構造別に解体費用をまとめたものです。木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造それぞれ耐用年数が異なり、解体費用にも違いがあります。
建物の構成する躯体が強固であるほど解体費用はかかりやすく、また、都市部と地方でも人件費などの違いから相場は異なってきます。
表1
坪単価 |
30坪 (約99㎡) |
40坪 (約132㎡) |
50坪 (約165㎡) |
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木造 |
3~5万円 |
90~150万円 |
120~200万円 |
150~250万円 |
鉄骨造 |
4~6万円 |
120~180万円 |
160~240万円 |
200~300万円 |
鉄筋コンクリート造 |
5~8万円 |
150~240万円 |
200~320万円 |
250~400万円 |
解体費用に影響しやすいポイント
構造や建物の大きさ以外に解体費用に影響するポイントがいくつかあります。
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庭や樹木、ガレージ、物置など付帯設備の撤去費用
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建物内の家財の処分費用
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重機や工事車輛が入れるかなど作業環境による人件費
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隣接住戸との距離、前面道路との高低差
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アスベストを含む建材を使用している場合の対策費用
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浄化槽など地中埋設物が見つかった場合の撤去費用 など
このほか、広い土地であれば、面積に対しての整地費用によって解体費用の総額は変わります。
なお、アスベストは1970年代に建てられた建物中心に使われている可能性があり、該当する年代に建築された建物には調査費用がかかるほか、実際にアスベストが含まれていた場合、除去費用で解体費用は一気に高くなります。
更地にする費用を抑える方法
更地にするための解体工事費を抑えるためにはどのような方法があるのでしょうか。5つの方法について解説します。
複数の解体業者で相見積もりをとる
複数の解体業者で相見積もりをとることで解体費用を抑えやすくなります。
解体業者によって人件費や利益率など異なるため、相見積もりを前提に見積もりしてもらうことで業者間で競争意識も働き、見積もり金額を下げることが期待できます。
また、解体費用の見積もり項目には、建物の解体作業費のほか、樹木や家財の撤去などさまざまな付帯費用があります。そのため、見積もり金額に何が含まれるか、最終的にどういった状態で土地が引渡されるのかをしっかり確認しましょう。
その他、解体工事に必要な届出書の作成や証明書、提出代行費用など、手続きに必要な費用が含まれているかも確認が必要です。
ゴミや家財など自分で処分しておく
建物内の家財やゴミをできるだけ自分で処分することで費用を抑えることができます。
特に、相続した実家などを解体する場合、生活していた状態のまま相続するケースも少なくありません。仏壇やピアノ、ベッドのほか家電などを含めてすべて依頼すると、かなりの費用がかかります。
可能であれば、リサイクルショップやオークションなどを活用して売却、処分する、自治体のリサイクルセンターに持ち込むことで、残置物の処分費用を抑えられます。
解体費用を買主と交渉する
古家付きの土地として需要がある場合は、解体費用を買主と交渉できる場合もあります。
解体費用を準備することが難しい場合、古家付きの土地として売却を進め、買主に解体費用の一部を負担してもらうよう交渉できるか検討しましょう。買主にとっては建物があることで住宅ローン手続きを進めやすいメリットもあります。
また、古家付きの解体費用を買主と折半する代わりに、土地代を値引きするなどの交渉も考えられます。
更地にする費用で活用できる補助金
各自治体では、空き家解消や耐震性が不足する住宅の建て替えなどを目的として、さまざまな解体費用の支援制度を設けています。自治体によって対象となる建物の条件は異なりますが、東京都で活用できる補助金を紹介します。同様の制度がないか、建物が所在する自治体に確認してみてください。
●老朽危険家屋除去費等助成制度(東京都墨田区)
対象 |
住宅地区改良法に規定する「不良住宅」に該当する建物など |
助成金額 |
除去工事費の1/2(上限50万円) |
●老朽建築物除去助成(東京都台東区)
対象 |
・東京都が指定する不燃化特区内にある ・耐用年数の2/3を経過した建築物 ・除去後の敷地は防災上安全かつ良好な空地として管理することなど |
助成金額 |
1.除去工事および除去後の敷地の整地費用 2.除去単価(別途規定あり)に延べ面積を乗じた額 1.2のいずれか小さい額(上限150万円) |
参照:台東区|不燃化特区制度
●木造住宅建替え等助成(東京都中野区)
対象 |
・昭和56年5月31日以前に建築された、木造在来工法の住宅 ・耐震診断で一定の基準未満であると判断されること ・建替え後の建築物が一定の要件を満たすこと など |
助成金額 |
1.耐震診断で作成した耐震補強工事に要する費用 2.延べ面積(㎡)×34,100円/㎡ 3.除去に要する費用 1~3のいずれか少ない額 ※上限は区内の地域によって150~400万円 |
古家付きのままか?更地にするか?その判断基準
では、古家付きのまま売却したほうがよいのか、更地にすべきかはどのように判断すればよいのでしょうか。それぞれのメリットデメリットを踏まえたうえで、判断基準について解説します。
古家付き・更地それぞれのメリット・デメリット
表2は、古家付きのまま売却するときと更地にした場合のメリット・デメリットをまとめたものです。
表2
古家付きのまま売却 |
更地にして売却 |
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メリット |
・解体費用がかからない ・(建物に利用価値がある場合) 購入対象となるターゲットが増える ・固定資産税の軽減を受けられる |
・流動性が上がり売りやすくなる ・買主がすぐに土地を活用できる ・買主が土地の状況を確認しやすい |
デメリット |
・(更地と比べると)売れにくい ・建物の契約不適合責任を負う可能性がある |
・解体費用がかかる ・販売期間によっては、固定資産税の負担が増える可能性がある |
まず、古家付きのままと更地で売却するかの大きな違いは、解体費用を負担するか否かです。解体しても必ずしも売却できるとは限らないため、解体費用を負担せずに売却できる点は古家付きのまま売る場合のメリットといえます。
ただし、解体更地渡しを条件として売買契約を締結することも少なくありません。これは売買契約後に解体工事を行い、受け取る売却代金から解体費用を支払う方法です。この方法であれば、購入希望者が見つかるまで解体費用を負担する必要がありません。
売れやすさという意味では、更地のほうが売りやすくなります。土地や隣接する敷地の状況を確認しやすく、新築後の建物もイメージしやすいためです。土地を購入後すぐに建物の計画を進められる点もメリットです。
これら更地と古家付き土地それぞれのメリット・デメリットを踏まえ、建物を解体すべきかの判断基準について以下解説します。
更地にしたほうがよいケース
更地にしたほうがよいケースは次のような場合です。
売れにくい土地を手放したい場合
立地条件が悪い土地など売れにくい土地を手放したい場合、更地にしたほうが売れやすくなります。
更地にすることで土地の状況が分かりやすく、また、すぐに活用できるため買手がつきやすくなるためです。
ただし、立地が悪く需要が少ない土地の場合、更地にしても売れない可能性もあります。また、売れにくい理由が、前面道路が狭い、旗竿地であるなど道路付けの悪さにある場合、更地にしても売れにくい傾向です。そのため、更地にしても売れない可能性も含めて慎重に判断することが必要です。
建物の価値が認められない
建物が老朽化し、資産価値だけでなく建物の利用価値を見出すことが難しい場合も更地にしたほうがよいでしょう。
木造住宅の場合、築20~25年を超えてくると建物の価値はほとんどなくなります。建物に利用価値があれば、自分の好みにリノベーションした住宅を購入したい層をターゲットにすることも可能です。
ただ、建物の状態が悪い、あるいは耐震性に不安が残るなど利用価値を見込めない物件は、更地にして土地本来の価値をアピールしたほうがよいでしょう。
更地にしないほうがよいケース
一方、更地にしないほうがよいのはどういったケースでしょうか。
土地として需要がある(立地が良い)
立地条件が良く土地としての需要が高ければ更地にせず、そのまま売却すべきでしょう。
前提として、解体費用を売主と買主どちらが負担するかは法律などで決まっているわけではなく、交渉や契約条件を通じて決めます。
更地と比べると古家付きの土地は売りにくくなりますが、土地として需要が高く、買主が競合するような土地であれば、建物の解体費用も含めた強気の価格設定で売却できる可能性もあるでしょう。
そのため、需要が高い土地は更地にせず、古家付きの土地として売却をすることがおすすめです。
建物の利用価値がある
建物にまだ利用価値がある場合は、更地にせず売却したほうがよいでしょう。木造住宅の場合、耐用年数は、税法上22年となっています。
実際に木造住宅を査定する場合も、20年を超えると建物の価値はほとんどなくなり、土地の評価に近くなる傾向です。
ただし、建物の構造によって、また建物のメンテナンスをしっかりと行われている建物であれば、利用価値が認められる建物もあります。
前述のとおり、まだ利用価値のある建物であれば、自由にリノベーション、リフォームできる物件を探している買主もいます。
建物の状態も含め、利用価値がある場合は、更地より古家付きのまま売却するほうが、購入者層を広げられる可能性があります。
再建築不可の土地
再建築不可の土地は、更地にせず売却したほうがよいです。
再建築不可とは、建築基準法などの法律の条件を満たしていないため、解体して更地にしても、再度建物を新築することができないことをいいます。
再建築不可物件に多いケースは、建築基準法上の接道義務を満たしていない場合です。
建築基準法では、都市計画区域や準都市計画区域で建物を建てる場合、幅員4m以上の道路に、敷地が2m以上接していることが必要です。
そのため、接道義務を満たさない土地上の建物を解体してしまうと、再度建築することができず、土地の用途が限定されてしまいます。
そのため、再建築不可の土地では更地にせず売却しなければなりません。
ただし、令和5年空き家等対策の推進に関する特別措置法の改正で、市区町村が特定行政庁と協議して定めた一定の基準にあてはまる空き家は、前面道路の幅員が4m未満でも建替えや改築ができる場合もあります。
参照:国土交通省|空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を 改正する法律
土地の価格より解体費用のほうが高い
土地の売却予定金額より解体費用のほうが高い場合にも更地にすべきではありません。なぜなら、建物の解体費用を売却価格に乗せることで売れなくなる可能性が高くなるためです。
解体費用を回収するために、本来の相場より高い価格で売り出しでも、問合せや反響が少なくなる可能性があります。
また、そのような状況になっても、解体工事費をすでに支出していると売却価格を変更することが難しくなります。土地の価格より解体費用が高い場合、更地にすべきではありません。
更地にするときに知っておくべき注意点
ここでは更地にして売却するときに知っておくべき注意点について解説します。
更地にした翌年から固定資産税額が高くなる
更地にすると住宅用地として適用されている軽減がなくなり、固定資産税が高くなります。
固定資産税は、1月1日時点の所有者に対して課される税金です。解体後すぐに上がるわけではありませんが、更地にしたあと売却活動が長くなると、固定資産税の負担が増える可能性がある点に注意が必要です。
解体費用のみのローンは組めない場合がある
解体費用を準備することが難しい場合もありますが、解体費用のみではローンが組めない場合もありますので注意が必要です。
金利が低い住宅ローンは、建て替え以外の解体工事では基本的に融資を受けることはできません。
住宅ローン以外では、金利は高くなりますが空き家解体ローンもあります。地方銀行や信用金庫などが比較的多く取り扱っており、利用条件もそれほど厳しくありません。その他にも無担保ローンなどを活用する方法もありますが、金利水準は高く、審査も厳しくなる傾向です。
解体工事の資金計画については、事前に確認して進めることが大切です。
埋設物などが見つかった工事費が上がる場合がある
土地の地中から、浄化槽や以前の建物の基礎や杭、古井戸など地中埋設物が見つかった場合、工事費が想定以上に上がるケースがありますので注意が必要です。
地中埋設物は、解体工事中、それも解体の終盤で整地しようとして発見されるケースが多くなりますので、見積もり段階で費用を計上できません。
地中深くまで埋まっている杭などを撤去する場合、100万円近くの費用がかかるケースもあります。解体工事費が想定以上に増える可能性があることを踏まえたうえで資金計画を考えることが必要です。
なお、地中埋設物が見つかった場合でも、依頼主の承諾なく地中埋設物を撤去し、あとから費用だけ請求されることがないように、契約書に地中埋設物が見つかった場合の対応を盛り込むようにしましょう。
土地の契約不適合責任
土地の売買契約における契約不適合責任に注意する必要があります。
契約不適合責任とは、売買契約において、売主が契約で約束したものと種類や性能などが異なるものを引渡し場合に負う責任です。
建物を解体した場合、建物の瑕疵担保責任は生じることはありません。また、古家付きの土地を売却する場合も、売主の契約不適合責任を免責とする規定を設けることも可能ですが、免責事項や容認事項を特約として規定しなけあればなりません。
土地の場合、引渡し後に地中埋設物が見つかる場合もあります。契約内容について、買主の同意を含め、免責条項としてしっかりと定める必要があります。
建物の解体から更地にするまでの流れ
最後に、解体工事の流れについて解説します。
1.見積もり・解体業者の決定
建物や周辺環境の現地調査をしてもらい見積もりを依頼します。このとき、複数の業者に見積もりを依頼することが大切です。
見積もり金額のほか作業内容や工事スケジュール、支払条件をしっかり確認し、解体業者を決めましょう。
なお、依頼先の業者を探すには、自力で探すほか、不動産会社や住宅会社の紹介が考えられますが、紹介を受ける場合は仲介料(紹介料)などのマージンが見積もり金額に上乗せされるため注意が必要です。
2.ライフラインの停止・家財の撤去
建物の解体工事に入る前に、ガスや電気、水道、通信回線などのライフラインを停止が必要です。特に、ガスの供給を停止をしないと重大な事故に繋がる可能性もあります。
また、建物内に家財が残っている場合は撤去を行いますが、費用を抑えるために自治体のリサイクルセンターを利用するなど自分でできることやっておきましょう。
その他、工事に入る前に、建設リサイクル法など解体工事に必要な申請書類を提出し、近隣の住民へ挨拶回りをします。
3.建物本体の解体工事着工
養生や足場の設置などの準備ができれば、建物本体の解体工事の着工です。
手作業と重機を使って、屋根の解体から設備、内装材の撤去、建物の外壁・内壁の解体と進めていきます。
重機による解体作業は3〜5日程度で終わることが多いようです。
4.建物の基礎の解体・地中埋設物の撤去
建物本体の解体が終われば、基礎の解体を行います。基礎を撤去したあと、地中に埋設物がないかを確認し、埋設物が見つかった場合、協議のうえで対応を決めます。
5.整地・残土処理
解体工事で発生した細かい木くずやコンクリートガラなどを土地から除去し、最後に、土地を整地しきれいな状態に仕上げます。現場の清掃まで終え、依頼主に引渡します。
6.建物滅失登記手続き
最後に、建物の滅失登記手続きが必要です。
滅失登記とは、建物の全部を取り壊したときに行う登記手続きで、建物の所有者は、取壊しの日から1カ月以内に登記の申請をしなければなりません。
管轄の法務局で自分ですることもできますし、費用はかかりますが、土地家屋調査士などに依頼することもできます。
まとめ
土地を売却するうえで、建物を解体するかどうかについては、更地にする費用を含めて判断すると思います。
更地にする費用は、建物の構造や規模、解体時の状況によって変わり、数百万円を超える場合もあります。
そのため、地中埋設物の撤去など解体工事中に発生する可能性のある費用も含めて、事前にしっかりと資金計画を考えることが大切です。
ただし、一番の目的は、古家が付いた土地をより高く、より確実に売却できるかどうか判断することです。
一般的には、古家付きのままより更地にしたほうが売却しやすくなりますが、その土地の売れやすさや売却価格、建物の状態などから慎重に判断しましょう。